Column

2024年12月

再生可能エネルギー電力の調達方法について(前編)

 気が付くともう師走。秋をあまり実感できないまま、コートや暖房が必要な季節を迎えてしまいましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。  電気・ガス料金の負担軽減策が、来年1月~3月の使用分に限り再開されることが決定し、筆者宅では(気が緩んで?)12月の電気・ガスの使用から増えている状況ですが、企業では外的な要因に影響されることなく、持続的に気候変動への取組みを進めていく必要があります。  これまで数回にわたり、スコープ3削減やカーボン・クレジットに焦点を置いていましたが、今回は自社で取り組めるスコープ2の削減策である「再生可能エネルギー電力の調達方法」についてご紹介します。 再生可能エネルギーの調達タイプ RE100で認められており、CDPでもスコアリングの対象となる調達方法は、日本では4つのタイプに大別されます。   ①自家発電(自社で設備を保有して発電) ②直接調達(発電事業者と自社の契約)―フィジカルPPA、バーチャルPPA ③電力サプライヤーとの契約-プロジェクト特定契約、小売供給契約 ④ 電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達 ① 自家発電  発電設備を自社の敷地内(または近隣)に設置する形態です。  自社の責任と負担で発電設備の設置・運転(委託も可)するものです。 ②-1 フィジカルPPA(PPA: Power Purchase Agreement(電力購入(販売)契約))  フィジカルPPAとは、発電設備で発生した電気と環境価値をセットで購入する契約形態を指し、2つの形態があります。  一つ目はオンサイトPPAと呼ばれるもので、発電設備を自社の敷地内(オンサイト)に設置する形態です。  自社の敷地内に設備を設置し、電力と環境価値をセットで自社施設に直接供給するという点では自家発電と同じです  が、発電事業者と自社とで「長期契約かつ固定価格」で購入契約を結ぶというところが大きな違いです。  自家発電と同様、送配電線を使用するための託送料金や再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)がかか  らないことから、通常の電力契約と比べて自社が負担するエネルギー料金が安くなる可能性があります。  一方で、敷地内の空き地や屋根など限られた場所に発電設備を設置することから、発電設備の規模(発電量)が限られ  ます。    【オンサイトPPA(電力使用量の20%の発電設備を設置した場合)】  二つ目はオフサイトPPAと呼ばれるもので、自社の電力を必要とする場所から離れた土地など(自社の敷地外=オフサ  イト)に、発電事業者が発電設備を建設し、自社が電力と環境価値をセット(長期契約かつ固定価格)で購入する形態  です。  (フィジカルPPAは、このオフサイトPPAをイメージする(指す)方も多いかもしれません。)  このオフサイトPPAは、送配電線を使用することから小売電気事業者※を介する必要があり、託送料金や再エネ賦課金  がかかることから、現行のエネルギー料金が安くできるとは限りません。  一方で、気候変動を抑制する「追加性」という視点を、RE100やCDP等でも重要視していることから、環境意識の高い企  業としての評価が得られます。  また、設置場所の制約を受けないことから、発電事業者などとの協議により規模の大きな発電設備を導入することがで  きます。  ※現在供給を受けている小売電気事業者以外の小売電気事業者からオフサイトPPAの電力供給を受ける(分割供給)   ことは可能です。(供給の形態には制約があります。)   ②-2 バーチャルPPA  これまでの電力と環境価値をセットで購入する形態と異なり、発電事業者と自社の間で電力を伴わない環境価値のみ  を購入する形態であることから、仮想の電力購入契約(バーチャルPPA)と呼ばれています。  フィジカルPPAと違い、既存の電力契約を変更することなく、環境価値のみ購入できるのも特徴のひとつです。  一方で、バーチャルPPAでは、発電事業者は発電した電力をすべて卸電力市場に売却(売電)することから、その売電収  入は市場価格により変動します。  発電事業者の収益が一定になるように、発電事業者と自社における「電力+環境価値」の取引価格を固定価格し、固定    価格と市場価格の差額を精算する(電力価格分を差し引く)仕組みが活用されることもありますが、その場合には自社    がその変動リスクを負うことになります。  このため、この変動リスクへの対応策として、FIP(Feed-in-Premium)制度を組み合わせるという方法が活用されて  います。  FIPとは、発電設備の認定を取得することで、発電事業者が国から市場価格に基づくプレミアム(補助額)を受けること  ができる制度です。  また、このバーチャルPPAも発電事業者との契約期間は、20年程度と長期にわたることから、小売電気事業者を介在  させる(手数料は上乗せされる)ことでその信頼性を向上させることも可能です。 まとめ  今回ご紹介した新たな発電設備を建設する自家発電やPPAは、RE100でも推奨されている追加性のある調達方法であり、発電設備の建設には時間を有することから、直ちに対応できるものではありません。後編では、追加性のある調達方法の「つなぎ」として、直ぐに始められる調達方法についてまとめます。 参考資料:自然エネルギー財団 コーポレートPPAの 最新動向(2024年度版) (執筆者:佐藤)        

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