Column

2018年12月

サプライチェーン排出量把握のススメ

 御社では、自社の「サプライチェーン排出量」を把握していますか?    サプライチェーン排出量とは、原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまで、企業の事業活動に関わる全ての温室効果ガスの排出を網羅した排出量のことです。 地球温暖化対策の推進に関する法律による算定・報告・公表制度では、温室効果ガスを多量に排出する事業者に対し、自社の温室効果ガス排出量を算定し報告することを義務付けています。ですので、「自社の排出量については把握している」という方は多いかもしれません。    「自社の排出量」とは主に、「自社での燃料使用による排出(直接排出)」と「他社から供給されたエネルギー(電力、蒸気、熱など)の使用に伴う排出(間接排出)」です。 例えば、工場のボイラで燃料を燃やす際に発生する排出量や、工場で使用する電気の排出量(その電気を作るために電力会社の発電所で燃料を燃やす際に発生する排出量)などが該当します。    サプライチェーン排出量は、これらに加えて、「自社の事業活動に関係する他社の排出量」も対象とします。例えば、調達先で原料が作られる際に発生する排出量や、原料が輸送会社によって自社まで輸送される際に発生する排出量、製品が消費者によって使われる際に発生する排出量など、自社・他社の境界を問わず、サプライチェーンの全ての工程から発生する排出量を対象とします。その他、生産とは直接関係のない、従業員の通勤や出張、投資やリースに伴う排出量なども含み、まさに企業活動に関わる全ての排出量を網羅したものといえます。    温室効果ガス算定・報告の国際的スタンダードであるGHGプロトコルでは、自社の直接排出を「Scope(スコープ)1」、自社の間接排出を「スコープ2」、それ以外の間接排出(事業者の活動に関係する他社の排出)を「スコープ3」と定義しており、国内でもこの呼び名が浸透しつつあります。サプライチェーン排出量は、このスコープ1、2、3の合計値ということになります。    GHGプロトコルでは、スコープ3を15のカテゴリに分類し、それぞれの算定方法を定めています。国内でも、環境省と経済産業省がGHGプロトコルに整合したスコープ3算定のガイドライン(「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」)を作成し、企業のスコープ3算定を促しています。    近年、スコープ3を含むサプライチェーン排出量を把握し公開する企業が増えています。背景としては、世界的な、企業に対する社会の要求の高まりが考えられます。世界で浸透している気候関連情報開示プログラム「CDP質問書」の他、日経環境経営度調査、環境省「環境にやさしい企業行動調査」、同省「エコ・ファースト制度」などの企業の環境対策を評価する制度でも、スコープ3に関する設問が定着してきました。また、CSR報告書などの情報開示規準の国際的スタンダードであるGRIスタンダードでも、スコープ3排出量の開示を求めています。    社会がサプライチェーン排出量に注目している理由には、その削減ポテンシャルが挙げられると考えられます。CDPサプライチェーン報告書2016|2017によると、メンバー企業の自社排出量とサプライヤー排出量の比率は全業界平均で1:4となるということです。自社の排出を大きく上回る排出量、しかもこれまであまり手をつけられてこなかった分野であるという点が注目を集めていると想像できます。    「環境対策を進めたいが自社の削減はやり尽くした」と感じている企業の方にとっても、サプライチェーン排出量の把握は新たな切り口となるのではないでしょうか。 また、資源やエネルギー利用の削減はコスト削減にもつながります。例えば、サプライヤーと協力して容器包装の軽量化に取り組むと、カテゴリ1の購入した製品や、4・9の輸送、12の廃棄に関する排出量の削減が期待できるだけでなく、調達費用や輸送費の削減にもつながる可能性があります。サプライヤーにとっては、低炭素製品としての売り込みチャンスも期待できます。    サプライチェーン排出量把握に少しでもご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。   (2018年3月執筆)      

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世界で進む企業の気候変動対策「Science Based Targets(SBT)」の盛り上がり~

前項の代表あいさつのとおり、国家レベルでは停滞しているようにも見える 世界の気候変動対策ですが、産業界では主要企業を中心に活発な動きが見受 けられます。今回はそのうち「Science Based Targets(SBT):科学的根拠 に基づく削減目標」の盛り上がりについて取り上げたいと思います。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書で示され、パリ協定 で合意された「2℃目標」(今世紀末の世界の気温上昇を産業革命前から2℃ 未満とする)。この目標達成に必要な削減レベルとなっている排出削減目標 を「Science Based Targets(SBT):科学的根拠に基づく削減目標」と定義 し、世界の企業に対し策定を呼びかける運動が盛り上がっています。 (運営者はCDP、国連グローバルコンパクト、WRI、WWF) ちなみに、SBTはWE MEAN BUSINESSの推進するイニシアチブの一つという 位置づけになっています。WE MEAN BUSINESSは、低炭素社会への移行を 目的に、世界の有力企業や投資家、NGO、国際機関などが結束した連合体。 企業が取り組むべき10の気候変動対策イニシアチブを取りまとめ、賛同 企業を募っています。再生エネルギー電力100%での事業運営を推進する RE100もそのうちの一つです。 2014年に始まったSBTですが、現時点で既に289社の賛同を得ています。 (「SBT認定済」「策定宣言のみ」を含む。前述10のイニシアチブの中で 最多の賛同数。)2016年にはCDP質問書の中にSBTに関する項目が追加さ れ、国内でも浸透し始めているようです。現時点の国内賛同企業はソニー、 キリンなど36社。(うち「SBT認定済」は7社。)CDP気候変動レポート 2016:日本版によると、回答企業の半数が「今後SBT策定を検討している」 と回答しており(総量目標のSBT策定に対する回答)、賛同企業数は今後 ますます増えていきそうです。 SBTへの賛同を希望する企業は、まずコミットメントレターを提出し、SBT 策定に取り組むことを宣言します。その後2年以内に目標を策定、運営者の 審査を受け、基準を満たしているとSBTとして認定されます。バウンダリ― (対象範囲)はスコープ1、2排出量です。スコープ3排出量が全体の40% 以上を占める場合はスコープ3も対象となります。目標年には5~15年先を 設定します。 目標策定のアプローチには、セクター(業界)ベース、総量ベース、原単位 ベースの3つがあり、それぞれに具体的な方法論が数種類提示されています。 中でも興味深いのは「セクター別脱炭素化手法:Sectoral Decarbonization Approach(SDA)」で、提供されているツールを使い、ベース排出量や目標年 を入力すると、SBT基準を満たす目標値を算出することができます。目標値 は、業界毎のベストプラクティスやそのコスト面も考慮した実現可能な数値 になっているということです。 CO2排出量における企業の影響力は甚大で、例えば日本では全体の排出量の 約8割は企業・公共部門から出るものです。国家の動きを待たずとも、企業 が動けば気候変動対策は大きく動きます。2℃目標を達成するためのカーボン ・バジェット(今後世界で排出できるCO2累積排出量のリミット)を私たち は日々消費しています。SBTは一つ一つの企業がこのバジェットを意識しな がら事業を行っていくことを手助けしてくれます。多くの企業が策定に取り 組まれることを期待したいです。 参考資料: Science Based Targetsウェブサイト http://sciencebasedtargets.org/ WE MEAN BUSINESSウェブサイト https://www.wemeanbusinesscoalition.org/                           (執筆者:山本) (2017年7月18日 メルマガ)

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IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』~2.0℃の先を見据えて~

 先週から国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)がポーランドにて開催されています。 2020年のパリ協定始動に向け、運用ルールについての協議や、各国削減目標の引き上げを目的としたタラノア対話(促進的対話。情報共有を通して取組意欲の向上を目指す)が行われているということです。    それに先立ち、10月8日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が特別報告書『1.5℃の地球温暖化』を発表しました。パリ協定では「世界平均気温上昇を産業革命前と比べ2.0℃より十分低く、1.5℃未満に抑える」という目標に合意がなされましたが、2.0℃の温暖化の影響や排出経路は前年発行のIPCC第5次報告書で明らかになっていたものの、1.5℃のそれは未知でした。そのため、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)がIPCCに報告を求めていたものです。    報告書では、温暖化の現状、1.5℃の温暖化が与える気候変動やその影響(2.0℃の場合と比較して)、1.5℃未満に抑えるための排出経路、温暖化と持続可能な開発の関係性についての研究結果がまとめられています。    まず、温暖化の現状として、世界平均気温は既に産業革命前と比較し約1.0℃上昇しており、現状のペースでは2030~2052年の間に1.5℃に到達することが予測されています。    次に、1.5℃の温暖化では、気候変動(平均気温上昇や極端な高温、豪雨・干ばつなど)やそれが与える影響・リスク(海面上昇、生物多様性損失、食糧・水リスクなど)が2.0℃の場合よりも低くなるということを複数の具体例を挙げて示しています。   【主な具体例】 ・人の居住地域での極端な高温、中緯度地域では1.5℃の場合+3.0℃、2.0℃の場合+4.0℃ ・2100年までの海面上昇は1.5℃の場合0.26~0.77mで、2.0℃の場合よりも0.1m低い  (これにより最大10,000人の海面上昇に関連するリスク回避) ・1.5℃の場合、昆虫の6%,植物の8%,脊椎動物の4%の種の生息域が半減  (2.0℃の場合、昆虫の18%,植物の16%,脊椎動物の8%の種の生息域が半減) ・夏に北極海から氷が消える頻度、1.5℃の場合100年に1回、2.0℃の場合10年に1回 ・サンゴ礁は1.5℃の場合で70~90%減少、2.0℃の場合ほぼ絶滅 ・世界の年間漁獲量、1.5℃の場合150万トン減少、2.0℃の場合300万トン減少 ・2050年までに気候関連リスクに曝され貧困の影響を受ける人々(特に発展途上国などの先住民や農業従事者など)、1.5℃の場合、2.0℃より最大数億人少なく ・気候変動による水不足に曝される世界人口、1.5℃の場合、2.0℃よりも最大50%減少 など    続いて、温暖化を1.5℃未満に抑える排出経路(オーバーシュート無しもしくは限定的※)として、2030年までに人為的CO2排出量を2010年比45%減、2050年までに実質ゼロとする必要があると報告。 (2.0℃の場合、2030年までに20%減、2075年までに実質ゼロ。) そのためには、エネルギー、土地利用、都市、インフラ(交通・建物など)、産業システムにおいて、急速で広範な移行が必要であり、具体例として、2050年までの低炭素エネルギーシェア大幅拡大(電力は2050年に70~85%再エネ化)、産業部門からの排出2050年に2010年比65~90%削減(電化、水素、バイオ由来原料・代替品利用、二酸化炭素回収・利用・貯蔵などを組み合わせて活用)などを挙げています。    現在提出されている各国削減目標では、2030年以降に大幅な削減を行ったとしても1.5℃未満に抑えることはできず、2100年までに3℃の上昇が予想されています。 オーバーシュート無し、もしくは限定的にするためには、2030年までの確実な削減が不可欠であること、それ以上のオーバーシュートは現状の課題からして達成不可能なレベルの規模と速度での二酸化炭素除去に頼らざるを得ないこと、削減が遅くなればなるほどコストが増大し、将来のオプションの柔軟性がなくなり、発展レベルの異なる国々の間での不均衡が拡大することを警告しています。    最後に、持続可能な開発との関係性について、1.5℃の温暖化の場合、2.0℃の場合よりも、持続可能な開発に対して気候変動が与える悪影響をより多く回避できるとのこと。 但し、温暖化対策には持続可能な開発とシナジー(相乗効果)があるものとトレードオフ(引き換え)となるものがあり、前者を最大化し、後者を最小化する必要があるとしています。 (例えば、エネルギー需要や材料消費を減少することは、持続可能性を高めることにもなりシナジーがあるが、吸収量を増やすための新規植林やバイオエネルギー用の農地開発は、適切な管理がされないと生態系保全や食糧確保などの持続可能性を損ねるトレードオフとなるなど。) また、持続可能な開発が、1.5℃未満を実現するための社会変革を助けることになるとも訴えます。国際協力が行われ、不平等・貧困が解決された社会の方が、温暖化対策における課題もコストも小さくなるという理由からです。    報告書はCOP24における科学的資料となり、タラノア対話に活かされることになります。 パリ合意の「1.5℃未満に抑える」という文言は、発展途上国などの温暖化の影響をより強く受ける国々の要望により追加されたと言います。 2.0℃と1.5℃、0.5℃の差が明らかにされた今、特に先進国の国々の削減目標引き上げを求める声がますます強くなることは避けられないことと考えられます。 一方、企業などの非国家主体においても、パリ協定以降、国家以上に活発な取組が行われていますが、こちらの動きにも影響を与えることが予想されます。 パリ協定レベルの削減目標を自主的に定めるScience Based Targets(SBT:科学的根拠に基づく目標・企業版2℃目標)の動きが一例ですが、現状パリ協定レベルとして採用されているのは2℃未満のシナリオです。2050年までに2010年比約40~70%削減し、今世紀後半にゼロとするイメージでしたが、これが1.5℃未満シナリオですと、2030年までに45%削減し、2050年にゼロとする大幅な前倒しが必要となります。 報告書が締約国に承認されたことを発表したIPCCのプレスリリースにおける第2作業部会共同議長デブラ・ロバーツ氏のコメント「これからの数年間はおそらく、私たちの歴史上、最も重要な時期となるでしょう。」は非常に印象的でした。私たちには2℃か1.5℃かの議論に多くの時間を割ける余裕は無く、2.0℃の先である1.5℃を見据えながら、行動を起こし始めなければならない時期が既に来ているのだと感じています。   ※オーバーシュート: ある特定の数値を超えることで、ここでは気温上昇が1.5℃を超えることを指します。 気温上昇は大気中の二酸化炭素濃度に比例しており、一度超えてしまった気温を戻すには二酸化炭素除去に頼らざるを得ないことになります。   参考文献 ・『Global Warming of 1.5℃ Summary for policymakers』(2018)IPCC(英語) ・IPCCプレスリリース「IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約を締約国が承認」国際連合広報センター ・『1.5℃の地球温暖化 政策決定者向け要約の概要』(2018) ・『気候変動に関する政府間パネルの第48回サマリー』(2018)公益財団法人地球環境戦略研究機関他                                                          (執筆者:山本) (2018年12月11日メルマガ)

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プラスチックごみ問題の現状と世界の動き

現代消費社会のあらゆる側面においてプラスチックは必要不可欠な存在です。 しかし近年、適切に処理されなかったプラスチックごみが海洋生物に危害を加えているという事態を受けて、新たな環境問題として世界中がその対策に動き出しています。  国連環境計画(UNEP)環境技術センター(IETC)のレポートによると、世界で生産されているプラスチックは年間約4億トンで(2015年データ)、大半は使い捨て梱包・容器用です。そのうち79%はリサイクルされずに埋立地に廃棄されています。  プラスチックごみとは、ビニール袋やペットボトルのような目に見えるものに限りません。大きさが5mm以下のものをマイクロプラスチックと呼びますが、その起源は大きく2つ考えられます。 1つ目は、製造時点で既に5mm以下の洗顔料や歯磨き粉に含まれるマイクロビーズや洗濯などによって衣類から脱落した合成繊維などです。2つ目は、プラスチック製品が劣化して小さくバラバラになったものです。  こうしたプラスチックごみが川や海に流出し、世界全体で毎年約1,300トンに上ると言われています。特にマイクロプラスチックは有害物質を吸着しやすく、体内に蓄積されると、重大な被害につながる恐れがあると言われています。  国際社会では、2015年エルマウ・サミットで海洋ごみが世界的な問題であることが認識されて以降、毎年サミットで取り上げられています。6月に開催されたシャルルボワ・サミットでは、イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダの5カ国とEUが、自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名しました。 また、EUは2018年1月、「欧州プラスチック戦略」を採択。「2030年までにEU市場に流通するすべてのプラスチック容器包装をリユース・リサイクル可能にする」、「使い捨てプラスチック製品の削減」を目標に掲げました。  こうした国際社会の動きにいち早く反応し、業界大手企業が次々と対策に乗り出しています。 まず、プラスチック製品を大量に消費する外食産業が動き出しました。 マクドナルド(米)は、今年6月、イギリス・アイルランドにある全店舗でプラスチック製ストローを紙製に切り替えることを宣言(2019年までに全店舗で完了見込み)。7月にはスターバックス(米)が、世界28,000以上の店舗で2020年までにプラスチック製ストローの提供中止を発表。既にシアトルの一部店舗ではストローが無くても飲みやすい新型の蓋を導入しています。 日本では、すかいらーくホールディングスが、2020年までに国内外約3,200店でプラスチック製ストローの利用を止めることを発表。年内に「ガスト」約1,370店でストローを廃止し、必要に応じて代替ストローの導入を検討中です。  一般に紙製の容器などはプラスチック製に比べて価格が高いので、できるところから手を着けるというアプローチでストローを選択する企業が多いようです。  消費側が使用を制限する一方、製造側も対策を打ち出しています。 ユニリーバ(英蘭)は、2017年1月に2025年までに「すべてのプラスチック容器をリユース可能・リサイクル可能・堆肥化可能なプラスチックに切り替えること」、「使用するプラスチックの25%以上を再生プラスチックに切り替えること」を宣言。同社が実施した調査結果で明らかになった、環境や社会に配慮した商品を望む消費者のニーズに応えるための目標でもあります。  また、プラスチックに代わる製品の開発も進んでいます。 カネカ(東京・大阪)の「カネカ生分解性ポリマーPHBH」は100%植物由来のバイオプラスチックであり、海でも分解しやすい特徴があります。プラスチック規制が進む欧州からの注文増加を受け、今年8月に生産能力の増強を発表しました。 日本製紙(東京)では、プラスチックからの代替需要を狙った紙製品の開発・販売を推進する組織の新設を発表し、第1弾として「ストロー」のプロジェクトが始動しています。 また、紙なのに酸素・香りを通さないバリア性を持たせた新素材「シールドプラス」は、2017年11月に販売を開始し既にシリアルの容器に採用されています。  このように、今年は世界の国や企業のプラスチックごみ問題に対する活動が目立つようになりました。日本ではまだ意識が低いように感じますが、今後の動きに注視したいです。  EUは「欧州プラスチック戦略」の中で、プラスチック規制を新たな機会の創出と捉え、それによる経済成長とイノベーションの促進も目標に掲げています。このような前向きな捉え方をすると、危機にありながらも、未来が明るく見える気がします。 参考資料: ・相馬隆宏.“海洋プラ対策、規制の先を行け”.日経ESG. 日経BP社. 2018、10、p.22-34. ・吉田鶴子. “やめよう、プラスチック汚染”.国際連合広報センター. 2018.   http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/28946/   (執筆者:山森) (2018年10月03日メルマガ)

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TCFD提言とは? ~脱炭素社会に備えるヒント~

「TCFD提言」というキーワードを頻繁に目にするようになりました。 CDP気候変動質問書2018は、TCFD提言を反映し、質問内容が前年から大きく変わりました。また、6月に発表された環境省による企業向け支援「脱炭素経営による企業価値向上促進プログラム」では、 支援の三本柱のうち1つがTCFD提言への対応支援になっています。 そこで今回は、TCFD提言の概要について整理した上で、投資家対策が必要な企業のみならず、全ての企業に対して、提言が持つ意味について考えてみたいと思います。  TCFDは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Climate related Financial Disclosures)の略で、主要国の財務大臣・中央銀行総裁などで構成される金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)の下に、2015年に設置された作業部会です。  異常気象などの気候変動の物理的影響や、低炭素経済への急激な移行などが、金融システムの安定を脅かす(リーマンショックのような金融危機を招くなど)恐れがあるとして、投資家・貸付業者・保険会社などの金融セクターが、気候関連リスク・機会を適切に評価し、投資判断などに活かすための、情報開示の在り方について検討を重ねてきました。  検討結果を提案としてまとめたものが、TCFD提言です。2017年6月に最終報告書が公表された後、金融セクターや大手非金融セクターを中心に、多数の企業などが提言に賛同し(現時点で世界390団体以上、うち日本25団体。本日時点。TCFD HPより。)、日本の金融庁、環境省も賛同を表明しています。  提言は、社債や株式などを発行する全ての企業に対して、気候関連のリスクと機会に関する情報開示を行うことを推奨しています。  開示項目は大きく、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」の4つに分けられていて、主に、気候関連リスク・機会についての経営者の管理体制・取締役の監督体制(ガバナンス)、短期・中期・長期のリスク・機会の内容と、それが戦略や財務に与える影響と対策(戦略)、気候リスクの管理プロセスと、リスク全般の管理プロセスとの統合状況(リスク管理)、リスク・機会を評価するための指標や、GHG排出量、目標(指標・目標)などについての説明を求めています。  開示媒体には、年次財務報告書が提案されています。主要国の多くでは、社債や株式を発行する企業は、財務報告にて重要なリスクを開示する義務があり(日本では金融商品取引法における義務)、気候関連情報もそれにあたるという考え方です。また、CDPなどの情報開示枠組においても、TCFD提言に沿った開示ができるよう調整を進めるとあり、先述のCDP質問書の改変はその結果と考えられます。  いざ自社のリスク・機会を把握しようとしても、網羅的に把握する難しさがあるのではないかと思います。その点、提言の中には、リスク・機会の分類と定義も示されており参考になります。リスクには、気候変動の物理的影響(異常気象や、高温などの気候パターンの長期的変化による影響など)に関する「物理的リスク」の他に、低炭素経済への移行に伴う様々な変化(政策・規制が強化される、低炭素技術への置き換えが進む、消費者行動の変化など)に関する「移行リスク」も定義されています。機会については、「資源効率性」や「低炭素エネルギー」「低炭素製品・サービス」など、企業にとって機会につながる主要な有望分野が挙げられています。  また、中期・長期のスパンで、リスク・機会やその影響を把握することもハードルが高いのではないかと思います。提言では、シナリオ分析の使用が提案されています。2℃目標や、国別目標などの将来の社会を予測したシナリオをベースとして、その時、自社がどのようなリスク・機会を有し、どのような影響を受けるかを推測する方法です。シナリオは、1つではなく、様々パターンのものを複数分析することで、レジリエンス(強靭性)が強化されるとしています。  以上が提言の概要ですが、提言が求めている情報は、すなわち、「どの企業がリスクに曝されている/機会を有しているのか」「どの企業がリスク・機会に対し、万全の対策を取れているのか」など、金融セクターが、脱炭素社会で生き残り、飛躍する企業を見極めるための情報と言えるのではないかと思います。それは、翻って企業にとっては、脱炭素社会に向け備えるヒントになり得るのではないでしょうか。  提言に沿って、経営戦略の中で気候関連リスク・機会とその影響を把握し、対策を取っていくことは、今後ますます変化していく気候や社会に備えて、リスクを回避し、機会を掴んでいくことであり、 社債や株式を発行している企業だけでなく、全ての企業にとって非常に有益なのではないかと思います。  提言に基づいた開示は、多くの企業が取組を始めたばかりの段階です。 今後、事例収集に努め、具体的な取組事例などについてもご紹介していけたらと思っています。 参考資料: ・TCFD HP https://www.fsb-tcfd.org/ ・TCFDによる提言(最終報告書)(日本語訳) https://www.fsb-tcfd.org/wp-content/uploads/2017/06/TCFD_Final_Report_Japanese.pdf                          (執筆者:山本) (2018年8月24日メルマガ)

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「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」設立!

パリ協定にて世界で共有された脱炭素社会の実現に向けて、企業や自治体、NGOなどの非政府の役割が注目を集めています。  昨年アメリカでは、トランプ政権のパリ協定離脱方針を受けて、気候変動対策に前向きな企業や自治体などが集まり、“We Are Still In”“我々はまだ(パリ協定に)参加している” というネットワークを設立し、非政府による気候変動対策が大いに盛り上がりました。  7/6、日本においても、気候変動対策に積極的な非政府のネットワーク「気候変動イニシアティブ(英名:Japan Climate Initiative)」が、約100団体の参加のもと、設立しました。 設立宣言として、 ・脱炭素社会への転換が成長の機会であることを認識し、 ・京都議定書成立から20年が経ち、世界の気候変動対策の最前線にいる   とは言い難い日本の現状を打破し、日本が国際社会でのコミットメントを高めていく架け橋となる ことが約束されています。  参加メンバーの構成は、約70の企業、約15の自治体、約15のその他団体となっています。RE100参加企業や、SBT認定取得企業、ゼロエミッション宣言をした自治体など、気候変動対策で先進的な取組 を行う団体が多数名を連ねています。  先日、環境省「企業版2℃目標フォーラム」において、多数の企業が脱炭素経営に向けた決意表明をしたばかりですが、それに続いての今回のネットワーク設立。国内の気候変動への取組機運はますます盛り上がりを見せています。御社もこの機運に乗り、脱炭素経営へ向け舵を切りませんか?  弊社もイニシアティブの参加メンバーとして、微力ながら日本の気候変動対策強化に貢献したいと思っております。御社のご参加もお待ちしています!   「気候変動イニシアティブ」概要 <参加メンバー> 先駆的に気候変動対策に取り組む企業、金融機関、自治体、NGOなど 約100団体(詳細はイニシアティブHPご参照) ※設立宣言に賛同する団体であれば参加が可能   <活動方針> (1)日本全体を動かすムーブメントの創出 (最初の契機として10/12「日本気候変動アクションサミット」開催) (2)参加メンバー間での情報共有(セミナーやワークショップ開催) (3)日本の気候変動対策強化に向けた政府との対話展開 (4)日本の非政府の取組の世界に向けた発信と国際連携   <運営体制> 代表呼びかけ人:国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問 末吉 竹二郎 氏 事務局:CDPジャパン、WWFジャパン、自然エネルギー財団 協力団体:日本気候変動リーダーズ・パートナーシップ他 ホームページ:http://japanclimate.org/ 問い合わせ先:気候変動イニシアティブ事務局    (2018年7月11日メルマガ)    

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フェアトレードに関する取組

前回までのメルマガでは「持続可能な開発目標(SDGs)」を取り上げました。 今回は、その実現のための一つの手段として、最近注目を集めているフェア トレードについてご紹介させていただきます。  「フェアトレードとは、対話・透明性・尊重の理念に基づいた取引関係のこと。 フェアトレードは、国際貿易の場における、より公平さを追求する。また、フェア トレードは、不利な立場に追いやられた生産者や労働者に対してより良い取引の機 会を提供し、とりわけ発展途上国の生産者・労働者の権利を保護することを目指し ている。それによってフェアトレードは持続可能な発展にも貢献する。」  上記は、2001年12月にフェアトレードの国際組織である、FLO International、 IFAT、NEWS !、EFTAによって合意されたフェアトレードの定義です。  国際フェアトレード基準は、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)により、「経済」「社会」「環境」の3つの原則のもと設計されて います。この基準の最大の特徴は、生産コストをまかない、かつ経済的・社会的・ 環境的に持続可能な生産と生活を支える「フェアトレード最低価格」※1と 生産地域の社会発展のための資金「プレミアム(奨励金)」※2を生産者に保証 している点です。これらによって生産者は安定した収入を得ることができ、また、 生産技術の向上や機材の購入、または地域の小学校や病院の建設といった社会発展 を実現させることが可能となります。  国際フェアトレード認証の対象となっている製品にはコーヒー、チョコレート、 バナナ、ナッツなどの食品の他、コットン、バラ、サッカーボールなど食品以外 のものもあります※3。 ※1 国際市場価格が下落しても、輸入業者は「フェアトレード最低価格」以上を    生産者組合に保証しなければならない ※2 輸入団体により品物の代金とは別に支払われる、生産地域の経済的・社会的 ・環境的開発のために使われる資金 ※3 詳細はフェアトレードジャパンHPご参照  この中で、チョコレートを例に、フェアトレードとそうでない場合の生産者の 状況を比較してみます。チョコレートの原料はカカオですが、発展途上国では 1,400万人もの人々がその生産によって生計を立てていると言われています。 しかし現状は、中間業者によって低価格で買い叩かれ、多くの生産者が貧しい 生活を強いられています。また、児童労働の温床、農薬の多量な使用による 生産者の健康被害などの問題も深刻です。  フェアトレードでは、フェアトレード最低価格を保証しているため生産者へ 正当な価格が支払われます。それによって生産者の収入を安定させ自立できる よう支援します。また、児童労働を禁止し、環境面でも厳しい基準を設け、危険 な農薬の使用を禁止するなど、自然環境と生産者の健康状態も改善しています。  現在フェアトレード製品は、スーパーマーケットなどで容易に買うことができ ます。それを可能としたのは、国際フェアトレード認証ラベルのしくみです。 このラベルは、原料の生産から完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレード ラベル機構(Fairtrade International)が定めた国際フェアトレード基準を 満たした製品に付けることができます。これによって、消費者がフェアトレード 製品を見分けやすくなり、フェアトレード製品が一般市場で広く販売されるように なりました。  ただ、ここで気をつけたいことは、ラベルはフェアトレード製品であることを 証明する手段に過ぎない、ということです。つまり、ラベルが無くてもフェア トレードである製品はたくさんあります。現在ではラベルの適用範囲は20の製品 カテゴリー、数百の個別商品に及びますが、手工芸品、繊維製品、装飾品などは ラベル対象外です。その理由の一つに、認定手続きにかかる費用負担が大きい ことが挙げられます。輸入団体との間でしっかりとした信頼関係を築いている 生産者にとっては手間、コストを考えると必要性をあまり感じないのかもしれま せん。  フェアトレードへの認知度を高める動きとして、最近ではフェアトレードタウン 運動が世界中で広がっています。その地域の市民、行政、企業が一体となり、 フェアトレードを「まちぐるみ」で広め、根付かせていくことを目的としています。 2000年、イギリス北西部ランカスター州にあるガースタングで世界初のフェア トレードタウンが誕生し、現在では先進国だけでなく、世界30ヶ国以上、2000 以上のフェアトレードタウンが生まれています。日本では熊本市、名古屋市、 逗子市、浜松市が既にフェアトレードタウンとなっていて、さらに他地域でも 目指す動きが広がっています。こうした活動は、フェアトレードへの理解を促進 するだけでなく、地域の絆を深めることにも繋がっています。  SDGsでは先進国だけでなく、途上国を含むすべての国と政府、民間、市民社会 の全ての人たちによる取組の重要性が説かれています。フェアトレード取組は、 まさにこの好例と言えるのではないでしょうか。影響範囲も、SDGsが掲げる 17の目標の大多数と幅広く、期待が持てます。  地球の未来は現代を生きる私たちだけのものではありません。 将来の世代のために、まずは己の行動を見直すところから始めたいと思います。 参考資料: ・フェアトレードジャパンHP http://www.fairtrade-jp.org/ ・FLO(国際フェアトレード認証機構)、IFAT(国際フェアトレード連盟)、  NEWS!(ヨーロッパ・ワールドショップ・ネットワーク)著  EFTA(ヨーロッパ・フェアトレード協会)編(2008)  『これでわかるフェアトレードハンドブック:世界を幸せにするしくみ』  (フェアトレード・リソースセンター訳)合同出版株式会社 ・渡辺龍也(2018)  『フェアトレードタウン:”誰も置き去りにしない”公正と共生のまちづくり』  株式会社新評論   (2018年6月19日メルマガ)

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企業とSDGs(3)取組手順と参考事例

前回のメルマガでは、SDGsの達成に向けて、企業によるビジネスを通じた課題解決への貢献に大きな期待がかかっていること、そしてSDGsに取り組むことは企業にとってもメリットが大きいこと(ビジネス機会の創出とリスク回避)をお伝えしました。  今回は、これからSDGsに取り組もうと検討されている事業者の方向けに、『SDG Compass SDGsの企業行動指針―SDGsを企業はどう活用するか―』(国連グローバルコンパクト他作成、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン他和訳)にまとめられている取組手順について簡単にご紹介するとともに、取組の参考としていただけそうな先進事例や資料などを合わせてご紹介したいと思います。  『SDG Compass』では、企業がSDGsに最大限貢献するための取組手順について、以下の5つのステップに分けて解説しています。 ステップ1:知る まずは、前々回、前回のメルマガで取り上げたような、SDGsの概要や、なぜ取り組むべきなのかについて理解します。   ステップ2:優先課題を特定する  自社のバリューチェーンを俯瞰し、SDGs諸課題に対して、直接的、間接的に、特に大きな負の影響や正の影響を与えている(もしくは与える可能性のある)領域について、大まかに把握する「マッピング」を行います。その際、外部ステークホルダーの意見、社内での内部評価を取り入れることで、把握の精度を高めます。  次に、それぞれの領域において、企業の活動とそれがSDGs課題に与える影響の関係を表す指標※を設定し、影響を定量的に把握します。その上で、影響の規模や可能性、また自社にとってのリスクや機会を踏まえ、優先課題を特定します。 ※SDG Compass HPに、一般的な指標がまとめられています。  (SDG Compass HP(英語)Business Indicators)   ステップ3:目標を設定する  各優先課題において、進捗を管理するためのKPI(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)を選択し(ステップ2で設定した影響評価指標など)、ベースラインと目標を設定します。目標設定にあたっては、アウトサイド・イン・アプローチ※を用いて、野心的な目標設定を行うことで、イノベーションや創造性の促進、宣伝効果や、同業者に働きかけ業界全体を動かす効果が期待できるとしています。 ※アウトサイド・イン・アプローチとは、まず外部的なニーズ(世界、社会の ニーズ)に基づき目標を設定し、その後現状とのギャップを埋める手立てを考えていく手法。   ステップ4:経営へ統合する  目標達成に向けては経営への統合が重要です。なぜ取り組むのかについて社内で理解を共有すること、達成度評価や報酬の体系に組み込むことなどに より、目標を社内に定着させます。全社目標を各部門に落としこむ、部門横断的なプロジェクトチームを設立するなどして、全ての部門を巻き込んで いきます。  さらに、企業単独では効果的な課題解決ができないケースも多々あり、バリューチェーン内や業界内の企業、その他様々な団体(行政、市民など)とのパートナーシップの検討も推奨しています。  組織改革を伴うため、経営トップのリーダーシップが期待されます。 ステップ5:報告とコミュニケーション  取組の進捗状況を定期的に報告します。効果的な報告を行うには、国際的な基準(GRI:Global Reporting Initiative、CDPなど)に沿うことが重要です。  優先課題の決定過程、目標と実績、目標達成に向けた戦略と実践などに関する情報開示を行います。      最後に、先進企業の取組事例と、参考資料をご紹介します。   株式会社伊藤園  「茶畑から茶殻まで」を合言葉にバリューチェーン全体での価値創造に取り組み、第1回ジャパンSDGsアワード「パートナーシップ賞」受賞。 報告書にはバリューチェーンにおけるマッピングがわかり易く示されています。 www.itoen.co.jp/files/user/pdf/company/corporatebook/backnumber/2017/itoen_report_all_2017.pdf (統合レポート2017) 味の素株式会社  Ajinomoto Shared Value(ASV)という独自の社会・環境価値の提供に取り組み、栄養不足による成長不良が深刻な途上国の子供向けサプリメント「KOKO Plus」の開発なども行っています。報告書には、特に課題特定のプロセスなどがわかり易くまとめられています。 https://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2017/ajinomoto_csr17.pdf (サステナビリティデータブック2017) SOMPOホールディングス株式会社  グループCSR-KPIとして社会・環境課題のKPIを設定し進捗を管理。グループ会社の損害保険ジャパン日本興亜株式会社では、気候変動の影響を受ける途上国の小規模農家向け「天候インデックス保険」を開発。報告書には、『SDG Compass』の各ステップに沿った取組内容の詳細や、優先課題毎のKPIと目標、実績も整理されており、参考になります。 https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/files/csr/communications/pdf/2017/report2017.pdf (CSRコミュニケーションレポート2017) グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)HP SDGsページ  『SDGs調査レポート』(日本企業の取組動向と課題をまとめ、取組事例も多数紹介)、『SDG Industry Matrix』(産業・テーマ別に世界の取組事例を紹介)、今回のメルマガで参照した『SDG Compass』など、SDGs関連資料が豊富に揃っています。 http://ungcjn.org/sdgs/index.html  先日、2011年にエジプトで起きたアラブの春の一因が気候変動ではないかと問うドキュメンタリー番組を見ました。デモで叫ばれていたのは、実は「パンをくれ」で、当時アメリカなどの小麦の産地で起きた異常気象により収穫量が激減し、国民の主食であるパンの原料を輸入に頼っていたエジプトで、パンが手に入らずデモに至ったという解説でした。  もともとあった政治や経済の課題に、気候変動が決定的な打撃を与えたような状況だったのではないかと思います。改めて、気候変動が影響を与える範囲の広さ、他の課題と相互に影響し事態を悪化させる複雑さを感じ、SDGsを参考に広い視野を持つことの必要性を実感しました。  今後もSDGsの動向を注視し、弊社としても、達成に少しでも貢献できるような取り組みをしていければと思います。 (執筆者:山本) (2018年5月24日メルマガ)  

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企業とSDGs(2)期待される役割と企業メリット

前回に引き続きSDGs(Sustainable Development Goals)をテーマ にお届けします。今回はSDGs達成に向けて、企業に期待されている役割 と、SDGsに取り組むことによる企業メリットについて取り上げてみたい と思います。    少しおさらいをしますと、SDGsは、国連総会で採択されたアジェンダ 2030の中に示された「世界共通の2030年開発目標」で、開発と名は付く ものの、開発途上国のみならず、全世界のあらゆる社会・経済・環境面 の課題を17のゴールで網羅した「人類・地球の目指す姿」でした。 各ゴールは相互に関係し合っており、統合的な解決が必要であること、 そのためにも、国際機関・政府だけでなく、企業・市民などあらゆる 主体の参加・協働が必要なことが謳われています。    SDGsの中で企業についての記載がある箇所としては、まず、ゴール12 の持続可能な生産・消費があります。「大企業や多国籍企業などの企業 に対し、持続可能な取組を導入し、持続可能性に関する情報を定期報告 に盛り込むよう奨励する」(ターゲット6)と、企業への要求が示されて います。  また、SDGs達成のための実施手段とパートナーシップに関する記載の 中には、民間企業に期待する役割として、「全ての企業に対し、 社会課題解決のために創造性とイノベーションを発揮することを求める」 ということが記されています。(アジェンダ2030パラグラフ67)  前目標のMDGsでは、国際機関や政府が主体となり、ODAなどの 公的資金を用いて取組が行われていました。一方、SDGsは目標の範囲 や規模が大きくなり、これまでの主体や資金では対応しきれません。 そこで、企業の持つ技術や知恵、資金を生かし、ビジネスとして課題解決 に貢献してもらうことに大きな期待が寄せられているのではないかと考えます。  国連グローバルコンパクト他が、企業がSDGsを活用するための行動指針 をまとめた「SDG Compass」では、SDGsに取り組むことで、 企業にとっても多様なメリットがあることを訴えかけています。 数例を以下にまとめてみます。  一つ目は、ビジネス機会の創出が期待できるという点。 SDGsが示す社会課題の解決は世界共通のニーズであり、解決につながる 技術や商品・サービスを開発できれば、新たな市場の開拓が期待できます。 特に、省エネ・再エネに関する革新的技術、情報通信技術などを活用した CO2排出量の少ない技術、貧困層向けの生活改善(保険医療・教育・金融 など)製品・サービスなどが期待されるとのこと。さらに、SDGsは、 投資を持続可能性に資する方向に誘導することを目的としており※、 課題解決に取り組む企業は資本へのアクセスが容易になるというメリット も期待できるとしています。    二つ目は、企業の持続可能性に関わる価値の向上が期待できるという点。 SDGsへの取組が、操業の効率化(資源の節約など)につながったり、 企業のブランド力を高め、結果として、売上の向上・優秀な人材の獲得・ 従業員の意欲アップ・地域社会などとの良好な関係などにつながる効果が 期待できるとしています。逆に、取組が不十分な場合には、不祥事や、 顧客・地域社会からの信頼失墜のリスクなども考えられます。    三つ目は、政策と方向性を合わせることで対応力が構築できるという点。 SDGsは今後の政策の方向性を示しており、これに率先して取り組むことで 将来規制強化などがあった場合に発生しうるコスト高騰や制約に未然に対応 することができるというものです。 (社内カーボン・プライシングなどが良い例と言えます。)  「SDG Compass」では、企業がこれらのメリットを生かし、 自社としての成功も収めながら、SDGsの達成に最大限貢献をしていくため の取組ステップが示されています。 次回はその内容について取り上げてみたいと思います。 (次号に続く) ※SDGs達成に必要な資金は数兆ドルに及び、民間の投資をいかに持続  可能性に資する方向に誘導するかが極めて重要であるとされています。  (国際連合広報センターHP)  関連する動きの一つとして、ESG投資推進に向けた投資家のイニシアチブ  国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment:PRI)  が2017年に公開した「責任投資のビジョン」があります。  向こう10年間のビジョンを示したものですが、 その中に「SDGsの実現」が盛り込まれており、SDGsに沿った投資活動  を行うための手順の整備やツールの開発を行うことが宣言されています。  近年高まりを見せるESG投資の中に、SDGsも組み込まれていく方向に  進んでいきそうです。 参考資料: ・外務省「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」  www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf ・GRI・国連グローバルコンパクト  「SDG Compass SDGsの企業行動指針-SDGsを企業はどう活用するか」  (グローバルコンパクトネットワークジャパン・地球環境戦略研究機関和訳)  http://ungcjn.org/sdgs/pdf/SDG_COMPASS_Jpn.pdf ・PRI「責任投資のビジョン」  https://www.unpri.org/download?ac=2973                          (執筆者:山本) (2018年4月23日メルマガ)

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企業とSDGs(1)SDGs概要と国内動向

2015年といえば、パリ協定が採択され、気候変動分野において転換点となる 年になりましたが、同年、環境・CSR分野ではもう一つ大きな動きがありました。 「持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals(SDGs)」の採択です。 (2015年9月の国連サミットにて採択) 以降、SDGsというキーワードを頻繁に目にするようになったと感じている方々 も多いのではないでしょうか?そこで、今回から数回に分けて、SDGsをテーマに 取り上げ、主に企業としてのSDGsとの付き合い方について掘り下げていきたいと 思います。1回目の今回はSDGsの概要と国内の動きをおさらいします。  持続可能な開発目標(SDGs)とは、持続可能な世界の実現のため解決すべき 課題と目標を集めた、開発分野の世界共通目標です。2030年をターゲットに、 それまでに達成すべき17の大きな目標(ゴール)とその下に属する169のより 細かな目標(ターゲット)を設定しています。  17のゴールは「貧困、飢餓、健康・福祉、教育、ジェンダー、水・衛生、 エネルギー、経済成長と雇用、インフラ・産業化・イノベーション、不平等、都市、 消費と生産、気候変動、海洋資源、陸上資源、平和、パートナーシップ」と非常に 多岐に渡る分野から構成されています。    SDGsの前の世界共通目標として、ミレニアム開発目標(MDGs)がありました。 こちらは2015年をターゲット年として、発展途上国特有の課題(極度の貧困、母子 保健、衛生問題等)を中心に8つのゴールを設定し、一定の成果を上げました。 SDGsはMDGsの未達成分を継承するとともに、新たに、先進国を含む全ての国に 普遍的な課題(健康や不平等など)と、社会分野を越えた経済・環境分野の課題を 追加した、より広く横断的な目標となっているのが特徴です。また、活動主体として、 国や政府機関のみならず、企業やNGO等の民間セクターの役割も重視しています。  2015年の採択以降、国内では、2016年に内閣に「SDGs推進本部」を設置、 同年、国内戦略をまとめた「SDGs実施指針」を決定しました。2017年には、 経団連がSDGsの達成を柱として企業行動憲章の改定を行うなど、官民を挙げて の取組が進められています。  (次号に続く) 参考文献: 外務省HP SDGs(持続可能な開発目標) 持続可能な開発のための2030アジェンダ http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html 首相官邸HP 持続可能な開発目標(SDGs)推進本部 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/ 日本経済団体連合会HP 企業行動憲章の改定にあたって http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html                           (執筆者:山本) (2018年2月28日メルマガ)

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