Column

業界動向

カーボン・クレジットに関する動向

 これまでもカーボン・クレジットの基礎(2024年7月投稿)やScope 3とカーボン・クレジットとの関連性(2024年10月投稿)に関して、弊社業界動向コラムで説明してまいりました。気候変動全般の話題同様、カーボン・クレジットにおいてもSBTi、VCMI、ICVCM、ISO、パリ協定第6条、日本国内のGXリーグなど、さまざまな国内外のイニシアティブやルールを取り巻く状況がめまぐるしく変わっています。  ネットゼロを掲げる企業にとって、「クレジットを使うかどうか」はもはや選択肢ではなく、「どう使うか」が問われる段階に入っています。かつては、「安いクレジットを買って埋め合わせ(カーボン・オフセット)すればよい」という感覚でも通用していましたが、今はカーボン・クレジットの質、使い方、そして主張の仕方が非常に重要になっています。  本記事では、改めてカーボン・クレジットの基礎のおさらいから最新の各イニシアティブ等での全体像、最新ルールの全体像、そして企業がとるべき実務的なスタンスについて説明いたします。カーボン・クレジットを既に活用している企業の皆さまにとっても、今後、カーボン・クレジットの購入や活用を検討している企業の皆さまにとっても良いヒントとなれば幸いです。 カーボン・クレジット基本のおさらい カーボン・クレジットとは  カーボン・クレジットとは、図1に示すように省エネルギー、再生可能エネルギー、森林管理などの活動で削減・吸収された温室効果ガスを方法論と呼ばれるルール従って計算・認証することで数値化し、クレジット(証書)の形にして、売買できるようにしたものです。​ 図1.ベースライン&クレジットの考え方  カーボン・クレジットは大きく分けて2つの要素でできています。1つ目が発行を行う制度の運営主体です。図2に示すように、カーボン・クレジットの発行や制度運営主体で分けると、国連・政府主導(CDM、JCM、J-クレジットなど)と、民間主導のボランタリークレジット(VCS、Gold Standard、ACRなど)に分けられます。この運営主体によって、クレジットの仕様方法が異なることもあるため、まずはどの運営主体によって発行されたカーボン・クレジットであるかを把握する必要があります。  そして、2つ目がカーボン・クレジットの種類、いわゆる、どの種類のプロジェクトで創出された、何由来の価値かという部分です。カーボン・クレジットは図3に示すように「排出回避/削減」か「固定吸収/貯留」かに大きく分けられます。その中でもNbs (Nature-based solution)と呼ばれる自然ベースか技術ベースかに分類されます。とりわけ、自然ベースのカーボン・クレジットは、生物多様性や地域コミュニティへの貢献といったコベネフィットと呼ばれる「共便益」を併せ持つ点が評価され、最近のトレンドにもなっています。  カーボン・クレジットを使用する際には、使用目的に合わせたクレジットを選択する必要があります。カーボン・クレジットにおいては、①制度の運営主体、②カーボン・クレジットの創出方法(何由来の価値か)を理解する必要があります。 図2.カーボン・クレジットの運営主体の区分 図3.カーボン・クレジットの種類 制度の運営主体  海外の代表的なクレジット制度(レジストリ)として、CDM(クリーン開発メカニズム)由来の京都議定書時代の国連主導クレジットであるCER、Verraという民間団体が運営するVCS/VCU、Gold Standard、ACR(American Carbon Registry)などがあります。​最近では、Plan Vivoなどのようなコベネフィットや社会的なプロジェクトをより重視したレジストリや、PuroEarth、Isometricといった新興レジストリも出てきています。  また、CDP29ではCDMの後継であるPACM(パリ協定クレジットメカニズム)の主要ルールが採択され、CDMプロジェクトのPACM移転手続き等が開始された。また、二国間クレジットについても詳細が詰められ、本格的な運用段階に移っています。日本でもJCMクレジットとして創出が行われており、近年は民間主体のJCMクレジット創出の取組も開始されています。 CDM(Clean Development Mechanism)/CER(Certified Emission Reduction):京都議定書時代の国連主導クレジット。京都議定書自体の役割を終え、後継としてPCAMが開発された。 PACM(Paris Agreement Crediting Mechanism)/A6.4ER(第6条4項メカニズム排出削減量):CDMの後継メカニズムであり、CDMからの移転手続きが進められている。一方で、移行の成否は新たな基準(特に方法論分野)への対応等が必要であることから、課題も多い。 第6条2項(協力的アプローチ)クレジット:パリ協定第6条2項に基づき、二国間の協力で生まれたクレジットを国どうしで移転・分け合う仕組みの総称である。日本が運用しているJCM(Joint Crediting Mechanism)はこの代表的な枠組みであり、日本とパートナー国のプロジェクトから生じた削減・吸収量をクレジット化し、両国の貢献度合いに応じて配分する仕組みとなっている。 VCS/VCU:森林・土地利用、REDD+などに強く、CCB ※1やSD VISta※2によりSDGs・生物多様性等の価値を上乗せできるのが特徴。​ Gold Standard:持続可能な開発と排出削減の両立を重視し、再生可能エネルギーやクックストーブ等のプロジェクトで強い実績を持つ。​ ACR(American Carbon Registry):世界初の民間ボランタリーレジストリ。カリフォルニア州ETSのオフセットにも使われるなど、コンプライアンス・ボランタリーの両方で活用することが可能。  ※1 CCB(Climate, Community Biodiversity):気候・コミュニティ・生物多様性の基準。気候変動への対応、地域コミュニティや小規模農家への支援、生物多様性の保全を同時に行っていることを証明するもの  ※2 SD VISta: 持続可能な開発認証インパクト・スタンダード。社会的・環境的プロジェクトの持続可能な開発効果を認証するための最高基準   カーボン・クレジットの最新動向 J-クレジットやボランタリークレジットの価格推移  近年カーボン・ニュートラル実現に向けて、世界各国で市場メカニズムを活用したカーボンプライシングに関する取り組むが活性化しています。世界銀行が公開しているカーボンプライシングダッシュボードを確認すると、図4に示すように52か国でETS等のコンプライアンスメカニズムが導入され、17か国でカーボン・クレジット市場が運用されています(2025年12月公開情報より)。こうした制度は、2024年に世界全体で1,000億ドルを超える公的歳入を生み出しています。  図4. コンプライアンスメカニズム及びカーボン・クレジット市場を有する国 Carbon Pricing Dashboard | Up-to-date overview of carbon pricing initiatives  日本国内においても、2023年10月に東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開設され、GX-ETSの本格運用に向けて様々な議論が活発になされています。実際に相談のお問合せも増加傾向にあり、クレジット制度全般に関する関心の高まりを感じています。  このような盛り上がりの影響もあって、日本のカーボン・クレジット制度であるJ-クレジットでは、前述した東証における価格が2025年から急上昇しています。図5に示すように特に省エネクレジットについては、2023年の年末時点と比較すると2025年12月時点では3倍以上の価格が上昇しています。 図5. J-クレジット(省エネクレジット)の価格推移 出所:日本取引所グループ 市場開設以降の売買状況  この価格上昇については、様々な機関・企業が分析し、見解を公表しています。これらの情報を収集し、以下に整理しました。結論としては、市場の流動性が限られていることから、適正価格が不透明であることが原因と考えています。  今後の価格予想については、短期的には、需要拡大の一因であるGX-ETSにおける排出枠に関して、12月上中旬に実施予定の経済産業省における排出量取引制度小委員会で上下限価格の具体的な水準について議論予定であることから、その結果の影響が大きいと考えています。長期的な価格動向については図6に示す世界銀行が公開しているカーボンプライシングダッシュボードに記載されている各国のETS価格水準が参考になると考えています。  こうした価格の変動は、需要家側にとっては長期的な調達戦略等を考える課題になりますが、創出側にとってはこれまで採算が合わなかった小規模プロジェクト等の拡大にもつながります。J-クレジット制度を活用することで、より脱炭素投資を拡大することにもつながりますので、興味をお持ちの際は相談窓口にご連絡ください。 直近のJ-クレジットの認証量は無効化量を大きく上回っており、実際に利用する企業が増加して市場に流通するクレジットの在庫不足によって価格が上昇したものではないと考えられる。 GX-ETSの排出枠の代替目的などの将来の利用や転売を見越した需要の拡大及び投機目的の購入の影響があると推測される。 カーボン・オフセット都市ガス等これまでなかった利用方法の拡大 図6.各国のETS価格 価格 |カーボンプライシングダッシュボード 信頼性・質へのシフト(除去系への関心拡大)   カーボン・クレジットの需要が高まるにつれ、カーボン・クレジットそのものの中身や質が問われるようになってきています。  カーボン・クレジットの発行が増えるにつれ、カーボン・クレジットの過大発行やプロジェクト地域における先住民族に対する人権問題など、グリーンウォッシュの事例も出てきています。例えば、2024年10月に起きた事例では、ブラジル・パラ州の先住民族・地域団体38団体は同州のアマゾン熱帯雨林保護を支援するため、アマゾンやウォルマートといった米国多国籍企業とカーボン・クレジット売買契約を締結する前に州政府から事前に十分な協議を受けていなかったと共同声明を発表しています。これは、いわゆる、FPIC(Free, Prior and Informed Consent)と呼ばれる、十分かつ事前の同意を得ていなかった例です。その後、2024年10月の報道を受け、パラ州政府は今後、先住民族との対話を開始すると発表しています。しかし、ブラジルでは、2025年7月にも、Verra などの大手クレジットレジストリに登録されたアマゾン地域の森林保全プロジェクトを対象に、Ibama(ブラジル環境政府機関)による過去の違法伐採歴がある人物・団体が関与していた事例が少なくとも 36のうち、24プロジェクトあったとの報道も出ており、カーボン・プロジェクトの質に関わる問題は山積みとなっています。  また、同じく2024年10月に起きた事例では、米国商品先物取引委員会(CFTC)が米国ワシントン州に拠点を置くカーボン・クレジットプロジェクト開発会社がボランタリーカーボン・クレジットに関連する詐欺および虚偽・誤解を招く・不正確な報告を行ったとして、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴状を提出しています。このプロジェクト開発会社が、2019年以降少なくとも2023年12月までサハラ以南アフリカ、アジア、中米において、より効率的な調理用コンロやLED電球の設置などで排出削減を目的とするとして開発したプロジェクトに関連し、欺瞞的な計画に関与したと言われています。実際には、炭素クレジットの検証・発行に関連し、虚偽・誤解を招く・不正確な情報を不正に報告し、権利を有する量より数百万単位多いカーボン・クレジットが発行されていました。このプロジェクト開発会社が虚偽に発行したカーボン・クレジットは取消され、罰金や取引禁止などの制裁が科されています。  企業は、プロジェクト種類、ビンテージ、方法論などの基礎的な要素のみならず、例えば、政治的安定性や法規制・整備などのプロジェクト実施国のリスク、過去の実績、コンプライアンスなどのプロジェクト開発者のリスク、人権、先住民との関係性、生物多様性や水リスクといったSDGs関連のリスクなど、様々な側面からデューデリジェンスを行ったうえで、カーボン・クレジットを調達する必要があります。  ボランタリーカーボン・クレジット市場では、取引量が減少する一方で、厳格な基準を満たした「高品質クレジット」への選好や需要集中が顕著になっており、平均価格は比較的底堅く推移しています。 上記で述べたようなVerraの発行するCCB(Climate, Community Biodiversity)気候・コミュニティ・生物多様性基準、SD Vistaなどの追加的なラベル付のカーボン・クレジットを組織のクレジット調達の要件の一つにしている企業も多くみられます。  また、上述のようなグリーンウォッシュの事例にも対応していくために、より高品質なカーボン・クレジットの「世界共通ラベル」を作ろうとする世界的な動きもあります。それが、ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)です。同評議会はCore Carbon Principles(CCPs)を定め、​下記2つのレベルで評価し、CCP-eligible/CCP-approvedを経てCCPラベル付与に進む仕組みを整えています。2025年10月に発行されたICVCMのImpact Report 2025によれば、2025年10月時点で、Verraなどのレジストリで、森林管理 (Improved Forest Management: IFM)、バイオ炭 (Biochar)、植林/再植林 (Afforestation / Reforestation)、炭素除去 (CDR)などの36もの方法論がCCP適格として、承認されています。今後、5,100万tCO2規模のCCPラベル付きクレジットが市場に出てくる見込みとされています。この数値は、2024年市場発行量のおよそ 4% にあたる量です。 プログラムレベル(Verra、GS、ACR、CARなど) カテゴリ/方法論レベル(REDD+、ARR、IFM、埋立てガス、クックストーブ等)  VCMIは、原則として「ICVCMのCCPラベルまたはA6.4ERs」を高品質クレジットとして認める方向性を示しています。企業側から見ると、「とりあえずVerraやGold Standardで安価なプロジェクトを買えば良い」フェーズから「しっかりとICVCM・VCMIの要件も満たしているプロジェクトかどうか」も確認したうえでカーボン・クレジットを調達することが重要というフェーズに変わりつつあります。  加えて、カーボン・クレジットに対して格付けを行う機関やツールも出てきています。客観的且つ信頼性の高い情報が不足しており、クレジットの質や現地情報の確認等まで全て自社で行うには限界もあります。例えば、BeZeroやSylvera(シルベラ)といったクレジット格付け機関は、様々なレジストリの世界各地のカーボン・プロジェクトの品質を科学的かつ透明性の高い手法で格付けし、その格付け結果を自社のツールで公表しています。  例えば、Sylveraは、人工衛星データやAI、アカデミック手法を組み合わせた独自方法により、600以上ものプロジェクトをGHG削減・除去量の実効性、追加性、永続性、コベネフィットなどの観点から評価し、AAA(最高品質)~D(最低品質)の格付を提供しています。これらのカーボン・クレジット格付けツールは実際に政府や企業にも幅広く活用されています。 ブロックチェーン等デジタル技術の活用に関する動向  カーボン・クレジットの信頼性に関する課題として、「二重計上の防止」や「トレーサビリティの向上」が挙げられています。この課題の解決策としてブロックチェーンに関する技術が注目されています。これまで導入に慎重であったVerraについても、今年エコシステムを推進しているHedera Foundationと提携し、Hederaのブロックチェーン基盤(Guardian など)を活用したカーボン市場のデジタル変革プロジェクトを開始すると発表しており、段階的にデジタル化を進めています。また、J-クレジットでも、トークン化に関する法的論点の整理・分析に関するレポートが公開されています。  レポートでも言及されていますが、過去には償却済みクレジットのトークンが流通することで、償却を行った者を Verra 等の制度管理者側で把握・管理することができなくなるおそれがあるという問題が生じており、Verra が償却済みのクレジットのブリッジを禁止する等の動きもあり、まだまだ課題が多いものの、前述したメリットも大きいことから、今後の進展に着目して行く必要があると考えています。  また、ブロックチェーンと合わせて着目されているのが、MRVのデジタル化です。MRVはMeasurement, Reporting and Verification(測定・報告・検証)の略称であり、IoTセンサー・衛星リモセン・AI解析などのデータを用いて削減量を自動計測・レポーティングし、クレジット発行の手続きの省力化への貢献が期待されています。  日本でもJ-クレジットにおいてMRV支援システムの導入が進められています。制度事務局では、MRV支援システムの利用により、モニタリングから認証申請までの業務効率化が見込まれるほか、従来であれば人手で実施していたIoT機器等の情報の取りまとめや排出削減量の算定をシステムが行うことにより、改ざんや転記ミス等のリスク低減が見込まれています。現在株式会社日立製作所等の3社がMRV支援システム運営者として登録されています。現時点ではMRV支援システムを使用した事例は登録されていないものの、今後事例が増えていくと想定しています。  こうした取り組みが拡大していくことは、カーボン・クレジットの創出に関する負担軽減、信頼性向上に寄与すると考えています。 カーボン・クレジットの使用方法 カーボン・クレジットの利用方法  カーボン・クレジットはどのように利用されるのでしょうか。現在の主なクレジットの仕様方法は表1のようになっており、組織は、利用目的に合わせてカーボン・クレジットを調達する必要があります。 表1. 目的別カーボン・クレジットの活用方法   ISOカーボン・ニュートラル対応  具体的な使用方法の一つとして、ISOカーボン・ニュートラル基準への対応があります。カーボン・ニュートラルやネットゼロは国際的な規格であるISO化が進んでいます。現在、カーボン・クレジットを使用しての企業としてカーボン・ニュートラルを主張することができるISO14068-1が存在します。これはBSI(The British Standards Institution、英国規格協会)が定めていたカーボン・ニュートラルの規格であるPAS2060の進化版になります。IPCCレベルではカーボン・ニュートラルとネットゼロはほぼ同義ですが、ISOではより細かく定義が分けられています。 カーボン・ニュートラル(ISO14068-1):組織・製品・サービスも対象。削減+除去+オフセットでフットプリントをゼロにする概念。 ネットゼロ(Net Zero Guidelines/ISO14060.2):国家や組織にフォーカスし、長期的に残余排出量以外を削減したうえで、残余排出量のみを除去系のカーボン・クレジットで中和するという、より厳格なフレーム。​  ISO14068-1では直接的もしくは間接的GHG 排出量を削減(reduce)し、さらにGHG 除去(removal)の強化に優先順位を付け、活動の後に残っているカーボンフットプリントについてのみ、カーボン・オフセットを行うことによるカーボン・ニュートラルを認証するものです。PAS2060との違いは細かくあるものの、要件として一番難しいのはクレジットの要件の部分が挙げられます。既存のISOにおいては主張をする期間の開始より5年以内に創出されたのカーボン・クレジットの使用かつ、相当調整(corresponding adjustment)※3がされている必要がある点が一番の難点となります。これはパリ協定が適応される前のビンテージのものについては考慮しなくてよいのですが、適応される年度以降については考慮する必要があります。なお、現時点ではJ-クレジットは適応対象外の可能性が高いと考えられています。 ※3 相当調整:排出削減成果(ITMOs)を他国に移転する際に、ホスト国(クレジット創出国)が自国のNDC(国が決定する貢献)からその分を差し引く会計上の調整のこと。同じ排出削減または除去が、同一の会計システム内で2つの異なる主体によって目標達成のために主張されることを指す。例えば、一度は国や地方自治体などが緩和目標達成のために排出削減量として報告し、もう一度は企業などがカーボン・クレジットを償却して自社の排出削減達成として主張する、といったケース カーボン・オフセット認証の紹介    上述のISOは海外の認証ですが、日本国内でも環境省によるカーボン・オフセット認証、カーボン・ニュートラル認証という仕組みがあります。これは、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成26年3月31日環境省)を受けて、平成29年6月1日(Ver1.0)「カーボン・オフセット第三者認証プログラム実施規則」にカーボン・オフセット第三者認証プログラムが定められたものです。様々な企業が自社の排出量や製品の認証に取組んでおり、認証を取ることで環境配慮型企業としてのPR、取引先・顧客からの評価向上、社内の温暖化対策への意識向上といった効果を期待しています。 SBTネットゼロでの評価(BVCMについてもここで紹介)  SBTiからも企業のネットゼロスタンダードv2が公開されています。このネットゼロスタンダードv2では、企業は、ネットゼロへの移行の過程で継続的な排出に責任を持ち、ネットゼロ目標年およびその後に残余排出の影響を中和することが求められています。  現在公開されている第2回コンサルテーションドラフトでは、企業の継続排出量への責任は2035年まで任意となりますが、その後はカテゴリーA企業がこれらの排出量に対し段階的に責任を負うことが義務付けられています。また、全企業は、ネットゼロ達成年までに、残存排出量の100%を中立化するか、間接的なバリューチェーン排出量については、バリューチェーンの取引先がこれらを中和することを保証しなければなりません。ネットゼロ目標年以降、全ての企業がスコープ1~3残余排出量をCO2除去により中立化し、ネットゼロ目標年において、残余排出量の41%以上が長寿命貯留層で除去・貯留される必要があります(2035年は17%想定)。 ※カテゴリーA企業:高所得地域で事業を行う大企業および中規模企業。ネットゼロスタンダードv2では、企業はこのカテゴリーAとカテゴリーB(低所得地域で事業を行う中小企業)に分けられる。 出所:CNZS-V2-_-Detailed-Explanatory-Guide_Japanese.pdf  上記を含むSBTiにおける変更により、オフセット目的でのクレジット使用は依然認められていないものの、残余排出の中和の手段の一つでもある、残余排出の中和手段として、高品質なカーボン・クレジットの購入、炭素貯留・除去技術への投資、マングローブ林や泥炭地の保全などの企業のバリューチェーン外の貢献(BVCM:Beyond Value Chain Mitigation)に関する取り組みが正式に認められる形となっています。SBTiネットゼロスタンダードでは、企業が炭素除去をより拡大し、気候資金を動員する機会といった、残余排出量に対処するためのオプションが提案されています。  これまでは、このBVCMの活動について取り組む企業側のインセンティブがなく、自主性に任せられてきました。今回の改定案では一定のルールに基づいてBVCMに取り組む企業に対して差別化を図ることができる認定フレームワークの設計が議論されています。  例えば自社の排出量の1%以上分のカーボン・クレジットの購入や、脱炭素技術への支援を行うことで、追加的な認定を得ることができるというような仕組みが考えられています。この制度により、より気候変動に積極的に取り組む企業の差別化がなされます。  BVCMに取り組む企業にとっては、貴重な資金を投入するため、よりPRにつながるクレジットの購入や取り組みへの投資を検討する必要があります。 出所:ABOVE AND BEYOND: AN SBTI REPORT ON THE DESIGN AND IMPLEMENTATION OF BEYOND VALUE CHAIN MITIGATION (BVCM) まとめ  今回のコラムではカーボン・クレジット全般の動向を整理しました。日本では国内のコンプライアンス市場であるGX-ETSの本格稼働に向けて様々なルールの議論が始まっています。また、ボランタリー市場においても、ISOやSBTiでのクレジット利用方法についても具体的な指針が出てきています。そのため、クレジット利用する場合には、まず目的を明確にし、その目的に応じた信頼性と追加性の高いカーボン・クレジットを調達する必要があります。  クレジットの調達方法にお悩みの際には、是非お気軽にご相談ください。 (執筆者:野村・大橋) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・カーボン・クレジット創出事業 ・カーボンニュートラル・BVCM ・アドバイザリーサービス

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SBTiを取り巻く急速な変化と、企業がいま取るべき対応

  気候変動やSBTをめぐる「変化の速さ」に企業が戸惑う時代  気候変動対策をめぐる世界の動きの速さは、企業の皆さまも日々実感されているのではないでしょうか。 なかでもSBTi(Science Based Targets initiative)は、企業が科学的根拠に基づいて温室効果ガス削減目標を設定するための国際的なイニシアティブとして確固たる地位を築きました。しかし同時に、その基準や運用ルールの改定スピードが非常に速いのも特徴です。 地球温暖化の進行とSBT認定取得企業の急増を受け、SBTiの役割と影響力はこれまで以上に拡大しています。それに伴い、SBTi基準のマイナーチェンジや各種ガイダンスの発行、申請手順や料金体系の変更、さらには専用ポータルの導入など、制度運用のアップデートが継続的に行われています。特に2025年3月に「SBTiネットゼロ基準v2」のドラフトが公開されて以降は、「いつ短期目標を申請すべきか」「ネットゼロ目標の追加はいつが最適か」「ネットゼロ基準v2の正式リリースを待ってから申請すべきか」といったご相談が急増しています。 本記事では、2025年11月初旬時点での最新動向を踏まえ、企業のステータスに応じて今取るべき対応の方向性と、その考え方のヒントをご紹介します。   SBTi基準改定の最新動向と実務への影響 SBTiネットゼロ基準v2が示す「実行と透明性」への転換  2025年3月に公表されたSBTiネットゼロ基準 v2(ドラフト)では、スコープ1・2・3を含むバリューチェーン全体での排出量削減に対し、より高いレベルの進捗管理・実行責任・業種横断的ガイダンスの強化が示されています。 具体的には、企業が「目標を設定して終わり」ではなく、目標達成までの実行力と透明性を求められる点が大きな特徴です。「排出量データの第三者保証」や「進捗の定期的な報告・開示」の要件化が提示され、説明責任と透明性の一層の強化が求められています。 さらに、バリューチェーン排出量(スコープ3)への対応は、企業の脱炭素化における最大の課題のひとつと位置づけられています。SBTiは、スコープ3の目標設定と実施の有効性を高めるために複数の方法を検討しており、企業がバリューチェーンにおける目標設定・進捗報告・排出量管理に活用できるよう、より幅広い指標・手法・ツールの導入を視野に入れています。 また、残余排出への対応として、除去(Removal)やバリューチェーンを超えた緩和(Beyond Value Chain Mitigation)の活用方針も整理されました。こうした変更は、SBTiが企業に対して「ネットゼロの実現を宣言するだけでなく、その過程を測定し、報告し、改善し続けること」を求めている姿勢を明確に示しています。 申請・検証プロセスの変更   2024年末に導入された「SBTiサービス検証ポータル」により、申請および検証の手続きは段階的にオンライン化が進められています。導入当初から、コミットメントやSBT申請の前段階として企業登録手続きとSBTi側の承認が必要となり、従来のコミットメントレターは廃止。ポータル内から直接コミットメントを提出する形式へと変更されました。 さらに、2025年6月には従来のExcelやWord形式の申請フォームが廃止され、同年9月には、これまでEメールで行われていた検証時のSBTiとのやり取りもポータル内で実施されるようになるなど、SBT申請に関する入力およびコミュニケーションの大部分がポータル内で完結する仕組みへと移行しています。  これらの変更により、SBT申請から検証開始までの待機期間は、かつて4〜6か月を要していたものが約1か月へと大幅に短縮されました。さらに、検証自体も提示されたスケジュール通り30営業日以内に完了するケースが増加しています。  一方、従来はSBTi公式サイトから申請フォームをダウンロードし、事前に質問項目などの内容を確認することができましたが、現在は申請に必要な質問項目がポータル内でのみ閲覧可能となっています。 また、GHGインベントリを中心に申請内容の詳細化が進んでいることから、企業側の準備工数や入力負担は以前より増加しているのが実情です。 SBT取得の時期を明確に定めている企業ほど、最新の仕組みを正確に理解し、信頼できるデータと根拠に基づいて計画的に準備を進めることが重要です。 検証料金の改定と企業への影響  2026年1月5日より、SBTiの検証料金体系が大幅に改定されます。 従来の「2段階(通常ティア・プレミアムティア)」から「4段階(ティア 1~4)」へと再編され、申請企業の規模や売上に応じてよりきめ細かい料金設定となります。 この改定は、SBTiサービスが提供するすべての検証サービス(短期目標・ネットゼロ目標・セクター別目標など)に適用されます。  新料金体系における申請企業の売上区分は、ティア1:年間売上1 billionユーロ未満、ティア2:年間売上1〜10 billionユーロ、ティア3:年間売上10〜30 billionユーロ、ティア4:年間売上30 billionユーロ超と定義されています。  新料金表では、すべてのティアで価格が引き上げられており、とりわけ大規模企業に該当するティアほどコストインパクトが大きくなります。 特に直近で申請を予定している企業は、年内申請か、あるいは追加予算の確保かについて、早期に判断することをおすすめします。 5年ごとレビューの明確化とステータス分類の拡充  すでに要件として定められていた5年ごとの目標レビューについて、2025年7月に公表された新ガイダンスにより、その期限と手順が明確化されました。 これにより、SBT認定企業は、認定後も定期的に自社の目標が最新のSBTi基準および科学的知見に適合しているかを確認し、その結果をSBTiサービス検証ポータル内で提出することが求められます。  レビューの「トリガー日」は、各目標の検証(公表)日から5年後の月末と定められています。企業はこのトリガー日を起点として、まず6か月以内にレビュー結果をSBTiサービス検証ポータル内で提出しなければなりません。そのレビュー結果により、既存の目標が最新のSBTi基準に適合していないと判断された場合は、トリガー日から12か月以内に目標の更新申請(再検証)を行う必要があります。  さらにSBTiは、企業の気候変動対応状況をより明確に可視化するため、SBTi公式ホームページのダッシュボード上での新たなステータス分類体系を導入しました。 これにより、企業のステータスは「Active(有効)」「Updated(更新済)」「Expired(期限切れ)」「Withdrawn(撤回)」などに細分化され、投資家やステークホルダーが企業の取り組み状況をより的確に把握できるようになります。5年の必須レビュー期限を超過した場合、企業のSBTステータスは「Previous Targets」として表示されることになります。  こうした動きは、SBTiが「認定を取得して終わり」ではなく、継続的なレビューと透明性の確保を重視する方向へ進化していることを示しています。 SBTiの動向が企業経営に与える影響 CDPスコアとSBT認定の関係性  SBT認定は、企業の外部評価にも直接的な影響を与えます。2025年版CDPコーポレート完全版質問書のスコアリングにおいては、スコアリングカテゴリのうち「目標」カテゴリが全体スコアの14%という高いウェイトを持ち、多くのセクターでSBT認定の有無がリーダーシップレベルの評価に反映されます。 なお、あくまでも従来のCDPコーポレート完全版質問書での採点基準という前提ではありますが、SBT認定取得前の段階であっても、SBT取得のコミットメントを表明している場合や、SBTiへの申請済で検証中のステータスである場合には加点要素となります。そのため、例年CDPの報告対象年度内にこれらのステータス取得を目指す企業も少なくありません。  また、2025年CDPコーポレート完全版質問書の各企業へのスコアリリース日は12月10日と発表されています。 当社ではスコア通知後の失点要因の分析や改善施策の立案支援も行っており、次年度に向けたスコア向上を目指す企業に対して、実践的かつ効果的なサポートを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。 世界的な広がりと投資家の注目    SBTiは2025年初め、ついに参加企業1万社を突破しました。その時価総額は世界全体の41%に達し、SBTiはいまや“企業の信頼指標”として国際的に確立された存在となっています。 投資家やサプライチェーン上の主要取引先は、SBT認定の有無をリスク判断の重要な基準としており、実際にここ2〜3年は「お客様や投資家からの要請で、〇年〇月までにSBTを取得しなければならない」というご相談が急増しています。SBT認定の取得を求められる企業側も、主要取引先との関係維持においてSBT対応が取引継続の前提条件となるケースが増えています。  一方で、SBTiへの取り組みは、単なる外部要請への対応にとどまりません。SBT認定の取得は、企業価値そのものを高める「攻めの戦略」とも言えます。SBTiの「Trend Tracker 2025」によると、SBT認定またはコミットメント企業は、すでに世界の時価総額の41%、総収益の25%を占めており、気候変動対策を実践する企業群が経済の中核を担いつつあります。 ここで注目すべきは、収益比よりも時価総額比が高い点であり、市場がSBT認定取得企業を「持続的成長やリスク管理に優れた企業」として評価していることを示しています。すなわち、SBT認定取得の取り組みは、気候対応という枠を超え、企業の将来価値・投資家からの信頼・ブランド力の向上につながる戦略的行動です。  日本企業にとってもこの潮流は避けられず、もはや気候変動対策は「社会的責任」ではなく「経営戦略そのもの」として位置づける時代に入っています。   企業の状況別に見る「今取るべき一手」 (1)新規でSBT短期目標設定を検討している企業 ▶ 取るべき一手:  GHGインベントリ(特にスコープ3を含む)を早期に整備し、現行のSBTi基準(V1.3/V5.3)での認定取得を優先的に検討することを推奨します。 一方で、インベントリがまだ整っていない場合は、SBTiネットゼロ基準v2の公表後に申請するスケジュールも含めて検討するのが現実的です。 背景と詳細:  SBTiは、新規でSBT短期目標設定を検討する企業に対し、現行SBTi基準での早期認定取得を推奨しています。公式サイトでは「2025年および2026年に新たに短期目標を設定する企業は、現行のSBTiネットゼロ基準V1.3および短期基準V5.3を用いて申請可能」と明記されています。 なお、目標年については、2025年9月のV5.3更新で、「目標年は申請から5〜10年先」とされていたところに、「目標年は2030年を推奨」との追記が行われました。 ただし、冒頭でも述べたように、SBT申請の前提としてスコープ3を含むGHGインベントリが不可欠であるため、現状で未整備の場合は次期v2基準のリリース後を見据えた準備計画を立てる選択肢もあります。   (2)SBT短期目標認定取得済でSBTネットゼロ目標の追加を検討中の企業 ▶ 取るべき一手:  SBTiが予定している、既存認定企業向けの移行手続きに関する詳細のリリースを待ちながら、社内でネットゼロ目標に向けた方針の整理やデータ基盤の整備を進めることも、一つの選択肢と考えられます。 背景と詳細:  SBTiは、2025年11月6日に公開したネットゼロ基準v2に関する第2回コンサルテーションの記事の中で、既存の認定企業に対する移行手続きの詳細については、適切な時期に移行ガイダンスを公表するとしています。したがって現時点では、社内でネットゼロ目標設定に向けた合意形成やデータ準備を進めつつ、正式なガイダンスを待って対応方針を検討するのが妥当です。 前段でも触れたとおり、現行のSBTiネットゼロ基準と、協議中のSBTiネットゼロ基準v2(ドラフト)では、要求される要件が大きく異なる見込みです。そのため、早期にSBTネットゼロ目標の認定取得を目指す場合は、現行のSBTiネットゼロ基準のうちに申請を完了しておくほうが、手続きや要件の面で比較的スムーズに進められる可能性があります。 一方で、SBTiネットゼロ基準改定後の新ルール下での対応を見据える企業においては、最新のSBTiネットゼロ基準への適合を見据え、GHG排出データやサプライチェーン情報の整備など、基礎データの更新および社内準備に早期に着手しておくことが望まれます。 なお、SBTiの公式情報によれば、既存の短期目標は2030年、または目標期間の終了時点まで有効とされています。   (3)まもなく認定から5年経過・アップデート申請が必要な企業 ▶ 取るべき一手:  自社のSBT認定時期を確認し、2026年前後に必須レビューの時期を迎える場合(=2021年前後に認定を取得した企業)は、早めに最新のSBTi基準の確認とGHGインベントリの更新を開始することを推奨します。特に、セクター別ガイダンスの対象企業は、追加算定や新たな目標設定が求められる可能性があります。 背景と詳細:  2025年7月に公表されたガイダンスにより、SBT認定企業には5年ごとの必須レビュー手続きが適用開始されます。対象となるのは、おおむね2021年以降に短期目標を設定した企業で、早い場合には2026年前後に初回レビューの時期を迎える見込みです。 レビューでは、セクター別ガイダンス(例:FLAG、ビルディングセクターなど)の要件確認が求められる場合があり、必要に応じて追加算定や新たな目標設定が発生します。そのため、レビュー前に最新のSBTi基準および自社インベントリを再確認し、データの更新・整備を進めておくことが望ましいといえます。 なお、レビューの結果、既存目標が最新のSBTi基準に適合していると判断された場合には、アップデート申請は不要です。   最新動向を踏まえたウェイストボックスの支援体制 豊富な支援実績とSBTi認定エキスパートによる確かな専門性  当社では、2020年以降、SBTiへの申請準備中の企業を含め、60件を超えるSBT申請支援を行っており、そのうち50件以上がすでにSBT認定を取得しています。支援企業のセクターは多岐にわたり、各セクターにおける実務課題を熟知しています。 当社では、SBT申請支援を途切れることなく継続的に承っており、最新のSBTi動向をリアルタイムでキャッチアップできる体制を維持しています。 さらに2025年9月、SBTiは科学的根拠に基づく目標設定の認定エキスパート登録制度を正式に開始しました。この制度は、SBTiのトレーニングおよび評価プログラムを通じて、SBTiの基準・手順・最新ガイダンスに関する高度な専門知識を公式に認定するものです。SBTiによれば、この制度の目的は「企業が信頼できる専門的サポートを受けながら、より高い精度でSBT目標を策定・実施できるようにすること」とされています。 当社には、このSBTi認定エキスパートが在籍しており、SBTiの最新基準に基づく目標設定支援、申請プロセスの最適化、検証対応時のアドバイスなどを、公式認定に裏打ちされた専門性と実績をもって提供しています。SBTi基準が高度化・複雑化する中で、SBTi認定エキスパートの存在は、企業が確実かつ効率的にSBT目標を達成するための心強いパートナーとなります。   まとめ  SBT認定の取得は、企業にとってひとつの大きなチャレンジです。申請から認定に至るまでのプロセスは決して容易ではなく、相応の時間と労力を要します。 しかし、私たちはその先にこそ本質的な価値があると考えています。SBT認定の取得はゴールではなく、脱炭素の道のりにおける本格的な削減活動の第一歩です。 毎年のGHG算定、削減活動、目標に対する進捗確認、そして情報開示の積み重ねを通じて、企業は自社の取り組みを可視化し、社会からの信頼を高めていくことができます。当社は、そうした企業の皆さまの歩みを専門的知見と継続的な伴走支援によって支え続けています。 SBT認定の取得から、その先の削減活動や情報開示に至るまで、脱炭素経営の確かな道筋をともに描いていけることに、私たちはこの上ない喜びと使命感を感じています。 無料オンライン相談のご案内   現在、当社ではメルマガ読者の皆さま限定で、30分間の無料オンライン相談を実施しています。SBTに関するさまざまなご相談──たとえば「いつ申請すべきか」「最新基準との整合性」など──について、個別にアドバイスいたします。 SBTの基準やルールが複雑化する今こそ、専門家とともに確実な一歩を踏み出す時です。 ぜひお気軽に、ウェイストボックスまでお問い合わせください。 出典 https://sciencebasedtargets.org/developing-the-net-zero-standard https://files.sciencebasedtargets.org/production/files/SBTi-criteria.pdf https://sciencebasedtargets.org/blog/whats-new-minor-updates-to-enhance-usability-across-sbti-target-setting-resources https://docs.sbtiservices.com/resources/TargetValidationServicesOfferingsV6.pdf?v=6.1 https://sciencebasedtargets.org/faqs#3118310 https://sciencebasedtargets.org/blog/forging-the-next-chapter-sbti-releases-new-guidance-for-five-year-target-reviews-and-expanded-status-categories https://sciencebasedtargets.org/reports/sbti-trend-tracker-2025 https://sbtiservices.com/services/certification Key resources - Science Based Targets Initiative https://www.cdp.net/ja/disclosure-2025 https://www.cdp.net/ja/disclose/how-to-disclose (執筆者:小島)   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・SBT目標設定・気候移行計画策定 ・アドバイザリーサービス ・CDP質問書、TCFD・TNFD開示支援|株式会社ウェイストボックス

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小売電力事業者の排出係数における経年変動と政策影響の関連性について

 電気を使用する事業者にとって、小売電力事業者のCO₂排出係数は、SCOPE2算定において根幹となる指標です。特にマーケット基準の算定に使用する「(旧)調整後排出係数」(※1)の動きは、将来の排出量の推計やCO2フリーメニュー化・再エネ導入・再エネ証書購入等の削減策を検討していくにあたっての現状分析の点でも、特に重要になってきます。  ところで、今年度に入って、首都圏のお客様から「2022年度の調整後排出係数だけ大きく低下しているが、なぜ?」という質問をよく受けました。実は排出係数は、小売電気事業者が調達する電源構成はもちろん温暖化対策やエネルギーの政策や制度設計に関連した証書およびクレジット購入等によって、一時的に大きく揺れ動くことがあります。今回は過去に起きた事例を2つ、紹介します。  (※1)2024年度実績の排出量算定に使用する2023年度排出係数実績からは「基礎排出係数」が相当します。以下、(旧)と付く排出係数は2022年度実績までの基準によるものとします。 1.経年の排出係数における2つの揺らぎ  まずは、いわゆる物理係数ともいわれる「(旧)基礎排出係数」の推移を見てください。ここでは、旧一般電気事業者のうち、規模の大きな東京電力、関西電力、中部電力を代表的に取り上げました。2011年の東日本大震災による原子力発電所の停止に起因した係数の上昇はあるものの、基本的には再エネの導入拡大や火力発電所の燃料転換(石炭⇒LNG)および発電効率の向上、関西電力については原子力発電所の再稼働等により、全体的な傾向としては低下傾向にあります。一方、調整後排出係数は2012年度単年で大きく低下する事例が見られ、また、2020~2022年度で揺らいだりしています。   (注)基礎排出係数は、2015年度までは「実排出係数」と呼ばれていた。2023年度からは「未調整排出係数」が後継となる。   東京電力は2016年度から「東京エナジーパートナー」、中部電力は2020年度から「中部電力ミライズ」に小売部門が分社化されている。 2.高度化法第一フェーズ対応による影響  2020~2022年度で揺らぎは、「エネルギー供給構造高度化法」(以下、高度化法)への対応に起因します。高度化法は、日本の脱炭素・エネルギー政策の中核的な制度であり、対象となる小売電気事業者に対して「2030年度に販売する電気の非化石電源比率を44%以上とする」(※2)という目標の達成を義務付けています。その高度化法の達成策として「非化石証書取引市場」が設計・運用され、非化石電源の電気を多く確保できる小売電気事業者からあまり確保できない小売電気事業者へ融通する仕組みとして機能しています。  高度化法では段階的に中間目標が設定され、第一フェーズは2020~2022年度とされました。この期間の非化石電源比率の「平均値」による達成を認めた制度設計だったので、小売電気事業者は期間内での調達計画や証書購入の時期を柔軟に選択できました(※3)。こうした制度により、各社は市場動向や必要な非化石証書量を見極めながら、戦略的に調達時期や量を調整しました。一部の事業者は早期に安全圏を確保すべく前倒しで購入したり、最終年度(2022年度)に駆け込み的に大量購入したりすることで、各社で調整後排出係数の年度推移に差異が生じました。その結果、例えば「駆け込み型」の場合、東京電力に見られるように2022年度に一時的に大きく低下する形になりました(※4)。  (※2)この44%という数値は、2021年に策定された第6次エネルギー基本計画で示された、2030年の電源構成目標(原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%)を加算したもので、政策的な整合性が保たれています。  (※3)2023年度からは「単年度評価方式」に変わり、このような揺らぎは原則起きなくなりました。  (※4)関西電力は逆に調整後排出係数が高くなりましたが、多くの原子力が稼働して非化石比率に余裕があることから非化石証書の出し手となったことが要因とみられます。 3.京都議定書第一約束期間による影響  次に、2012年度の一時的減少は、京都議定書第1約束期間(2008~2012年度)の最終年という政策的な誘因がありました。当時、日本は国際的に「1990年比で温室効果ガス排出量を(第一約束期間平均で)6%削減」という義務を負い、それに応じるような形で、電気事業連合会は業界全体として「2008~2012年度平均で1990年比20%低減」という自主目標(排出原単位を約0.34kg-CO₂/kWh)を掲げていました。この削減目標はいずれも5年間の平均値で達成すればよい制度設計だったため、最終年度に未達分を一気に埋め合わせる駆け込み需要が見られました。 駆け込みが加速した主な要因としては、  ・CDMやJIを通じたクレジット創出がプロジェクト完了時期に集中しやすく、2012年度に多数のクレジットが市場に流通した   こと  ・AAU(国別排出量割当量)を含むクレジット価格が2009年以降の需給のだぶつきで急落し、特に2012年には1トン当たり     数十円台まで下がったこと が挙げられます。東日本大震災後の原子力発電停止の影響で火力依存が高まり、最終的にはクレジット購入に頼らざるを得ないという状況もあったのですが、こうした背景のもと、東京電力や中部電力のように、電力会社によっては最終年度(2012年度)にクレジットを大量調達した結果、調整後排出係数が大幅に低下しました。 4.まとめ  排出係数は単なる物理的・経済的な電源構成だけでなく、「政策設計」および「証書・クレジット市場の一斉調達」で急激に変動します。特に「期間平均達成」と「評価最終年(駆け込み等)」の組み合わせでは経年データに特異な跳ねをもたらします。SCOPE2で経年比較および今後の削減ロードカーブを描くために排出係数値を見込む場合においても、過去データの裏にどんな政策設計等が動いているか、今後どのようなものが見込まれるかは、心に留めておく必要があります。  当社ではそのような政策動向についてもウォッチしています。疑問な点がありましたら、是非お声をかけてください。 (執筆者:平下) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・組織の排出量把握・情報開示支援事業

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自然関連情報開示どこから始める?

 気候変動を実感した暑い夏もようやく終わりが見えてきました。CDPに回答された企業の皆様は無事に提出を終えられたでしょうか。近年、CDP質問書に依存・インパクト・リスク・機会のトレードオフといったTNFDに関連する設問が追加され、また、上場企業を中心にTNFDに基づいた開示事例も増えてきました。自然関連情報開示は、すべての企業にとって戦略的に不可欠となりつつあります。ただ、最初の一歩をどう始めればよいか迷われている企業も少なくありません。    本コラムでは、①自然関連情報開示が求められる背景、②気候関連情報開示との比較、③自然関連情報開示を始めるための手順とツール、という流れで整理します。 ①自然関連情報開示が求められる背景  世界的に新たなキーワードになっている「ネイチャーポジティブ」は、「2030年までに生物多様性の喪失を止め反転させる行動をとり、2050年までに完全な回復を目指す」という世界的な目標です。 2023年9月18日、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Nature-Related Financial Disclosures)最終提言v1.0版(以下、TNFD提言)が公開され、自然関連リスクと機会を財務情報と同列に扱う国際的基盤が整いました。さらにISSBやSSBJの基準も気候と自然を統合的に扱う方向が示されています。  国内では2025年7月環境省が発表した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025–2030年)」においても重点施策として、「自然関連情報開示とネイチャーファイナンスの拡大によるネイチャーポジティブ経営の拡大」が掲げられ、企業には自然関連情報開示を通じた企業価値の向上が期待されています。         出典:ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025–2030年) 環境省 を元に編集           https://www.env.go.jp/content/000333089.pdf  実際に、日本企業は世界的にも先行しており、TNFDアダプターとしてTNDF対応を表明した500社を超える企業・団体のうち150社以上が日本企業です。これは、日本では自然からの恩恵を大切にする自然共生の考え方が受け入れやすいことも要因とも言われています。 ② 自然関連情報開示と気候関連情報開示の比較  TCFDとTNFDにはいくつか違いはありますが、ガバナンス・戦略・リスクとインパクト管理・指標と目標という4つの柱に沿って規定される開示項目は概ね共通しています。これは、気候と自然は別々に対応するのではなく「気候と自然は相互関係がある」という前提に基づいた行動を企業に求めているためです。  一方で、自然関連情報開示を考えるうえで、気候分野と比較して特徴的なポイントは「地域性」と「バリューチェーンの上流」だと考えます。 ・地域性:気候変動は気温上昇などのグローバルに共通する課題ですが、自然資本は水や土壌の地理的条件や、その地域の生態系により状況が大きく異なります。地域固有の課題が重視されるため、自然関連情報開示では地域社会や先住民、地域自治体とのかかわりが重要視されます。 ・バリューチェーン上流:自然関連のリスクの多くは、自社工場ではなくバリューチェーンの上流に多く存在しています。農業、林業、鉱業といった原材料段階で生態系に強く依存しているため、原材料の調達地までさかのぼった評価が必要となります。 ③ 開示を始めるための手順とツール  では、実際にどのように自然関連情報開示を始めればよいのでしょうか。  広く活用されているのは、「LEAPアプローチ」という分析手順です。LEAPアプローチとは、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチとして、TNFDが開発し提供しているものです。 スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏み、TNFD情報開示に向けた準備を行います。  では、各フェーズの実施内容を見ていきましょう。  まず、Locateフェーズの分析では、ENCORE等の自然との接点を特定するツールを用いて、自社の事業活動による自然への依存やインパクトを特定します。 ツールの分析結果は業界共通の一般的な内容であるため、自社で分析結果をレビューし、必要に応じて自社の実態に合わせ調整することが重要です。 その結果から自然への依存関係とインパクトが大きな事業活動が行われる場所を特定し、さらに優先地域を特定します。優先地域の特定においては、様々なツールを用いて生態系に繊細なエリアへ該当するか否か、自社にとってマテリアルなリスクや機会があるか等を踏まえて検討します。分析の精度や目的に応じてツールを選択し、複数のツールを組み合わせて活用することが推奨されます。 依存関係・インパクト、優先地域の特定に活用できるツールには以下のようなものがあります。 ・ENCORE:事業セクターやプロセスごとに、自然にどのように依存していて、インパクトを与えているかを特定。 ・IBAT:IUCNレッドリスト、保護地域、生物多様性上重要地域(KBA)などのデータベースから、自社拠点周辺の生物多様性上の重要な地域の確認が可能。 ・Global Forest Watch:森林伐採などの森林変化や生物多様性の完全性を数値化したものがマップ化されており、自社拠点周辺の現状確認に有効。また、先住民族・コミュニティーの土地の位置を把握することができる。 ・WWF Water Risk Filter  WRI Aqueduct:水リスク(物理的リスク、規制リスク、評判リスク)の評価結果がマップ化されている。また現在と将来シナリオ(2030年・2050年)での水リスクも確認でき、自社拠点周辺の現状および将来状況の確認に有効。 ・Water Security Compass:社会や企業が直面する水資源のリスクを用途別・将来予測も含めてマップ上で可視化。水資源への依存度や水不足による自然へのインパクトの把握に有効。WWF Risk FilterとWRI Aqueductがグローバルな水リスクを広く評価するのに対し、Water Security Compassはより日本の地域特性を反映して水リスクを評価できるツールです。 ※ここでは Locate フェーズにおける分析に活用できる機能に限定して取り上げていますが、各ツールには後続の分析・評価フェーズで活用可能な機能も含まれています。  続いてEvaluateフェーズでは優先地域における依存関係とインパクトを特定し、Assessフェーズではそこから生じると考えられる自然関連のリスクと機会を特定します。 各フェーズには定量化に至るまでのステップが示されていますが、初期段階においては必ずしも精緻な定量化は必要ありません。依存やインパクト、リスクや機会のおおまかな規模を把握できるレベルで十分です。なぜなら、依存・インパクトを精緻化するためにはリスク・機会を把握する必要があり、またリスク・機会を精緻化するためにはシナリオ分析を実施する必要があるためです。  したがって初期段階から定量分析を詳細に行うより、各フェーズを行き来し、定量化の対象を明確にしながら段階的に精度を高めていくことが効率的と考えられます。  その後のPrepareフェーズでは、これまでの分析・評価結果を踏まえ対応策について検討します。また進捗状況を測る指標と目標を設定します。TNFD提言では、指標の開示を行うにあたり、TNFDのグローバル中核開示指標およびセクター中核指標を参照すべきとしています。これらはコンプライ・オア・エクスプレインに基づいて報告することが求められています。従って、開示できない指標については、その理由と開示予定時期を説明する必要があります。 そして、ここまでの内容をTNFD開示提言(4つの柱と14の開示推奨事項)に沿って整理し開示します。  以上が、LEAPアプローチに則った実施プロセスの全体像です。 ただ、最初からすべてのステップを完璧に実施する必要はありません。このサイクルを繰り返しながら、また各フェーズ間では行き来しながら段階的に精度を高めていくことが適切であると言えます。社内の状況や今回のLEAP分析の目的に応じた取り組み方が検討できると望ましいです。 本アプローチを通じて、自社の事業活動における自然資本への依存・インパクト・リスク・機会を段階的に把握し、分析・評価結果を踏まえた具体的な対応策や戦略策定へとつなげていくことが可能となります。 LEAPアプローチ実施プロセスのイメージ図 TNFD提言を参考に弊社作成 まとめ    ここで紹介したように、分析初期段階ではリスクと機会の種類や規模感を把握し、全体像を捉えることが中心となります。しかし、取り組みを進める過程では、それらを自社の事業活動と結びつけ、ビジネス戦略の一部として位置づけていくことが重要です。情報開示を単なる作業として遂行するのではなく、企業価値を高めるための経営ツールとして積極的に活用することが望まれます。  当社では、自然関連情報開示のサポートもしております。ご関心をお持ちの際は、ぜひお気軽にご相談ください。 (執筆者:山森、平田) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応 開示支援

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カーボンクレジット 最新主要トピックス

 気候変動対策が進展し、各国の規制や企業の理解が成熟する中、カーボンクレジット市場にも大きな変化が生じています。特に国内ではJ-クレジットの価格が急騰し、当社のクレジット調達にも影響が及んでいます。加えて、これまで比較的厳格なスタンスを維持してきた欧州においても、市場動向に応じた柔軟な対応が見られるようになりました。  本コラムでは、こうした国内外の最新動向を整理し、カーボンクレジットに関する主要トピックスをご紹介いたします。 EUの政策動向  欧州委員会は2040年に向けた法的拘束力のある気候目標の提案を予定しています。当初は1990年比で正味排出量を90%削減する計画でしたが、コスト負担を考慮し「1990年の正味排出量の3%相当を2040年目標にカウントする形で、国際クレジットの限定的利用を検討すべき」との案を提示しました。今後、欧州議会や各加盟国との交渉を経て修正の可能性がありますが、可決されれば各国のクレジット活用にも大きな影響を与えると考えられます。 IMMC.COM%282025%29524%20final.ENG.xhtml.1_EN_ACT_part1_v9.docx 日本の動向(二国間クレジット制度:JCM)  2024年末のCOP29でパリ協定第6条の運用が採択されたことを受け、日本政府はJCMを活用したプロジェクトの拡大・加速化や「6条実施パートナーシップ」を通じた取り組みの世界展開を表明しました。日本のNDCでは、2030年に1%強(約1,000万t-CO₂)、2035年に17.5%(約1億t-CO₂)、2040年に52.6%(約2億t-CO₂)のJCMクレジット活用を見込んでいます。現時点では、インドネシアでの太陽光発電プロジェクトや、タイの化学工場におけるバイオマスコージェネレーションシステム導入が進行中です。 民間企業もGXリーグ報告などでJCMクレジットを活用可能であり、既存のJ-クレジットと併せて需要が拡大すると予想されます。 2024年度から2026年度までの二国間クレジット制度(JCM)ファシリティ導入のための助成事業を選定(第7回) |プレスリリース |環境省 SBT(Science Based Targets)について  現在、SBTはネットゼロ基準の改定を進めており、クレジット活用のルール見直しが議論されています。従来は「残余排出の中和(永久除去)」および「バリューチェーン外削減(BVCM)」に限定されていましたが、改定案では、 ・5年ごとの目標更新時に不足分を除去クレジットで補填する案 ・目標達成を条件に追加認証を認める案 など、企業の取り組み意欲を高める仕組みが検討されています。これらが採用されれば、クレジット活用を積極的に進める企業が増加する可能性があります。 renewable-ei.org/pdfdownload/activities/1_REI_Takase_250514.pdf 最後に  カーボンクレジット市場では過去に詐欺事例も報告されており、信頼性の確保が課題です。こうしたリスクを回避するには、いわゆる質の高いクレジットを利用する必要があります。また、質の高いクレジットを選ぶことで、より効果的な脱炭素技術への投資促進や環境保全活動への貢献が期待できます。  質の高いクレジットを購入するには、IC-VCMなどの認証ラベルを参考に、適切な目利きを身につけることが重要です。当社では、クレジットの創出支援から購入・活用まで、幅広くサポートしております。カーボンクレジットにご関心をお持ちの際は、ぜひお気軽にご相談ください。   (執筆者:野村)         【ウェイストボックスの関連サービス】 ・カーボンクレジット創出事業 ・カーボンニュートラル・BVCM ・アドバイザリーサービス

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SSBJ基準が公開 TCFD対応から求められるアップデートとは

 2025年3月に、日本版サステナビリティ情報開示基準である、SSBJ基準が公開されました。24年3月に公開された草案から、パブリックコメントや審議を踏まえた改訂を反映させた内容になります。 サステナビリティ担当の方におかれましては、日々データの社内連携や各媒体からの開示要請などの対応に追われ、多忙な日々を送られているケースをよく見かけます。  弊社によくあるお問い合わせとしては、以下のようなものがあります。  ―「TCFDの開示を行ったものの、アップデートができていない。SSBJの開示基準を見据えたアップデートを行いたい」  ―「CDP質問書に合わせて開示情報を整理したが、統合報告書やサステナビリティレポートなどの媒体に合わせて、どのように整理していけばいいか迷っている」  今回のコラムでは、25年3月に公開されたSSBJの確定基準と現在審議中の内容から、プライム上場企業やそれに準ずる企業規模に属するサステナビリティ・IR担当者の方が、SSBJ基準に合わせた気候関連情報をアップデートする際に疑問に感じるであろう点を、FAQ形式で回答します。 SSBJ対応実務におけるよくある質問 Q. いつから適用義務になるのですか?当社は時価総額が1兆円未満です。 A: あくまで2025年5月時点の審議中の内容では、時価総額3兆円以上:2027年3月期、1兆円以上:2028年3月期から、5000億円以上:2029年3月期の財務報告資料から順に記載義務化が予定されています。(下記スケジュール案を参照) よって、貴社が時価総額1兆円未満であれば最短でも2029年3月期からの適用が見込まれます。とはいえ、投資家からの信頼を得る観点では、早期の任意適用も検討する価値があります。 なお、第三者検証については、義務適用年から1年遅れで求められる方針で、審議が進んでいます。   「第5回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキンググループ資料」を弊社にて加工 Q: TCFD対応だけでは不十分なのですか?SSBJ気候基準ではどのような追加対応が求められますか。 A: SSBJの気候基準について、基本的な枠組み(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標)はTCFD提言と共通ですが、内容はより詳細に定義されており、各要件に沿った開示を整備していくことが求められるでしょう。 詳しくは、次の「気候関連情報の詳細に関するよくある質問」にて解説します。弊社では、各開示要件と依頼企業様の現状開示を比較し、あるべき形とのギャップ分析を行うことで、開示のアップデートを支援しています。 気候関連情報の詳細に関するよくある質問 Q:「気候関連リスク・機会が財務に与える影響」を開示するように求められていますが、金額を特に示さず、定性的な開示でもよいでしょうか?(気候基準 第22項) A: 可能ですが、できる範囲で定量的な情報を開示することが求められます。 定量的開示が免除されるのは、①影響をリスクごとに区分して測定できない場合 や ②見積もりの不確実性が極めて高い場合です。その場合、「資産や事業活動の規模(大・中・小など)」など、影響の規模感を相対的に説明することでも基準を満たすとされています。 ただし、そのよう免除を適用した場合でも、代わりに定性的な説明を十分行い、定量開示が困難な理由を開示する必要があります。 参考:気候基準第25-27項、BC185,186 Q: 気候変動シナリオ分析によるレジリエンス評価とは、どのような評価を指しますか?(気候基準第30項) A: 気候レジリエンスとは、「気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力」と定義されています。(気候基準第5項) SSBJ気候基準では、自社の気候レジリエンスに関する情報を開示するにあたり、シナリオ分析に基づく評価を行うことが求められています。具体的には、将来の気候変動シナリオ(例えば産業革命以前比1.5℃未満シナリオや4℃シナリオ等)を用いて、規制強化(例:炭素税)や物理的リスク(例:洪水・干ばつのリスク)が、自社の事業に与える影響を分析します。そうした事業環境の変化の中で、リスクを低減し、機会を増大できるような、ビジネスモデルや投資戦略、技術・設備などの資産を有しているかどうかについて、経営的な観点で確認・評価するような作業が想定されます。 なお、シナリオ分析は毎期実施が義務付けられているわけではない一方、レジリエンス評価は毎期見直しを行うことが求められています。  参考:気候基準第30-39項 Q: 「ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響」とは、どのような内容を指していますか?(気候基準第20項) A: 「バリュー・チェーン」とは、報告企業の行う事業活動以外に、原材料調達、加工、物流など、サプライヤーを含む上流での活動や、最終消費者による使用、消費などの下流での活動が該当すると考えられます。 例えば、シナリオ分析やレジリエンス評価において、自社の主力製品の製造に必要不可欠な資源の供給に影響を与えうる気候変動リスクが判明した場合、影響を受ける地域・施設の詳細や影響の程度、取りうる対応策について、開示することが考えられます。 参考:適用基準第4,46項  「2025年3月SSBJハンドブック」ーバリュー・チェーンの範囲の決定 Q:移行計画とはどのような内容を指しますか?削減目標は公表しているのですが、それとはどう違うのですか?(気候基準第28項) A:移行計画は、「温室効果ガス排出の削減などの活動を含む、低炭素経済に向けた移行のための企業の目標、活動又は資源を示した企業の全体的な戦略の一側面」と定義されています。(気候基準第5項)単なる削減目標だけでなく、ガバナンス整備や投資計画等を含めた、目標達成までの計画を具体的に示します。 例えば、自社の脱炭素戦略として、主要な施策(設備投資、再エネ導入、製品ポートフォリオ転換、省エネ施策、カーボンオフセット利用予定など)を説明し、中間マイルストンや進捗指標(KPI)があれば併せて記載します。 参考:気候基準第28,29項 気候移行計画に求められる要件については、CDP、TCFDといったさまざまな機関が定義を公共しています。例えばCDPでは、以下の8つの要件が必要とされています。 出典:CDP Japan公開資料を弊社にて加工 Q: 「スコープ3の開示は一部でよい」という話を聞きましたが、本当でしょうか? A: スコープ3の算定・開示対象は、原則としてバリューチェーン全体を含み、すべてのカテゴリを検討しなければいけません。「算定のコストがかかる」、「データが取得できない」という理由で恣意的に一部のカテゴリを選択することはできません。 SSBJ気候基準では、当期における温室効果ガス排出量をスコープ1、スコープ2、スコープ3に区分してそれぞれ開示することが求められています。 参考:気候基準第47項 Q:当社は温対法での算定期間と、決算期間がずれています。決算期間に合わせて集計し直す必要がありますか? A: サステナビリティ関連財務開示と関連する財務諸表の情報との間のつながりを重視すべきという考えから、自社の排出量に関しては、決算期間に合わせたGHG排出量の集計・開示をすべきとされています。 参考:気候基準第BC124 Q:有報開示の6月までに、前年度のScope1,2,3算定に必要なすべてのデータを揃えるのが難しいと考えています。その場合は、どのような措置を行えばよいですか? A: 2025年5月時点で行われている議論では、有報開示時点で、「見積もり」であった数値に関しては、その後判明した確定値と異なっていた場合でも、「訂正報告書」の提出は必要ない、とされています。そのため、一旦は見積もり数値を用いて提出し、以降に「見積もり」数値が変更された場合は、次の報告書から記載を更新すればよいとされています。 出典:第6回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ資料より抜粋 (執筆者:馬場)   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応 開示支援 ・アドバイザリーサービス

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SBTネットゼロ基準 v2の概要について

 SBTiは2025年3月18日にネットゼロ基準v2のドラフト(Corporate Net-Zero Standard Version 2.0 Public Consultation)を公表しました。 本ドラフトは、2021年に公表されたネットゼロ基準(Corporate Net-Zero Standard)から約4年の期間を経て初の大規模改定となるものです。  今回の改定内容は非常に多岐にわたりますが、本コラムでは、評価プロセス及びScope3とエンゲージメントに関連した内容にフォーカスし、その更新の趣旨を紹介するとともに、更新に至った背景などについても触れていきたいと思います。 評価プロセスの変更  SBTの従来のプロセスでは、企業はSBTiに目標を提出し、審査を経て承認を受けます。SBTiによる目標承認後は、各企業が進捗を自己開示するとともに、少なくとも5年以内に自己評価を行い、次のサイクルに向けて目標のアップデートを進めます。  今回の改定案では、従来のコミットメントレターよりも厳格なエントリーチェックに始まり、企業は目標期間終了時12か月以内に進捗状況をSBTiへ報告し、評価を受け、次のサイクルに向けて進捗状況を反映させた目標に対して承認を受けます。つまり、目標設定のみならず、その後の進捗管理から目標期間終了後の評価、次の目標へのアップデートに至る一連のプロセスに対しSBTiが関与し明確な評価や審査がなされる点が大きなポイントといえます。  SBTiは、ネットゼロ達成に向けて残された時間は少ないことを指摘しています。ドラフト案に『From ambition to progress』と記載されている通り、目標設定するだけはなく目標達成に向けて対応し、進捗状況等の説明責任を重要視しており、目標設定するだけではなく目標達成に向けて動いていることを評価する枠組みに全体的に更新されています。 図:Detailed explanatory guide to the consultation draft 目標の枠組み  目標設定の枠組みとして、基準年を従来の2015年以降で選択可能という状況から、検証時から3年以内で選択することが必須になりました。 これはSBTiが削減に必要な排出量を恣意的に最小化することを懸念した結果です。 Scope3  従来のScope3目標設定の枠組みは、総量削減目標、原単位削減目標またはサプライヤーエンゲージメント目標の中から選択する形でした。今回のドラフト案ではまずサプライヤーエンゲージメント目標と削減目標の2つを設定する必要があります。そして削減目標として総量削減目標、原単位削減目標またはアライメント目標の中から選択する形になりました。ただし、削減目標に加えてサプライヤーエンゲージメント目標も設定する必要があるのかどうかはSBTiで検討中の内容になります。 また、削減目標におけるScope3目標のカバー率として従来は短期目標が67%、長期目標は90%と設定されていましたが、今回のドラフト案ではScope3の中で排出量が大きいと想定される活動、また5%を超える重要とみなされる排出を優先的に目標バウンダリに含めるプロセスへと更新しています。これはバリューチェーンのなかで最も排出量が多く関連性の高い活動、Tier1サプライヤーに対して優先的に行動するように促すことで、従来の算定では重要な排出を除外されてしまう可能性があるという課題にも対応しています。 SBTiの調査によれば、上記のプロセスで集約した場合、排出量の約90%をカバーできるとしています。 アライメント目標  前述したように、Scope3の削減目標の設定方法として、総量目標と原単位目標に加えて、アライメント目標が追加されました。 アライメントの指標とは、ネットゼロ目標に適合した状態を指す指標であり、その指標自体はドラフト案に記載があり、下記は一部抜粋した資料になります。 表:Consultation Draft  アライメント目標とは、上記の指標を用いてネットゼロにアライメントされたサプライヤーや排出活動に割り当てられた調達の割合や、ネットゼロにアライメントされた製品やサービスから得られた収益の割合などを目標設定することになります。 SBTiは企業がTier1サプライヤーに対して影響力を及ぼして排出を削減することを重要視しており、今回のドラフト案では総量目標や原単位目標のみではなく、非排出の指標を用いて様々なアプローチを可能にするために提案されているアライメント目標はSBTiのなかでも明確に重要視されています。  従来の総量目標では企業が成長することに伴い、仕入れ額や売り上げは比例して増加するため、排出量が増加することや、2次データへ依存していることが課題の一つでした。増加に対応するためにサプライヤーエンゲージメントを行い1次データへ置き換えることで原単位側を削減し、排出量を削減する動きが注目されています。しかし、1次データの信頼度や企業の規模により1次データ化が難しい場合もあります。今回のアライメント目標ではそんな課題へ対応できるとSBTiは説明しています。例えばある企業がネットゼロベンチマークに沿った(アライメントされた)製品の売り上げを伸ばして企業として成長することはアライメント目標の枠組みでは進捗していることになります。また、例えば高排出活動に対してベンチマーク指標を用いた調達支出割合を目標とすることで排出量の絶対値への依存の脱却も望めます。  ただし、基準年のパフォーマンス評価としては排出、非排出両方が現時点では報告対象とされていますので、非排出を重視するものの、企業が実際どのように基準年、目標年のパフォーマンスを作成、公表し、どのように目標設定するのかは今後も議論される部分であると考えられます。 スケジュール  今回のドラフト案がいつから適用されるかは以下の通りです。短期目標を設定している企業は2030年、または目標期間終了の早い方、2025年/2026年に設定する企業は5年後、または2030年末の早い方、2027年以降に取得する場合は新基準を適用する必要があります。 図:Detailed explanatory guide to the consultation draft  本ドラフト案は6月1日までコンサルテーションを実施しコメントを受け付けています。 その後2回目のコンサルテーションを経て最終化される予定です。 まとめ  ドラフト案における変更点はまだまだありますが、本コラムでは特にScope3の目標設定について述べてきました。 全体像の印象として従来からより厳格になっている印象を受けました。それは前述した『From ambition to progress』というフェーズに移行しているからだと考えられます。野心的な目標を設定して終わりではなく、着実に削減を進めていくこと、残された時間は少ないというメッセージを強く感じました。  現状のScope3の評価には課題があり、排出量の絶対値からの脱却や2次データへの依存という課題に対応するためにアライメント目標を設定できるようにするといった柔軟性を高めた点からは、SBTiも企業が様々な課題に直面していることを把握しており、課題を解決しながら評価できるような枠組みへ試行錯誤して企業に寄り添いながら前進していることを感じられます。  すでに短期目標を設定している企業も、これから設定を考えている企業もネットゼロ達成に向けて前進できるよう弊社でもSBT認証取得支援、サプライヤーエンゲージメントの支援も実施しておりますのでお気軽にお問い合わせください。 (執筆者:山本(航))   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・SBT目標設定・気候移行計画策定 ・サプライヤーエンゲージメント・排出削減 ・アドバイザリーサービス

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再生可能エネルギー電力の調達方法について(後編)

 今回は、昨年12月にご紹介した再生可能エネルギーの調達方法についての後編をお届けします。 再生可能エネルギーの調達タイプ  RE100で認められており、CDPでもスコアリングの対象となる調達方法は、日本では4つのタイプに大別されます。    ①自家発電(自社で設備を保有して発電)  ②直接調達(発電事業者と自社の契約)―フィジカルPPA、バーチャルPPA  ③電力サプライヤーとの契約-プロジェクト特定契約、小売供給契約  ④電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達  前編では➀および②の調達タイプをご紹介しました。 これらは、追加性のある、つまり発電設備を設置する調達方法(詳細は前編をご確認ください)であるため、調達開始までに時間を要するというものでした。 今回は、そのつなぎ役として直ちに始められる調達方法も含めて、まとめています。 ③-1 電力サプライヤーとの契約-プロジェクト特定契約  小売電気事業者が需要家に代わって、特定の発電設備から電力を調達する方法であり、小売電気事業者と需要家(必要に応じて、発電事業者を含めた3社契約)で長期の契約を締結することになります。  日本では小売供給に該当する場合、小売電気事業者を介する必要があることから、この形態は、前編で紹介したフィジカルPPAの形態になります(詳細は前編をご確認ください)。  国としては、「発電事業者と需要家とが直接小売供給を契約できるようにすべきとの声が出てきており、事業者の声も聞きつつ課題を検討する」ことを、電力・ガス基本政策小委員会に提起しており、将来的には発電事業者と需要家が直接契約する調達方法が実現できるかもしれません。  ※第29回 電力・ガス基本政策小委員会 資料5より当社で加工 ③-2 電力サプライヤーとの契約-小売供給契約  小売電気事業者が提供する再生可能エネルギー特約やカーボンフリー、CO2フリーなどの電力と環境価値をセットで購入する契約メニューを選択する方法です。 小売電気事業者によっては、いろいろな契約メニューが用意されており、地産地消を切口(例えば、○○県の水力や太陽光発電所などの電源から供給)としたメニューやRE100対応のメニューなどがあります。  また、環境価値を付加する電力量や割合(購入電力量に対し、30%など)を選択できる契約メニューを提供している会社もあります。  日本では、小売電気事業者が販売する系統電力の環境価値は、非化石証書に統一することとなっているため、小売供給契約には④-1に記載するいずれかの非化石証書が付加されています。  ここで、小売供給契約を締結する企業に認識していただきたいことは、「⾮化⽯証書の使⽤の有無や種類」と「調達する電源種別」のそれぞれの組み合わせによって、契約内容の表示(訴求内容)が違うということです。  下記に簡略化した表示のイメージを記載しますが、非化石証書では「FIT証書または非FIT(再エネ指定あり)」を使用し、かつ調達する電源種別には「FIT電気または再エネ電源」でなければ、「再エネ」という表示はできません。 その他の場合には、【実質】という表記などが必ず加えられていますので、企業さまで求める価値を考えたうえで、契約メニューを選択することをお勧めします。 出典:電力・ガス取引監視等委員会 第92回 制度設計専⾨会合資料にもとづき当社で加工 ④ 電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達  日本国内の調達方法としては、非化石証書、J-クレジット(再エネ)、グリーン電力証書、I-RECがあります。 ④-1 非化石証書  「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、通称「高度化法」という制度があり、その中で小売電気事業者は、供給する電気のうち「非化石電源(非化石エネルギーを使って発電する方式)」で作られた電気が占める比率(非化石電源比率)を、2030年度に44%以上にするよう求められています。  この「非化石電源比率44%」という調達目標の達成を後押しするための政策のひとつとして、非化石エネルギーで発電された電力のもつ「非化石価値」を電気と分離して市場で取引すること(非化石価値取引市場。その市場で取引するものを非化石証書といいます。)が2018年から開始されました。  その後、再エネ価値に対する需要家ニーズの増大を踏まえ、2021年に非化石価値取引市場を2つの市場に分離、また買い手やトラッキングなど様々な議論を経て、現在は下記のように整理・運用されています。 ※2022年度以降に営業運転を開始した、新設非FIT電源、新設FIP電源、FITからFIPに移行した電源。卒FIT電源  非化石証書の約定量は年々増加しており、需要家のニーズが高まっていることが見て取れる状況にあります。国としては、さらなる非FIT直接取引の対象拡大や有効期限の見直しなどを検討していくことから、需要家が「環境価値の調達方法をより選択し易くなる」仕組みへと向かっています。  また、他の環境価値に比べて、取扱量が多く、価格が安定している反面、購入時期が4回/年、かつ環境価値の利用期限があることから、計画的な購入が必要になります。 ④-2 J-クレジット  J-クレジット制度とは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギー設備の活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度です。 J-クレジットには対象となる活動が方法論として取りまとめられており、その活動(プロジェクト)を実施しなかった場合の想定CO2排出量(ベースライン排出量)とプロジェクト実施後CO2排出量との差である排出削減量が、 「J-クレジット(環境価値)」として認証されます。  ※]-クレジット入札価格:日本取引所グループ  ※その他の種類として、工業プロセスや農業があります。  非化石証書が系統電力の環境価値であるのに対し、J-クレジット(再エネ)は原則として自家消費した電力の環境価値を対象としています。 このため、J-クレジット(再エネ)を創出した企業は、排出削減量はなかったものとして自社の排出量を計算する必要があります。  J-クレジットの特徴としては、非化石証書などと同様に温対法や省エネ法への報告、およびCDP・SBT・RE100において活用できるだけでなく、カーボンオフセットとしても使われています。 また、購入時期に縛りや環境価値の利用期限がないところは非化石証書とは異なり、他社への転売が可能という特徴も他の環境価値とは異なる点です。  ※カーボンオフセットの詳細は、J-クレジット制度をご確認ください。 ④-3 グリーン電力証書  グリーン電力証書は、風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギーによって発電された電力の環境価値を、第三者認証機関の認証を得て証書化したものです。 2001年から始まったグリーン電力証書は、現在、東京都が実施する助成事業「地産地消型再エネ増強プロジェクト」でも活用されています。 電気事業者の系統に供給されている電力と自家消費されている電力の両方の環境価値を証書にすることができるという点が特徴です。   ※参照:一般財団法人日本品質保証機構HP  温対法や省エネ法への報告、およびCDP・SBT・RE100において活用できるだけでなく、購入時期に縛りや環境価値の利用期限がないことから、柔軟に対応できる反面、他社への転売ができないことや認証発行事業者と相対でしか取引できないことから、購入量などの条件により他の環境価値よりも価格が高くなる可能性があります。 ④-4 I-REC  世界約50ヵ国(アジア、南米、アフリカ等)で発行される国際的な再エネ属性証書として、グローバル企業でのニーズが期待されています。 日本では、I-REC発行主体として、(一社)ローカルグッド創成支援機構が指定されており、証書売買および証書償却等のプラットフォームオペレーターをSCSK(株)が担っています。  日本の非化石証書は、電気の環境価値を証明するものであり、第三者に産地価値や特定電源価値を証明することはできないと整理されています。  つまり、トラッキング付き非化石証書には、発電所の所在地・電源種別等は記載されていますが、産地価値・特定電源価値を証明するものではないということです。  一方で、I-RECは、環境価値に加え、産地価値や特定電源価値を証明できる属性証書であり、購入した電力がどの地域のどの発電所でつくされたのかを第三者に証明することが可能です。 また、これまでご紹介した非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットと異なり、温対法に対応できないという欠点もあります。 そういった欠点を補うため、I-RECと非化石証書を組み合わせたサービスの提供も行われています。  (詳細は、当社【お知らせ】をご確認ください。)  ・日本でのI-REC発行について(ローカルグッド創生支援機構)をもとに当社で加工  ・第30回 ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会資料をもとに当社で加工 まとめ  2回にわたって、「再生可能エネルギーの調達方法」をご紹介しましたが、何を優先するのかによって最適な調達方法も異なります。  当社ではCO2排出量の把握や情報開示の支援に合わせて、最適な調達方法のアドバイスや非化石証書の調達なども支援いたしますので、お気軽にお問合せください。 参考資料:自然エネルギー財団 コーポレートPPAの 最新動向(2024年度版) (執筆者:佐藤)   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・サプライヤーエンゲージメント・排出削減 ・カーボンクレジット創出事業 ・アドバイザリーサービス

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再生可能エネルギーの最新動向「RE100から24/7CFEに向けて」

 本コラムでは、再生可能エネルギー(再エネ)や、関連するイニシアティブの最新動向について紹介します。 主要なイニシアティブの動向 「RE100」  RE100(100%再生可能エネルギー調達目標)は、多くのグローバル企業が参加するイニシアティブです。近年では、単に100%の達成を目指すだけでなく、「質の高い再エネ調達」が求められています。技術要件が2022年10月24日に改定され、加盟企業に対して2024年1月以降の電力調達に関して新しい要件の適用が求められています。   【「追加性」を追求】 ・認められる再エネ調達方法は5つのタイプに整理されており、CO2の排出削減によりインパクトがある調達方法の選択が求められています。 特に自家発電や、長期的、直接的、あるいはプロジェクトを特定した契約による新規プロジェクトからの調達ほど高いインパクトと追加性があります。 ・運転開始から15年以内の発電設備から電力・証書を購入することが規定されました。 コーポレートPPAのように新設の発電設備から調達することが難しい場合、小売事業者から再エネメニューの電力を購入、また非化石証書などの再エネ属性証書の活用が考えられますが、これらの調達方法は運転開始から15年以内の発電設備に制限されます。 【「持続可能性」を追求】 ・水力発電およびバイオエネルギーの利用については、持続可能性の要件を満たす場合に限り認められています。 CDPのスコアリング基準もRE100要件に整合しています。コーポレートPPAの活用や発電設備の運転開始年の把握を通じて、追加性の高い電力を調達すると高評価につながります。具体的には以下スコアリング基準が2023年より追加されています。 ・コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)の比率が25%以上で高評価 >オンサイトPPA、フィジカルPPA、バーチャルPPAによる再エネ調達に加え、企業が調達する自然エネルギーのうち、25%以上がPPAであると評価が向上 ・購入対象の発電設備の運転開始年を把握している再エネ比率に応じ高評価 >25%以上、50%以上を把握している場合にその比率に応じて評価が向上 *1 RE_Procurement_Guidebook_JP_2025.pdf P68 新たなイニシアティブの動向「 24/7 カーボンフリー電力(CFE)」  2021年には国連主導の国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」*2が始動しました。世界170以上(2025年3月時点)の企業、エネルギー会社、投資会社・金融機関などの組織が加盟し動きが活発化しています。 「24/7CFE」とは、単に年間100%再エネを達成するのではなく、「24時間365日、1時間単位の電力消費量に合わせて再生可能エネルギーを中心とするCO2排出量ゼロの電力(カーボンフリー電力)を100%供給する」概念です。需要家の設備と同じ送配電網に接続する再エネによる電力をリアルタイムで「同時」に使用することが求められています。日中の太陽光発電の余剰分を蓄電池に貯め電力需要を満たせない夜間の時間に放出することで「24/7CFE」を実現した場合の実践イメージを以下に示します。 *2「24/7 Carbon-Free Energy Procurement in APAC」BloombergNEFの図を弊社にて和訳 日本の主要な再エネ調達方法とのギャップ  RE100、SBTにおいても、需要家は①火力が主電源である通常の電力供給に、小売電気事業者が再エネ電力証書を組み合わせた実質再エネ電力メニューを契約する方法や②需要家の年間の電力使用量と同等の非化石証書等を調達し、名目上再エネ由来の電力を使用しているとみなす方法で再エネ利用を主張することが可能です。しかし、これらは電力消費と再エネの1時間ごとのマッチングができず、電力が実際に消費される送配電網内での再エネ調達でもないため、24/7 CFEの方針には適合しません。 24/7CFE達成に向けた再エネ調達方法「オフサイトPPA(フィジカルPPA)」  達成に向け、先進的な企業事例を参考にしながら、従来の証書に頼る再エネ導入からRE100における「追加性」や24/7 CFEを推進させる「同時性」を考慮した再エネ導入を段階的に検討することが推奨されます。 具体的には、企業が再エネ発電所と直接契約し、送配電網を通じて物理的に電力を受け取る仕組みであるオフサイトPPA(フィジカルPPA)が注目されています。PPAの契約が結ばれることで新しい再エネ発電所の建設や拡張が可能になり、全体の再エネ導入量が増加する「追加性」のある再エネ導入方法であり、発電事業者と企業が協力して「24/7 CFE」を構築することができる方法の一つです。  実際に国内でも、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたオフサイトPPA(フィジカルPPA)を活用し、「24/7 CFE」の実現に向けた取り組みが行われています。例えば、太陽光発電所の発電状況や建物側のエネルギー使用状況に応じて蓄電池の充放電を制御し、再生可能エネルギーをリアルタイムで利用できる割合を高めるための実証実験が進められています。 今後の展望  「24/7CFE」の実現は、多くの企業にとって依然として高いハードルとなっています。日本の再エネ証書には発電日や時間単位の情報が含まれておらず、需要家が時間帯ごとに再エネを利用していることを証明する標準的な手段がありません。そのため当面の対策としては、需要家単位で発電データと電力消費データを時間帯ごとに突き合わせ、24/7カーボンフリー電力を確認するなどの企業のデータ管理能力が問われます。 しかしイニシアティブの動向や2026年に向けたGHG プロトコルのScope 2ガイダンス改定においても「同時性」要件が必要ではないかという意欲的な提案もあったことから、将来的にはRE100に続き、24/7CFEがグローバルな再エネ調達のベストプラクティスとして浸透していく可能性も考えられます。今後も再エネ導入に関する要求事項の厳格化や24/7 CFEの実現に向けたスマートグリッド技術の発展、国内の証書制度の改定等の制度的な進展に着目していきたいと考えます。 ・参考資料  *1 「企業・自治体向け 電力調達ガイドブック 第8版(2025年版)」自然エネルギー財団 ,  RE_Procurement_Guidebook_JP_2025.pdf  *2 「24/7 Carbon Free Energy Compact HP」  24/7 Carbon-Free Energy: Methods, Impact & Benefits  *3「24/7 CFE Procurement in APAC: Pathways for Companies and Countries (2024/11/26) 」  Bloomberg NEF,   BNEF (執筆者:小澤)   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・アドバイザリーサービス ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応 開示支援

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製品カーボンフットプリントあれこれ

 企業が気候変動対応を迫られる中、組織の排出量であるScope1,2,3の開示に加え、製品・サービスあたりの排出量である製品カーボンフットプリントを算定する企業が増えています。しかし、製品カーボンフットプリントと一口に言っても、それらを算定する背景や目的は企業によって大きく異なります。本稿では、バラエティに富む製品カーボンフットプリント算定の実態と、今後の展望について考察します。 カーボンフットプリント算定の実態と課題  製品カーボンフットプリントの算定は、製品やサービスのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を可視化し、効果的な削減策を講じるための基盤となります。一方で、算定において参照する規格やガイドラインは多岐に渡り、また、カーボンフットプリントの算定対象製品、算定範囲、算定目的等も各企業によってさまざまです。そのため、これから算定を考えている人、他社の算定結果を見る側の人、多くの担当者が“正解”がわからず苦慮している実態があります。こうした場合、まず認識を改めなければならないのは、製品カーボンフットプリントの算定においてただ一つの“正解”はないということです。以下に製品カーボンフットプリントに関連する主な規格、ガイドラインを挙げます。   ・ ISO 14040/14044:ライフサイクルアセスメント(LCA)算定の要求事項と指針を示す。 ・ ISO 14067:カーボンフットプリント算定の要求事項と指針を示す。 ・ PCR:Product Category Rules。製品カテゴリ別のLCA算定ルール。EPD(ISO14025に基づく環境ラベル)等、比較を前提とした算定の際に使用される。 ・ Pathfinder Framework:WBCSD主催のPACTが定めるLCA算定とデータ交換のための指針を示す。 ・ 各国の規制に基づく算定ガイダンス: CBAM、電池規則など ・ その他:化学や電子・電子機器等の業界団体によるガイダンス、CFP算定ガイドライン(経済産業省)など  これら規格、ガイドラインにより算定方法(組織境界の設定、カットオフ基準、活動量及び排出原単位の設定方法など)が異なるため、同じ製品であっても算定結果は変わり得ます。従って、算定する側も算定結果を見る側も、どのような規格に基づいて算定するか、あるいは算定されたものであるかを理解する必要があります。また、どの規格、ガイドラインを用いて算定するかについては、算定する目的によって決まることから、算定目的の明確化が重要となります。以下に算定の背景・目的に応じた参照規格の概略図を示します。 今後の製品カーボンフットプリント算定の方向性  これまで、企業の製品カーボンフットプリントの目的は、自社製品の優位性を対外的に示すなど、自主的な算定が主流といえましたが、近年は顧客へのデータ提供のための製品カーボンフットプリント算定が進んでいます。その背景には、顧客が自社のScope3や製品カーボンフットプリントの削減することが目的にあります。また、各国の規制への対応としては、EUバッテリー規則、EU-CBAMに対応するための製品カーボンフットプリント算定も進められています。  また、業種別でみると、特に建設セクターにおいて、LEED認証やEU建設資材規則などの規制やイニシアティを背景に、EPD取得を目的とした算定や、EN15804+A2等の規格への準拠性を重視した算定が進んでいます。こうしたケースでは、製品カーボンフットプリントのみならず、大気汚染物質や水質汚濁物質など、気候変動以外の環境への影響も算定するLCAが求められる点に注意が必要です。また、これら欧州を中心とした規格に基づく算定においては、日本の排出原単位データベースやLCA算定システムでは対応できない場合も多く、海外の排出原単位データベース、LCA算定ソフトウェアの使用が必要となる場面が高まっていることも認識しておく必要があります。以下に代表的なLCA算定ソフトウェアを示します。 ・ SimaPro:世界で最も広く使用されるLCAソフトウェア。オランダの環境コンサルタントPRe Sustainability社が開発。排出原単位データベースとしてEcoinventを搭載しています。 ・ LCA for Expert(Gabi):世界でも広く使われているLCAソフトフェア。ドイツSphera Solutions GmbH社が開発し、Sphera社独自開発の原単位データベースも整備しています。 ・ One Click LCA:フィンランドのOne Click LCA社開発の建設業界に特化したLCAソフトウェア。Ecoinvent等の汎用データベースの他、200,000以上のグローバルのEPD情報を網羅しています。  顧客の要請や対応する規格によっては、算定した数値に対して第三者検証が必要となります。現在、第三者検証まで実施、または実施を予定している企業が増加しており、今後もこの傾向は続くものと考えられます。 まとめ  今回は製品カーボンフットプリント算定の実態と課題、今後の方向性について記載しました。単に“製品カーボンフットプリント”と言うだけでは不十分であり、コミュニケーションの際には何に基づくカーボンフットプリントであるかをしっかりと示すことが重要といえます。また、製品カーボンフットプリントの数値にただ一つの“正解”はありません。ISO14044,14067では条件の異なる他社の開示内容との比較主張は厳しく制限されています。これは他社の算定結果を見る側も、安易な比較はできないという点を十分理解すべきであり、製品カーボンフットプリントを算定する側、結果を見る側双方のリテラシー向上が求められます。  製品カーボンフットプリントについては、新たな規格、ガイドラインの策定が現在も進められており、今後これらを注視していく必要がありますが、算定目的によって最適な規格、ガイドラインが決まるという部分は変わりません。“カーボンフットプリント”を算定する際は算定目的を明確化し、最適な規格、ガイドライン参照することで、その製品にとっての“正解”にたどり着くものと考えます。   (執筆者:久保(隆))   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・LCA、CFP算定、カーボン・オフセット事業

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再生可能エネルギー電力の調達方法について(前編)

 気が付くともう師走。秋をあまり実感できないまま、コートや暖房が必要な季節を迎えてしまいましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。  電気・ガス料金の負担軽減策が、来年1月~3月の使用分に限り再開されることが決定し、筆者宅では(気が緩んで?)12月の電気・ガスの使用から増えている状況ですが、企業では外的な要因に影響されることなく、持続的に気候変動への取組みを進めていく必要があります。  これまで数回にわたり、スコープ3削減やカーボン・クレジットに焦点を置いていましたが、今回は自社で取り組めるスコープ2の削減策である「再生可能エネルギー電力の調達方法」についてご紹介します。 再生可能エネルギーの調達タイプ RE100で認められており、CDPでもスコアリングの対象となる調達方法は、日本では4つのタイプに大別されます。   ①自家発電(自社で設備を保有して発電) ②直接調達(発電事業者と自社の契約)―フィジカルPPA、バーチャルPPA ③電力サプライヤーとの契約-プロジェクト特定契約、小売供給契約 ④ 電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達 ① 自家発電  発電設備を自社の敷地内(または近隣)に設置する形態です。  自社の責任と負担で発電設備の設置・運転(委託も可)するものです。 ②-1 フィジカルPPA(PPA: Power Purchase Agreement(電力購入(販売)契約))  フィジカルPPAとは、発電設備で発生した電気と環境価値をセットで購入する契約形態を指し、2つの形態があります。  一つ目はオンサイトPPAと呼ばれるもので、発電設備を自社の敷地内(オンサイト)に設置する形態です。  自社の敷地内に設備を設置し、電力と環境価値をセットで自社施設に直接供給するという点では自家発電と同じです  が、発電事業者と自社とで「長期契約かつ固定価格」で購入契約を結ぶというところが大きな違いです。  自家発電と同様、送配電線を使用するための託送料金や再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)がかか  らないことから、通常の電力契約と比べて自社が負担するエネルギー料金が安くなる可能性があります。  一方で、敷地内の空き地や屋根など限られた場所に発電設備を設置することから、発電設備の規模(発電量)が限られ  ます。    【オンサイトPPA(電力使用量の20%の発電設備を設置した場合)】  二つ目はオフサイトPPAと呼ばれるもので、自社の電力を必要とする場所から離れた土地など(自社の敷地外=オフサ  イト)に、発電事業者が発電設備を建設し、自社が電力と環境価値をセット(長期契約かつ固定価格)で購入する形態  です。  (フィジカルPPAは、このオフサイトPPAをイメージする(指す)方も多いかもしれません。)  このオフサイトPPAは、送配電線を使用することから小売電気事業者※を介する必要があり、託送料金や再エネ賦課金  がかかることから、現行のエネルギー料金が安くできるとは限りません。  一方で、気候変動を抑制する「追加性」という視点を、RE100やCDP等でも重要視していることから、環境意識の高い企  業としての評価が得られます。  また、設置場所の制約を受けないことから、発電事業者などとの協議により規模の大きな発電設備を導入することがで  きます。  ※現在供給を受けている小売電気事業者以外の小売電気事業者からオフサイトPPAの電力供給を受ける(分割供給)   ことは可能です。(供給の形態には制約があります。)   ②-2 バーチャルPPA  これまでの電力と環境価値をセットで購入する形態と異なり、発電事業者と自社の間で電力を伴わない環境価値のみ  を購入する形態であることから、仮想の電力購入契約(バーチャルPPA)と呼ばれています。  フィジカルPPAと違い、既存の電力契約を変更することなく、環境価値のみ購入できるのも特徴のひとつです。  一方で、バーチャルPPAでは、発電事業者は発電した電力をすべて卸電力市場に売却(売電)することから、その売電収  入は市場価格により変動します。  発電事業者の収益が一定になるように、発電事業者と自社における「電力+環境価値」の取引価格を固定価格し、固定    価格と市場価格の差額を精算する(電力価格分を差し引く)仕組みが活用されることもありますが、その場合には自社    がその変動リスクを負うことになります。  このため、この変動リスクへの対応策として、FIP(Feed-in-Premium)制度を組み合わせるという方法が活用されて  います。  FIPとは、発電設備の認定を取得することで、発電事業者が国から市場価格に基づくプレミアム(補助額)を受けること  ができる制度です。  また、このバーチャルPPAも発電事業者との契約期間は、20年程度と長期にわたることから、小売電気事業者を介在  させる(手数料は上乗せされる)ことでその信頼性を向上させることも可能です。 まとめ  今回ご紹介した新たな発電設備を建設する自家発電やPPAは、RE100でも推奨されている追加性のある調達方法であり、発電設備の建設には時間を有することから、直ちに対応できるものではありません。後編では、追加性のある調達方法の「つなぎ」として、直ぐに始められる調達方法についてまとめます。 参考資料:自然エネルギー財団 コーポレートPPAの 最新動向(2024年度版) (執筆者:佐藤)   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・サプライヤーエンゲージメント・排出削減 ・アドバイザリーサービス

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企業のESG評価

 朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。10月末にもかかわらず台風のニュースが流れるなど、不安定な気候に振り回される日々が続いております。私自身も週末に改めて避難経路や防災セットの確認を行い、災害への備えを整えました。  個人としてはこのように対策を講じておりますが、皆様の会社ではいかがでしょうか。このような災害への備えも企業の気候変動対策(物理リスク)に含まれており、投資家やステークホルダーは「この企業は気候変動にしっかりと備えているか?」という観点から評価を行っています。  このように、企業の取り組みを環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から評価する動きが進んでいます。この評価をESG評価と呼び、結果はESGスコアとして表されます。このESGスコアは投資家の判断やサプライチェーンの選定などにも活用されており、企業価値を高める重要な指標となっています。 以下に、代表的なESG評価の種類をご紹介いたします。 CDP  CDPは2000年にロンドンで設立された環境NGO団体で、気候変動、水セキュリティ、森林減少リスクに関する情報開示のプラットフォームを提供しています。CDPは機関投資家、サプライチェーンメンバー、銀行の要請に基づき、全世界15,000社以上に質問書を送付し、企業はこれに回答することで評価を受けます。CDPの特徴は以下の通りです。   【対象カテゴリ】  気候変動・水セキュリティ・森林(生物多様性・プラスチック) 【評価方法】  業種ごとにカスタマイズされた質問書 への回答 【評価の尺度】  D-~Aまでの8段階+F(無回答企業)で評価 【強み・特徴】  ・スコアリング基準が公開されており、自社の取組状況をベストプラクティスに照らして振り返ることができる。  ・GRIやSASBなどの標準化機関と連携しているため、包括的な情報開示を促進できる。 EcoVadis  EcoVadisは、調達企業に対して自社及びサプライヤーの持続可能性を評価するサービスを提供しています。企業はEcoVadisを通じてサプライヤーに回答を要請し、評価結果を管理やコミュニケーションに役立てることができます。評価は「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野に分かれて実施されています。EcoVadisの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野 【評価方法】  業種と企業規模に応じてカスタマイズされた質問書 への回答と公開されている情報等を踏まえた評価。 【評価の尺度】  0~100の点数制で評価。ランキングに応じてメダルが付与される。 【強み・特徴】  ・調達企業はプラットフォームを通じ、サプライヤーの取組状況を把握するとともに、改善状況等についてコミュニケーションをとることができる。  ・調達企業は評価結果を活用することで、持続可能性の高いサプライヤーを選定することができる。 S&P Global ESG Scores  アメリカの大手金融機関S&P Globalが開示しているESG評価スコアであるS&P Global ESG Scoresは、企業の開示情報、メディアおよびステークホルダー分析、業界固有のアンケート(CSA)を通じて評価されます。S&P Global ESG Scoresの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  環境・社会・ガバナンス全般 【評価方法】  企業の開示情報、メディアおよびステークホルダー分析、業界固有のアンケート(CSA)を踏まえた総合評価 【評価の尺度】  0~100の点数制。 【強み・特徴】    ・質問書だけでなく、企業の財務情報や開示情報も含めた包括的な分析    ・金融市場との連携の強さ Sustainalytics  アメリカの金融サービス企業モーニングスター社の子会社であるSustainalyticsのESGリスクレーティングは、企業の管理不可能なESGリスクの程度を評価し、機関投資家にレーティングを提供しています。また、40を超える産業分類において分野横断的な専門知識を持つ800名以上のアナリストを有しており、日本を含む世界16拠点において、数百社におよぶ世界有数の資産運用会社や年金基金と提携しています。Sustainalyticsの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  環境・社会・ガバナンス全般のリスクに着目 【評価方法】  企業の開示情報に基づいて評価。 【評価の尺度】  0~100の点数制(点数が高いほど高リスクと評価)。 【強み・特徴】  ・機関投資家が財務的に重要(マテリアル)なESGリスク特定・理解することを支援するために設計されている。  ・企業は、サステイナリティクスのESGリスクレーティングの確認、マーケティングやIRへの活用ができる(有償)。 さいごに  このように、ESG評価にはさまざまな種類があります(参考資料参照)。金融サービスによるESG評価は公開資料に基づいて評価されるものが多いですが、CDPやEcoVadisは質問書に回答することで評価が行われるため、必要とされる活動が明確に把握できます。ESG経営にお悩みの際は、こうした評価機関の活用も一つの手段です。当社ではCDP及びEcoVadisの回答支援を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。 参考資料: ESG評価機関等の紹介|日本取引所グループ (執筆者:野村) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応 開示支援 ・アドバイザリーサービス

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