2026.10.08
SBTネットゼロ基準v2に向けて、今から何を準備する? 2022~2024年に2030年目標でSBT認定を取得した企業の皆様へ
2026.10.08
SBTネットゼロ基準v2を、「知る」段階から「自社で動く」段階へ 2026年6月にネットゼロ基準v2がリリースされて以降、様々なウェビナーや解説記事を通じて、「何が変わるのか」については一通り情報収集された企業の皆様も多いのではないでしょうか。 一方で、最近私たちが企業の皆様とお話ししている中で非常に多いのが、「基準の内容は何となく分かった。でも、結局自社はいつから、何を始めればいいのでしょうか?」というご質問です。 私たちは、現在も常に複数のSBT支援案件を抱えており、またSBT取得後も年間契約で継続的にご支援している企業の皆様と、ネットゼロ基準v2に向けた準備について日々お話ししています。企業の皆様との会話を通じ、SBTiの基準で何が要求されているのかということだけでなく、企業の皆様が実際にその要求を自社の実務に落とし込もうとしたとき、どこで困るのかということも少しずつ見えてきました。 本記事では、2022年、2023年、2024年に2030年目標でSBT認定を取得済みの企業の皆様を主な対象として、必須の5年レビューやネットゼロ基準v2での目標申請を見据え、どのように実務を進めていくのかを整理していきたいと思います。 10月に入り、v2申請に向けた準備がかなり具体的にできるようになりました ネットゼロ基準v2での目標提出受付開始を約4か月後に控え、10月初めには、ネットゼロ基準v2での目標提出時に必要となる情報の詳細がリリースされました。 ネットゼロ基準v2の6月リリース時にも、「企業ネットゼロ基準v2向け最低限必要なエビデンス(暫定版)」というドキュメントで、目標提出時に各要件に対して必要となるエビデンスの概要は示されていましたが、今回10月には、Submission Formの形式でより企業の皆様に分かりやすい形で示されています。これはまだ最終決定版ではないということではありますが、かなり事前準備の助けになる印象です。 また、これに先立ち8月には、必須の5年レビューガイダンスの改訂がありました。ここでは、更新が必要だということを認識している企業、つまり最新の基準に適合していないことが分かっている企業については、必須の5年レビューの提出を省略し、直接新しい目標の提出に進むことができるということが追加で規定されました。ここで、新しい目標の提出期限がトリガー日から1年以内、という点については変更ありません。 そのため、まずは自社の現在のSBT認定目標が、「いつ5年レビューの時期を迎えるのか」を確認するところから始める必要があります。 まずは、自社の「5年レビュートリガー日」を確認 具体的には、2022年に2030年目標年でSBT認定取得し、その後目標更新等を行っていない場合は、通常は認定目標公開日の5年後の月末、つまり2027年の認定月月末がトリガー日となります。 2027年についてはネットゼロ基準v1.3.1とv2.0の併用期間となりますので、現在の目標がv1.3.1に合致している場合は、必須の5年レビューフォームを提出して「新たな目標が不要である」の判定を受けることになります。 一方で、ネ ットゼロ基準v1.3.1にも明らかに合致していないことが企業側で分かっている場合は、v1.3.1あるいはv2.0での目標設定が必要になりますので、必須の5年レビューの提出を省略して、直接トリガー日の1年後までに目標提出を行うことができるという内容になります。ただし、ネットゼロ基準v1.3.1に基づいた目標を提出できるのは2028年1月までとなっておりますので、ご注意ください。 一方、2023年(2月以降)や2024年に2030年目標年でSBT認定取得した企業の皆様は、対応が異なってきます。この企業の皆様は、5年後のトリガー日にはネットゼロ基準v2.0適用義務化となっている時期に該当します。そのため、そのまま5年レビューを実施するとv2.0に対して不適合と判定される可能性が高いですが、一方で同ガイダンスでは、トリガー日から2年以内に目標年がある場合は免除を申請し、5年レビューの完了を省略することができるというルールがあります。この免除申請がSBTi Servicesより承認された場合には、必須の5年レビューを免除し、目標年の翌年末までに新たな目標を提出することが可能です。2030年目標であれば、例えば2031年末までの提出となります。 この辺りは、「2022年取得だからこう」「2024年取得だからこう」と認定年だけで判断するのではなく、実際の目標公開日と目標年を確認したうえで、自社の場合どのルートになるのかを整理いただくのがよいと思います。 必須の5年レビュー自体は、それほど難しいものではありません 必須の5年レビューはどのようなものか、については、必須の5年レビューマニュアルがありますので、そちらを参考にしていただくと分かりやすいです。弊社も2020年にSBT取得済みですので、実際に5年レビューの提出を行い、「新たな目標が不要である」の判定を受けています。どのようなレビュー項目があるのかについては、マニュアル内に具体的な質問項目と回答例が掲載されています。目標の更新が必要だとあらかじめ分かっている場合は5年レビューを省略することもできるため、フォームを提出するのは主に既存の目標が基準に適合している企業となり、基本的には回答例に近い回答を行っていくことが想定されます。そのため、難易度としてはSBTの申請ほど高くはありません。ただし、エビデンスとして年次報告等の添付が要求されている点には注意が必要です。 現在のところ提出方法は2種類用意されており、SBTi Services Validation Portalあるいは専用のオンラインフォームからの提出となります。特に2022年~2024年前半頃にSBTに目標提出された企業の皆様は、SBTi Services Validation Portalへの登録を行っていない場合も多いと思います。SBTi Services Validation Portalへの企業登録にはSBTi Servicesの審査が入ることから、一定の時間を要します。現時点では専用のオンラインフォームからの提出も可能ですが、今後Validation Portalへの一本化の可能性も否定できませんので、必須の5年レビュートリガー日が近づきましたら、最新情報をご確認いただくことをお勧めいたします。 では、ネットゼロ基準v2に向けて何を準備すればよいのでしょうか ここからは、ネットゼロ基準v2申請に向けてどのような準備を進めればよいか、という点に触れていきます。 私たちが最近よく感じるのは、ネットゼロ基準v2の概要について理解されている企業はかなり増えている一方で、それを実際の自社のスケジュールに置き直すところで、少し難しさが出ているということです。例えば、「第三者保証が必要になる」ということはご存じでも、「では何年度のデータで保証を取る必要があるのか?毎年?」「何のデータに対しての保証が必要なのか?」「このデータを実際第三者保証機関は保証してくれるのか?」という疑問と共にスケジュールの見通しが行き詰ってしまうケースがあります。情報がないというより、情報はかなり集まってきたので、今度はそれを自社の工程表にしていく段階に入ってきたのではないかと思います。 目標設定だけではなく、社内のエビデンス準備にも時間がかかりそうです 10月にリリースされた「企業ネットゼロ基準v2.0向け審査手順」の中では、SBTi Servicesの審査範囲と、初回審査に必要な書類が一覧表でそれぞれ示されています。特に必要書類として、「最高意思決定機関がSBT目標の説明責任を負うことを示す日付入り文書」「署名済みのコーポレートガバナンス体制の文書、レビュー体制や進捗報告に関する方針文書」「移行計画が戦略や方針に組み込まれていることを証明する日付入り文書」といったものが取り上げられています。これらについては、多くの企業の皆様にとって、必要な内容自体を検討するだけでなく、実際に「添付文書」という形式にすることにも時間がかかることが想定されます。自社のネットゼロ基準v2に沿った目標の提出時期から遡って、自社の決裁承認スケジュールを考慮して、計画的に準備を進めていく必要があります。 また、審査期間についても従来より長くなることが想定されます。オンラインミーティングや審査ラウンドの回数も増えるため、目標提出日だけを見るのではなく、審査期間まで含めて少し長めに考えておくことをお勧めします。 Scope1,2,3の目標設定方法も現行版から大きく変わります ネットゼロ基準v2では目標設定の方法も現行バージョンから大幅に変更になります。既にこの辺りは様々なウェビナーや文字媒体から情報入手されている企業様も多いかと思います。 具体的には、Scope1は絶対排出量削減、排出強度削減(セクター固有の場合のみ)、資産移行の3種類、Scope2は絶対排出量削減と低炭素電力整合の2種類となります。熱・蒸気・冷熱については絶対排出量削減のみとなります。Scope3については、Scope3カテゴリー1~14に占める割合が5%以上のカテゴリーを重要カテゴリーとして抽出し、絶対排出量削減、サプライヤー/顧客整合、量の整合、製品使用の整合、製品寿命の整合といった目標設定方法から、カテゴリーごとに選択可能な方法を確認したうえで、包括的に、またはカテゴリーごとに設定していくことになります。 そのため、実務の進め方としては、まず自社の直近年度のScope1、2、3インベントリを整理したうえで、Scope2向けには低炭素電力の現状比率の確認、Scope3向けには5%以上の重要カテゴリーの抽出、さらに各カテゴリーでどの目標を選択するのかという検討と、その目標で使用する現状の指標データの確認、と進めていく必要があります。例えばサプライヤー整合目標を設定しようとする場合には、ネットゼロ移行中のサプライヤーの比率をどのように把握するのか、といった検討も必要になります。 基準の文章だけを見ると「こういう目標設定方法があります」という話なのですが、実際に自社で選ぼうとすると、その目標を設定するためのデータを本当に保有しているのか、というところから確認する必要があります。この辺りは、実務として進めてみると意外と時間がかかるところだと思います。 Preliminary Submission Formを一度見ておくことをお勧めします 今回のリリース文書の中には、「Preliminary Submission Form CNZSV2」という、提出フォームの準備に活用できるExcelファイルが含まれています。この後、質問や形式など内容の変更がある可能性があり、2027年2月のネットゼロ基準v2での目標提出受付開始の前に最終版が公開されるということですので、その点はご留意ください。 一方で、このExcelファイルを活用することで、現時点で不足している情報やエビデンス資料について把握することができます。Excelファイルの中には「ガイダンス」として、6月のネットゼロ基準v2リリース時に同時公開された「企業ネットゼロ基準v2向け最低限必要なエビデンス(暫定版)」のエビデンス例示がおおむね転記されています。そのため、このガイダンスを参照することで、エビデンス書類のイメージは比較的掴みやすくなっています。各エビデンス書類については、書類名と参照ページ、必要に応じて補足のコメントを記載する必要があります。「最終版が出てから確認しよう」としてしまうよりは、まず現在の暫定版で、自社に何があり、何が足りていないのかだけでも確認しておくとよいと思います。 特に早めに動いておきたいのが第三者保証です ネットゼロ基準v2では、カテゴリーA企業は各目標指標に対する目標基準年の第三者保証の添付が必要となります。この第三者保証機関についても、名称、独立性、認定機関と認定機関のグローバル基準適合性に関するエビデンス、保証基準、認定の詳細といった情報が必要となります。 目標提出時点で、目標基準年の各目標指標に対する第三者保証の保証書添付が必要になるため、目標をいつ頃提出するのか、目標基準年を何年度と設定するのか、その年度の保証を取得するにはいつから動くべきなのか、ということを逆算する必要があります。 また、今回第三者保証が必要となるのは、Scope1、2、3のインベントリだけでなく、低炭素電力の計算、重要なEIAからの排出量、その他目標設定に用いる指標も対象となります。第三者保証機関によっては、Scope1、2、3以外の目標指標について保証取得が可能かどうか、事前に協議しておいた方がよいケースも出てくることが考えられます。この辺りは、早期着手がお勧めのポイントとなります。 2022年、2023年ころにSBT認定取得した企業は、インベントリ入力も早めの確認を 2022年、2023年SBT認定取得企業の皆様は、それ以降に更新等の申請を行っていない場合、WordでのSubmission Formのご提出であったはずです。その後、Submission FormがExcel版、さらにはSBTi Services Validation Portal 版と改訂を繰り返している中で、Scope1、2、3インベントリ質問項目は、2023年以前のWord版Submission Formと比較してかなり細かく増加しています。 そのため、初申請当時に整理したインベントリの内容を、そのままネットゼロ基準v2での入力の際に活用できないことも想定されますので、インベントリ入力についても早めにご確認いただくことをお勧めいたします。 なお、提出の際は「目標設定ツール」「Submission Form」「エビデンス書類」の3つで構成され、ツールに入力した情報は原則としてSubmission Formで再度質問されないとされています。 「目標設定ツール」については、6月のネットゼロ基準v2リリース時にベータ版が公開されていますが、このベータ版は審査で求められる機能やデータ項目をまだ反映しておらず、最終的な入力データの目安としては使用しないよう明記されています。ツールへの入力データの準備には、10月に公開された「企業ネットゼロ基準v2.0目標設定ツールの入力データ項目(暫定版)」を参照することをお勧めします。実際の提出に使用できる最初の運用版は、2027年2月のネットゼロ基準v2での目標提出受付開始の前に公開される予定です。 ここまでの話をまとめると ネットゼロ基準v2への対応というと、どうしても新しい目標設定方法の方に目が行きがちですが、実際に企業の皆様に準備いただく内容はそれだけではありません。 まずは、下記の順番で検討を進めていただくことが考えられます。 1.自社の5年レビュートリガー日を確認する 直近のSBT認定目標公開日から5年後のトリガー日を確認し、現在設定している目標年との関係を整理します。 2.5年レビューをどうするか、次の目標をいつ提出するか決める トリガー日から半年以内に必須の5年レビューを提出するか、目標年が近いため免除申請をするか(免除申請もレビューフォームから半年以内に行います)、あるいは現在の目標が最新基準に適合していないことが明らかなため、レビューを省略して直接トリガー日の1年以内に次の目標提出を行うかを決定します。 3.ネットゼロ基準v2で目標提出する場合は、提出時期から逆算して準備する いつ目標提出をするのかによって目標基準年を見定め、目標を検討・決定し、目標指標のデータ収集、第三者保証機関との調整、ガバナンス体制等のエビデンス書類の手配を順次進めていきます。すべてをすぐに準備する必要はありませんが、少なくとも自社がいつ頃までに何を決める必要があるのか、一度全体を並べてみることをお勧めします。 最近一番多いのは「では、自社の場合はどうなるのか」というご相談です ネットゼロ基準v2のリリース以降、様々なメディアでウェビナーや文章での解説を目にしてこられたかと思います。それらを通じて一通り概要はつかめたものの、「では実際自社においてはどうなるのか」という点がいまいち確証が持てない企業様からのお問い合わせが、特にこの夏以降急増しております。 例えば、「自社の場合、次の目標はネットゼロ基準v2に沿っていないとダメなのでしょうか」「自社の場合、2030年目標年のため5年レビューの免除の対象になるのでしょうか」「自社の場合、ネットゼロ基準v2で申請する場合、いつまでに提出すればよいのでしょうか」といったご質問です。つまり基準の内容を全く知らないということではなく、むしろかなり情報収集されたうえで、最後に「自社の場合」を確認したい、というご相談が多い印象です。 まず入口となる疑問や不安については、弊社のSBT30分無料相談の中で一旦整理し、「気持ちが落ち着いた」「具体的にやるべきことが見えてきた」というお声も頂戴しております。無料相談の中で、企業様の目標公開日や目標年を確認しながらかなり具体的なスケジュールまで一緒に整理してしまうこともあり、「ちょっとサービスしすぎなのでは」と思うこともありますが(笑)、この最初の交通整理がかなり重要なのだと思っています。 ネットゼロ基準v2に向けた「具体的な進め方」をテーマにウェビナーを開催します 今回、実務の進め方についての具体的な情報がかなりリリースされてきたこのタイミングで、ネットゼロ基準v2への対応をテーマとした、弊社メルマガ読者限定ウェビナーを開催する予定です。 今回のウェビナーでは、ネットゼロ基準v2の要求事項をもう一度最初から解説するというよりも、「では実際、自社はいつから、何を、どの順番で進めればよいのか」というところを中心に取り上げたいと考えています。SBTi認定エキスパートが登壇する予定です。 この記事をここまで読んでいただき、「考え方は分かったけれど、自社の場合はどうなるのか、まだ少し分からない」という皆様には、ぜひご参加いただければ幸いです。ウェビナー開催まで待てない、という方は、お気軽にSBT30分無料相談へお申し込みください。 【参照文献】 ・Mandatory Five-Year Review Guidance(SBTi) ・Mandatory Five-Year Review Manual(SBTi Services) ・SBTi Commitment and Target Statuses(SBTi) ・Preliminary Submission Form CNZSV2(SBTi Services) ・Validation Schedule for CNZSV2(SBTi Services) ・Validation Procedures for CNZSV2(SBTi Services) ・Preliminary Data Points for the Target-Setting Tool CNZSV2(SBTi Services) ・Corporate Net-Zero Standard Version 2.0(SBTi) ・Preliminary Minimum Evidence Required for Corporate Net-Zero Standard Version 2.0(SBTi) ・Continuing Use of Corporate Net-Zero Standard Version 1.3.1 and Transition to Corporate Net-Zero Standard Version 2(SBTi) (執筆者:小島) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・SBT認定取得支援|株式会社ウェイストボックス ・気候移行計画策定支援|株式会社ウェイストボックス ・SBT申請前準備段階支援|株式会社ウェイストボックス
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いずれの場合も、どの経路に、どのくらいの時間軸で、どの程度効くのかが特定されていれば、話は接続しやすくなります。排出量を何年までに何%削減するという記述だけでは、受け取った側から次に問えることがありません。その削減が自社のどの支払いに効くのか、どこまでが手当て済みで、どこから先が未定なのかまで書かれていれば、話は続きます。