2018.12.17
サプライチェーン排出量把握のススメ
2018.12.17
御社では、自社の「サプライチェーン排出量」を把握していますか? サプライチェーン排出量とは、原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまで、企業の事業活動に関わる全ての温室効果ガスの排出を網羅した排出量のことです。 地球温暖化対策の推進に関する法律による算定・報告・公表制度では、温室効果ガスを多量に排出する事業者に対し、自社の温室効果ガス排出量を算定し報告することを義務付けています。ですので、「自社の排出量については把握している」という方は多いかもしれません。 「自社の排出量」とは主に、「自社での燃料使用による排出(直接排出)」と「他社から供給されたエネルギー(電力、蒸気、熱など)の使用に伴う排出(間接排出)」です。 例えば、工場のボイラで燃料を燃やす際に発生する排出量や、工場で使用する電気の排出量(その電気を作るために電力会社の発電所で燃料を燃やす際に発生する排出量)などが該当します。 サプライチェーン排出量は、これらに加えて、「自社の事業活動に関係する他社の排出量」も対象とします。例えば、調達先で原料が作られる際に発生する排出量や、原料が輸送会社によって自社まで輸送される際に発生する排出量、製品が消費者によって使われる際に発生する排出量など、自社・他社の境界を問わず、サプライチェーンの全ての工程から発生する排出量を対象とします。その他、生産とは直接関係のない、従業員の通勤や出張、投資やリースに伴う排出量なども含み、まさに企業活動に関わる全ての排出量を網羅したものといえます。 温室効果ガス算定・報告の国際的スタンダードであるGHGプロトコルでは、自社の直接排出を「Scope(スコープ)1」、自社の間接排出を「スコープ2」、それ以外の間接排出(事業者の活動に関係する他社の排出)を「スコープ3」と定義しており、国内でもこの呼び名が浸透しつつあります。サプライチェーン排出量は、このスコープ1、2、3の合計値ということになります。 GHGプロトコルでは、スコープ3を15のカテゴリに分類し、それぞれの算定方法を定めています。国内でも、環境省と経済産業省がGHGプロトコルに整合したスコープ3算定のガイドライン(「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」)を作成し、企業のスコープ3算定を促しています。 近年、スコープ3を含むサプライチェーン排出量を把握し公開する企業が増えています。背景としては、世界的な、企業に対する社会の要求の高まりが考えられます。世界で浸透している気候関連情報開示プログラム「CDP質問書」の他、日経環境経営度調査、環境省「環境にやさしい企業行動調査」、同省「エコ・ファースト制度」などの企業の環境対策を評価する制度でも、スコープ3に関する設問が定着してきました。また、CSR報告書などの情報開示規準の国際的スタンダードであるGRIスタンダードでも、スコープ3排出量の開示を求めています。 社会がサプライチェーン排出量に注目している理由には、その削減ポテンシャルが挙げられると考えられます。CDPサプライチェーン報告書2016|2017によると、メンバー企業の自社排出量とサプライヤー排出量の比率は全業界平均で1:4となるということです。自社の排出を大きく上回る排出量、しかもこれまであまり手をつけられてこなかった分野であるという点が注目を集めていると想像できます。 「環境対策を進めたいが自社の削減はやり尽くした」と感じている企業の方にとっても、サプライチェーン排出量の把握は新たな切り口となるのではないでしょうか。 また、資源やエネルギー利用の削減はコスト削減にもつながります。例えば、サプライヤーと協力して容器包装の軽量化に取り組むと、カテゴリ1の購入した製品や、4・9の輸送、12の廃棄に関する排出量の削減が期待できるだけでなく、調達費用や輸送費の削減にもつながる可能性があります。サプライヤーにとっては、低炭素製品としての売り込みチャンスも期待できます。 サプライチェーン排出量把握に少しでもご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。 (2018年3月執筆)
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