2026.04.10
EcoVadisの概要と支援サービス
2026.04.10
この記事を読んでほしい人 ・EcoVadisの対応を求められており、全体像を把握したい方 ・自社の取り組みがEcovadisの評価にうまく反映されていないと感じている方 ・サステナビリティ対応が求められているが、何から取り組むべきか悩んでいる方 目次 ■はじめに ■EcoVadisとは ■各テーマの概要 ■取り組む上での注意点・課題 ■まとめ ■ウェイストボックスの支援アプローチ ■ご相談について はじめに 近年、企業に求められるサステナビリティ対応は急速に高度化しています。 気候変動への対応に加え、人権・倫理・サプライチェーン管理など、対象領域は広がり続けており、それに伴い企業を評価する枠組みも多様化しています。 特に近年は、EcoVadisをはじめとしたサプライチェーン評価が急速に広がり、単なる開示対応ではなく「実際に運用されているか」が問われる場面が増えています。その結果、これまでの取り組みがそのままでは評価につながらない、というケースも出てきています。 本稿では、EcoVadisとは何かという基本的な説明を行い、他のESG評価との違いを体系的に整理したうえで、スコアを伸ばす上での課題と対応策を解説します。 EcoVadisへの対応が単なる顧客対応に留まらず、「戦略的な取り組み」に繋がるヒントとして、少しでも参考になれば幸いです。 EcoVadisとは EcoVadisは、企業のサステナビリティ(ESG)への取り組みを評価する第三者評価プラットフォームです。現在では世界185カ国以上・250以上の業種・15万社以上に利用されています。 他のESG評価と大きく異なる点は、利用目的です。EcoVadisは、投資家向けでも開示評価でもなく、「取引先として信頼できるか」という「サプライチェーンマネジメント」のインフラの役割を担っています。 特に欧州企業を中心に、取引先に対してEcoVadisスコアの提出を求める動きが一般化しており、日本企業にとっても徐々に「対応していないと取引に影響する」段階に入っています。 なぜ広がっているのか 背景にあるのは、「サステナブル調達」の進展です。 企業は自社だけでなく、サプライチェーン全体の人権・環境・倫理リスクを管理する責任を負うようになっています。 特に欧州では、2024年に成立したEU企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)により、サプライチェーン全体のESGリスク管理が法的義務として求められるようになっています。 しかし、すべての取引先を個別に監査することは現実的ではありません。そこで多くのサプライチェーンを抱える企業は、EcoVadisを使って取引先の評価・管理・育成をまとめて行っています。 また、EcoVadisはEラーニングコンテンツや改善提案レポートなど、評価だけでなくサプライヤー支援の機能も充実しています。他のサステナビリティ評価と比べても手厚く、日本企業にとってもまず回答してみるというハードルが比較的低い点が特徴です。 評価項目と特徴 EcoVadisは以下の4つテーマで構成されています。そして評価の特徴は「方針、指示、措置、認証、範囲(一定規模以上の企業のみ)、報告」の各評価項目について、「文章(根拠資料)」の提出が求められます。 例えば社員に対して持続可能な調達に関する研修を行っていることを報告したい場合、研修資料や研修を受けた社員の割合を示す資料を添付する必要があります。 そのため、うわべだけの回答ではなく、実際に仕組みとして管理されているかまで問われます。また、 他のサステナビリティ評価と比較すると、「評価項目がサステナビリティ全般」「目標や方針だけでなく、実現する体制や運用が評価される」「投資家向けではなく取引先向け」である点が特徴です。 業種・規模による違い EcoVadisでは、すべての企業に同じ設問が送られるわけではありません。企業が登録時に申告業種・所在国・企業規模をもとに対象となるサステナビリティ問題が特定されます。また、各テーマの評価ウエイトが変わります。 業種ごとにリスクの性質が異なることを考慮してこのような仕組みになっています。例えば、化学メーカーや繊維業であれば環境テーマ(有害物質・廃水・GHG)の比重が高く、人材サービスやIT業では労働・人権テーマや倫理テーマが重視されます。一例を以下に示します。このように業種ごとに与える影響が大きいと思われる項目について評価の対象になります。 また、企業規模によって変わります。中小企業(目安:従業員1,000名未満)では一部の評価軸(「範囲」など)の設問が省略・簡略化される場合があります。 出典:Ecovadisレーティング評価手法:概要と原則より 手厚いサポート体制 Ecovadisと他のESG評価を比較した時に個人的に感じた大きな特徴として、学習・改善支援コンテンツの充実度です。他のサステナビリティ評価と比較しても、この点はEcoVadisが際立っています。 ①EcoVadis Academy(Eラーニング) EcoVadisは「EcoVadis Academy」と呼ばれるEラーニングプラットフォームを提供しています。主なコンテンツは以下の通りです。 評価の仕組みと4テーマの基礎知識 各テーマの評価項目ごとの詳細解説 回答の書き方・証跡の準備方法 スコアアップのための実践的なガイド これらのコンテンツは、評価担当者だけでなく、法務・人事・調達・環境など各部門の担当者が自分の領域に関係するテーマを学ぶための入口として活用できます。「何を準備すればいいかわからない」という状態から脱するための最初のステップとして非常に有効です。 また、これまでの経験から、EcoVadisへの対応を効果的に進めるうえでEラーニングを活用するタイミングは大きく2つあります。 初回回答前 まず担当者がEcoVadis Academyの基礎コンテンツを一通り視聴することで、「何が問われているか」の全体像を把握できます。これをせずにいきなり回答に入ると、求められていることの解釈がずれたまま進んでしまうリスクがあります。 回答後・スコア受領後 改善アクションプランと合わせてEラーニングを活用することで、「なぜその項目でスコアが低かったか」「次回に向けて何を準備すればいいか」を体系的に理解できます。このサイクルを回すことが、継続的なスコアアップの鍵になります。 ②改善アクションプラン(Corrective Action Plan) スコアカードとあわせて提供される「改善アクションプラン」では、自社の評価結果をもとに「何が不足していたか」「次回に向けて何をすべきか」が具体的に示されます。単に点数を知るだけでなく、改善の道筋が示される点が、他の評価と大きく異なります。 また取り組むべき優先度についても高、中、低と三段階に分かれて設定されており、自社の課題を明確に把握することができます。 また、是正措置計画という項目を使用することで、サプライチェーン上の企業に向けて来年度に向けた改善の取り組みを周知することもできます。 ③ベンチマーク機能 テーマごとに同業種・同規模の企業との比較データが提供されるため、「業界平均と比べて自社がどの位置にいるか」を把握できます。スコアの絶対値だけでなく、相対的な位置づけを理解することで、他社と比較して遅れている点を把握することができます。 各テーマの概要 環境 環境テーマでは、自社の事業活動が環境に与える影響を管理・低減するための仕組みと実績が評価されます。製造業・化学・食品・物流など、多くの業種で最も重みが大きいテーマであると考えます。 主な評価項目の例を以下に示します。大手企業の場合、概ね対応していることが多いですが、まだまだ削減目標や計画等が策定できてない企業も多いと思います。また、環境方針等についても定期的な見直しが求められているため、改めて社内の状況を整理する必要があります。 GHG排出量の把握・目標設定・削減実績 エネルギー消費量の管理・再生可能エネルギーの活用 廃棄物の分別・削減管理 有害化学物質の管理 生物多様性への配慮 労働と人権 労働・人権テーマは、日本企業にとって「当たり前すぎて明文化していない」ことが最も多いカテゴリです。法律で禁じられているから当然と思っている取り組みでも、文書化・仕組み化されていなければ評価されません。また、研修の記録等も証拠として提出する必要があります。 労働条件(労働時間・最低賃金・残業管理の遵守等) 強制労働・児童労働の禁止方針と確認の仕組み キャリアマネジメントと教育 多様性、平等、包括性の確保 倫理 倫理テーマでは、企業の経営・取引における誠実性・透明性が評価されます。IT・金融・コンサルティングなどのサービス業では、このテーマの比重が高くなると考えられます。 腐敗行為や贈賄防止に関する方針・社員への周知 情報セキュリティへの対応 内部通報制度の設置等 持続可能な調達 持続可能な調達テーマでは、社会・環境への有害な影響を軽減するサプライヤーと連携を図り、有益な影響を引き起こしていくことが求められています。特に持続可能な調達においては、企業が抱える課題がそれぞれ異なるため、マテリアリティ評価を実施することが求められています。 サプライヤー行動規範の策定、配布、同意取得 リスクの高いサプライヤーへの監査・調査の実施 調達担当者向けのサステナビリティ研修の実施 取り組む上での注意点・課題 よくある課題 EcoVadisの支援を行う上で課題としてよくあるのが、「日本企業として当然取り組んでいるが故に、明文化されていないことが多い」という点です。例えば、児童労働の防止について、「法律で規制されているから当然のこと」として、特に防止について社内方針として記載されていなかったり、チェック項目がなかったりします。そのため資料を添付できず、スコアを落とすケースが出てきます。 コンプライアンス研修や安全衛生管理についても、「やってはいるが記録が残っていない」「担当者の頭の中にはあるが文書化されていない」というケースが多く見られます。 また、初回回答には相応の工数がかかります。法務・人事・調達・環境など複数部門を横断した情報収集が必要になるため、担当者一人で対応しようとすると行き詰まることも。誰が何を担当するか、社内体制を先に整えておくことが大切です。 さらに、EcoVadisは単年評価ではなく、評価と改善のサイクルを回していく設計になっています。スコアが伸び悩む企業の多くは、初回回答後の継続的な改善が追いついていないというパターンが見られます。 EcoVadisで失敗しやすい落とし穴:「範囲」の壁 EcoVadisの評価軸は「方針・指示・措置・認証・報告」の5つが基本ですが、一定規模以上の企業(目安として従業員1,000名超)には、これに加えて「範囲」という評価軸が課されます。 この「範囲」とは、簡単に言うと「その取り組みが、どこまでの組織・拠点・従業員に適用されているか」を問うものです。たとえばISO 14001の認証を取得していても、「本社のみ」「国内拠点のみ」であれば、グループ全体の従業員数に占める対象範囲が低いと評価されます。同様に、ハラスメント防止研修を実施していても、「グループ会社の受講率が把握できていない」状態では範囲の評価が下がります。 一見、大企業のほうが取り組みが充実していそうに思えます。しかし実態としては、「取り組みの質」よりも「取り組みの展開範囲」の証明が難しいという構造的な問題があります。 ①グループ会社への展開状況の集計が困難 たとえば「サステナビリティ研修を実施しています」と回答する場合、EcoVadisは「どの法人の・何名が・全体の何%にあたるか」まで問います。国内外に数十〜数百社の子会社・関連会社を持つ大企業では、各社の受講状況を一元的に集計する仕組みがそもそも存在しないケースが多くあります。 ②認証取得の「穴」が目立つ ISO 14001やISO 45001などの認証を「グループとして取得している」と回答しようとすると、全グループ企業・拠点のうち何%が認証を取得しているかを示す必要があります。主要拠点は取得済みでも、小規模な海外子会社や物流関連会社が未取得であることが多く、グループ全体でみると取得率が中途半端な数字になることがよくあります。 ③措置の展開状況の証明が難しい 「範囲」の評価軸では、各措置が「グループ全体のどの範囲で実際に実施されているか」が問われます。たとえばリスクアセスメントや安全衛生研修を実施していると回答する場合、「本社のみ」ではなく、グループ各社・各拠点での実施状況を示す記録(実施記録、受講率、対象人数など)が証跡として求められます。「グループ共通の取り組みとして定めているから展開されているはず」という説明では評価されず、「実際に各社・各拠点で実施されているか」が問われます。 ④海外拠点の管理が特にネック 人権デューデリジェンスや労働安全衛生の取り組みについては、新興国拠点での状況がより厳しく問われます。日本本社では当たり前に実施している取り組みが、東南アジアや南アジアの製造拠点では形式的にしか導入されていないケースがあり、「展開はしているが記録がない・確認できない」という状況が失点につながります。 実際の支援の中でよく見られる失点パターンを整理すると、以下のようなものがあります。 コンプライアンス研修の受講率 本社・国内グループは管理できているが、海外子会社の受講記録が各社バラバラに管理されており、グループ合算の受講率を算出できない。結果として「研修はやっています」という回答に対して証跡を出せず、評価されない。 ISO認証のカバレッジ 本社と主要製造拠点はISO 14001を取得済みだが、物流子会社・販売会社・海外現地法人が未取得。「グループとして認証を取得しています」と回答したくても、カバレッジが低いため評価が限定的になる。 サプライヤー行動規範の配布状況 本社の購買部門は全サプライヤーへ配布しているが、子会社・関連会社の調達担当者が独自に取引しているサプライヤーへの配布が追いついていない。グループ全体のサプライヤー数のうち何%に配布済みかを問われると答えられない。 内部通報窓口のアクセシビリティ グループ共通のホットラインを設置しているが、海外子会社の従業員が自国語で利用できる環境が整っていない。「グループ全社員がアクセスできます」という回答が難しい。 ただし、範囲の考え方について、EcoVadisの評価では、カバレッジが100%でなくても、「現在の展開率と、今後の拡大計画」を明示できれば一定の評価を得られます。「グループ全体への展開が課題であることを認識しており、2026年度中に海外主要拠点への適用を完了させる計画がある」といった記載と、その裏付けとなる社内計画書や取締役会での承認記録を示すことで、評価につなげることができます。 また、そもそもグループ全体のカバレッジを把握・管理するための仕組み(グループ横断の報告フォーマット、定期的なモニタリング体制など)を構築することが、中長期的なスコア向上の基盤になります。EcoVadisが最終的に評価したいのは「今どこまでできているか」だけでなく、「継続的に改善できる管理体制があるか」です。 大手企業こそ「範囲」対策を先に設計する スモールスタートで対応するベンチャーや中小企業と異なり、グループ全体を抱える大手企業にとっては、この「範囲」の問題がスコアの天井になることが少なくありません。取り組みの中身(方針・措置・認証)を充実させた後に範囲の壁にぶつかるのではなく、最初からグループ横断の管理体制設計を組み込んだ形でEcoVadis対応を設計することが、結果的に効率的なスコアアップにつながります。 まとめ EcoVadisへの対応は、「顧客に言われたからやる」だけでは、なかなかスコアが上がりません。 自社の取り組みの現状をきちんと把握し、「すでにやっていることを見える化する」ところから始める。それが最も効率的な進め方です。 企業の多くは「やっているのに評価されていない」状態にあります。明文化・証跡整備という一手間が、スコアに大きく効いてきます。 EcoVadisへの取り組みを、自社のサステナビリティ経営を高度化する機会として捉えていただけると、対応のモチベーションも変わってくるはずです。 適切に取り組めば、「対応コスト」ではなく「経営価値向上」に転換することが可能です。 ウェイストボックスの支援アプローチ 当社はこれまで、気候変動領域を中心に、 ・GHG算定 ・SBT ・CDP などをご支援してきました。その中で培ったのは、「評価されることだけが目的にならない本質的な取組の推進」です。 EcoVadis支援においても、 ① 現状の可視化 ② 評価項目との紐付け ③ 実務として回る設計 ④ 継続改善の仕組み化 を一体で支援します。EcoVadisのスコアは、取り組みの質が高まるほど自然に上がります。そのため、評価対応と経営実務を切り離さず、両者をつなぐ設計を重視しています。 既にCDPやSBTへの対応を進めている企業であれば、それらの取り組みとEcoVadisの評価項目を効果的に連携させることで、効率的なスコアアップが可能です。 ご相談について ・EcoVadis対応をこれから始めたい ・スコアが伸び悩んでいる ・社内の進め方に課題がある といった場合には、ぜひ一度ご相談ください。 貴社の状況に合わせた具体的な進め方をご提案いたします。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 (執筆者:野村) 【ウェイストボックスの関連サービス】 ・組織の排出量把握・情報開示支援事業|株式会社ウェイストボックス ・CDP質問書、TCFD・TNFD、SSBJ対応 開示支援|株式会社ウェイストボックス ・アドバイザリーサービス
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