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2019年6月

SCOPE1,2,3把握から始めるSDGs13「気候変動に具体的な対策を」の取組

  今年はSDGs実施開始から4年目に当たります。 国連グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が発行しているSDGs調査レポートの最新版によると、昨年2018年は国内において、大企業を中心とした民間企業等で経営層の認知度が大幅に高まり、実行のための体制づくり等にも進展が見られた、また多くの省庁でSDGs関連の取組が始動する等、「SDGs主流化へ向かい出した年」であったということです。(※1)  9月には国連ハイレベル政治フォーラムの初の首脳級会合(※2)が予定されており、ますますの盛り上がりが期待されます。  そこで今回は、SDGsへの貢献に向けて本格始動される企業等の皆様へ、弊社が考える、SCOPE1,2,3を活用したSDGs13「気候変動に具体的な対策を」達成のための取組について、ご紹介したいと思います。    前述のレポートによると、企業のSDGs取組において、取組の進捗報告と評価の方法の確立が世界共通の課題の一つとのこと。国内企業においても、定量的な指標などの評価手法がわからないことを課題と感じている企業は多いようです。  その点、気候変動(特に緩和対策)に関しては、定量化の手法が比較的確立しており、すぐに着手していただき易い分野の一つではないかと考えています。具体的には、気候変動の主要な原因である温室効果ガス(GHG)の排出量を算定報告するための国際基準「GHGプロトコル」が世界的に定着しています。さらに、GHGプロトコルに準拠する形で、2℃目標に沿った目標設定を支援するSBT(Science Based Targets:企業版2℃目標)や、CDP等の気候関連情報開示プログラム等、目標設定や報告の手法についても整備されており、SDGsの取組にあたって活用いただけるツールが比較的揃っていると言えるのではないかと思います。    以下に、弊社が考えるSDGs13への具体的取組内容を、SDG Compassの取組ステップ(※3)に沿って簡単にまとめてみたいと思います。(ステップ1と4はSDGs課題全体と共通のため割愛します。)   ステップ2:優先課題を特定する 「SCOPE1,2,3を把握して、気候変動分野の中の優先取組分野を特定する」   SDG Compassでは、バリューチェーンマッピングを用いて、自社のバリューチェーンの中でSDGs分野に与える正負の影響を把握した後、影響を定量的に評価し、優先課題を特定していく手順が示されています。  気候変動分野では、上記のSDGs課題全体のバリューチェーンマッピングに加えて、SCOPE1,2,3を活用した、気候変動分野に特化したバリューチェーンマッピングをお勧めします。SCOPE1,2,3算定の基準とするGHGプロトコルのSCOPE3基準は、SDG Compassにおいても個別ゴールに活用可能なマッピングツールの一つとして紹介されています。SCOPE3ではサプライチェーン上でGHGの排出が予想される分野を15のカテゴリに分け、それぞれにGHG排出量を算定していきます。よって、バリューチェーン上で自社が気候変動に与える影響を、漏れなく、定量的に把握することが可能となります。  その後、特に排出が大きい分野(ホットスポット)を優先的に取り組むべき分野として特定します。   ステップ3:目標を設定する 「SBTを参考にGHG排出削減目標を設定する」  SDG Compassでは、アウトサイドインアプローチを用いて、世界的・社会的なニーズに応じた意欲的な目標を設定し、それを公表することが手順として挙げられています。アウトサイドインアプローチの目標設定を支援する取組の一つとしてSBTが紹介されています。  SBTは基準年のSCOPE1,2,3をベースに目標設定をしますので、ステップ2でSCOPE1,2,3把握ができているとスムースに着手できます。  SBTレベルの全社目標を設定したら、ステップ2で特定した優先分野を中心に、目標を細分化していきます。そして、目標ごとに進捗管理が可能となる評価手法を設定します。具体的には、削減活動の成果がGHG排出削減量として現れるような、GHG排出量の算定手法を設定します。(SCOPE1,2,3算定では、算定目的に応じて様々な算定精度や算定範囲を設定します。ステップ2でバリューチェーンマッピングを行う際には、全体像を把握するために、概算でも良いので全体を漏れなく網羅した算定を行うことが大切です。一方、ステップ3で削減活動を評価する際には、より詳細の算定が必要となります。)   ステップ5:報告とコミュニケーション 「CDPやTCFDを活用して進捗を報告」  SDG Compassでは、取組の進捗状況を定期的に外部に報告すること、その際、国際的な基準に沿った報告を行うことが効果的であるとしています。課題別の国際的基準の一つとしてCDPが紹介されています。  CDPは気候変動分野で世界的に浸透している情報開示プログラムの一つです。投資家や取引先の要請を受けて回答している企業がメインですが、自主回答も可能です。また、今後はTCFD提言に沿った開示も国際的なスタンダードになっていく見込みです。    以上のステップを定期的サイクルで行っていくことで、目標への着実な進捗が可能になると考えています。そして、取組の第一歩となるのがSCOPE1,2,3の把握です。    まだ4年目とはいえ、2030年までに残された時間は11年。ぜひ取組のご参考としていただき、SDGsの実現と貴社の持続可能性価値向上に向けた一歩を踏み出していただければと思います。     ※1 詳細は、GCNJ、IGES「主流化に向かうSDGsとビジネス~日本における企業・団体の取組み現場から」(2019年2月)ご参照 ※2 各国がSDGsの取組進捗を報告する場。閣僚級は毎年、首脳級は4年に1度開催 ※3 詳細は【業界動向】企業とSDGs(3)取組手順と参考事例ご参照

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