2026.08.04
CDP2026提出直前!最終チェックポイントと、2027年「6月提出」に向けた緊急対策
2026.08.04
1.はじめに:いよいよ提出佳境。最後の落とし穴を回避するために 夏も本番を迎え、CDP2026の質問書回答に向けた実務はまさに佳境に入っていることと存じます。社内各署からのデータ収集、経営層との確認、そして難解なガイダンスや採点基準の読み解きなど、ご担当者様は日々計り知れないプレッシャーと時間的制約の中で作業を進められていることでしょう。私たちCDP回答支援のコンサルタントも、回答企業の皆様とともに、暑くて熱い夏を懸命に駆け抜けているところです。 多くの企業の皆様がお盆前後に排出量等のデータも収集し終え、一旦回答案の全体像が出来上がる時期に差し掛かってきます。しかし、回答案がほぼ固まったこの最終盤にこそ、最も注意が必要です。CDPの採点においては、どんなに高度な気候変動戦略を記述しても、質問の仕様の見落としや、回答全体の一貫性の欠如によって、思わぬ減点やスコアダウンとなってしまうケースが発生しうるものです。 本記事では、CDPの公式情報に基づき、提出ボタンを押す前に必ず確認すべき最終チェックポイントを解説します。また、記事の後半では、6月提出へと大幅に前倒しされる次年度CDP2027に向けた緊急課題と対策についても触れています。最後の総仕上げの参考として、ぜひご活用ください。 2. 提出ボタンを押す前の5つのセルフチェック 以下の5項目について、提出前にダブルチェックを実施することをお勧めします。 ① 報告年度の整合性 質問の中で特定の期間(過去3年間など)が指定されている場合を除き、開示する情報が「報告年度」に関連しているかを今一度確認してください。特に、他部門から提出されたデータが前年度のものだった、記述内容が前年度のまま未更新の記載になっていた、というミスが無いように確認を行います。 ② 空欄(空白セル)の撲滅 CDPのスコアリングにおいて、原則として空欄、つまり未回答のセルは、スコア低下につながる可能性があります。何を回答すればよいかわからない場合等であっても、ガイダンスの説明を今一度確認し、セルを空白のまま放置せずに、回答を進めるようにしましょう。算定・確認した結果として実際の値がゼロである場合は、空欄ではなく「0」と回答することも重要なポイントです。前年と同じ質問列であっても、回答条件の変更に伴い、新たに対応が必要となっている項目も存在しますので、昨年と同様に回答を作成した段階で安心することなく、ポータル内の空欄がないか確認をお勧めします。 ③ 進捗状況トラッカーの最終確認 CDPポータル内の「進捗状況トラッカー」を確認し、ポータル上未完了として認識されている項目が残っていないか、最終的なステータス確認を行ってください。なお、ポータル上で一部の回答が未完了と表示されていても提出操作自体は可能ですが、未回答の情報は原則として評価されません。選択肢として「その他、具体的に」を選択した場合には具体的な記述を求める欄が出現しますが、ここが空欄のままの場合は未完了となることにご注意ください。 ④ 質問間・回答間の一貫性の確保 CDPは各質問の回答内だけでなく、質問書全体を通じた一貫性を採点基準に組み込んでいます。排出量の数値に関する一貫性のみならず、ガバナンス体制、エンゲージメント等、他の質問での回答状況との整合性が、ポイント付与の条件となっているケースもあります。特に自力で回答準備を行っている際には1問1問の採点基準の確認まではリソース的に厳しいことも想定されますが、提出前には必ず、自社の回答全体を俯瞰し、自社の実態を正しく回答に反映できているか、回答間の論理が破綻していないかを通し読みで確認されることをお勧めいたします。 ⑤ スコープ1~3第三者検証の添付ファイルと回答方法 この質問以外でも、必要な添付ファイルが正しくアップロードされているかの確認は基本ですが、特にスコープ1~3の第三者検証に関する項目には厳格なルールがあります。第三者検証はスコア上も重要な項目であり、取得する企業も増えていることを実感しています。初めて回答される皆様も、毎年回答されている皆様も、今一度以下の点をご確認ください。 ページ番号の明示: 検証声明書を添付するだけでなく、保証・検証の対象となったスコープ1~3排出量の記載箇所について、ページ番号を必ず明示してください。 検証基準: CDP2026では検証基準が選択式に変更になりました。ここで選択する基準は、添付した検証声明書に記載された基準と一致している必要があります。 進行中の検証の扱い: 「報告年の検証を取得中で完了していない」と報告する場合でも、回答内容は報告年の排出量の検証に関するものでなければなりません。一方、添付ファイルについては、特例として、前年の検証声明書を添付することが求められます。なお、初めて検証を実施する場合には別の回答区分が設けられているため、自社の状況に対応する選択肢を確認してください。 【ワンポイントアドバイス】行き詰まったら「他社回答の閲覧機能」を活用する 回答の表現に迷ったり、一貫性の持たせ方に悩んだりした際は、ポータル内で提供されている他社回答の閲覧機能を活用しましょう。1ポータルにつき20社まで、CDP2025回答の閲覧が可能となっています。提出直前の最終調整の際のヒントとして、Aリスト企業や自社と業種の近い企業の回答を、記載内容や情報の粒度を検討する際の参考として活用することをお勧めします。ただし、表示される質問や採点条件は企業によって異なるため、他社回答をそのまま転用するのではなく、自社の実態と最新のガイダンスに照らして確認することが重要です。 3. 今年の新設・変更設問に関する「最終確認ポイント」 前年からの変更有無にかかわらず、CDPには注意を要する質問が多く含まれています。その中でも企業の皆様が悩みそうなポイントを含む質問について、全企業対象のものを1点、RE100企業対象のものを1点、高排出セクター対象のものを1点ずつ代表でご紹介します。 【全企業対象】スコープ1・2排出量の温室効果ガス種類別内訳と使用したGWP(地球温暖化係数)の出典 CDP2026では、温室効果ガス種類別内訳について、スコープ2排出量も対象となったことに加え、CO2換算前の温室効果ガス排出量に関する質問列が追加されました。スコープ2については1つ前の質問の回答によっては内訳の回答対象外となりますが、昨年までスコープ1の温室効果ガス種類別内訳を回答されていた企業の皆様については、ここでスコープ1の温室効果ガス種類別のCO2換算前の数値の回答が必要となりますので、ご注意ください。 スコープ1排出量(t): CO2換算値(CO2e)に変換するためのGWPを「適用する前」の、ガス種ごとの物理的な排出量。 スコープ1排出量(CO2換算トン): GWPを適用した後のCO2換算値。 GWP参照(8列目): 選択した温室効果ガスをCO2換算する際に使用した「GWPの出典(IPCCの第何次評価報告書か等)」を特定して記載。現行の「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」に掲載されたGWPを採用している場合は、AR5の100年値となります。 【RE100企業向け】時間単位マッチング 報告年度において、ゼロ・ほぼゼロ排出の排出係数で算定した電力購入の詳細に関する質問の中で、RE100企業向けには、電力調達方法の選択に応じて「時間単位マッチング」等の質問列が表示されます。時間単位マッチングでは5つの選択肢から選択することとなりますが、この中でも「24/7一致:タイムスタンプ付EAC(グラニュラーまたはアワリーマッチングと呼ばれる)」と「24/7一致:シェイプ保持アプローチ」の2つは馴染みの薄いものかもしれません。これらを理解するには、24/7 Carbon Free Coalitionの技術要件を確認いただくことをお勧めします。 【特定セクター向け】低炭素R&Dへの投資 一部の高排出セクターや輸送関連セクター等では、過去3年間の低炭素R&Dへの投資詳細が問われます。ここで「リーダーシップポイント」を獲得するための条件は非常に厳格です。マネジメントポイントを満点にした上で、以下の3つの開発段階をすべてカバーする形で、少なくとも3つの行を作成し、報告する必要があります。該当質問が表示されている企業の皆様はご注意ください。 [基礎学術的/理論的研究] または [応用研究開発] [パイロット実証] または [フルスケール/市販スケール実証] [小規模商業的開発] または [大規模商業的開発] 4. どうしても間に合わない場合の「オンデマンド延長サービス」 様々な要因でスコアリング対象の9月16日の提出期限に間に合わないという企業向けに、2026年は「オンデマンド延長サービス(有料)」が提供されています(2027年度も提供予定とされています)。このサービスの利用が認められた場合、9月30日までに回答を提出することで、気候変動、フォレスト、水セキュリティのすべてのテーマにおいて、通常と同様にスコアリングを受けることができます。申請手順については、CDPの公式サイトをご確認ください。対応枠に限りがあるため、必要となった際には早めの申請と確認を推奨いたします。 5. 休む間もなくやってくる。CDP2027「6月提出」の衝撃と対策 今年の提出が無事終わったとしても、息をつく暇はありません。次のCDP2027は、締切が6月23日へと前倒しされることが正式にアナウンスされています(CDPポータルオープンは4月14日予定)。ポータルオープンからの回答期間が1か月短縮されるだけでなく、この6月提出というスケジュールは、日本の3月決算企業にとって極めて悩ましい課題を突きつけます。 SSBJ(サステナビリティ基準委員会)対応とのバッティング 3月決算企業において、SSBJ基準への対応を進めている場合、2027年3月期の有価証券報告書(6月末提出)に同年度の排出量数値等を掲載する可能性が高くなります。CDP回答においても、有価証券報告書の開示内容との整合性を確保することが重要となります。つまり、「有価証券報告書の作成・監査・決裁プロセス」と、「CDP回答書の作成・決裁プロセス」が完全に同時並行で進行するという、例年以上に対応が集中する繁忙期となることが想定されます。現時点でCDPからは、締切前倒しに伴う特別な経過措置は発表されていないため、原則としてこのスケジュールを前提に、早期に準備を進める必要があります。 「昨年のコピー転送」では乗り切れない可能性も CDPポータルでは、コピー転送機能が改善され、AIを活用した回答提案機能も導入されました。質問書自体に大きな変更は無いとされていますが、「前年の回答を流用すれば終わる」という甘い見通しは通用しない可能性もあります。 自社の企業構造の変化や、排出量算定方法のアップデートの発生。 過去に「いいえ、2年以内に計画している」と回答していた項目に進捗があり、後続質問への回答が必要となるケース。 自社の実態に即した「ストーリーの微調整」や、AIによる提案だけでは判断が難しい回答方針の検討。 数年連続で回答し、自社ノウハウに自信がある企業であっても、この大幅なスケジュール前倒しの中で、細かな整合性のズレやスコアの取りこぼしを起こすリスクは依然として存在します。 6. おわりに:来期に向けた勝負は、提出直後から始まります まずは目前に迫ったCDP2026の提出完了に向け、本記事のチェックリストがお役に立てば幸いです。 CDP2027の6月提出というかつてないハードルを乗り越えるためには、11月30日の週に予定されているスコア発表を待つのではなく、今年の提出直後から、来期に向けた体制整備と、今年の失点ポイントの分析を開始することをお勧めいたします。 「自社のリソースだけで6月の有報・CDPの同時対応を乗り切れるか不安だ」「今年の回答で一貫性に自信が持てない部分があった」といったお悩みをお持ちの企業様は、回答レビューや翌年度に向けた体制・スケジュールの整理について、早期段階で外部専門家への相談をご検討ください。 体制構築は、早ければ早いほど理想的なものとなります。来年の6月、そして夏を余裕を持って迎えるためにも、今年の提出直後から準備を開始することをお勧めします。 (執筆者:小島) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応、EcoVadis回答支援|株式会社ウェイストボックス ・アドバイザリーサービス
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