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SCOPE1,2,3把握から始めるSDGs13「気候変動に具体的な対策を」の取組

  今年はSDGs実施開始から4年目に当たります。

国連グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が発行しているSDGs調査レポートの最新版によると、昨年2018年は国内において、大企業を中心とした民間企業等で経営層の認知度が大幅に高まり、実行のための体制づくり等にも進展が見られた、また多くの省庁でSDGs関連の取組が始動する等、「SDGs主流化へ向かい出した年」であったということです。(※1)

 9月には国連ハイレベル政治フォーラムの初の首脳級会合(※2)が予定されており、ますますの盛り上がりが期待されます。
 そこで今回は、SDGsへの貢献に向けて本格始動される企業等の皆様へ、弊社が考える、SCOPE1,2,3を活用したSDGs13「気候変動に具体的な対策を」達成のための取組について、ご紹介したいと思います。

 

 前述のレポートによると、企業のSDGs取組において、取組の進捗報告と評価の方法の確立が世界共通の課題の一つとのこと。国内企業においても、定量的な指標などの評価手法がわからないことを課題と感じている企業は多いようです。
 その点、気候変動(特に緩和対策)に関しては、定量化の手法が比較的確立しており、すぐに着手していただき易い分野の一つではないかと考えています。具体的には、気候変動の主要な原因である温室効果ガス(GHG)の排出量を算定報告するための国際基準「GHGプロトコル」が世界的に定着しています。さらに、GHGプロトコルに準拠する形で、2℃目標に沿った目標設定を支援するSBT(Science Based Targets:企業版2℃目標)や、CDP等の気候関連情報開示プログラム等、目標設定や報告の手法についても整備されており、SDGsの取組にあたって活用いただけるツールが比較的揃っていると言えるのではないかと思います。

 

 以下に、弊社が考えるSDGs13への具体的取組内容を、SDG Compassの取組ステップ(※3)に沿って簡単にまとめてみたいと思います。(ステップ1と4はSDGs課題全体と共通のため割愛します。)

 

ステップ2:優先課題を特定する

「SCOPE1,2,3を把握して、気候変動分野の中の優先取組分野を特定する」 

 SDG Compassでは、バリューチェーンマッピングを用いて、自社のバリューチェーンの中でSDGs分野に与える正負の影響を把握した後、影響を定量的に評価し、優先課題を特定していく手順が示されています。
 気候変動分野では、上記のSDGs課題全体のバリューチェーンマッピングに加えて、SCOPE1,2,3を活用した、気候変動分野に特化したバリューチェーンマッピングをお勧めします。SCOPE1,2,3算定の基準とするGHGプロトコルのSCOPE3基準は、SDG Compassにおいても個別ゴールに活用可能なマッピングツールの一つとして紹介されています。SCOPE3ではサプライチェーン上でGHGの排出が予想される分野を15のカテゴリに分け、それぞれにGHG排出量を算定していきます。よって、バリューチェーン上で自社が気候変動に与える影響を、漏れなく、定量的に把握することが可能となります。
 その後、特に排出が大きい分野(ホットスポット)を優先的に取り組むべき分野として特定します。

 

ステップ3:目標を設定する

「SBTを参考にGHG排出削減目標を設定する」

 SDG Compassでは、アウトサイドインアプローチを用いて、世界的・社会的なニーズに応じた意欲的な目標を設定し、それを公表することが手順として挙げられています。アウトサイドインアプローチの目標設定を支援する取組の一つとしてSBTが紹介されています。
 SBTは基準年のSCOPE1,2,3をベースに目標設定をしますので、ステップ2でSCOPE1,2,3把握ができているとスムースに着手できます。
 SBTレベルの全社目標を設定したら、ステップ2で特定した優先分野を中心に、目標を細分化していきます。そして、目標ごとに進捗管理が可能となる評価手法を設定します。具体的には、削減活動の成果がGHG排出削減量として現れるような、GHG排出量の算定手法を設定します。(SCOPE1,2,3算定では、算定目的に応じて様々な算定精度や算定範囲を設定します。ステップ2でバリューチェーンマッピングを行う際には、全体像を把握するために、概算でも良いので全体を漏れなく網羅した算定を行うことが大切です。一方、ステップ3で削減活動を評価する際には、より詳細の算定が必要となります。)

 

ステップ5:報告とコミュニケーション

「CDPやTCFDを活用して進捗を報告」
 SDG Compassでは、取組の進捗状況を定期的に外部に報告すること、その際、国際的な基準に沿った報告を行うことが効果的であるとしています。課題別の国際的基準の一つとしてCDPが紹介されています。
 CDPは気候変動分野で世界的に浸透している情報開示プログラムの一つです。投資家や取引先の要請を受けて回答している企業がメインですが、自主回答も可能です。また、今後はTCFD提言に沿った開示も国際的なスタンダードになっていく見込みです。

 

 以上のステップを定期的サイクルで行っていくことで、目標への着実な進捗が可能になると考えています。そして、取組の第一歩となるのがSCOPE1,2,3の把握です。

 

 まだ4年目とはいえ、2030年までに残された時間は11年。ぜひ取組のご参考としていただき、SDGsの実現と貴社の持続可能性価値向上に向けた一歩を踏み出していただければと思います。

 

 

※1 詳細は、GCNJ、IGES「主流化に向かうSDGsとビジネス~日本における企業・団体の取組み現場から」(2019年2月)ご参照

※2 各国がSDGsの取組進捗を報告する場。閣僚級は毎年、首脳級は4年に1度開催

※3 詳細は【業界動向】企業とSDGs(3)取組手順と参考事例ご参照

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はじめに    サステナビリティ担当者の方から、「うちの会社に、ESGは本当に必要なのか」と社内で問われて困っている、という話を聞くことがあります。経営会議で予算を説明するたびに費用対効果を問われ、事業部門に協力を求めれば本業ではないと言われ、統合報告書は毎年分厚くなるものの株価が動いた実感はない、という状況です。 この問いに対して、社会的責任だから、時代の要請だから、と答えても担当者の助けにはなりません。社内で必要とされているのは理念ではなく、経営会議のテーブルで通用する言葉だからです。本稿では、ESG対応への支出が何に効きうるのかを整理し、それを社内でどう置くかを考えます。 なお、本稿はESGへの取組みが企業価値を高めることを実証するものではありません。議論の場所を示すための、単純化した見取り図としてお読みいただければと思います。                         社内で聞かれる「ESGは必要か」という問い 社内で聞こえてくる声には、業種によってはっきりした傾向があります。 製造業では、GHG削減は結局のところ設備投資であり、省エネ設備への更新も燃料転換もコストがかかる、コストは増えるが価格には転嫁できない、海外の競合が対応していない以上、真面目に取り組むほど不利になるのではないか、という形で出てきます。製造業以外では、そもそも自社の排出はほとんどない、オフィスの電気を再エネに切り替えたところで数字は動かない、開示資料や質問票への回答に何日もかけているが開示のための開示になっているのではないか、という逆の形をとります。 これらは感情的な反発ではなく、今期の損益に責任を負う立場からすれば、まっとうな問いであるといえます。ESG対応の多くは支出が先に立ち、効果は測りにくく、時間軸も長いため、費用対効果が見えないという指摘は、感覚としては正しいところがあります。 一見すると正反対の不満ですが、構図は共通しています。どちらも、ESG対応を今期の損益だけで評価している点です。今期いくら出ていくのか、それに見合う売上はあるのか。売上に直結するESG施策を持っている会社は多いとはいえず、この評価軸の上では、ESG担当者は苦しい立場に置かれることになります。 なお、排出量が少ない会社は「ESGが関係ない会社」ではなく、「Eの比重が相対的に小さい会社」と考えるほうが実態に近いといえます。ガバナンスの実効性、人材の獲得と定着、研究開発への投資判断などは、製造設備を持たない企業にも存在するためです。ただし、Eの比重が小さいことと、Eを見なくてよいことは別です。自社の直接排出が少なくても、上流の排出や調達先の環境リスクが事業継続に影響する場合があります。本稿では以下、業種を分けずに議論を進めます。 問いそのものが間違っているというよりも、議論している場所が一つしかないのではないか。本稿の出発点はここにあります。 その支出は、どこに、いつ効くのか 社内でESG対応が否定される場面で問われているのは、たいてい一つのことです。この施策で今期の売上や利益がいくら増えるのか。環境規制への対応が今期の営業利益を増やすとは多くの場合考えにくく、この問いに正面から答えるのは困難です。 ただし、支出が効きうる先は今期の損益だけではありません。手がかりになるのは、開示基準がリスクと機会の範囲をどう画定しているかです。サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の適用基準には、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会」という用語の定義が置かれています(第4項(6))。短期、中期又は長期にわたり、企業のキャッシュ・フロー、当該企業のファイナンスへのアクセス又は資本コストに影響を与えると合理的に見込み得るもの、という定義です。 注意が必要なのは、これが開示の対象範囲を定めるための定義であって、ESG施策がこの三つに効くと述べたものではないという点です。ただ、企業の見通しに影響しうるものを拾い上げる際の物差しとして、この三つが置かれていることは確かです。本稿では、この三つの区分を、支出の効き先を整理するための枠として用います。 この三つは、性質が異なります。キャッシュ・フローは、将来の現金の出入りです。炭素価格が導入されれば燃料の支払いが動きますし、顧客の要求に適合できなければ受注が動きます。ファイナンスへのアクセスは、資金調達の可否と条件です。資本コストは、投資家がその会社に対して要求するリターンで、これについては次章で扱います。 押さえておきたいのは、この定義が三つを並列に置いていることです。企業の財務への効き方は一通りではありません。そして、どの時期に表れるかは、施策の内容や市場の反応によって異なります。三つのあいだで順序が決まっているわけでもありません。 ここから、本稿が提案する見方は次のものです。今期の損益では費用に見える支出も、この三つのどこかに、いずれかの時間軸で効く可能性がある。どこに、いつ効くのかを示せれば、社内の議論に乗る余地が生まれます。逆に、それを示さないまま必要性だけを説けば、今期の損益という一つの軸で評価されるほかありません。 これは証明された命題ではなく、議論をどこで行うかについての提案です。実際にどの経路へどれだけ効くのかは、施策ごとに検討するほかありません。   資本コストという経路と、その限界 資本コストとは、投資家がその会社に対して要求するリターンのことです。投資家がこの会社は不確実性が高いと判断すれば、より高いリターンを要求します。要求リターンが高いということは、同じだけ将来の利益を生む会社であっても、投資家から見た現在の価値は低くなるということです。逆に言えば、投資家から見た不確実性が小さい会社では、要求リターンも低くなりえます。 制度の側の後押しについて触れておきます。東京証券取引所は2023年3月、プライム市場およびスタンダード市場の全上場会社に対して、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、取締役会で現状を分析・評価したうえで、改善に向けた計画を策定・開示することを求めるものです。規則上の義務付けではありませんが、東証によれば2026年3月末時点で、プライム市場の93%、スタンダード市場の53%で開示が行われています。 ここで正確に押さえておく必要があるのは、この要請が資本コスト全般についてのものであり、ESGについて述べたものではないという点です。東証がESGを求めていると読むのは行き過ぎとなります。 そして、ここから先が難しいところです。気候変動に伴う規制強化、炭素価格の導入、サプライチェーン上の人権リスク、水資源の制約といった要因は、いずれも将来のキャッシュ・フローを毀損しうるものであり、手を打っている企業と打っていない企業を投資家が同じように評価するとは考えにくいといえます。しかし、投資家は一般に多数の銘柄に分散投資しており、ある一社に固有の不確実性は、ポートフォリオ全体で見れば他の銘柄の動きと相殺され、薄まっていきます。したがって、自社の不確実性が減ったことが、そのまま投資家の要求リターンの低下を意味するとは限りません。この点は専門家のあいだでも長く議論が続いており、決着していません。 そのため、社内で説明する際に、ESG対応で資本コストが下がると言い切ることは避けたほうがよいと考えます。財務部門は資本コストを一定の手順で算定しており、そこにESGの取組みを直接反映させる確立した方法は、現時点では存在しません。投資家の見方に影響しうる要因の一つ、という水準にとどめるのが現実的です。 影響の大きさについても、一般解はありません。ESGへの取組みと資本コストの関係については定量分析が複数公表されていますが、対象も期間も手法も異なり、ESGスコアが1上がれば資本コストが何%下がるといった普遍的な係数が確立しているわけではありません。さらに、仮にESGに積極的な企業ほど資本コストが低いという関係が観測されたとしても、それがESGの効果とは限らず、もともと収益基盤が安定していて余裕があるからESGに投資できている、という逆の説明も成り立ちます。 整理すると、資本コストは、制度の側からは最も強く求められている一方で、三つの効き先のなかでは結びつきが最も確かめにくい、という位置にあります。社内で持ち出す入口としては通りやすく、しかし詰められたときには最も弱い、ということでもあります。 残る二つ、キャッシュ・フローとファイナンスへのアクセスについては、事情が違います。炭素価格が導入されたときに自社の燃料の支払いがどう動くか、顧客の要求に適合できなかった場合に受注がどうなるかは、前提を置けば自社で試算できる範囲にあります。資金調達の条件についても、金融機関との実際のやりとりがあります。確実とはいえないにせよ、資本コストよりは手元で確かめやすい経路です。 経済産業省が2022年8月に公表した「価値協創ガイダンス2.0」は、企業が、リスクと機会の両面から社会のサステナビリティを経営・事業活動へ織り込むことを迫られている、と述べています。外部環境の変化に係るリスクに対応するだけでなく、中長期的な価値向上に向けた事業機会の探索を行うことによって、という趣旨です。この文書も、ESG対応をすれば資本コストが下がると保証しているわけではありません。述べているのは、サステナビリティが企業の長期的な稼ぐ力に関わる問題になったという認識です。 それでも注目に値するのは、ここでリスクが先に置かれている点です。ESGを新しい収益機会としてだけ語ると、多くの会社では話が続きません。将来の不確実性への対応として語るのであれば、先に挙げた三つの効き先のいずれかに結びつけて話を進めることができます。 社内でESG投資は費用だと言われたとき、その支出が費用として計上されるのであれば、今期の利益は減ります。資産として計上される場合は、取得の時点では費用にならず、その後の減価償却などを通じて費用になります。いずれにしても、今期の損益に引き寄せた見方であることは変わりません。その支出が将来どこに働くのかを示せるかどうかは別の問題で、そこが分かれ目になると考えます。   ESGは、対話の議題になっているか ここまでの議論には、実務上の但し書きが要ります。投資家との対話の場でESGの話は出てこない、という声を、企業のご担当者から聞くことは少なくありません。決算の内容、資本効率、成長戦略、株主還元が中心で、サステナビリティは別枠の説明会に回されるか、そもそも議題に上がらない、という状況です。統合報告書を厚くしても株価が動いた実感がないという感覚の背景には、伝え方が十分でないという以前に、その話が対話の議題に入っていないという事情があると考えられます。 制度の側では、対話は前提とされています。東証の要請は、計画を策定・開示したあとも投資者との対話の中で取組みをアップデートしていくことを求めていますし、経済産業省の「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」も、投資家等との建設的な対話を通じた変革の加速を重視しています。それでも、その対話の議題にESGが入っているとは限りません。ESGへの取組みと資本コストを結びつける確立した方法がない以上、企業側にも投資家側にも、それを議題として扱う共通の手順がないためだと考えられます。 ここから二つの読み方ができます。一つはESGが企業価値に関係がないという読み方、もう一つは、効果の大きさを測る方法がまだ整っていないという読み方です。議題に上がっていないという事実自体は、そのどちらとも両立します。本稿が採るのは後者ですが、これは実証された命題ではなく、提示する一つの見方にすぎません。 そう考えると、担当者が当面置くべき目標も変わってきます。対話の議題にESGを載せること自体を目標にすると、多くの場合、成果は出ません。現実的なのは、聞かれたときに答えられる状態にしておくことと、すでに議題になっている項目の側から接続することの二つです。設備投資計画、操業継続上のリスク、調達先の見直しといった項目は、もともと対話の対象になりやすく、サステナビリティの取組みの多くはそこに接続できます。 いずれの場合も、どの経路に、どのくらいの時間軸で、どの程度効くのかが特定されていれば、話は接続しやすくなります。排出量を何年までに何%削減するという記述だけでは、受け取った側から次に問えることがありません。その削減が自社のどの支払いに効くのか、どこまでが手当て済みで、どこから先が未定なのかまで書かれていれば、話は続きます。 まとめ 今回は、ESG対応をどこで評価するかという観点から整理しました。今期の損益だけで見れば、ESG対応の多くは費用です。しかし、企業の見通しに影響しうるものとして開示基準が挙げているのは、キャッシュ・フロー、ファイナンスへのアクセス、資本コストの三つで、時間軸も短期から長期にわたります。本稿は、この区分を支出の効き先を整理するために用いました。基準がESG施策の効果を保証しているわけではありませんが、社内で話をするときの共通の言葉にはなります。 この見方が当面いちばん役に立つのは、投資家との対話の場ではなく、社内の議論の場であると考えます。効き先と時間軸を具体的に示すことで、今期の売上がいくら増えるのかという問いだけで評価される状態から抜け出せます。東証の要請によって資本コストが全上場会社の経営課題として設定されていることも、社内では使える材料です。 一方で、社内の説明に「投資家が求めているから」を持ち出すことには慎重であったほうがよいと考えます。ESGをやれば企業価値が上がると言い切る資料と同じで、社内で一度は歓迎されても、実際の対話の内容と食い違えば、詰められた段階で崩れます。本稿が断定を避けてきたのもそのためで、曖昧さを残したまま議論の場に乗せるほうが、長い目で見れば担当者の立場を守ることになると考えます。 ESG対応をコストとしてのみ評価することは、その支出が効きうる先の一部しか見ていないことになります。ほかの効き先について語る余地はありますが、その語り方が確立しているわけではありません。自社の事情に即して、どこにどう効くのかを組み立てていくところに、担当者の仕事があるのだと思います。 参考資料 東京証券取引所/日本取引所グループ ・「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」(2023年3月31日) https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html ・「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)」(フォローアップ情報) https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/02.html ・「『資本コストや株価を意識した経営』に関する要請のアップデートについて」(2026年4月28日) https://www.jpx.co.jp/news/1020/20260428-01.html サステナビリティ基準委員会(SSBJ) ・サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(2025年3月5日公表、2026年3月13日改正)第4項(6) https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/20260313_01.pdf 経済産業省 ・「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」(SX研究会報告書、2022年8月31日) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/itoreport3.0_r.pdf ・「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0(価値協創ガイダンス2.0)」(2022年8月) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance2.0.pdf ・価値協創ガイダンス 解説ページ https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ESGguidance.html (執筆者:久保(隆))   【ウェイストボックスの関連サービス】 ・組織の排出量把握と情報開示支援|株式会社ウェイストボックス ・アドバイザリーサービス|株式会社ウェイストボックス

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SBTネットゼロ基準v2に向けて、今から何を準備する? 2022~2024年に2030年目標でSBT認定を取得した企業の皆様へ

SBTネットゼロ基準v2を、「知る」段階から「自社で動く」段階へ  2026年6月にネットゼロ基準v2がリリースされて以降、様々なウェビナーや解説記事を通じて、「何が変わるのか」については一通り情報収集された企業の皆様も多いのではないでしょうか。 一方で、最近私たちが企業の皆様とお話ししている中で非常に多いのが、「基準の内容は何となく分かった。でも、結局自社はいつから、何を始めればいいのでしょうか?」というご質問です。 私たちは、現在も常に複数のSBT支援案件を抱えており、またSBT取得後も年間契約で継続的にご支援している企業の皆様と、ネットゼロ基準v2に向けた準備について日々お話ししています。企業の皆様との会話を通じ、SBTiの基準で何が要求されているのかということだけでなく、企業の皆様が実際にその要求を自社の実務に落とし込もうとしたとき、どこで困るのかということも少しずつ見えてきました。 本記事では、2022年、2023年、2024年に2030年目標でSBT認定を取得済みの企業の皆様を主な対象として、必須の5年レビューやネットゼロ基準v2での目標申請を見据え、どのように実務を進めていくのかを整理していきたいと思います。 10月に入り、v2申請に向けた準備がかなり具体的にできるようになりました ネットゼロ基準v2での目標提出受付開始を約4か月後に控え、10月初めには、ネットゼロ基準v2での目標提出時に必要となる情報の詳細がリリースされました。 ネットゼロ基準v2の6月リリース時にも、「企業ネットゼロ基準v2向け最低限必要なエビデンス(暫定版)」というドキュメントで、目標提出時に各要件に対して必要となるエビデンスの概要は示されていましたが、今回10月には、Submission Formの形式でより企業の皆様に分かりやすい形で示されています。これはまだ最終決定版ではないということではありますが、かなり事前準備の助けになる印象です。 また、これに先立ち8月には、必須の5年レビューガイダンスの改訂がありました。ここでは、更新が必要だということを認識している企業、つまり最新の基準に適合していないことが分かっている企業については、必須の5年レビューの提出を省略し、直接新しい目標の提出に進むことができるということが追加で規定されました。ここで、新しい目標の提出期限がトリガー日から1年以内、という点については変更ありません。 そのため、まずは自社の現在のSBT認定目標が、「いつ5年レビューの時期を迎えるのか」を確認するところから始める必要があります。 まずは、自社の「5年レビュートリガー日」を確認 具体的には、2022年に2030年目標年でSBT認定取得し、その後目標更新等を行っていない場合は、通常は認定目標公開日の5年後の月末、つまり2027年の認定月月末がトリガー日となります。 2027年についてはネットゼロ基準v1.3.1とv2.0の併用期間となりますので、現在の目標がv1.3.1に合致している場合は、必須の5年レビューフォームを提出して「新たな目標が不要である」の判定を受けることになります。 一方で、ネ ットゼロ基準v1.3.1にも明らかに合致していないことが企業側で分かっている場合は、v1.3.1あるいはv2.0での目標設定が必要になりますので、必須の5年レビューの提出を省略して、直接トリガー日の1年後までに目標提出を行うことができるという内容になります。ただし、ネットゼロ基準v1.3.1に基づいた目標を提出できるのは2028年1月までとなっておりますので、ご注意ください。 一方、2023年(2月以降)や2024年に2030年目標年でSBT認定取得した企業の皆様は、対応が異なってきます。この企業の皆様は、5年後のトリガー日にはネットゼロ基準v2.0適用義務化となっている時期に該当します。そのため、そのまま5年レビューを実施するとv2.0に対して不適合と判定される可能性が高いですが、一方で同ガイダンスでは、トリガー日から2年以内に目標年がある場合は免除を申請し、5年レビューの完了を省略することができるというルールがあります。この免除申請がSBTi Servicesより承認された場合には、必須の5年レビューを免除し、目標年の翌年末までに新たな目標を提出することが可能です。2030年目標であれば、例えば2031年末までの提出となります。 この辺りは、「2022年取得だからこう」「2024年取得だからこう」と認定年だけで判断するのではなく、実際の目標公開日と目標年を確認したうえで、自社の場合どのルートになるのかを整理いただくのがよいと思います。 必須の5年レビュー自体は、それほど難しいものではありません 必須の5年レビューはどのようなものか、については、必須の5年レビューマニュアルがありますので、そちらを参考にしていただくと分かりやすいです。弊社も2020年にSBT取得済みですので、実際に5年レビューの提出を行い、「新たな目標が不要である」の判定を受けています。どのようなレビュー項目があるのかについては、マニュアル内に具体的な質問項目と回答例が掲載されています。目標の更新が必要だとあらかじめ分かっている場合は5年レビューを省略することもできるため、フォームを提出するのは主に既存の目標が基準に適合している企業となり、基本的には回答例に近い回答を行っていくことが想定されます。そのため、難易度としてはSBTの申請ほど高くはありません。ただし、エビデンスとして年次報告等の添付が要求されている点には注意が必要です。 現在のところ提出方法は2種類用意されており、SBTi Services Validation Portalあるいは専用のオンラインフォームからの提出となります。特に2022年~2024年前半頃にSBTに目標提出された企業の皆様は、SBTi Services Validation Portalへの登録を行っていない場合も多いと思います。SBTi Services Validation Portalへの企業登録にはSBTi Servicesの審査が入ることから、一定の時間を要します。現時点では専用のオンラインフォームからの提出も可能ですが、今後Validation Portalへの一本化の可能性も否定できませんので、必須の5年レビュートリガー日が近づきましたら、最新情報をご確認いただくことをお勧めいたします。 では、ネットゼロ基準v2に向けて何を準備すればよいのでしょうか ここからは、ネットゼロ基準v2申請に向けてどのような準備を進めればよいか、という点に触れていきます。 私たちが最近よく感じるのは、ネットゼロ基準v2の概要について理解されている企業はかなり増えている一方で、それを実際の自社のスケジュールに置き直すところで、少し難しさが出ているということです。例えば、「第三者保証が必要になる」ということはご存じでも、「では何年度のデータで保証を取る必要があるのか?毎年?」「何のデータに対しての保証が必要なのか?」「このデータを実際第三者保証機関は保証してくれるのか?」という疑問と共にスケジュールの見通しが行き詰ってしまうケースがあります。情報がないというより、情報はかなり集まってきたので、今度はそれを自社の工程表にしていく段階に入ってきたのではないかと思います。 目標設定だけではなく、社内のエビデンス準備にも時間がかかりそうです 10月にリリースされた「企業ネットゼロ基準v2.0向け審査手順」の中では、SBTi Servicesの審査範囲と、初回審査に必要な書類が一覧表でそれぞれ示されています。特に必要書類として、「最高意思決定機関がSBT目標の説明責任を負うことを示す日付入り文書」「署名済みのコーポレートガバナンス体制の文書、レビュー体制や進捗報告に関する方針文書」「移行計画が戦略や方針に組み込まれていることを証明する日付入り文書」といったものが取り上げられています。これらについては、多くの企業の皆様にとって、必要な内容自体を検討するだけでなく、実際に「添付文書」という形式にすることにも時間がかかることが想定されます。自社のネットゼロ基準v2に沿った目標の提出時期から遡って、自社の決裁承認スケジュールを考慮して、計画的に準備を進めていく必要があります。 また、審査期間についても従来より長くなることが想定されます。オンラインミーティングや審査ラウンドの回数も増えるため、目標提出日だけを見るのではなく、審査期間まで含めて少し長めに考えておくことをお勧めします。 Scope1,2,3の目標設定方法も現行版から大きく変わります ネットゼロ基準v2では目標設定の方法も現行バージョンから大幅に変更になります。既にこの辺りは様々なウェビナーや文字媒体から情報入手されている企業様も多いかと思います。 具体的には、Scope1は絶対排出量削減、排出強度削減(セクター固有の場合のみ)、資産移行の3種類、Scope2は絶対排出量削減と低炭素電力整合の2種類となります。熱・蒸気・冷熱については絶対排出量削減のみとなります。Scope3については、Scope3カテゴリー1~14に占める割合が5%以上のカテゴリーを重要カテゴリーとして抽出し、絶対排出量削減、サプライヤー/顧客整合、量の整合、製品使用の整合、製品寿命の整合といった目標設定方法から、カテゴリーごとに選択可能な方法を確認したうえで、包括的に、またはカテゴリーごとに設定していくことになります。 そのため、実務の進め方としては、まず自社の直近年度のScope1、2、3インベントリを整理したうえで、Scope2向けには低炭素電力の現状比率の確認、Scope3向けには5%以上の重要カテゴリーの抽出、さらに各カテゴリーでどの目標を選択するのかという検討と、その目標で使用する現状の指標データの確認、と進めていく必要があります。例えばサプライヤー整合目標を設定しようとする場合には、ネットゼロ移行中のサプライヤーの比率をどのように把握するのか、といった検討も必要になります。 基準の文章だけを見ると「こういう目標設定方法があります」という話なのですが、実際に自社で選ぼうとすると、その目標を設定するためのデータを本当に保有しているのか、というところから確認する必要があります。この辺りは、実務として進めてみると意外と時間がかかるところだと思います。 Preliminary Submission Formを一度見ておくことをお勧めします 今回のリリース文書の中には、「Preliminary Submission Form CNZSV2」という、提出フォームの準備に活用できるExcelファイルが含まれています。この後、質問や形式など内容の変更がある可能性があり、2027年2月のネットゼロ基準v2での目標提出受付開始の前に最終版が公開されるということですので、その点はご留意ください。 一方で、このExcelファイルを活用することで、現時点で不足している情報やエビデンス資料について把握することができます。Excelファイルの中には「ガイダンス」として、6月のネットゼロ基準v2リリース時に同時公開された「企業ネットゼロ基準v2向け最低限必要なエビデンス(暫定版)」のエビデンス例示がおおむね転記されています。そのため、このガイダンスを参照することで、エビデンス書類のイメージは比較的掴みやすくなっています。各エビデンス書類については、書類名と参照ページ、必要に応じて補足のコメントを記載する必要があります。「最終版が出てから確認しよう」としてしまうよりは、まず現在の暫定版で、自社に何があり、何が足りていないのかだけでも確認しておくとよいと思います。 特に早めに動いておきたいのが第三者保証です ネットゼロ基準v2では、カテゴリーA企業は各目標指標に対する目標基準年の第三者保証の添付が必要となります。この第三者保証機関についても、名称、独立性、認定機関と認定機関のグローバル基準適合性に関するエビデンス、保証基準、認定の詳細といった情報が必要となります。 目標提出時点で、目標基準年の各目標指標に対する第三者保証の保証書添付が必要になるため、目標をいつ頃提出するのか、目標基準年を何年度と設定するのか、その年度の保証を取得するにはいつから動くべきなのか、ということを逆算する必要があります。 また、今回第三者保証が必要となるのは、Scope1、2、3のインベントリだけでなく、低炭素電力の計算、重要なEIAからの排出量、その他目標設定に用いる指標も対象となります。第三者保証機関によっては、Scope1、2、3以外の目標指標について保証取得が可能かどうか、事前に協議しておいた方がよいケースも出てくることが考えられます。この辺りは、早期着手がお勧めのポイントとなります。 2022年、2023年ころにSBT認定取得した企業は、インベントリ入力も早めの確認を 2022年、2023年SBT認定取得企業の皆様は、それ以降に更新等の申請を行っていない場合、WordでのSubmission Formのご提出であったはずです。その後、Submission FormがExcel版、さらにはSBTi Services Validation Portal 版と改訂を繰り返している中で、Scope1、2、3インベントリ質問項目は、2023年以前のWord版Submission Formと比較してかなり細かく増加しています。 そのため、初申請当時に整理したインベントリの内容を、そのままネットゼロ基準v2での入力の際に活用できないことも想定されますので、インベントリ入力についても早めにご確認いただくことをお勧めいたします。 なお、提出の際は「目標設定ツール」「Submission Form」「エビデンス書類」の3つで構成され、ツールに入力した情報は原則としてSubmission Formで再度質問されないとされています。 「目標設定ツール」については、6月のネットゼロ基準v2リリース時にベータ版が公開されていますが、このベータ版は審査で求められる機能やデータ項目をまだ反映しておらず、最終的な入力データの目安としては使用しないよう明記されています。ツールへの入力データの準備には、10月に公開された「企業ネットゼロ基準v2.0目標設定ツールの入力データ項目(暫定版)」を参照することをお勧めします。実際の提出に使用できる最初の運用版は、2027年2月のネットゼロ基準v2での目標提出受付開始の前に公開される予定です。 ここまでの話をまとめると ネットゼロ基準v2への対応というと、どうしても新しい目標設定方法の方に目が行きがちですが、実際に企業の皆様に準備いただく内容はそれだけではありません。 まずは、下記の順番で検討を進めていただくことが考えられます。 1.自社の5年レビュートリガー日を確認する 直近のSBT認定目標公開日から5年後のトリガー日を確認し、現在設定している目標年との関係を整理します。 2.5年レビューをどうするか、次の目標をいつ提出するか決める トリガー日から半年以内に必須の5年レビューを提出するか、目標年が近いため免除申請をするか(免除申請もレビューフォームから半年以内に行います)、あるいは現在の目標が最新基準に適合していないことが明らかなため、レビューを省略して直接トリガー日の1年以内に次の目標提出を行うかを決定します。 3.ネットゼロ基準v2で目標提出する場合は、提出時期から逆算して準備する いつ目標提出をするのかによって目標基準年を見定め、目標を検討・決定し、目標指標のデータ収集、第三者保証機関との調整、ガバナンス体制等のエビデンス書類の手配を順次進めていきます。すべてをすぐに準備する必要はありませんが、少なくとも自社がいつ頃までに何を決める必要があるのか、一度全体を並べてみることをお勧めします。 最近一番多いのは「では、自社の場合はどうなるのか」というご相談です ネットゼロ基準v2のリリース以降、様々なメディアでウェビナーや文章での解説を目にしてこられたかと思います。それらを通じて一通り概要はつかめたものの、「では実際自社においてはどうなるのか」という点がいまいち確証が持てない企業様からのお問い合わせが、特にこの夏以降急増しております。 例えば、「自社の場合、次の目標はネットゼロ基準v2に沿っていないとダメなのでしょうか」「自社の場合、2030年目標年のため5年レビューの免除の対象になるのでしょうか」「自社の場合、ネットゼロ基準v2で申請する場合、いつまでに提出すればよいのでしょうか」といったご質問です。つまり基準の内容を全く知らないということではなく、むしろかなり情報収集されたうえで、最後に「自社の場合」を確認したい、というご相談が多い印象です。 まず入口となる疑問や不安については、弊社のSBT30分無料相談の中で一旦整理し、「気持ちが落ち着いた」「具体的にやるべきことが見えてきた」というお声も頂戴しております。無料相談の中で、企業様の目標公開日や目標年を確認しながらかなり具体的なスケジュールまで一緒に整理してしまうこともあり、「ちょっとサービスしすぎなのでは」と思うこともありますが(笑)、この最初の交通整理がかなり重要なのだと思っています。 ネットゼロ基準v2に向けた「具体的な進め方」をテーマにウェビナーを開催します 今回、実務の進め方についての具体的な情報がかなりリリースされてきたこのタイミングで、ネットゼロ基準v2への対応をテーマとした、弊社メルマガ読者限定ウェビナーを開催する予定です。 今回のウェビナーでは、ネットゼロ基準v2の要求事項をもう一度最初から解説するというよりも、「では実際、自社はいつから、何を、どの順番で進めればよいのか」というところを中心に取り上げたいと考えています。SBTi認定エキスパートが登壇する予定です。 この記事をここまで読んでいただき、「考え方は分かったけれど、自社の場合はどうなるのか、まだ少し分からない」という皆様には、ぜひご参加いただければ幸いです。ウェビナー開催まで待てない、という方は、お気軽にSBT30分無料相談へお申し込みください。 【参照文献】 ・Mandatory Five-Year Review Guidance(SBTi) ・Mandatory Five-Year Review Manual(SBTi Services) ・SBTi Commitment and Target Statuses(SBTi) ・Preliminary Submission Form CNZSV2(SBTi Services) ・Validation Schedule for CNZSV2(SBTi Services) ・Validation Procedures for CNZSV2(SBTi Services) ・Preliminary Data Points for the Target-Setting Tool CNZSV2(SBTi Services) ・Corporate Net-Zero Standard Version 2.0(SBTi) ・Preliminary Minimum Evidence Required for Corporate Net-Zero Standard Version 2.0(SBTi) ・Continuing Use of Corporate Net-Zero Standard Version 1.3.1 and Transition to Corporate Net-Zero Standard Version 2(SBTi) (執筆者:小島) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・SBT認定取得支援|株式会社ウェイストボックス ・気候移行計画策定支援|株式会社ウェイストボックス ・SBT申請前準備段階支援|株式会社ウェイストボックス

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SBTiネットゼロ基準V2.0「継続的排出への責任(OER)」とは? ―カーボンクレジット活用に向けた準備

この記事を読んでほしい人 SBTi認定目標を持っている、または目標設定を検討されている企業のご担当者 自主的カーボンニュートラル目標を持っている、または目標設定を検討されている企業のご担当者 カーボンクレジットの活用を検討されている企業のご担当者   目次 ■OERとは? V1.0からの変更点 ■OER認定プログラムの概要  対象範囲と実行アプローチ・支援対象活動   SBTiの十全性基準(Integrity criteria) ■2035年以降の責任要件、ネットゼロ要件の概要  責任要件とネットゼロ要件の対象範囲と実行アプローチ・支援対象活動  耐久性(Durability)要件 ■カーボンクレジット活用に向けた準備                                                 はじめに  2021年に公開されたSBTiのネットゼロ基準(V1)が5年ぶりに大幅改訂され、今年6月にVersion2(V2.0)が発行されました。大きな変更の一つと言えるのが「継続的排出への責任(Ongoing Emissions Responsibility:OER)」です。V1で「排出量を極限まで減らした上で、ネットゼロ年及びそれ以降は残余排出量を炭素除去で中立化する」ことや、それに加えて「(任意で)バリューチェーン範囲外での緩和活動に貢献する」ことが打ち出されましたが、「まだ先の話」であり、何をどうすればよいのか具体化はされていませんでした。それが今回の改訂で、OERという形をとって、一歩具体化されました。2035年以降の本格的開始(義務化)に向けては、まだ十分具体化されていない部分も残されているものの、一部見えてきた部分を整理してみたいと思います。現状ではOERの実行方法のメインは「カーボンクレジットの活用」となることが予想されます。クレジットの世界は複雑でマニアックで、また選び方や使い方の注意が不十分だとグリーンウォッシュ批判の対象になるリスクが高い分野でもあります。だからこそ、早い段階で活用方針と社内体制を整え、調達に向けて動き出しておくことが重要だと考えています。そこで後半では、弊社が考える、OER用途も含めた、企業のクレジット活用サイクルをご紹介したいと思います。本稿が、皆様のクレジット活用ご検討の第一歩に少しでもお役に立てれば幸いです。 継続的排出への責任(OER)とは? V1.0~の変更点   OERとは「Ongoing Emissions Responsibility(継続的排出への責任)」の略で、企業がネットゼロに向かう過程で発生し続けてしまう温室効果ガス(Ongoing Emissions(継続的排出)を認識し、必須で求められているバリューチェーン内の目標(Scope1,2,3目標)への取組を超えて、気候変動対策への貢献(気候貢献)を行う取組です。 OERは3段階で構成されています。1段階目は、V2.0の運用開始と同じ2027年から始まる任意の「OER認定プログラム(OER recognition program)」です。継続的排出量の一定割合と同等の気候貢献(炭素除去に限らない幅広い活動が対象)を行うと、その割合に応じて「Engaged」「Advanced」「Leadership」の3つのレベルで認定されます。2段階目は2035年から始まるOERの「責任要件(Responsibility requirement)」です。こちらはカテゴリA企業(主に大企業)のみを対象とした必須の要件で、対象は炭素除去への貢献に限定されます。割合は継続的排出量の1%から始まり、ネットゼロ年(遅くとも2050年)には100%になるよう直線的に引き上げていきます。3段階目は、ネットゼロ年以降に適用される「ネットゼロ要件(Neutralization)」です。全ての企業に必須で課され、排出量を極限まで削減した上で残る残余排出量の100%を適格な炭素除去によって中立化(neutralize)することが求められます。 1段階目の「炭素除去を含むがそれに限定されない広い気候貢献」は、V1.0では「バリューチェーンを超えた緩和活動(Beyond Value Chain Mitigation:BVCM)」と呼ばれ、推奨事項に留まっていました。V2.0では、目標の評価から進捗の評価まで対象範囲が広がった新しいネットゼロ基準において、この活動もSBTiが確認し認定を与える認定プログラムとして新たに整備され、対象範囲や支援対象活動が明確化され、品質や信頼性に関する十全性基準も追加されています。2段階目の責任要件は、V2.0で新たに設けられたものです。V1.0ではネットゼロ年以降の中立化を必須で求めるものの、それに向けた中和のマイルストンの開示は推奨事項に留まっていました。V2.0では2035年から始まる責任要件として、段階的に進めるマイルストンの達成が必須で求められることになりました。3段階目の「ネットゼロ年以降に残余排出量を炭素除去で中立化する」ことは、V1.0で既に求められていましたが、詳細な要件は提供されていませんでした。V2.0では耐久性に関する要件が示され、また対象範囲の明確化(間接排出量の扱い等)も行われています。  一つ強調したいのは、V1.0からV2.0 になっても、大切な原則:「OERは排出削減の代替ではなく、それに加えて補完的に実施するものである」は変わらないということです。あくまでも自社の排出削減が最優先で、加えて他の気候変動対策活動へも貢献し、最後には残余排出量を炭素除去によって中立化することでネットゼロを達成するという考え方になっています。   OER認定プログラムの概要 対象範囲と実行アプローチ・支援対象活動  OER認定プログラムでは、目標サイクル終了時に、直近5年間の継続的排出量に対する気候貢献の度合いに応じて認定を与えます。継続的排出のカバー割合によって、3つの認定レベルに分けられます(表1参照)。継続的排出量は物理的インベントリ(Scope1,2,3排出量)に基づきます。Scope3については同じ排出量を報告するバリューチェーンパートナーとの責任の分担が認められており、その場合は、少なくとも一方がその排出量を全て引き受け、各社でどのように配分するかを示した合意書や契約書等を提出することが求められています。 気候貢献の実行アプローチには、「検証済緩和成果(Verified mitigation outcomes)アプローチ」と「貢献予算(Contribution budget)アプローチ」の2種類があります(表2参照)。「検証済緩和成果アプローチ」とは、対象の継続的排出量と同量の「検証済緩和成果」(測定され、第三者に保証された、実際に緩和が実行された(削減が行われた、炭素除去・貯留が行われた)もので、tCO2eで定量化可能)を活用するアプローチです。検証済緩和成果の主なものとしてはカーボンクレジットが想定されていると考えられます。(カーボンクレジットは、各クレジット制度が活動の種類別に用意した方法論に基づき、削減や炭素除去の活動をモニタリングし、削減量や除去量を定量化して、第三者検証機関による検証を受けて作られるのが基本です。)「貢献予算アプローチ」は対象となる継続的排出量と同等の資金拠出(対象となる継続的排出量に炭素価格を乗じて算出)で、その資金拠出先としては、「検証済緩和成果」の他に、「その他の気候変動対策活動」(排出削減や炭素除去の成果が見込まれるが実績はこれからの活動や、研究開発や適応とレジリエンス、損失と損害といった直接的に排出削減や炭素除去につながらない活動等も含む広い範囲の活動)が対象となっています。3つの認定レベルごとに、2つのアプローチそれぞれの要件が定められています(表1参照)。  手続きの流れとしては、まず目標申請時に、OER認定プログラムへの参加意向の明示が求められます。(参加する場合には、SBTiターゲットダッシュボード上で参加が公開されます。)その後、5年間の目標サイクルの中でOERの活動も実行していきます。(サイクルの終わりまで実行を先送りするのではなく、期間中に段階的に行っていくことが推奨されています。)目標サイクル終了時、OERの成果は、排出量インベントリや短期目標の進捗状況とは分けて集計し、第三者機関による保証を受ける必要があります。その上でSBTi から認定を受けられることになりますが、認定の前提として「短期目標が進捗していることを示す」ことが求められています。認定結果は、参加表明時と同様にSBTiターゲットダッシュボード上で公開されます。 SBTiの十全性基準(Integrity criteria) 「検証済緩和成果」も「その他の気候変動対策活動」も、真に気候への影響をもたらし、その他の環境的・社会的な成果も達成することを確実にするために最低限「SBTiの十全性基準」を満たし、該当する場合は第三者による高い十全性基準も満たす必要があるとされています。基準は、ICVCM等、国際的なクレジットの品質や信頼性に関する基準でも取り上げられているような基本の項目が中心となっています。これらの基準は、過去のクレジットへの批判を踏まえ整備されてきたものであり、基準を理解し、クレジットやその他の気候変動対策活動をしっかり選定していくことが、真の気候貢献とグリーンウォッシュ批判回避のためには必要です。 2035年以降のOER責任要件、ネットゼロ要件の概要 責任要件とネットゼロ要件の対象範囲と実行アプローチ・支援対象活動 2035年以降のOER責任要件では、継続的排出量(Scope1,2,3排出量)を対象に、1%から開始して、ネットゼロ年(遅くとも2050年)までに100%になるように直線的に割合を増やしていくことが求められます。実行アプローチとして認められるのは「検証済緩和成果アプローチ」のみで、さらに対象活動は炭素除去のみに限定されます。つまり、2035年以降はクレジット等の定量化され検証された炭素除去に限定されることになります。また、V2.0で初めて示された耐久性に関する要件により、自社の排出量を「長寿命GHG(long-lived GHG emissions)」とそれ以外に分けて、長寿命GHGの割合を把握することが新たに必要となります。その上で、最終的にネットゼロ年(遅くとも2050年まで)には、長寿命GHGには「長寿命の炭素除去(long-lived removals)で100%対応できるように、2035年は10%から始め、直線的にその割合を増やしていくことが求められています。 ネットゼロ要件では、極限まで削減した後の残余排出量(Scope1,2,3排出量)の100%を炭素除去によって中立化(neutralize)することが求められます。Scope1の排出量は自社の直接排出であり、企業が直接の責任を持ち対応する必要があります。一方、間接排出であるScope3については、同じ排出量を報告するバリューチェーンパートナーとの責任の分担が認められており、その場合は、少なくとも一方がその排出量を全て引き受け、各社でどのように配分するかを示した合意書や契約書等を提出することが求められています。 耐久性(Durability)要件  耐久性とは、除去した炭素が大気中に戻らず、どれくらい長く貯留され続けるかを表す考え方です。たとえば植林による炭素の吸収・貯留は、数十年〜数百年程度で山火事や伐採などによって失われてしまうリスクがあります。一方、DACCS(直接空気回収・貯留)やBECCSのように地中深くに圧入する地質学的な貯留は、1万年以上にわたって炭素を閉じ込めておくことができると言われています。炭素除去の質を見極める際には、こうした「どれくらい長く、確実に炭素を閉じ込めておけるか」という視点が重要になります。V2.0で新たに追加された耐久性要件では、GHGの寿命と対応した炭素除去での中立化を求め、残余排出量のうち長寿命のGHG分については長寿命の除去で中立化することを求めています。残りのGHG(短寿命のGHG)には短寿命、長寿命もしくはその両方での中立化が認められています。 カーボンクレジット活用に向けた準備  弊社では、SBTi OER用途に限らず、下表(表5)のようなクレジット活用サイクルが必要であると考え、サイクル全体をトータルでご支援しています。各用途の要件に合い、グリーンウォッシュ批判を回避し、真に気候に貢献するためのクレジット活用とするためには、特に初めのステップである「方針策定・体制構築」をしっかり行うこと、そして小規模からでも実際に「調達・活用」を始めてみて、その上で方針・体制をブラッシュアップしていくことをお勧めしたいと考えています。2035年から求められる炭素除去の中でも特に長寿命の除去については、まだ供給がかなり限られており、確保に動き出すような動きも一部見られます。一方、他のクレジットに比べコストは跳ね上がり、品質評価や契約面等においてはより一層慎重さが求められる難易度が高いものです。そこで、なるべく早いタイミングから段階的に調達・活用をはじめ、方針・体制を築き、経験を積んでいくことをお勧めしたいと考えています。 弊社では引き続き、気候変動対策の重要な一手段であるカーボンクレジットの活用の国際的ベストプラクティスを追求し、真に気候変動対策に貢献するクレジットの活用支援に注力していきます。クレジット活用に関し、お困りごとやお悩みごと等がありましたらお気軽にお問い合わせください。 出典 Corporate-Net-Zero-Standard-version-2.pdf Corporate Net-Zero Standard V2 Criteria Corporate Net-Zero Standard V2 Main Changes Document Corporate Net-Zero Standard V2 Basis for Conclusions From Ambition to Action: Actions and Market Instruments in the Corporate Net-Zero Standard Version 2.0 (執筆者:山本(裕)) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・カーボンニュートラル・BVCM|株式会社ウェイストボックス

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CDP2026提出直前!最終チェックポイントと、2027年「6月提出」に向けた緊急対策

1.はじめに:いよいよ提出佳境。最後の落とし穴を回避するために  夏も本番を迎え、CDP2026の質問書回答に向けた実務はまさに佳境に入っていることと存じます。社内各署からのデータ収集、経営層との確認、そして難解なガイダンスや採点基準の読み解きなど、ご担当者様は日々計り知れないプレッシャーと時間的制約の中で作業を進められていることでしょう。私たちCDP回答支援のコンサルタントも、回答企業の皆様とともに、暑くて熱い夏を懸命に駆け抜けているところです。 多くの企業の皆様がお盆前後に排出量等のデータも収集し終え、一旦回答案の全体像が出来上がる時期に差し掛かってきます。しかし、回答案がほぼ固まったこの最終盤にこそ、最も注意が必要です。CDPの採点においては、どんなに高度な気候変動戦略を記述しても、質問の仕様の見落としや、回答全体の一貫性の欠如によって、思わぬ減点やスコアダウンとなってしまうケースが発生しうるものです。 本記事では、CDPの公式情報に基づき、提出ボタンを押す前に必ず確認すべき最終チェックポイントを解説します。また、記事の後半では、6月提出へと大幅に前倒しされる次年度CDP2027に向けた緊急課題と対策についても触れています。最後の総仕上げの参考として、ぜひご活用ください。 2. 提出ボタンを押す前の5つのセルフチェック 以下の5項目について、提出前にダブルチェックを実施することをお勧めします。 ① 報告年度の整合性  質問の中で特定の期間(過去3年間など)が指定されている場合を除き、開示する情報が「報告年度」に関連しているかを今一度確認してください。特に、他部門から提出されたデータが前年度のものだった、記述内容が前年度のまま未更新の記載になっていた、というミスが無いように確認を行います。  ② 空欄(空白セル)の撲滅  CDPのスコアリングにおいて、原則として空欄、つまり未回答のセルは、スコア低下につながる可能性があります。何を回答すればよいかわからない場合等であっても、ガイダンスの説明を今一度確認し、セルを空白のまま放置せずに、回答を進めるようにしましょう。算定・確認した結果として実際の値がゼロである場合は、空欄ではなく「0」と回答することも重要なポイントです。前年と同じ質問列であっても、回答条件の変更に伴い、新たに対応が必要となっている項目も存在しますので、昨年と同様に回答を作成した段階で安心することなく、ポータル内の空欄がないか確認をお勧めします。 ③ 進捗状況トラッカーの最終確認  CDPポータル内の「進捗状況トラッカー」を確認し、ポータル上未完了として認識されている項目が残っていないか、最終的なステータス確認を行ってください。なお、ポータル上で一部の回答が未完了と表示されていても提出操作自体は可能ですが、未回答の情報は原則として評価されません。選択肢として「その他、具体的に」を選択した場合には具体的な記述を求める欄が出現しますが、ここが空欄のままの場合は未完了となることにご注意ください。  ④ 質問間・回答間の一貫性の確保 CDPは各質問の回答内だけでなく、質問書全体を通じた一貫性を採点基準に組み込んでいます。排出量の数値に関する一貫性のみならず、ガバナンス体制、エンゲージメント等、他の質問での回答状況との整合性が、ポイント付与の条件となっているケースもあります。特に自力で回答準備を行っている際には1問1問の採点基準の確認まではリソース的に厳しいことも想定されますが、提出前には必ず、自社の回答全体を俯瞰し、自社の実態を正しく回答に反映できているか、回答間の論理が破綻していないかを通し読みで確認されることをお勧めいたします。  ⑤ スコープ1~3第三者検証の添付ファイルと回答方法  この質問以外でも、必要な添付ファイルが正しくアップロードされているかの確認は基本ですが、特にスコープ1~3の第三者検証に関する項目には厳格なルールがあります。第三者検証はスコア上も重要な項目であり、取得する企業も増えていることを実感しています。初めて回答される皆様も、毎年回答されている皆様も、今一度以下の点をご確認ください。 ページ番号の明示: 検証声明書を添付するだけでなく、保証・検証の対象となったスコープ1~3排出量の記載箇所について、ページ番号を必ず明示してください。 検証基準: CDP2026では検証基準が選択式に変更になりました。ここで選択する基準は、添付した検証声明書に記載された基準と一致している必要があります。 進行中の検証の扱い: 「報告年の検証を取得中で完了していない」と報告する場合でも、回答内容は報告年の排出量の検証に関するものでなければなりません。一方、添付ファイルについては、特例として、前年の検証声明書を添付することが求められます。なお、初めて検証を実施する場合には別の回答区分が設けられているため、自社の状況に対応する選択肢を確認してください。 【ワンポイントアドバイス】行き詰まったら「他社回答の閲覧機能」を活用する  回答の表現に迷ったり、一貫性の持たせ方に悩んだりした際は、ポータル内で提供されている他社回答の閲覧機能を活用しましょう。1ポータルにつき20社まで、CDP2025回答の閲覧が可能となっています。提出直前の最終調整の際のヒントとして、Aリスト企業や自社と業種の近い企業の回答を、記載内容や情報の粒度を検討する際の参考として活用することをお勧めします。ただし、表示される質問や採点条件は企業によって異なるため、他社回答をそのまま転用するのではなく、自社の実態と最新のガイダンスに照らして確認することが重要です。 3. 今年の新設・変更設問に関する「最終確認ポイント」 前年からの変更有無にかかわらず、CDPには注意を要する質問が多く含まれています。その中でも企業の皆様が悩みそうなポイントを含む質問について、全企業対象のものを1点、RE100企業対象のものを1点、高排出セクター対象のものを1点ずつ代表でご紹介します。  【全企業対象】スコープ1・2排出量の温室効果ガス種類別内訳と使用したGWP(地球温暖化係数)の出典  CDP2026では、温室効果ガス種類別内訳について、スコープ2排出量も対象となったことに加え、CO2換算前の温室効果ガス排出量に関する質問列が追加されました。スコープ2については1つ前の質問の回答によっては内訳の回答対象外となりますが、昨年までスコープ1の温室効果ガス種類別内訳を回答されていた企業の皆様については、ここでスコープ1の温室効果ガス種類別のCO2換算前の数値の回答が必要となりますので、ご注意ください。 スコープ1排出量(t): CO2換算値(CO2e)に変換するためのGWPを「適用する前」の、ガス種ごとの物理的な排出量。 スコープ1排出量(CO2換算トン): GWPを適用した後のCO2換算値。 GWP参照(8列目): 選択した温室効果ガスをCO2換算する際に使用した「GWPの出典(IPCCの第何次評価報告書か等)」を特定して記載。現行の「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」に掲載されたGWPを採用している場合は、AR5の100年値となります。   【RE100企業向け】時間単位マッチング  報告年度において、ゼロ・ほぼゼロ排出の排出係数で算定した電力購入の詳細に関する質問の中で、RE100企業向けには、電力調達方法の選択に応じて「時間単位マッチング」等の質問列が表示されます。時間単位マッチングでは5つの選択肢から選択することとなりますが、この中でも「24/7一致:タイムスタンプ付EAC(グラニュラーまたはアワリーマッチングと呼ばれる)」と「24/7一致:シェイプ保持アプローチ」の2つは馴染みの薄いものかもしれません。これらを理解するには、24/7 Carbon Free Coalitionの技術要件を確認いただくことをお勧めします。   【特定セクター向け】低炭素R&Dへの投資  一部の高排出セクターや輸送関連セクター等では、過去3年間の低炭素R&Dへの投資詳細が問われます。ここで「リーダーシップポイント」を獲得するための条件は非常に厳格です。マネジメントポイントを満点にした上で、以下の3つの開発段階をすべてカバーする形で、少なくとも3つの行を作成し、報告する必要があります。該当質問が表示されている企業の皆様はご注意ください。 [基礎学術的/理論的研究] または [応用研究開発] [パイロット実証] または [フルスケール/市販スケール実証] [小規模商業的開発] または [大規模商業的開発] 4. どうしても間に合わない場合の「オンデマンド延長サービス」 様々な要因でスコアリング対象の9月16日の提出期限に間に合わないという企業向けに、2026年は「オンデマンド延長サービス(有料)」が提供されています(2027年度も提供予定とされています)。このサービスの利用が認められた場合、9月30日までに回答を提出することで、気候変動、フォレスト、水セキュリティのすべてのテーマにおいて、通常と同様にスコアリングを受けることができます。申請手順については、CDPの公式サイトをご確認ください。対応枠に限りがあるため、必要となった際には早めの申請と確認を推奨いたします。 5. 休む間もなくやってくる。CDP2027「6月提出」の衝撃と対策 今年の提出が無事終わったとしても、息をつく暇はありません。次のCDP2027は、締切が6月23日へと前倒しされることが正式にアナウンスされています(CDPポータルオープンは4月14日予定)。ポータルオープンからの回答期間が1か月短縮されるだけでなく、この6月提出というスケジュールは、日本の3月決算企業にとって極めて悩ましい課題を突きつけます。 SSBJ(サステナビリティ基準委員会)対応とのバッティング  3月決算企業において、SSBJ基準への対応を進めている場合、2027年3月期の有価証券報告書(6月末提出)に同年度の排出量数値等を掲載する可能性が高くなります。CDP回答においても、有価証券報告書の開示内容との整合性を確保することが重要となります。つまり、「有価証券報告書の作成・監査・決裁プロセス」と、「CDP回答書の作成・決裁プロセス」が完全に同時並行で進行するという、例年以上に対応が集中する繁忙期となることが想定されます。現時点でCDPからは、締切前倒しに伴う特別な経過措置は発表されていないため、原則としてこのスケジュールを前提に、早期に準備を進める必要があります。   「昨年のコピー転送」では乗り切れない可能性も CDPポータルでは、コピー転送機能が改善され、AIを活用した回答提案機能も導入されました。質問書自体に大きな変更は無いとされていますが、「前年の回答を流用すれば終わる」という甘い見通しは通用しない可能性もあります。 自社の企業構造の変化や、排出量算定方法のアップデートの発生。 過去に「いいえ、2年以内に計画している」と回答していた項目に進捗があり、後続質問への回答が必要となるケース。 自社の実態に即した「ストーリーの微調整」や、AIによる提案だけでは判断が難しい回答方針の検討。 数年連続で回答し、自社ノウハウに自信がある企業であっても、この大幅なスケジュール前倒しの中で、細かな整合性のズレやスコアの取りこぼしを起こすリスクは依然として存在します。 6. おわりに:来期に向けた勝負は、提出直後から始まります まずは目前に迫ったCDP2026の提出完了に向け、本記事のチェックリストがお役に立てば幸いです。 CDP2027の6月提出というかつてないハードルを乗り越えるためには、11月30日の週に予定されているスコア発表を待つのではなく、今年の提出直後から、来期に向けた体制整備と、今年の失点ポイントの分析を開始することをお勧めいたします。 「自社のリソースだけで6月の有報・CDPの同時対応を乗り切れるか不安だ」「今年の回答で一貫性に自信が持てない部分があった」といったお悩みをお持ちの企業様は、回答レビューや翌年度に向けた体制・スケジュールの整理について、早期段階で外部専門家への相談をご検討ください。 体制構築は、早ければ早いほど理想的なものとなります。来年の6月、そして夏を余裕を持って迎えるためにも、今年の提出直後から準備を開始することをお勧めします。 (執筆者:小島) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応、EcoVadis回答支援|株式会社ウェイストボックス ・アドバイザリーサービス

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はじめてのSSBJ気候変動開示に今から必要な準備とは

第三者保証・開示から逆算した5つのステップと、つまずきがちな「あるある」への対応策 SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2025年3月に公表したサステナビリティ開示基準が、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、企業の平均時価総額[1]順に段階適用されていくことになります。具体的には、時価総額3兆円以上は2027年3月期、1兆円以上は2028年3月期の適用が義務化されています[2]。そして、時価総額5,000億円以上1兆円未満の企業は2029年3月期から、有価証券報告書での開示が義務付けられる見込みです(いずれも3月期決算企業の場合)。弊社の支援する企業様からも対応に関するお話をお聞きする機会も増えてきましたし、時価総額で義務対象外の企業様であっても、競合他社や投資家要請等の状況を踏まえ、前倒しで準備を始めたいというお声も聞いています。さらに、開示初年度の翌期からは第三者保証も段階導入され、当初はScope1・2排出量、ガバナンス、リスク管理を対象とした「限定的保証」から始まるとされています。 本コラムでは、初めて取り組む企業を念頭に、開示タイミングから逆算した実施時期の目安と実施ステップを示し、そのうえで準備の現場で起きがちな「あるある」と対応策、そして私たちがご支援できることを整理します。 全体像―開示するタイミングから逆算する ここでは、仮に時価総額5000億円規模の企業の場合を例に考えます。開示初年度(2029年3月期)の有価証券報告書は期末後3か月以内、つまり2029年6月頃に提出します。そして、その翌期(2030年3月期)から限定的保証の義務化の対象となります。保証義務化は準備負荷も踏まえて開示義務化から1年遅れとはなっていますが、CDPをはじめScope算定数値への保証が市場から求められていることから、SSBJへの対応と並行して保証対応準備を始められている企業様も多くいます。 [1] 平均時価総額とは、有報等を提出しようとする日の属する事業年度の直前事業年度の末日からさかのぼって5か年の時価総額の平均値により判定する。例えば、2027年3月期の適用の有無の判断に用いる平均時価総額は、2022年3月期~2026年3月期の各末日の時価総額の平均値で算定する。 (出典:第9回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ) [2] 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について:金融庁 以下の早見表は、開示タイミングから逆算した「実施時期の目安」と「実施ステップ」を並べたものです。自社の決算期に合わせて読み替えてご活用ください。 ■2029年3月期より適用開始(時価総額5000億円以上の企業)の場合の対応スケジュール(イメージ) 実施時期 の目安 実施ステップ 開示内容の準備 第三者保証対応 -2年度 (~2026年10月) Scope1,2算定システムの導入検討 -2年度 (〜2027年3月) ギャップ分析と全体計画 現行開示とSSBJ基準の差分を棚卸しし、不足するデータや原稿を特定。対応の優先度と役割分担を決定する。 ― -1年度 (2027年4月~2028年3月) データ収集体制の構築 次年度ガバナンス・リスク管理体制について整備・文書化する。Scope1,2をはじめとしたサステナビリティ開示数値の作成に迅速に着手できるように、効率的なデータ収集体制を構築する。 保証機関の選定、保証対応体制の構築 保証機関の選定は、財務監査との兼ね合いも考慮する。自社で保証対象データが出揃う時期に合わせた保証スケジュールを立てる。 保証用数値の準備、保証対応(プレ保証向け) 組織範囲や算定対象の決定、根拠資料に関して、保証機関によってGHGプロトコルの解釈や指摘の傾向が異なることもある。必要に応じてプレ保証を行う。 期中 (2028年10月~) 開示内容の精査 ギャップ分析に基づき、定性的な開示内容。決算後に反映する箇所を除く箇所について、開示方針を決定する。 保証用数値の準備、保証対応(本番保証向け) サステナビリティ開示数値を保証。指摘を踏まえてデータを修正し、最終化する あらかじめ必要な根拠資料や必須要件を握っておく。データ収集状況によっては、期中監査も検討する。 期末前後 (2029年3月期末~) 開示直前〜 (2029年4〜5月) 開示への落とし込み 有価証券報告書をはじめとする開示用フォーマットへ内容を統合し、財務開示との整合(コネクティビティ)を確保。   ※時期は3月期決算・2029年3月期を開示初年度とした場合の目安です。開示成熟度や体制により、各ステップの精緻度を段階的に高める進め方も現実的です。   ステップ別―準備でつまずく「あるある」と対応策 Scope1,2算定システムの導入検討 Scope1,2数値について、データ収集や保証時の改ざん防止の観点でシステムでの管理が効率的になる可能性があります。 あるある システムを使って算定を効率化したいが、そもそもシステムを導入するコストメリットはあるのか、システムに求める要件はなにか判断することが難しい 対応策 Scope1,2については、拠点数が多ければ多いほど、システムによりデータ収集が効率化できる余地が多くなります。なお、選定時に注意する点としては、保証を見据え、エネルギーデータや再エネ証書償却量などの管理方法を確認しましょう。CDPの設問に対応した換算が可能であることも魅力です。なお、Scope3については表計算ソフトでもコストや管理上のメリットは十分あるため、導入は慎重に検討するようにしましょう。 弊社で可能なご支援 Scope算定システム導入支援 ギャップ分析と全体計画 現行の開示内容とSSBJ基準を突き合わせ、両者の差分を棚卸します。その上で、不足しているデータや未着手の原稿を具体的に特定します。洗い出した課題については、対応の優先度を整理するとともに、社内での役割分担を明確に定めていきます。 あるある SSBJ要件が求める要件を具体的な開示に落とし込む際のイメージがつかず、用意すべき開示データの洗い出しに難渋している 連結全体のうち、Scope3算定の対象範囲から漏れている事業部や子会社がある どこまで詳細に開示を準備するべきかの判断と優先順位がついていない 要件のうち、社内対応が間に合わない項目がある 対応策 まず現行開示とSSBJ基準のギャップを棚卸しし、新たに対応が必要な項目とすでにあるデータから対応可能な項目を洗い出し、優先順位をつけていきます。要件のうち、社内方針などすぐの対応が難しい項目については、課題事項として整理しておきます。 私たちの支援 Scope算定拡大支援、TCFD/SSBJ要件ギャップ分析支援 データ収集体制の構築、保証機関の選定、保証対応体制の構築 次年度に向けて、ガバナンス体制およびリスク管理体制の整備と文書化を進めます。あわせて、Scope1,2,3をはじめとするサステナビリティ開示数値の作成に速やかに着手できるよう、関係部門と連携した効率的なデータ収集の仕組みを構築します。保証機関の選定にあたっては、財務監査との兼ね合いやスケジュールの整合性も考慮し、自社で保証対象となるデータが出揃う時期を見極めたうえで、無理のない保証スケジュールを立てましょう。 あるある 決算から有報開示までの短期間で、連結全体での排出量算定用のデータ収集から算定までを行う体制構築が難しい SSBJに基づく開示にあたり、非財務監査を財務監査と同じ機関にする社内方針となり、これまで排出量保証を依頼していた機関と方針が異なる可能性がある。 対応策 決算での数値確定後からの算定開始では時間的に間に合わない場合、たとえば期中でハードクローズを行い、監査自体を前半後半に分けるという方法があります。また、開示に収集が間に合わないデータについては見積もりで対応し、開示は速報値を用いて行い、データが出揃った後に確報値を公表するという手段もあります。いずれにしても、保証機関によって指摘事項や対応方針が異なるケースがあるため、社内のデータ収集・開示方針を早い段階で伝え、懸念事項を解消しておくことが重要です。 私たちの支援 第三者保証対応伴走支援、SSBJに向けたScope算定ロジック改善検討支援 開示内容の精査 ギャップ分析の結果を踏まえ、定性的な開示内容について検討します。決算後に反映する箇所を除いた部分を対象に、開示の方針を確定します。 あるある シナリオ分析は毎年実施が必要か、気候変動リスクに対する財務影響額の数値については開示が必要かなど、記述情報についてどこまでを記載すれば要件を満たすことになるのかが不明 対応策 シナリオ分析についてですが、更新頻度は「少なくとも企業の戦略計画サイクルに合わせて」とされています。一方、気候レジリエンス(自社の戦略・ビジネスモデルが気候変動下でも持続可能か)についての評価は、年次で更新が求められています。したがって、一度行ったシナリオ分析結果については数年スパンで参照可能と解釈できる一方、それに対する企業の対応については毎年最新の状況を開示する必要があると解釈できます。(気候基準第30-39項) 次に、財務影響額については、可能な限り定量的な情報を示すことが求められています。定量的開示が免除されるのは、①影響をリスクごとに区分して測定できない場合 や ②見積もりの不確実性が極めて高い場合です。その場合、「資産や事業活動の規模(大・中・小など)」など、影響の規模感を相対的に説明することでも基準を満たすとされています。そのような免除を適用した場合でも、代わりに定性的な説明を十分行い、定量開示が困難な理由を開示する必要があります。(気候基準第25-27項、BC185,186)このように、気候要件や関連ガイダンスとの参照を行うことで、開示内容の精査を行っていきます。 私たちの支援 シナリオ分析支援、SSBJ開示フォーマットに沿った開示案作成支援 保証用数値の準備、保証対応(プレ保証、保証本番) 保証に向けて、対象となる数値や根拠資料を準備します。組織範囲や算定対象の決定、根拠資料の整え方については、保証機関によってGHGプロトコルの解釈や指摘の傾向が異なる場合があるため、必要に応じてプレ保証を実施し、本番前に論点を洗い出しておきましょう。 あるある 保証機関による指摘で、財務支配力基準を採用している場合、リース資産を運用する際の燃料・電気をScope1,2にひとくくりにすることはできないと言われた。 Scope2に使用している電力排出係数について、環境省の算定・公表・報告制度の電気事業者別係数を使用していたが、送配電によるロス分による排出を除くよう指摘を受けた。 (Scope排出量に限らず)シナリオ分析結果、気候移行計画、クレジット調達方針といった開示に内容に対して、SSBJ要件との整合性に関する指摘を受けた 対応策 企業による算定は、業界慣習的に行われていることも多く、監査によってはじめてGHGプロトコルとの厳密な整合を認識することも少なくありません。一方で、GHGプロトコルが要求している以上の対応を求められるケースもあり、その場合は担当者にとって過剰な作業負担となってしまう可能性があります。 あるある1点目の、自社で借りているリース資産の算定カテゴリについては、財務支配力基準を採用するか、経営支配力基準を採用するかで対応が異なります。買い上げを前提としていない一時的なリース資産は、フィナンシャルリースではなくオペレーティングリースに分類されるケースが多いです。その場合、フィナンシャルリースのみを組織の責任範囲とする財務支配力基準下ではScope1,2の算定対象ではなく、Scope3カテゴリ8(上流リース)に分類されます。(出典:GHG Protocol Corporate Standard(改訂版)Appendix A.  Accounting for Emissions  from Leased Assets)したがって、既存の算定方法を正とする場合、採用基準を財務支配力基準から経営支配力基準へと変更することが、最短の対応策となることが多いです。 一方、あるある2点目の送配電ロスによる排出の計上については、解釈が分かれる余地があります。そもそも、送配電ロスというのは、電力が発電所から需要先に届くまでの送電線による抵抗によって、実際の発電量よりも何%か減損する実態を指します。したがって、発電所を出た時点(発電端)の排出係数よりも、需要先(受電端)の排出係数の方が、分母となる電力量が小さくなるため、ロス率分高くなります。GHGプロトコルでは、この送配電ロスによる排出分について、別途Scope3カテゴリ3の方で計上することとしています。(出典:Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions — Category 3 )一方、日本のScope2算定で使用されている環境省 電気事業者別排出係数は、受電端(=送配電ロスを含んだ)係数のため、送配電ロス分は最初からScope2の方に含まれる処理になります。この相違は、環境省も認識済みです。(環境省 サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン 参照)上記の指摘は、この差分を是正するために、環境省係数から送配電ロス分を切り出すべきというものです。 この対応の懸念点としては、GHGプロトコルに対応する名目で、公式な排出係数に企業独自の変更を加えることになっており、係数自体の妥当性が損なわれている可能性もあります。なにより、温対法等で一般的に使用されている係数と異なる係数で運用することにもなり、二重管理のデメリットも考えられます。このように、保証機関からの指摘は、GHGプロトコルの解釈によるものであるケースも多く、時には対応可否の判断を行うことも重要です。 また、Scope排出量に限らず、シナリオ分析や気候移行計画、クレジット調達方針などの開示内容の不備不足に対する指摘を受けるケースもあり、指摘に対応できるリソースをあらかじめ確保しておくことが重要です。 私たちの支援 第三者保証対応伴走支援、SSBJに向けたScope算定ロジック改善検討支援、シナリオ分析アップデート支援、気候移行計画作成支援、クレジット調達方針作成支援 開示への落とし込み 有価証券報告書をはじめとする各種開示フォーマットへ内容を統合します。財務開示との整合(コネクティビティ)を確保し、開示全体としての一貫性を担保することに注意します。 あるある  SSBJ気候基準の開示内容について、有価証券報告書上でどのような表現で開示をすべきかのイメージがわきづらい。 対応策 有価証券報告書上の開示フォーマットについては、サステナビリティ基準委員会が公表している、「有価証券報告書の作成要領」がまずは参考になるでしょう。ほかにも、先行開示事例を参考にできます。財務情報とのつながりや整合性が明確になるような開示を作成することが重要です。弊社でも、SSBJ開示フォーマットに対して企業独自の開示内容を落とし込んでいくような支援を進めています。 私たちの支援 SSBJ開示フォーマットに沿った開示案作成支援   最後に SSBJ気候基準の開示・保証対応は、これまでのボランタリー的な開示に比べ、より一層高度で厳密な算定・開示が求められています。私たちは、現状の状況を踏まえ、保証に耐える開示へと無理なく到達する道筋づくりをご支援します。自社でお悩みのポイントがあればお気軽にご相談ください。 ※本コラムは2026年6月時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の会計・法務判断を保証するものではありません。適用時期・保証制度は金融審議会WG等での議論段階の内容を含みます。最終的な算定・開示は、所管の監査法人・保証機関とご確認ください。 (執筆者:馬場) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・組織の排出量把握・情報開示支援|株式会社ウェイストボックス ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応、EcoVadis回答支援|株式会社ウェイストボックス ・アドバイザリーサービス

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排出原単位は、製品とともにサプライチェーンを流れ始めた

「排出原単位」と聞くと、多くの実務担当者は、電力や燃料の使用量に掛ける係数を思い浮かべると思います。その使われ方が、いま大きく変わっています。 結論から述べます。これまで主に算定の係数として使われてきた排出原単位は、いま製品ごとの排出量データとして、取引や規制の場で直接やり取りされる単位に変わっています。当面の備えは、自社製品の排出量を業界平均ではなく自社の一次データで示せるようにしておくことです。 この変化と特に関わりが深いのは、鉄鋼・アルミなどCBAM対象財や、電池・素材をEU向けに供給している企業です。あわせて、取引先から製品のカーボンフットプリント(CFP)の提示を求められ始めた企業や、Scope3カテゴリ1(購入した製品・サービス)を業界平均から自社の一次データへ切り替えたい企業にも、直接かかわります。これらに一つでも当てはまるなら、製品別の原単位を整えることが、これからの取引や規制への対応そのものになります。  この記事でわかること 排出原単位がもつ二つの意味(算定の係数と、製品別の炭素強度) CBAM、製品CFP、Scope3カテゴリ1で、企業に何が起きつつあるか 取引や規制に向けて、企業が準備しておくべきデータ 目次 「排出原単位」には二つの顔がある 「測る・比べる」から「受け渡す」へ CBAMでは、原単位が製品とともに受け渡される 規制でも業界でも、原単位は同じ向きに動く 受け取る側でも、原単位が中心になる 「同じ向き」でも、そのまま流用はできない 当面の備えは「製品別原単位を一次データで示すこと」 まとめ 主要参考資料   「排出原単位」には二つの顔がある 排出原単位とは、排出量を何らかの「単位」で割った値ですが、ここには役割の異なる二つの数値が含まれます。 一つは排出係数(emission factor)です。活動量に掛け合わせて排出量を推計するための数値で、「排出量=活動量×排出係数」の係数にあたります。電気1kWhあたり、燃料1Lあたりといった形で与えられ、多くは業界平均値が使われます。環境省も、サプライチェーン排出量の算定方法を、取引先から排出量の提供を受ける方法(一次データ)と、自社の活動量に排出原単位を掛け合わせる方法の二つに整理しています(環境省 排出原単位データベース)。 もう一つは製品別の炭素強度(carbon intensity)です。排出量を、つくり出したものの一単位あたりに直した数値で、鋼材1トンあたり、電池容量1Whあたりといった形で、製品一単位あたりのCO₂排出量を表します。排出係数が「掛けて自社の排出量を出す入力」であるのに対し、炭素強度は「割って得られる、製品あたりの結果」です。この製品あたりの炭素強度の代表例が、ライフサイクル全体の排出量を製品単位で表したCFPです(環境省 カーボンフットプリント)。 そして、この二つは地続きです。ある鋼材メーカーが算定した「鋼材1トンあたりの排出量」は、その鋼材を買って自動車をつくるメーカーにとっては、購入した材料の排出量を計算するための「排出係数」になります。同じ数値が、売り手には製品の結果(炭素強度)として、買い手には計算の入力(排出係数)として使われるわけです。日本語ではどちらも「原単位」と呼ぶため混同しやすいのですが、この二つを分けて考えることが出発点になります(買い手側の含意は後の章で改めて述べます)。 「測る・比べる」から「受け渡す」へ この二つのうち、いま使われ方が大きく変わっているのは、製品あたりの原単位(炭素強度)です。 これまで製品の原単位(CFP)は、主に「測って、表示し、比べる」ために使われてきました。自社製品の排出量を把握して削減のポイントを見つけ、消費者や取引先に開示する、という使い方です。排出原単位を「指標」として用いる段階でした。 ところがいま、製品の排出原単位は、その指標の段階を超えて、サプライチェーンを川上から川下へと受け渡され、規制や価格づけの前提として使われ始めています。脱炭素の実務が「測る」から「比べる・選ぶ・課す」段階へ移り、業界平均では足りず、製品ごと・自社の一次データに基づく原単位が、取引や規制の現場で直接使われるようになったためです。その変化が最もはっきり表れているのが、次に見るCBAMです。   CBAMでは、原単位が製品とともに受け渡される 排出原単位が申告と費用負担の根拠そのものになる最前線が、EUのCBAM(炭素国境調整メカニズム)です。2026年1月に本格適用が始まり、鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料・電力・水素について、製品トンあたりの排出量の申告を求めます(欧州委員会 Carbon Border Adjustment Mechanism、基礎は規則(EU)2023/956)。申告義務を直接負うのはEU側の輸入者ですが、排出量データは生産者が握っているため、日本など域外の製造者も、輸入者を通じてデータ提供を求められる場面が増えていきます(ジェトロ「EUのCBAMに備える」)。 ここで求める排出量は、工場単位ではなく製品の単位生産量あたりです。鉄鋼を例にとれば、その製造には銑鉄など前段でつくられる材料が使われます。こうした前段の材料はCBAMで前駆体(precursor)と呼ばれ、複雑な製品の排出量は、前駆体に紐づく排出原単位を受け継いだうえで、自社工程の排出を加えて算定します。このように原単位は、川上から前駆体とともに引き継がれながら、製品とともに流れていきます。実測データがなければデフォルト値で算定され、申告にとどまらず証書の購入・償却という金銭的な負担も生じます。2026年の輸入分は、2027年9月30日が初回申告と証書償却の期限です(算定方法・デフォルト値・期限の詳細は欧州委員会 CBAM Legislation and Guidance)。なお、CBAMが求める排出量はライフサイクル全体を対象とする一般的なCFPより範囲が狭く、CFPの算定をそのまま流用すると過剰報告になりかねない点には注意が必要です(前掲ジェトロ)。 規制でも業界でも、原単位は同じ向きに動く 製品に原単位を載せて川下へ渡すという使い方は、強制力をもつCBAMにとどまらず、ほかの規制にも、業界主導の基盤にも広がっています。 規制の側:電池規則とデジタル製品パスポート 規制の側では、EUの電池規則が、電気自動車用電池などについて、電池モデル・製造拠点ごとのカーボンフットプリント宣言を段階的に義務づけ、電池パスポートが製品単位の炭素情報を川下へ受け渡す基盤になります(規則(EU)2023/1542、算定規則は欧州委員会JRC/EPLCA)。これはより広い枠組みの先行例でもあります。EUのエコデザイン規則(ESPR)は、製品の環境性能や炭素フットプリントを、製品とともに移動するデジタル製品パスポート(DPP)に載せる仕組みを導入しました(規則(EU)2024/1781)。対象は委任法令で順次広げる設計で、優先製品群とされた鉄鋼・アルミニウムはCBAMの対象財とも重なり、同じ製品が、国境でも製品情報の開示でも炭素データを問われることになります(欧州委員会 エコデザイン作業計画2025–2030)。 業界の側:EPDと共通データ基盤 業界の側でも、製品の環境データを取引先間で受け渡す基盤が整っています。代表的なのがEPD(環境製品宣言)で、製品ごとの排出量などを共通ルール(PCR)に沿って算定し、第三者検証を経て開示する宣言です(ISO 14025のタイプIII環境宣言。国内ではSuMPO EPDが運用されています)。これが原単位の受け渡しに直結するのが建築です。建物の排出量は、運用時のエネルギーに加え、建材に由来する体化炭素(エンボディドカーボン)の比重が大きく、建材ごとのEPDに記された原単位を建物全体で足し合わせて評価します。国内でも、運用段階は建築物省エネ法によって2025年4月から全新築で省エネ基準への適合が義務化され(国土交通省 建築物省エネ法)、建材側の体化炭素も、国土交通省が2028年度を目途に建築物のライフサイクルカーボン(LCA)の算定・評価を促す制度づくりを進めています(国土交通省 建築物LCA制度検討会)。 製造業でも、同じ受け渡しを共通形式で行う基盤が立ち上がっています。WBCSDのPACT(Partnership for Carbon Transparency)は、製品単位のCFPを一次データで取引先間でやり取りする方法論を整備し(WBCSD PACT Methodology Version 3)、自動車業界のCatena-Xも、製品の炭素データを共通ルールと標準形式で受け渡せるよう整えています(Catena-X Product Carbon Footprint Rulebook)。 その先の構想:賛否が割れる製品単位の炭素会計 さらにこの流れの先には、製品単位の炭素会計を世界規模で標準化しようとする構想もあります。2025年10月に発足した業界連合Carbon Measuresは、製品に紐づく炭素情報を会計の台帳のように扱い、二重計上を避けながら川下へ受け渡す枠組みを掲げています(Carbon Measures 発足発表、Trellis)。ただし、強制力をもつ規制とは異なり発足して間もない任意の取り組みで、責任を川下や最終消費者へ移し、Scope3を含む排出量全体の開示から注意を逸らすおそれがあるとの批判もあります(NewClimate Institute)。 立場も強制力も異なりますが、製品に紐づく排出原単位を川上から川下へ渡すという構造は共通しています。本稿が重視するのは個々の枠組みの是非ではなく、これらが同じ向きに進んでいる点です。 受け取る側でも、原単位が中心になる 視点を、原単位を渡す側から受け取る側へ移すと、もう一つの変化が見えます。買い手にとって、取引先から渡される製品CFPは、自社のScope3カテゴリ1(購入した製品・サービス)を計算するための一次データになります。冒頭で触れたとおり、ある製品の炭素強度は、それを買う側にとっては排出係数です。これまでカテゴリ1は業界平均の係数で埋めることが多かったのですが、それを取引先の実データに置き換える動きが進んでいます。 ただし、取引先のCFPですべてを置き換えられるわけではありません。製品CFPが得られない品目も多く、カテゴリ1は一次データと業界平均などの二次データの組み合わせで埋めるのが実情です。そのうえ、受け取ったCFPも、算定範囲や配分の仕方、検証の有無が供給者ごとに揃っていないと、自社の総量にそのまま整合させるのが難しい場合があります。 この足並みのばらつきを抑え、製品の原単位を受け渡せる形に揃えることこそ、PACTやCatena-Xのような算定・伝達のルールの役割です。送り出す側のこうした基盤と、受け取る側のカテゴリ1の一次データ化は、同じ受け渡しを裏と表から見たものといえます。もっとも、これらは任意の基盤で、検証の水準や、CBAM・電池規則など他制度との物差しの違いまでは揃えません。 「同じ向き」でも、そのまま流用はできない ここまで「同じ向き」と述べてきましたが、実務では、ある制度の数値を別の制度へそのまま流用したり足し合わせたりはできません。CBAMの排出量は原則として製造ゲートまでを対象とし、間接排出を算入するかどうかは製品によって異なります。一方、ISO 14067に基づくCFPは、調達から廃棄までライフサイクル全体を取り得ます。電池規則は「生涯提供エネルギー1kWhあたり」という独自の機能単位を使い、CBAMの「製品トンあたり」やPACTの製品単位とは比較の土台が違います。対象ガスや検証の水準もそろっていません。 つまり、製品原単位は同じ向きに動いてはいるものの、境界・単位・対象ガス・検証がまだ統一されておらず、共通の物差しは確立していません。だからこそ、自社の製品がどの制度向けに、どの境界・どの単位で原単位を示すべきかを区別して準備しておくことが要点になります。 当面の備えは「製品別原単位を一次データで示すこと」 この変化が新たに求めるのは、主に製品の原単位の側の備えです。自社の排出量を計算するための排出係数としての使い方は引き続き必要で、ここが大きく変わるわけではありません。新しい課題は、製品単位の原単位を、業界平均ではなく自社の一次データで、前駆体材料の分まで引き継いで示せるかどうかに集中しつつあります。 まず取り組めるのは、自社が使っている「排出原単位」を二つに分けて棚卸しすることです。自社の排出量を計算するための排出係数と、取引先へ製品ごとに説明するための原単位(CFP等)を区別し、後者については、対象となる製品、製造拠点、主要な原材料や前駆体材料、一次データの有無を整理します。業界平均の係数で代用している箇所を洗い出すと、どこから手をつけるべきかが見えてきます。 そのうえで、提出先ごとの段取りを押さえます。CBAMに該当する製品があれば、2026年の輸入分は2027年9月30日が初回申告と証書償却の期限ですので、ここに間に合うようEU輸入者とデータ受け渡しの段取りを確認します。自社の一次データを示せれば実態に近い値で申告でき、負担額の抑制にもつながります。取引先からCFPを求められる場合は、PACTやCatena-Xが想定するデータ形式と第三者検証の要否を確認します。Scope3カテゴリ1で供給者データへ切り替える際は、GHGプロトコルの一次データの要件に沿わせ、これまで用いてきた排出原単位データベース(環境省データベースやIDEA)からの移行を段階的に進めるのが現実的です。 業界平均の係数ではなく、自社製品に紐づく一次データを示せるかどうかが、これからの取引や規制対応の分かれ目になります。求められてから慌てるのではなく、対象になりやすい製品から準備しておくことが、現実的な備えといえます。 まとめ 排出原単位には、自社の排出量を計算するための係数(排出係数)と、製品を比べるための物差し(製品の炭素強度)という二つの顔が古くからあります。いま変わっているのは後者で、測って比べるための指標から、サプライチェーンを伝って受け渡され、取引や規制、価格づけの前提となるデータへと性格を変えています。送り出す側にとっては取引や規制で示すべき数値として、受け取る側にとっては自社のScope3カテゴリ1を支える一次データとして、同じ製品の原単位が使われ始めています。ただし境界も単位もまだ統一されておらず、制度をまたいでそのまま流用はできません。だからこそ、自社製品の原単位を、業界平均ではなく自社の一次データで、提出先に応じて示せるようにしておくことが、これからの数年の備えの中心になります。 主要参考資料 Regulation (EU) 2023/956(CBAM基本規則、EUR-Lex)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/956/oj/eng Regulation (EU) 2023/1542(EU電池規則、EUR-Lex)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1542/oj/eng Regulation (EU) 2024/1781(エコデザイン規則ESPR、EUR-Lex)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1781/oj/eng 建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk4_000302.html PACT Methodology Version 3(WBCSD)https://www.wbcsd.org/resources/pact-methodology-version-3/ Why scope 3 emissions accounting matters and why industry-led Carbon Measures distracts from it(NewClimate Institute)https://newclimate.org/news/why-scope-3-emissions-accounting-matters-and-why-carbon-measures-distracts-from-it   (執筆者:木塚) 本稿に関連するテーマとして、製品別原単位(CFP)の算定、Scope3カテゴリ1の一次データ化、サプライヤーからのデータ収集、CBAM対応などがあります。関連するサービスは以下のとおりです。 【ウェイストボックスの関連サービス ・LCA、CFP算定、カーボン・オフセット事業 ・Scope3算定・排出量把握 ・サプライヤーエンゲージメント・排出削減 ・アドバイザリーサービス

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