2025.03.06
再生可能エネルギーの最新動向「RE100から24/7CFEに向けて」
2025.03.06
本コラムでは、再生可能エネルギー(再エネ)や、関連するイニシアティブの最新動向について紹介します。 主要なイニシアティブの動向 「RE100」 RE100(100%再生可能エネルギー調達目標)は、多くのグローバル企業が参加するイニシアティブです。近年では、単に100%の達成を目指すだけでなく、「質の高い再エネ調達」が求められています。技術要件が2022年10月24日に改定され、加盟企業に対して2024年1月以降の電力調達に関して新しい要件の適用が求められています。 【「追加性」を追求】 ・認められる再エネ調達方法は5つのタイプに整理されており、CO2の排出削減によりインパクトがある調達方法の選択が求められています。 特に自家発電や、長期的、直接的、あるいはプロジェクトを特定した契約による新規プロジェクトからの調達ほど高いインパクトと追加性があります。 ・運転開始から15年以内の発電設備から電力・証書を購入することが規定されました。 コーポレートPPAのように新設の発電設備から調達することが難しい場合、小売事業者から再エネメニューの電力を購入、また非化石証書などの再エネ属性証書の活用が考えられますが、これらの調達方法は運転開始から15年以内の発電設備に制限されます。 【「持続可能性」を追求】 ・水力発電およびバイオエネルギーの利用については、持続可能性の要件を満たす場合に限り認められています。 CDPのスコアリング基準もRE100要件に整合しています。コーポレートPPAの活用や発電設備の運転開始年の把握を通じて、追加性の高い電力を調達すると高評価につながります。具体的には以下スコアリング基準が2023年より追加されています。 ・コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)の比率が25%以上で高評価 >オンサイトPPA、フィジカルPPA、バーチャルPPAによる再エネ調達に加え、企業が調達する自然エネルギーのうち、25%以上がPPAであると評価が向上 ・購入対象の発電設備の運転開始年を把握している再エネ比率に応じ高評価 >25%以上、50%以上を把握している場合にその比率に応じて評価が向上 *1 RE_Procurement_Guidebook_JP_2025.pdf P68 新たなイニシアティブの動向「 24/7 カーボンフリー電力(CFE)」 2021年には国連主導の国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」*2が始動しました。世界170以上(2025年3月時点)の企業、エネルギー会社、投資会社・金融機関などの組織が加盟し動きが活発化しています。 「24/7CFE」とは、単に年間100%再エネを達成するのではなく、「24時間365日、1時間単位の電力消費量に合わせて再生可能エネルギーを中心とするCO2排出量ゼロの電力(カーボンフリー電力)を100%供給する」概念です。需要家の設備と同じ送配電網に接続する再エネによる電力をリアルタイムで「同時」に使用することが求められています。日中の太陽光発電の余剰分を蓄電池に貯め電力需要を満たせない夜間の時間に放出することで「24/7CFE」を実現した場合の実践イメージを以下に示します。 *2「24/7 Carbon-Free Energy Procurement in APAC」BloombergNEFの図を弊社にて和訳 日本の主要な再エネ調達方法とのギャップ RE100、SBTにおいても、需要家は①火力が主電源である通常の電力供給に、小売電気事業者が再エネ電力証書を組み合わせた実質再エネ電力メニューを契約する方法や②需要家の年間の電力使用量と同等の非化石証書等を調達し、名目上再エネ由来の電力を使用しているとみなす方法で再エネ利用を主張することが可能です。しかし、これらは電力消費と再エネの1時間ごとのマッチングができず、電力が実際に消費される送配電網内での再エネ調達でもないため、24/7 CFEの方針には適合しません。 24/7CFE達成に向けた再エネ調達方法「オフサイトPPA(フィジカルPPA)」 達成に向け、先進的な企業事例を参考にしながら、従来の証書に頼る再エネ導入からRE100における「追加性」や24/7 CFEを推進させる「同時性」を考慮した再エネ導入を段階的に検討することが推奨されます。 具体的には、企業が再エネ発電所と直接契約し、送配電網を通じて物理的に電力を受け取る仕組みであるオフサイトPPA(フィジカルPPA)が注目されています。PPAの契約が結ばれることで新しい再エネ発電所の建設や拡張が可能になり、全体の再エネ導入量が増加する「追加性」のある再エネ導入方法であり、発電事業者と企業が協力して「24/7 CFE」を構築することができる方法の一つです。 実際に国内でも、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたオフサイトPPA(フィジカルPPA)を活用し、「24/7 CFE」の実現に向けた取り組みが行われています。例えば、太陽光発電所の発電状況や建物側のエネルギー使用状況に応じて蓄電池の充放電を制御し、再生可能エネルギーをリアルタイムで利用できる割合を高めるための実証実験が進められています。 今後の展望 「24/7CFE」の実現は、多くの企業にとって依然として高いハードルとなっています。日本の再エネ証書には発電日や時間単位の情報が含まれておらず、需要家が時間帯ごとに再エネを利用していることを証明する標準的な手段がありません。そのため当面の対策としては、需要家単位で発電データと電力消費データを時間帯ごとに突き合わせ、24/7カーボンフリー電力を確認するなどの企業のデータ管理能力が問われます。 しかしイニシアティブの動向や2026年に向けたGHG プロトコルのScope 2ガイダンス改定においても「同時性」要件が必要ではないかという意欲的な提案もあったことから、将来的にはRE100に続き、24/7CFEがグローバルな再エネ調達のベストプラクティスとして浸透していく可能性も考えられます。今後も再エネ導入に関する要求事項の厳格化や24/7 CFEの実現に向けたスマートグリッド技術の発展、国内の証書制度の改定等の制度的な進展に着目していきたいと考えます。 ・参考資料 *1 「企業・自治体向け 電力調達ガイドブック 第8版(2025年版)」自然エネルギー財団 , RE_Procurement_Guidebook_JP_2025.pdf *2 「24/7 Carbon Free Energy Compact HP」 24/7 Carbon-Free Energy: Methods, Impact & Benefits *3「24/7 CFE Procurement in APAC: Pathways for Companies and Countries (2024/11/26) 」 Bloomberg NEF, BNEF (執筆者:小澤)
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