Column

2025年12月

カーボン・クレジットに関する動向

 これまでもカーボン・クレジットの基礎(2024年7月投稿)やScope 3とカーボン・クレジットとの関連性(2024年10月投稿)に関して、弊社業界動向コラムで説明してまいりました。気候変動全般の話題同様、カーボン・クレジットにおいてもSBTi、VCMI、ICVCM、ISO、パリ協定第6条、日本国内のGXリーグなど、さまざまな国内外のイニシアティブやルールを取り巻く状況がめまぐるしく変わっています。  ネットゼロを掲げる企業にとって、「クレジットを使うかどうか」はもはや選択肢ではなく、「どう使うか」が問われる段階に入っています。かつては、「安いクレジットを買って埋め合わせ(カーボン・オフセット)すればよい」という感覚でも通用していましたが、今はカーボン・クレジットの質、使い方、そして主張の仕方が非常に重要になっています。  本記事では、改めてカーボン・クレジットの基礎のおさらいから最新の各イニシアティブ等での全体像、最新ルールの全体像、そして企業がとるべき実務的なスタンスについて説明いたします。カーボン・クレジットを既に活用している企業の皆さまにとっても、今後、カーボン・クレジットの購入や活用を検討している企業の皆さまにとっても良いヒントとなれば幸いです。 カーボン・クレジット基本のおさらい カーボン・クレジットとは  カーボン・クレジットとは、図1に示すように省エネルギー、再生可能エネルギー、森林管理などの活動で削減・吸収された温室効果ガスを方法論と呼ばれるルール従って計算・認証することで数値化し、クレジット(証書)の形にして、売買できるようにしたものです。​ 図1.ベースライン&クレジットの考え方  カーボン・クレジットは大きく分けて2つの要素でできています。1つ目が発行を行う制度の運営主体です。図2に示すように、カーボン・クレジットの発行や制度運営主体で分けると、国連・政府主導(CDM、JCM、J-クレジットなど)と、民間主導のボランタリークレジット(VCS、Gold Standard、ACRなど)に分けられます。この運営主体によって、クレジットの仕様方法が異なることもあるため、まずはどの運営主体によって発行されたカーボン・クレジットであるかを把握する必要があります。  そして、2つ目がカーボン・クレジットの種類、いわゆる、どの種類のプロジェクトで創出された、何由来の価値かという部分です。カーボン・クレジットは図3に示すように「排出回避/削減」か「固定吸収/貯留」かに大きく分けられます。その中でもNbs (Nature-based solution)と呼ばれる自然ベースか技術ベースかに分類されます。とりわけ、自然ベースのカーボン・クレジットは、生物多様性や地域コミュニティへの貢献といったコベネフィットと呼ばれる「共便益」を併せ持つ点が評価され、最近のトレンドにもなっています。  カーボン・クレジットを使用する際には、使用目的に合わせたクレジットを選択する必要があります。カーボン・クレジットにおいては、①制度の運営主体、②カーボン・クレジットの創出方法(何由来の価値か)を理解する必要があります。 図2.カーボン・クレジットの運営主体の区分 図3.カーボン・クレジットの種類 制度の運営主体  海外の代表的なクレジット制度(レジストリ)として、CDM(クリーン開発メカニズム)由来の京都議定書時代の国連主導クレジットであるCER、Verraという民間団体が運営するVCS/VCU、Gold Standard、ACR(American Carbon Registry)などがあります。​最近では、Plan Vivoなどのようなコベネフィットや社会的なプロジェクトをより重視したレジストリや、PuroEarth、Isometricといった新興レジストリも出てきています。  また、CDP29ではCDMの後継であるPACM(パリ協定クレジットメカニズム)の主要ルールが採択され、CDMプロジェクトのPACM移転手続き等が開始された。また、二国間クレジットについても詳細が詰められ、本格的な運用段階に移っています。日本でもJCMクレジットとして創出が行われており、近年は民間主体のJCMクレジット創出の取組も開始されています。 CDM(Clean Development Mechanism)/CER(Certified Emission Reduction):京都議定書時代の国連主導クレジット。京都議定書自体の役割を終え、後継としてPCAMが開発された。 PACM(Paris Agreement Crediting Mechanism)/A6.4ER(第6条4項メカニズム排出削減量):CDMの後継メカニズムであり、CDMからの移転手続きが進められている。一方で、移行の成否は新たな基準(特に方法論分野)への対応等が必要であることから、課題も多い。 第6条2項(協力的アプローチ)クレジット:パリ協定第6条2項に基づき、二国間の協力で生まれたクレジットを国どうしで移転・分け合う仕組みの総称である。日本が運用しているJCM(Joint Crediting Mechanism)はこの代表的な枠組みであり、日本とパートナー国のプロジェクトから生じた削減・吸収量をクレジット化し、両国の貢献度合いに応じて配分する仕組みとなっている。 VCS/VCU:森林・土地利用、REDD+などに強く、CCB ※1やSD VISta※2によりSDGs・生物多様性等の価値を上乗せできるのが特徴。​ Gold Standard:持続可能な開発と排出削減の両立を重視し、再生可能エネルギーやクックストーブ等のプロジェクトで強い実績を持つ。​ ACR(American Carbon Registry):世界初の民間ボランタリーレジストリ。カリフォルニア州ETSのオフセットにも使われるなど、コンプライアンス・ボランタリーの両方で活用することが可能。  ※1 CCB(Climate, Community Biodiversity):気候・コミュニティ・生物多様性の基準。気候変動への対応、地域コミュニティや小規模農家への支援、生物多様性の保全を同時に行っていることを証明するもの  ※2 SD VISta: 持続可能な開発認証インパクト・スタンダード。社会的・環境的プロジェクトの持続可能な開発効果を認証するための最高基準   カーボン・クレジットの最新動向 J-クレジットやボランタリークレジットの価格推移  近年カーボン・ニュートラル実現に向けて、世界各国で市場メカニズムを活用したカーボンプライシングに関する取り組むが活性化しています。世界銀行が公開しているカーボンプライシングダッシュボードを確認すると、図4に示すように52か国でETS等のコンプライアンスメカニズムが導入され、17か国でカーボン・クレジット市場が運用されています(2025年12月公開情報より)。こうした制度は、2024年に世界全体で1,000億ドルを超える公的歳入を生み出しています。  図4. コンプライアンスメカニズム及びカーボン・クレジット市場を有する国 Carbon Pricing Dashboard | Up-to-date overview of carbon pricing initiatives  日本国内においても、2023年10月に東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開設され、GX-ETSの本格運用に向けて様々な議論が活発になされています。実際に相談のお問合せも増加傾向にあり、クレジット制度全般に関する関心の高まりを感じています。  このような盛り上がりの影響もあって、日本のカーボン・クレジット制度であるJ-クレジットでは、前述した東証における価格が2025年から急上昇しています。図5に示すように特に省エネクレジットについては、2023年の年末時点と比較すると2025年12月時点では3倍以上の価格が上昇しています。 図5. J-クレジット(省エネクレジット)の価格推移 出所:日本取引所グループ 市場開設以降の売買状況  この価格上昇については、様々な機関・企業が分析し、見解を公表しています。これらの情報を収集し、以下に整理しました。結論としては、市場の流動性が限られていることから、適正価格が不透明であることが原因と考えています。  今後の価格予想については、短期的には、需要拡大の一因であるGX-ETSにおける排出枠に関して、12月上中旬に実施予定の経済産業省における排出量取引制度小委員会で上下限価格の具体的な水準について議論予定であることから、その結果の影響が大きいと考えています。長期的な価格動向については図6に示す世界銀行が公開しているカーボンプライシングダッシュボードに記載されている各国のETS価格水準が参考になると考えています。  こうした価格の変動は、需要家側にとっては長期的な調達戦略等を考える課題になりますが、創出側にとってはこれまで採算が合わなかった小規模プロジェクト等の拡大にもつながります。J-クレジット制度を活用することで、より脱炭素投資を拡大することにもつながりますので、興味をお持ちの際は相談窓口にご連絡ください。 直近のJ-クレジットの認証量は無効化量を大きく上回っており、実際に利用する企業が増加して市場に流通するクレジットの在庫不足によって価格が上昇したものではないと考えられる。 GX-ETSの排出枠の代替目的などの将来の利用や転売を見越した需要の拡大及び投機目的の購入の影響があると推測される。 カーボン・オフセット都市ガス等これまでなかった利用方法の拡大 図6.各国のETS価格 価格 |カーボンプライシングダッシュボード 信頼性・質へのシフト(除去系への関心拡大)   カーボン・クレジットの需要が高まるにつれ、カーボン・クレジットそのものの中身や質が問われるようになってきています。  カーボン・クレジットの発行が増えるにつれ、カーボン・クレジットの過大発行やプロジェクト地域における先住民族に対する人権問題など、グリーンウォッシュの事例も出てきています。例えば、2024年10月に起きた事例では、ブラジル・パラ州の先住民族・地域団体38団体は同州のアマゾン熱帯雨林保護を支援するため、アマゾンやウォルマートといった米国多国籍企業とカーボン・クレジット売買契約を締結する前に州政府から事前に十分な協議を受けていなかったと共同声明を発表しています。これは、いわゆる、FPIC(Free, Prior and Informed Consent)と呼ばれる、十分かつ事前の同意を得ていなかった例です。その後、2024年10月の報道を受け、パラ州政府は今後、先住民族との対話を開始すると発表しています。しかし、ブラジルでは、2025年7月にも、Verra などの大手クレジットレジストリに登録されたアマゾン地域の森林保全プロジェクトを対象に、Ibama(ブラジル環境政府機関)による過去の違法伐採歴がある人物・団体が関与していた事例が少なくとも 36のうち、24プロジェクトあったとの報道も出ており、カーボン・プロジェクトの質に関わる問題は山積みとなっています。  また、同じく2024年10月に起きた事例では、米国商品先物取引委員会(CFTC)が米国ワシントン州に拠点を置くカーボン・クレジットプロジェクト開発会社がボランタリーカーボン・クレジットに関連する詐欺および虚偽・誤解を招く・不正確な報告を行ったとして、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴状を提出しています。このプロジェクト開発会社が、2019年以降少なくとも2023年12月までサハラ以南アフリカ、アジア、中米において、より効率的な調理用コンロやLED電球の設置などで排出削減を目的とするとして開発したプロジェクトに関連し、欺瞞的な計画に関与したと言われています。実際には、炭素クレジットの検証・発行に関連し、虚偽・誤解を招く・不正確な情報を不正に報告し、権利を有する量より数百万単位多いカーボン・クレジットが発行されていました。このプロジェクト開発会社が虚偽に発行したカーボン・クレジットは取消され、罰金や取引禁止などの制裁が科されています。  企業は、プロジェクト種類、ビンテージ、方法論などの基礎的な要素のみならず、例えば、政治的安定性や法規制・整備などのプロジェクト実施国のリスク、過去の実績、コンプライアンスなどのプロジェクト開発者のリスク、人権、先住民との関係性、生物多様性や水リスクといったSDGs関連のリスクなど、様々な側面からデューデリジェンスを行ったうえで、カーボン・クレジットを調達する必要があります。  ボランタリーカーボン・クレジット市場では、取引量が減少する一方で、厳格な基準を満たした「高品質クレジット」への選好や需要集中が顕著になっており、平均価格は比較的底堅く推移しています。 上記で述べたようなVerraの発行するCCB(Climate, Community Biodiversity)気候・コミュニティ・生物多様性基準、SD Vistaなどの追加的なラベル付のカーボン・クレジットを組織のクレジット調達の要件の一つにしている企業も多くみられます。  また、上述のようなグリーンウォッシュの事例にも対応していくために、より高品質なカーボン・クレジットの「世界共通ラベル」を作ろうとする世界的な動きもあります。それが、ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)です。同評議会はCore Carbon Principles(CCPs)を定め、​下記2つのレベルで評価し、CCP-eligible/CCP-approvedを経てCCPラベル付与に進む仕組みを整えています。2025年10月に発行されたICVCMのImpact Report 2025によれば、2025年10月時点で、Verraなどのレジストリで、森林管理 (Improved Forest Management: IFM)、バイオ炭 (Biochar)、植林/再植林 (Afforestation / Reforestation)、炭素除去 (CDR)などの36もの方法論がCCP適格として、承認されています。今後、5,100万tCO2規模のCCPラベル付きクレジットが市場に出てくる見込みとされています。この数値は、2024年市場発行量のおよそ 4% にあたる量です。 プログラムレベル(Verra、GS、ACR、CARなど) カテゴリ/方法論レベル(REDD+、ARR、IFM、埋立てガス、クックストーブ等)  VCMIは、原則として「ICVCMのCCPラベルまたはA6.4ERs」を高品質クレジットとして認める方向性を示しています。企業側から見ると、「とりあえずVerraやGold Standardで安価なプロジェクトを買えば良い」フェーズから「しっかりとICVCM・VCMIの要件も満たしているプロジェクトかどうか」も確認したうえでカーボン・クレジットを調達することが重要というフェーズに変わりつつあります。  加えて、カーボン・クレジットに対して格付けを行う機関やツールも出てきています。客観的且つ信頼性の高い情報が不足しており、クレジットの質や現地情報の確認等まで全て自社で行うには限界もあります。例えば、BeZeroやSylvera(シルベラ)といったクレジット格付け機関は、様々なレジストリの世界各地のカーボン・プロジェクトの品質を科学的かつ透明性の高い手法で格付けし、その格付け結果を自社のツールで公表しています。  例えば、Sylveraは、人工衛星データやAI、アカデミック手法を組み合わせた独自方法により、600以上ものプロジェクトをGHG削減・除去量の実効性、追加性、永続性、コベネフィットなどの観点から評価し、AAA(最高品質)~D(最低品質)の格付を提供しています。これらのカーボン・クレジット格付けツールは実際に政府や企業にも幅広く活用されています。 ブロックチェーン等デジタル技術の活用に関する動向  カーボン・クレジットの信頼性に関する課題として、「二重計上の防止」や「トレーサビリティの向上」が挙げられています。この課題の解決策としてブロックチェーンに関する技術が注目されています。これまで導入に慎重であったVerraについても、今年エコシステムを推進しているHedera Foundationと提携し、Hederaのブロックチェーン基盤(Guardian など)を活用したカーボン市場のデジタル変革プロジェクトを開始すると発表しており、段階的にデジタル化を進めています。また、J-クレジットでも、トークン化に関する法的論点の整理・分析に関するレポートが公開されています。  レポートでも言及されていますが、過去には償却済みクレジットのトークンが流通することで、償却を行った者を Verra 等の制度管理者側で把握・管理することができなくなるおそれがあるという問題が生じており、Verra が償却済みのクレジットのブリッジを禁止する等の動きもあり、まだまだ課題が多いものの、前述したメリットも大きいことから、今後の進展に着目して行く必要があると考えています。  また、ブロックチェーンと合わせて着目されているのが、MRVのデジタル化です。MRVはMeasurement, Reporting and Verification(測定・報告・検証)の略称であり、IoTセンサー・衛星リモセン・AI解析などのデータを用いて削減量を自動計測・レポーティングし、クレジット発行の手続きの省力化への貢献が期待されています。  日本でもJ-クレジットにおいてMRV支援システムの導入が進められています。制度事務局では、MRV支援システムの利用により、モニタリングから認証申請までの業務効率化が見込まれるほか、従来であれば人手で実施していたIoT機器等の情報の取りまとめや排出削減量の算定をシステムが行うことにより、改ざんや転記ミス等のリスク低減が見込まれています。現在株式会社日立製作所等の3社がMRV支援システム運営者として登録されています。現時点ではMRV支援システムを使用した事例は登録されていないものの、今後事例が増えていくと想定しています。  こうした取り組みが拡大していくことは、カーボン・クレジットの創出に関する負担軽減、信頼性向上に寄与すると考えています。 カーボン・クレジットの使用方法 カーボン・クレジットの利用方法  カーボン・クレジットはどのように利用されるのでしょうか。現在の主なクレジットの仕様方法は表1のようになっており、組織は、利用目的に合わせてカーボン・クレジットを調達する必要があります。 表1. 目的別カーボン・クレジットの活用方法   ISOカーボン・ニュートラル対応  具体的な使用方法の一つとして、ISOカーボン・ニュートラル基準への対応があります。カーボン・ニュートラルやネットゼロは国際的な規格であるISO化が進んでいます。現在、カーボン・クレジットを使用しての企業としてカーボン・ニュートラルを主張することができるISO14068-1が存在します。これはBSI(The British Standards Institution、英国規格協会)が定めていたカーボン・ニュートラルの規格であるPAS2060の進化版になります。IPCCレベルではカーボン・ニュートラルとネットゼロはほぼ同義ですが、ISOではより細かく定義が分けられています。 カーボン・ニュートラル(ISO14068-1):組織・製品・サービスも対象。削減+除去+オフセットでフットプリントをゼロにする概念。 ネットゼロ(Net Zero Guidelines/ISO14060.2):国家や組織にフォーカスし、長期的に残余排出量以外を削減したうえで、残余排出量のみを除去系のカーボン・クレジットで中和するという、より厳格なフレーム。​  ISO14068-1では直接的もしくは間接的GHG 排出量を削減(reduce)し、さらにGHG 除去(removal)の強化に優先順位を付け、活動の後に残っているカーボンフットプリントについてのみ、カーボン・オフセットを行うことによるカーボン・ニュートラルを認証するものです。PAS2060との違いは細かくあるものの、要件として一番難しいのはクレジットの要件の部分が挙げられます。既存のISOにおいては主張をする期間の開始より5年以内に創出されたのカーボン・クレジットの使用かつ、相当調整(corresponding adjustment)※3がされている必要がある点が一番の難点となります。これはパリ協定が適応される前のビンテージのものについては考慮しなくてよいのですが、適応される年度以降については考慮する必要があります。なお、現時点ではJ-クレジットは適応対象外の可能性が高いと考えられています。 ※3 相当調整:排出削減成果(ITMOs)を他国に移転する際に、ホスト国(クレジット創出国)が自国のNDC(国が決定する貢献)からその分を差し引く会計上の調整のこと。同じ排出削減または除去が、同一の会計システム内で2つの異なる主体によって目標達成のために主張されることを指す。例えば、一度は国や地方自治体などが緩和目標達成のために排出削減量として報告し、もう一度は企業などがカーボン・クレジットを償却して自社の排出削減達成として主張する、といったケース カーボン・オフセット認証の紹介    上述のISOは海外の認証ですが、日本国内でも環境省によるカーボン・オフセット認証、カーボン・ニュートラル認証という仕組みがあります。これは、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成26年3月31日環境省)を受けて、平成29年6月1日(Ver1.0)「カーボン・オフセット第三者認証プログラム実施規則」にカーボン・オフセット第三者認証プログラムが定められたものです。様々な企業が自社の排出量や製品の認証に取組んでおり、認証を取ることで環境配慮型企業としてのPR、取引先・顧客からの評価向上、社内の温暖化対策への意識向上といった効果を期待しています。 SBTネットゼロでの評価(BVCMについてもここで紹介)  SBTiからも企業のネットゼロスタンダードv2が公開されています。このネットゼロスタンダードv2では、企業は、ネットゼロへの移行の過程で継続的な排出に責任を持ち、ネットゼロ目標年およびその後に残余排出の影響を中和することが求められています。  現在公開されている第2回コンサルテーションドラフトでは、企業の継続排出量への責任は2035年まで任意となりますが、その後はカテゴリーA企業がこれらの排出量に対し段階的に責任を負うことが義務付けられています。また、全企業は、ネットゼロ達成年までに、残存排出量の100%を中立化するか、間接的なバリューチェーン排出量については、バリューチェーンの取引先がこれらを中和することを保証しなければなりません。ネットゼロ目標年以降、全ての企業がスコープ1~3残余排出量をCO2除去により中立化し、ネットゼロ目標年において、残余排出量の41%以上が長寿命貯留層で除去・貯留される必要があります(2035年は17%想定)。 ※カテゴリーA企業:高所得地域で事業を行う大企業および中規模企業。ネットゼロスタンダードv2では、企業はこのカテゴリーAとカテゴリーB(低所得地域で事業を行う中小企業)に分けられる。 出所:CNZS-V2-_-Detailed-Explanatory-Guide_Japanese.pdf  上記を含むSBTiにおける変更により、オフセット目的でのクレジット使用は依然認められていないものの、残余排出の中和の手段の一つでもある、残余排出の中和手段として、高品質なカーボン・クレジットの購入、炭素貯留・除去技術への投資、マングローブ林や泥炭地の保全などの企業のバリューチェーン外の貢献(BVCM:Beyond Value Chain Mitigation)に関する取り組みが正式に認められる形となっています。SBTiネットゼロスタンダードでは、企業が炭素除去をより拡大し、気候資金を動員する機会といった、残余排出量に対処するためのオプションが提案されています。  これまでは、このBVCMの活動について取り組む企業側のインセンティブがなく、自主性に任せられてきました。今回の改定案では一定のルールに基づいてBVCMに取り組む企業に対して差別化を図ることができる認定フレームワークの設計が議論されています。  例えば自社の排出量の1%以上分のカーボン・クレジットの購入や、脱炭素技術への支援を行うことで、追加的な認定を得ることができるというような仕組みが考えられています。この制度により、より気候変動に積極的に取り組む企業の差別化がなされます。  BVCMに取り組む企業にとっては、貴重な資金を投入するため、よりPRにつながるクレジットの購入や取り組みへの投資を検討する必要があります。 出所:ABOVE AND BEYOND: AN SBTI REPORT ON THE DESIGN AND IMPLEMENTATION OF BEYOND VALUE CHAIN MITIGATION (BVCM) まとめ  今回のコラムではカーボン・クレジット全般の動向を整理しました。日本では国内のコンプライアンス市場であるGX-ETSの本格稼働に向けて様々なルールの議論が始まっています。また、ボランタリー市場においても、ISOやSBTiでのクレジット利用方法についても具体的な指針が出てきています。そのため、クレジット利用する場合には、まず目的を明確にし、その目的に応じた信頼性と追加性の高いカーボン・クレジットを調達する必要があります。  クレジットの調達方法にお悩みの際には、是非お気軽にご相談ください。 (執筆者:野村・大橋) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・カーボン・クレジット創出事業 ・カーボンニュートラル・BVCM ・アドバイザリーサービス

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