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SCOPE1,2,3把握から始めるSDGs13「気候変動に具体的な対策を」の取組

  今年はSDGs実施開始から4年目に当たります。

国連グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が発行しているSDGs調査レポートの最新版によると、昨年2018年は国内において、大企業を中心とした民間企業等で経営層の認知度が大幅に高まり、実行のための体制づくり等にも進展が見られた、また多くの省庁でSDGs関連の取組が始動する等、「SDGs主流化へ向かい出した年」であったということです。(※1)

 9月には国連ハイレベル政治フォーラムの初の首脳級会合(※2)が予定されており、ますますの盛り上がりが期待されます。
 そこで今回は、SDGsへの貢献に向けて本格始動される企業等の皆様へ、弊社が考える、SCOPE1,2,3を活用したSDGs13「気候変動に具体的な対策を」達成のための取組について、ご紹介したいと思います。

 

 前述のレポートによると、企業のSDGs取組において、取組の進捗報告と評価の方法の確立が世界共通の課題の一つとのこと。国内企業においても、定量的な指標などの評価手法がわからないことを課題と感じている企業は多いようです。
 その点、気候変動(特に緩和対策)に関しては、定量化の手法が比較的確立しており、すぐに着手していただき易い分野の一つではないかと考えています。具体的には、気候変動の主要な原因である温室効果ガス(GHG)の排出量を算定報告するための国際基準「GHGプロトコル」が世界的に定着しています。さらに、GHGプロトコルに準拠する形で、2℃目標に沿った目標設定を支援するSBT(Science Based Targets:企業版2℃目標)や、CDP等の気候関連情報開示プログラム等、目標設定や報告の手法についても整備されており、SDGsの取組にあたって活用いただけるツールが比較的揃っていると言えるのではないかと思います。

 

 以下に、弊社が考えるSDGs13への具体的取組内容を、SDG Compassの取組ステップ(※3)に沿って簡単にまとめてみたいと思います。(ステップ1と4はSDGs課題全体と共通のため割愛します。)

 

ステップ2:優先課題を特定する

「SCOPE1,2,3を把握して、気候変動分野の中の優先取組分野を特定する」 

 SDG Compassでは、バリューチェーンマッピングを用いて、自社のバリューチェーンの中でSDGs分野に与える正負の影響を把握した後、影響を定量的に評価し、優先課題を特定していく手順が示されています。
 気候変動分野では、上記のSDGs課題全体のバリューチェーンマッピングに加えて、SCOPE1,2,3を活用した、気候変動分野に特化したバリューチェーンマッピングをお勧めします。SCOPE1,2,3算定の基準とするGHGプロトコルのSCOPE3基準は、SDG Compassにおいても個別ゴールに活用可能なマッピングツールの一つとして紹介されています。SCOPE3ではサプライチェーン上でGHGの排出が予想される分野を15のカテゴリに分け、それぞれにGHG排出量を算定していきます。よって、バリューチェーン上で自社が気候変動に与える影響を、漏れなく、定量的に把握することが可能となります。
 その後、特に排出が大きい分野(ホットスポット)を優先的に取り組むべき分野として特定します。

 

ステップ3:目標を設定する

「SBTを参考にGHG排出削減目標を設定する」

 SDG Compassでは、アウトサイドインアプローチを用いて、世界的・社会的なニーズに応じた意欲的な目標を設定し、それを公表することが手順として挙げられています。アウトサイドインアプローチの目標設定を支援する取組の一つとしてSBTが紹介されています。
 SBTは基準年のSCOPE1,2,3をベースに目標設定をしますので、ステップ2でSCOPE1,2,3把握ができているとスムースに着手できます。
 SBTレベルの全社目標を設定したら、ステップ2で特定した優先分野を中心に、目標を細分化していきます。そして、目標ごとに進捗管理が可能となる評価手法を設定します。具体的には、削減活動の成果がGHG排出削減量として現れるような、GHG排出量の算定手法を設定します。(SCOPE1,2,3算定では、算定目的に応じて様々な算定精度や算定範囲を設定します。ステップ2でバリューチェーンマッピングを行う際には、全体像を把握するために、概算でも良いので全体を漏れなく網羅した算定を行うことが大切です。一方、ステップ3で削減活動を評価する際には、より詳細の算定が必要となります。)

 

ステップ5:報告とコミュニケーション

「CDPやTCFDを活用して進捗を報告」
 SDG Compassでは、取組の進捗状況を定期的に外部に報告すること、その際、国際的な基準に沿った報告を行うことが効果的であるとしています。課題別の国際的基準の一つとしてCDPが紹介されています。
 CDPは気候変動分野で世界的に浸透している情報開示プログラムの一つです。投資家や取引先の要請を受けて回答している企業がメインですが、自主回答も可能です。また、今後はTCFD提言に沿った開示も国際的なスタンダードになっていく見込みです。

 

 以上のステップを定期的サイクルで行っていくことで、目標への着実な進捗が可能になると考えています。そして、取組の第一歩となるのがSCOPE1,2,3の把握です。

 

 まだ4年目とはいえ、2030年までに残された時間は11年。ぜひ取組のご参考としていただき、SDGsの実現と貴社の持続可能性価値向上に向けた一歩を踏み出していただければと思います。

 

 

※1 詳細は、GCNJ、IGES「主流化に向かうSDGsとビジネス~日本における企業・団体の取組み現場から」(2019年2月)ご参照

※2 各国がSDGsの取組進捗を報告する場。閣僚級は毎年、首脳級は4年に1度開催

※3 詳細は【業界動向】企業とSDGs(3)取組手順と参考事例ご参照

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Scope 3とカーボン・クレジット -企業の気候変動対策における課題と可能性-

 企業の気候変動対策において、Scope 3排出量の削減が重要な課題となっています。一方で、追加的な削減を主張するための手段としてカーボン・クレジットが注目されています。 Scope 3の削減もカーボン・クレジットの活用も「他者の排出削減」という点では共通していますが、両者の位置づけは異なるものです。  本稿では、Scope 3とカーボン・クレジットに焦点を充て、現状課題と今後の展望について考察します。 Scope3排出量の重要性と課題  2024年7月にSBTiが公表したScope 3 discussion paperによると、2023年度末時点で世界の時価総額の39%にのぼる4,205社の企業がSBTiにより目標の検証を受け、または目標のコミットメントをしており、そのうち97%がScope 3目標を掲げています。その一方で、多くの企業がその削減や進捗管理に苦慮している実態があり、Scope 3 discussion paperは、Scope 3の削減や評価について以下のような課題を提起しています。 データの信頼性と入手可能性:多くの企業が二次データや推計値に依存しており、正確な排出量の把握が困難である。 集計された排出量指標の限界:Scope3排出量は15のカテゴリにわたる多様な排出源を単一の指標に集約するため、個別の排出源の特性や時間軸の違いが見えにくくなる。 目標設定方法の限界:現在の目標設定方法は、排出量の絶対値や原単位の線形的な削減を想定しており、バリューチェーンの動的な性質を十分に反映できない。 影響力の程度の考慮不足:現在のアプローチでは、企業が各排出源に対してどの程度の影響力を持っているかが十分に考慮されていない。 進捗状況の測定:進捗状況の測定は、データの制約、排出量の変動性、緩和行動とGHGインベントリの変化を直接結びつけることの難しさなどから複雑である。    これらの課題に対応するため、Scope 3 discussion paperにおいては、新たなアプローチが検討されています。具体的には、排出量だけでなく、調達や収益活動の気候目標との整合性を評価する成果ベースの指標の導入や、気候変動への影響が大きい活動に焦点を当てた目標設定境界の見直しなどが提案されています。 図:Scope 3 discussion paper   カーボン・クレジットの位置づけとScope 3との関連性  カーボン・クレジットは、削減できなかった自社の排出量を相殺したり、追加的な削減に貢献したりするための手段として注目されています。ここで重要なことは、Scope 3は企業のバリューチェーン内の排出であるのに対し、カーボン・クレジットはBeyond Value Chain Mitigation (BVCM)、つまり企業のバリューチェーン外での排出削減や除去の位置づけであるという点です。つまり、両者を混在させず別の枠組みとしてそれぞれ開示することが従来の基本的な考え方であるといえます。  一方で、Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative (VCMI)は、この点について柔軟で包括的な方針を示しています。同イニシアチブは、企業がネットゼロ移行過程においてカーボン・クレジットを活用するための行動規範を示しており、その一環として、昨年11月、Scope 3 Flexibility Claimを、今年9月にはその発展形としてScope 3 Claim(ベータ版)を公表しました。これは、スコープ1と2の排出削減に進展があるものの、Scope 3の削減に課題を抱える企業向けに設計された方法論です。具体的には、以下の要件を満たしたうえで、企業がScope 3目標と実績のギャップを埋めるためにカーボン・クレジットを購入・償却することが規定されています。 Scope 3排出削減の障壁と、克服のための行動計画を公開すること Scope 3排出量ギャップの全量以上の高品質な炭素クレジットを償却すること ギャップは24%を超えてはならず、2038年までに段階的に解消すること 科学に基づく短期排出削減目標を設定・公開すること 2050年ネットゼロを公約するとともに、短期目標達成に向けた進捗を示すこと パリ協定の目標を支持する公共政策提言を行うこと カーボン・クレジットの品質基準を満たすこと: VCMIのモニタリング・報告・保証(MRA)フレームワークに従って第三者保証を取得すること Scope 3 Claim(ベータ版)は、現在パブリックコンサルテーション中であり、2025年初頭に最終版が公開される予定です。  また、前述のScope 3 discussion paperにおいては、Scope 3の削減を主張する手段として、トレーサビリティが確保された信頼性の高い「環境属性証明書」を用いることが提案されており、その一つとして、バリューチェーン内で創出されたカーボン・クレジットの可能性が示唆されています。SBTiにおいても、今後これらを含めた検討が進められ、2024年第4四半期末にScope 3の要件に関連する変更を組み込んだ企業ネットゼロ基準の草案が公開される予定です。   まとめ  今回ご紹介したScope 3 discussion paperとScope 3 Claim(ベータ版)との共通点として、Scope 3削減と評価が企業にとって大きな課題であるとともに非常に困難であることが背景にあります。  しかしながら、過度にカーボン・クレジットに依存することで、Scope 3削減への取り組みが阻害されたり、適切な運用がなされないことで見せかけの環境対策(グリーン・ウォッシング)になったりすることも懸念され、慎重な検討が必要といえます。  こうしたカーボン・クレジットとScope 3を関連付けるアプローチに関しては、さまざまな議論や批判があります。本稿ではその是非を評価するものではありませんが、いずれにしても、まずはバリューチェーン内の排出(Scope 1,2,3)の削減を最大限進め、カーボン・クレジットは補完的な位置づけとするという基本的な順序は厳守すべきであり、その方向性は、Scope 3 discussion paperもScope 3 Claim(ベータ版)も変わるものではありません。  Scope 3及びカーボン・クレジットについては、GHGプロトコルを含め各イニシアチブにおいて、新たなルールの策定や既存のルールの見直しの議論が進められているさなかであり、今は大きな転換期にあるといえます。私たちはこれらの議論を注視していく必要がありますが、企業の気候変動対策には、包括的で透明性が高く、野心的な戦略が不可欠であることは明らかです。そのための取り組みとして、サプライヤーや顧客と協働したScope 3の削減や、適切で戦略的なカーボン・クレジットの活用は、企業の脱炭素経営において大きな機会にもなり得るものといえます。 参考資料: Scope 3 discussion paper Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative (VCMI) Scope 3 Flexibility Claim Scope 3 Claim(ベータ版) (執筆者:木塚)    

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カーボンクレジットとは何か? カーボンクレジットに関連する基礎用語を知ろう

 2024年も半分以上が過ぎ、残暑もまだ続く9月ですね。年も半分を過ぎたということで、改めてカーボンクレジットとは何か?クレジットに関連する用語について、メルマガで執筆をさせていただこうという次第です。  まず、なぜ今更、基礎という方も勿論いらっしゃることは重々承知の上ではございますが、今年の4月からSustainabilityや環境関連部、もしくは各プロジェクトに初参加された方々にも是非この、わかりづらすぎるクレジットの世界について少しでもご理解を深めていただければという事が今回の主旨でございます。(私自身も、大量の情報、大量の英語の頭文字に毎度苦しめられておりますので、少しでも助けになれば幸いです)  では…、カーボンクレジットの基礎について学んでいきましょう! カーボンクレジットとは?  まずはカーボンクレジットとは一体全体何なのでしょうか。 カーボンクレジットとは一般に、ベースラインと比較した時の温室効果ガス排出削減量や吸収量をクレジットとして認証したものを指します。 つまり、プロジェクトを通して温室効果ガスの排出削減や吸収の増大に貢献した価値をクレジットとして創出して、売買できるようにしているということです。 ベースラインって何?  次に、カーボンクレジットについて、話すと出てくるのが、「ベースライン」ですね。では、「ベースライン」とは何でしょうか? ベースラインとは削減・吸収プロジェクト活動の比較対象となるものです。プロジェクト活動のGHG削減量は、「ベースライン排出量ープロジェクト活動からの排出量」の式で定量化されます。ベースライン排出量の算定方法には複数ありますが、ここではよく見られるベースラインシナリオによる方法をご紹介します。  ベースラインシナリオとは、地球温暖化防止の対策を全く考慮しない場合に、最も起こりやすいと考えられる状況のことです。例えば、再エネが導入されずに、化石燃料を使用している状況=ベースラインシナリオです。「GHG プロトコル」では、次の3つのシナリオがベースラインシナリオになり得るとあります。 プロジェクト活動で用いられるのと同様の技術や実施方法が使用されるシナリオ ベースライン候補が実施されるシナリオ(代替技術等) 現在の活動、技術、実施方法が継続され、(該当する場合には)プロジェクト活動と同様の種類、 量、品質の製品やサービスを提供するシナリオ(効率改善、森林経営活動等)   追加性はなぜ重要なのか?  次に、追加性についても、簡単に基本的な概念にだけ、ここで触れておきます。 追加性について、経産省では下記の様に示しています。  ・プロジェクトベースの排出削減・炭素吸収・炭素除去は、 そのプロジェクトが実施されなかった場合に発生したであろう排出削減・炭素吸収・炭素除去から、追加的なものでなければならない。  ・ カーボンファイナンスが利用できなければプロジェクトは行われなかったことを実証しなければならない。  追加性が重要な理由として、GHG排出量取引制度があります。排出量取引制度を導入している国・地域の多くは、排出量取引制度とセットでクレジット制度も導入しています。排出量取引制度では各施設に排出量の上限を設け、上限を超えてしまった場合には、クレジット制度で創出された「オフセット・クレジット」で超過分を相殺できるようになっています。クレジット制度では排出量取引制度の対象外であるGHG削減や吸収量増大プロジェクトからクレジットが創出されます。  つまり、オフセット・クレジットでの相殺は、各施設にクレジットと同量の排出を認めることであり、その代わりに別の場所で排出削減、吸収量増大が行われることを前提としています。しかし、GHG削減や吸収量増大のプロジェクトの中には排出量取引制度が無かったとしても当たり前に行われていたはずのものもあります。成り行きベースで減る予定だったものを担保に施設に追加的な排出を認めてしまったら、地球全体の排出量は増えてしまいます。そのため、このクレジット制度がなかったら行われていなかったものを対象としてクレジットが作られる必要があります。 相当調整やArticle6とは?  Article6は、パリ協定に基づく国際的な炭素市場を設立し、各国が炭素クレジットを取引できるようにするものです。Article6では、売却国が許可した排出削減量を他国に売却できますが、その削減量を自国のNDCに含めるのは1カ国のみです。これにより、二重計上を避けて世界全体の排出削減量が過大評価されないようにすることが重要です。 二重計上を防ぐための「相当調整」という算定方法も設けられています。この調整は、コンプライアンス市場だけでなく、自主的な炭素市場にも適用される可能性があるものの、まだまだ、議論中のトピックが数多く存在し、次のCOPでの議論が待たれるところです。 カーボンクレジットはどこで使えるのか?  カーボンクレジットは、以下の場面で使用されます。(今回は自主的な取り組みを対象に整理します。このほかに規制対応の用途も考えられますがここでは割愛します。) 1)ネットゼロ目標達成近辺(2050年ごろ)  ネット・ゼロ目標達成時に削減できない温室効果ガス(GHG)の影響を、大気中のCO2を永久に除去・貯蔵することで中和(neutralization)する際に使用。このCO2削減は、バリューチェーンの内外で行うことができます。  ⇒ちなみにここで使えるクレジットは自然由来・および技術由来のRemoval系のクレジットです。なぜならば、中和(neutralization)には「CO2を長期的に固定する永続性」が求められるからです。クレジットの種類については、後で少し触れます。 2)BVCM(バリューチェーンの外側)  こちらは、皆様すでにご購入されている、もしくは検討されている部分ですね。こちらは今からでも始めていただく事が出来ます。これは、皆様のバリューチェーン内での排出で削減できていない部分を、バリューチェーンの外へ投資(クレジットを購入し、無効化)することで、気候変動へ社会全体という大きな視点から貢献するものです。 あくまでもボランティアの部分ではありますが、外部からの評価ポイントの一つとなっていく可能性もあります。 クレジットにはどんな種類があるのか?  では最後に、カーボンクレジットといってもどんな種類があるのか?というところですね。こちらも大きく分けて下記2つにわけられます。     1)「排出回避/削減(Avoidance/Reduce)」  2)「固定吸収/貯留(Removal)」  この2つのカテゴリがさらに、自然ベース・技術ベースで分かれていきます。例えば、自然ベース「排出経費・削減」に入るのがREDD++、技術ベースが燃料転換、輸送効率改善。一方で、固定吸収系の自然ベースは「植林、再植林」、技術ベースは「Direct Air Carbon Capture and Storage(DACCS)」などがあげられます。  その名の通りといってはなのですが、回避や削減クレジットは、ダイエットでいうところの「ジムや食生活改善」で減らしていくイメージで、固定吸収系は「脂肪吸引」のような、改善というより実力行使に近いものと言えるかもしれません(植林とかは少し違いますが…)。そして、やはりこういう実力行使系は値段が高いですよね。ですが、このようなクレジットが必要ですし、今はこのクレジットを普及させるために様々な会社が投資を行っているわけです。美容やダイエットの分野でも、脂肪吸引や整形は以前よりもどんどん金額が下がり、クオリティは上がっていると思います。固定吸収系・貯留系のクレジットもこのようになっていくのが理想です。  さて、今回はクレジットについての基礎知識のコラムを書いてみました。いかがでしたか? いよいよClimate New York、COPと年末にかけてたくさんのイベントが目白押しです。クレジットの動向についても要注意となりますので、ぜひ目を光らせて、見ていきましょう! 参考資料: The GHG Protocol for Project Accounting, The Greenhouse Gas Protocol Project Protocol |GHG Protocol SBTi ,Above and Beyond: An SBTi report on the design and implementation of beyond value chain mitigation (BVCM) 経済産業省:カーボンクレジット・レポート,20220628003-f.pdf (meti.go.jp) (執筆者:銭谷)    

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SBTスコープ3削減におけるエンゲージメントのヒント

 SBTを申請する際には、目標の種類や水準、基準年排出量の情報に加え、スコープ1,2の削減計画、スコープ3の削減計画をSubmission Formに記載する必要があります。また、弊社の支援先の企業様からは、「社内的に一定程度の削減計画や見通しが立っていないとSBT申請を行うことができない」という声もよくお聞きします。今回のコラムでは、SBT申請でどの程度の削減計画が必要なのか、また削減手段の1つであるエンゲージメント活動を行う上で活用できるSBTリソースについてお伝えします。 SBT申請の際に要求される削減計画のレベル  SBT申請にこれから取り組まれる企業様の中には、「完璧な削減計画がない限り、SBTの認定を受けることができない」と誤解をされている場合があります。実際には「完璧な削減計画」は要求されません。それは、もともとSBTが「野心的」な目標であり、多くの企業にとってかなり難易度の高い水準であることが前提であるためです。Submission Formでは、目標を達成するために計画されている主な対策を簡潔に説明する(briefly describe the main measures)形での回答が要求されており、自由記述となっています。 総量削減とエンゲージメント  スコープ1,2はともかく、スコープ3の削減にはどのように取り組めばよいのかが悩みの種です。スコープ3の目標としては、多くの企業が総量削減目標かエンゲージメント目標のいずれか、または組み合わせで目標設定をしています。よく相談を受けるのが、「総量削減の手段の1つとしてエンゲージメントを行うべきか?」というものです。スコープ3は自社の事業活動に関連する他社の排出なので、自社のサプライヤー側や顧客側で削減が行われることで、自社にとってのスコープ3削減につながることになります。その観点から、総量削減の手段としてエンゲージメント活動を行うことは、有効な削減策の1つとなります。 エンゲージメントとは?  SBTにおける「エンゲージメント目標」というのは、自社のサプライヤーあるいは顧客に、SBT水準に沿った科学的根拠に基づく排出削減目標を持たせる目標です。一方、「エンゲージメント活動」は、以下のような幅広い活動が含まれます。 ・排出削減目標を持たせる。 ・気候関連の情報収集を行う。 ・気候変動の教育を通じてベストプラクティスを提供する。 ・削減に貢献した場合にインセンティブを付与する。 SBTのエンゲージメント関連リソース①サプライヤーエンゲージメントガイダンス  上述の通り、SBTにおけるスコープ3の目標の選択肢の1つはエンゲージメント目標です。これを背景に、SBTではサプライヤーエンゲージメントの進め方に関するガイダンスを提供しています。(参考リンク:New Supplier Engagement Guidance: Unlocking the Power of Supply Chains for Decarbonization - Science Based Targets Initiative)このガイダンスの中では、対象サプライヤーの選定方法、社内関係者の巻き込み方、サプライヤーとのコミュニケーションの内容、進捗状況の追跡、サプライヤーへのフォローアップやインセンティブなど、エンゲージメント活動を成功させるためのヒントが記載されています。コンパクトに要点が凝縮されていますので、総量削減やエンゲージメント活動に取り組む皆様にはご一読をお勧めします。 SBTのエンゲージメント関連リソース②ケーススタディ    SBTではホームページ上でサプライヤーエンゲージメントのケーススタディを掲載しています。2024年5月現在、セールスフォース、アストラゼネカ、H&Mグループの3社が掲載されております。また、サプライヤーエンゲージメントガイダンスのリリースに合わせ、SBTi、We Mean Business Coalitionの共催で行われたサプライヤーエンゲージメントのベストプラクティスに関するウェビナーの中では、アストラゼネカ、フィリップスの両社が事例紹介を行っています(このウェビナーは、YouTubeのSBTiチャンネル内で公開されています。参考リンク: Supplier Cascade: How to accelerate supply chain climate action (youtube.com))。アストラゼネカは調達担当ディレクターがエンゲージメントの意義を熱弁しながら業界を巻き込む取り組みを披露し、フィリップスはサプライヤーへの細やかなフォローの事例を提供しています。日本企業の事例ではありませんが、ぜひエンゲージメント活動を進めるうえでの社内外の巻き込みのヒントにしていただければと思います。 さいごに  最近「取引先からSBT取得要請がきた」という理由でのSBT認定取得支援のお問い合わせが増えています。この取引先はSBTをエンゲージメント目標で認定取得したと考えられますが、このような取引先から取引先へSBT水準の目標設定の要請を行う動きのことを、We Mean Business CoalitionおよびSBTiは「サプライヤーカスケード」と表現しています。前述のウェビナーでもアストラゼネカの調達リーダーが「自社が1,000社と会話し、そのサプライヤーが1,000社に会話すれば100万社のサプライヤーと会話することになる。これが進むべきペースである」と強調していました。弊社自身も、お問い合わせの多さから、国内外の民間主導での脱炭素の取り組みの広がりを肌で感じています。弊社ではSBT認定取得支援はもちろん、サプライヤーエンゲージメント支援も実施しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。  (執筆者:小島)

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企業の気候関連情報開示の今後の行方は?ISSB、そしてSSBJの草案について解説(前編)

 2024年3月29日にSSBJから公表されたサスティナビリティ開示基準案。その原型となったISSBが公表するサスティナビリティ開示基準は2023年6月26日に最終化されました。  本コラムではISSBやSSBJの基本的な情報に加え、今後取り組んでいくべき非財務情報開示について、前編後編に分け、解説します。これから非財務情報開示を検討している企業をはじめ、これまでTCFDのフレームワークに沿って開示していた情報をアップグレードしたい企業担当の方に参考となる情報ですので、気になる方はぜひご一読ください。 ISSBとはサスティナビリティ  ISSBとは(International Sustainability Standard Board)「国際サスティナビリティ基準審査会」及び同審議会により開発される基準のことで、サスティナビリティ関連財務情報の開示基準を開発する目的で設立されました。この背景にはさまざまなサスティナビリティ開示基準が錯綜していたというのがあります。当時SASBやCDSB、TCFDなどの開示基準があるなか、機関投資家が何をもって非財務情報を比較検討したらよいか不明瞭だったため、国際的に統一された開示基準を制定すべきといった要請の高まりからIFRS財団が主導で設立しました。 出典:SSBJ によるサスティナビリティ開示基準案の概要 これまでのIIRCやSASB、CDSBはIFRS財団に統合、TCFDは解散されましたが既存のフレームワークは踏襲され、IFRSのS1号、S2号の軸として取り込まれています。 ISSBが公表した2つのIFRSサスティナビリティ開示基準  ISSBが定めたサスティナビリティ開示基準は次の2つです。 IFRS S1号|サスティナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項 IFRS S2号|気候関連開示    IFRS S1号は①サスティナビリティ関連の開示を作成する際の、基本的な事項を定めた部分と②サスティナビリティ関連   のリスクおよび機会に関して開示すべき事項、で構成されています。    IFRS S2号は気候関連のリスクおよび機会に関する情報開示が要求されています。       出典:IFRS S1号及びIFRS S2号の全体像    前述したようにIFRSはTCFDの提言に基づいており、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの柱   が中核(コアコンテンツ)です。また産業別の指標についても開示を要請されているのも特徴の一つでしょう。 IFRS S1号|サスティナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項  IFRS S1号は投資家の投資判断に資する、サスティナビリティ関連のリスクと機会に関する情報開示が要求されています。具体的には短期、中期、長期にわたってのキャッシュフロー、資金調達へのアクセス、資本コストに影響を与えることが合理的に予想される全てのサスティナビリティ関連のリスクと機会に関する情報です。例えば次のような情報におけるサスティナビリティ関連情報となります。 資本制金融商品および負債制金融商品の購入、売却または継続保有 貸付金および他の形態による信用の供与、または決済 企業の経済的資源の利用に影響を与える企業の経営者の行動に対しての、投票または他の方法で影響を与える権利の行使  また全般的な要件には、企業はIFRSのサスティナビリティ開示基準に加え、SASBスタンダートの開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮しなければなりません。さらに水、生物多様性に関するCDSBのフレームワークについても適用可能性も考慮する必要があります。  参考:IFRS S1 IFRS®Sustainability Disclosure Standard IFRS S2号|気候関連開示  IFRS S2号はサスティナビリティ情報のうち、特に気候に関連するリスク及び機会に関連する補足的要求事項を規定しています。TCFDフレームワークを踏襲し、要求事項はTCFDと概ね整合的ですが、より詳細な情報開示が求められる部分もあります。例えば初年度には適用されませんがScope3の開示や目標が第三者による検証の有無、産業別のガイダンスの適用可能性を参照し、検討しなければなりません。 すでにTCFDに対応している企業であれば開示情報の高度化を進め、対応していない企業おいては、まずTCFDフレームワークに沿った情報開示に取り組み、段階的にIFRSに対応していくといいでしょう。 後編ではSSBJ基準案や、ISSBにおける欧州サスティナビリティ基準(ESRS)との相互運用についてまとめます。  (執筆者:渡部)

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国際基準の再エネ属性証書「I-REC」について(後編) | 業界動向

国際基準の再エネ属性証書「I-REC」について(後編)

 2021年2月に一般社団法人ローカルグッド創成支援機構が唯一のI-REC発行主体として指定され、日本でもI-RECを利用できるようになりました。前編では国際的なエネルギー属性証明の仕組みの1つである「I-REC」について、その特徴や非化石証書との違いに触れましたが、後編ではI-RECの購入方法や今後の展望についてご紹介します。   I-RECの購入方法  I-REC等の再エネ属性証書をRE100など国際イニシアチブへの報告等利活用するためには、再エネ発電事業者から需要家企業に証書の名義を変更し、再エネ発電事業者の取引口座から、需要家企業の取引口座に移す【移転】、移転後に保有する再エネ属性証書を無効化し、属性証明として使用することが【償却】の段階を踏む必要になります。I-RECは相対取引で売買され、発電設備の選定、売買交渉・契約から、移転・償却までを代行するプロバイダーが世界中におり、そのようなプロバイダーから購入する方法が主流ですが、自社で直接購入することも可能です。  I-RECでは世界共通でEVIDENT社のレジストリ(登録簿:証書の発行、移転、償却等を記録するためのシステム)が使用されています。このレジストリにParticipantとして登録すると、自社で直接証書を購入することが可能です。発電事業者との売買契約が成立したら、EVIDENT上で移転と償却を行い、I-REC償却証明書はEVIDENT上でPDF発行されます。自社で口座の開設やそれに伴う初期費用が必要になりますが、プロバイダーを介さないため、1MWh当たりの費用低く抑えられます。但し自社で再エネ発電事業者(売り手)を探し、売買交渉も行う必要があります。   EVIDENTでの直接購入の必要費用は以下となります。(2023年10月時点) ・証書購入代金(再エネ発電社が設定した価格) ・口座開設料EUR 500.00 (78,885円*1EUR=157.76 円) ・年間口座維持料EUR 2000.00 (315,520円 *1EUR=157.76 円) ・償却費用 EUR 0.06/MWh  (10円*1EUR=157.76 円) *料金改定等がある場合があります。 正確な金額等は直接お確かめください。https://www.irecstandard.org/fee-structure-for-market-players    日本のI-RECについては「EneTrack」を通じた購入も可能です。EneTrackは、I-REC国内向けプラットフォームです。プラットフォーム上でITサービス企業SCSKがプラットフォームオペレーターとして再エネ属性証書の取引(発行から移転、償却まで)のI-REC利活用に関するプロセスをワンストップで代行します。需要家企業は、価格や再エネ電源種別などの属性、産地、追加性(運転期間)等の希望条件に合った再エネ属性証書がEneTrack上でマッチングされるので、労力を掛けて再エネ発電事業者(売り手)を探す必要はありません。証書の購入や償却は、EneTrackのサービス提供時間内であれば、いつでも行うことができ①相対取引での購入時に必要な手続きの簡素化を実現し、日本におけるI-RECの取引の活性化、再エネ需要を高めることが考えられます。また、プラットフォームオペレーターの口座で再エネ属性証書を預かる運用を取るため口座開設は無料であり、基本的に初期費用はかかりません。   EneTrackを通じた購入の必要費用は以下となります。(2023年10月時点) ・証書購入代金(再エネ発電社が設定した価格) ・償却費用 20円/MWh トップ|EneTrack[エネトラック]国際的なエネルギー属性証明書「I-REC」の取引プラットフォーム (scsk.jp)     PowerPoint プレゼンテーション (localgood.or.jp) P20     今後の展望  日本政府は今後非化石証書を改善し、I-RECのような産地等の電源属性を証明する電源証明型にすることを検討しています。その結果、非化石証書が国際的に通用する電源証明になり、再エネごとに証書の価格差が生まれて地域貢献する再エネの価値が高まる仕組みになった場合には、日本でのI-REC発行の終了を検討しています。グローバルでの証書の潮流は「環境価値」にとどまらず「再エネ属性証書」に移行しています。 まとめ  現在日本では、再エネの電力がどのように生成されたのか、どの発電所から供給されているのかといった情報を追跡する仕組みが不足しているという課題があり、産地等の電源属性を証明する電源証明型のI-RECがそれを補填する形で国内では当面使用されることが考えられます。  また需要家から見て、I-RECは発電設備が特定でき、環境負荷が低く、発電方法踏まえ運転開始日が新しいものほど価格が高く評価されることでより応援したい電気を安心して、また信頼性のある再エネ証書を選ぶことができるというメリットがあります。再エネ属性証明に一番重要なことは信頼性です。証書という価値は物体として見えないものであるため詐称がないようにガバナンスで信頼性を担保することが重要です。そのためI-RECはグローバルで統一したEVIDENT上、十分な監視体制の元で取引されており、外部から見ても信頼性がある証書と言えます。I-RECは日本の証書の在り方を問いただし、国内の再エネ普及を加速させる存在になるのではないかと考えます。引き続き、その展望を弊社も追っていきたいと考えます。     ■参考資料 Microsoft PowerPoint - å,gnI-RECzLkdDf20230906 (localgood.or.jp) トップ|EneTrack[エネトラック]国際的なエネルギー属性証明書「I-REC」の取引プラットフォーム (scsk.jp)   (執筆者:小澤)

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