Column

2024年11月

企業のESG評価

 朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。10月末にもかかわらず台風のニュースが流れるなど、不安定な気候に振り回される日々が続いております。私自身も週末に改めて避難経路や防災セットの確認を行い、災害への備えを整えました。  個人としてはこのように対策を講じておりますが、皆様の会社ではいかがでしょうか。このような災害への備えも企業の気候変動対策(物理リスク)に含まれており、投資家やステークホルダーは「この企業は気候変動にしっかりと備えているか?」という観点から評価を行っています。  このように、企業の取り組みを環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から評価する動きが進んでいます。この評価をESG評価と呼び、結果はESGスコアとして表されます。このESGスコアは投資家の判断やサプライチェーンの選定などにも活用されており、企業価値を高める重要な指標となっています。 以下に、代表的なESG評価の種類をご紹介いたします。 CDP  CDPは2000年にロンドンで設立された環境NGO団体で、気候変動、水セキュリティ、森林減少リスクに関する情報開示のプラットフォームを提供しています。CDPは機関投資家、サプライチェーンメンバー、銀行の要請に基づき、全世界15,000社以上に質問書を送付し、企業はこれに回答することで評価を受けます。CDPの特徴は以下の通りです。   【対象カテゴリ】  気候変動・水セキュリティ・森林(生物多様性・プラスチック) 【評価方法】  業種ごとにカスタマイズされた質問書 への回答 【評価の尺度】  D-~Aまでの8段階+F(無回答企業)で評価 【強み・特徴】  ・スコアリング基準が公開されており、自社の取組状況をベストプラクティスに照らして振り返ることができる。  ・GRIやSASBなどの標準化機関と連携しているため、包括的な情報開示を促進できる。 EcoVadis  EcoVadisは、調達企業に対して自社及びサプライヤーの持続可能性を評価するサービスを提供しています。企業はEcoVadisを通じてサプライヤーに回答を要請し、評価結果を管理やコミュニケーションに役立てることができます。評価は「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野に分かれて実施されています。EcoVadisの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野 【評価方法】  業種と企業規模に応じてカスタマイズされた質問書 への回答と公開されている情報等を踏まえた評価。 【評価の尺度】  0~100の点数制で評価。ランキングに応じてメダルが付与される。 【強み・特徴】  ・調達企業はプラットフォームを通じ、サプライヤーの取組状況を把握するとともに、改善状況等についてコミュニケーションをとることができる。  ・調達企業は評価結果を活用することで、持続可能性の高いサプライヤーを選定することができる。 S&P Global ESG Scores  アメリカの大手金融機関S&P Globalが開示しているESG評価スコアであるS&P Global ESG Scoresは、企業の開示情報、メディアおよびステークホルダー分析、業界固有のアンケート(CSA)を通じて評価されます。S&P Global ESG Scoresの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  環境・社会・ガバナンス全般 【評価方法】  企業の開示情報、メディアおよびステークホルダー分析、業界固有のアンケート(CSA)を踏まえた総合評価 【評価の尺度】  0~100の点数制。 【強み・特徴】    ・質問書だけでなく、企業の財務情報や開示情報も含めた包括的な分析    ・金融市場との連携の強さ Sustainalytics  アメリカの金融サービス企業モーニングスター社の子会社であるSustainalyticsのESGリスクレーティングは、企業の管理不可能なESGリスクの程度を評価し、機関投資家にレーティングを提供しています。また、40を超える産業分類において分野横断的な専門知識を持つ800名以上のアナリストを有しており、日本を含む世界16拠点において、数百社におよぶ世界有数の資産運用会社や年金基金と提携しています。Sustainalyticsの特徴は以下の通りです。 【対象カテゴリ】  環境・社会・ガバナンス全般のリスクに着目 【評価方法】  企業の開示情報に基づいて評価。 【評価の尺度】  0~100の点数制(点数が高いほど高リスクと評価)。 【強み・特徴】  ・機関投資家が財務的に重要(マテリアル)なESGリスク特定・理解することを支援するために設計されている。  ・企業は、サステイナリティクスのESGリスクレーティングの確認、マーケティングやIRへの活用ができる(有償)。 さいごに  このように、ESG評価にはさまざまな種類があります(参考資料参照)。金融サービスによるESG評価は公開資料に基づいて評価されるものが多いですが、CDPやEcoVadisは質問書に回答することで評価が行われるため、必要とされる活動が明確に把握できます。ESG経営にお悩みの際は、こうした評価機関の活用も一つの手段です。当社ではCDP及びEcoVadisの回答支援を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。 参考資料: ESG評価機関等の紹介|日本取引所グループ (執筆者:野村)

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