2025.07.11
カーボンクレジット 最新主要トピックス
2025.07.11
気候変動対策が進展し、各国の規制や企業の理解が成熟する中、カーボンクレジット市場にも大きな変化が生じています。特に国内ではJ-クレジットの価格が急騰し、当社のクレジット調達にも影響が及んでいます。加えて、これまで比較的厳格なスタンスを維持してきた欧州においても、市場動向に応じた柔軟な対応が見られるようになりました。 本コラムでは、こうした国内外の最新動向を整理し、カーボンクレジットに関する主要トピックスをご紹介いたします。 EUの政策動向 欧州委員会は2040年に向けた法的拘束力のある気候目標の提案を予定しています。当初は1990年比で正味排出量を90%削減する計画でしたが、コスト負担を考慮し「1990年の正味排出量の3%相当を2040年目標にカウントする形で、国際クレジットの限定的利用を検討すべき」との案を提示しました。今後、欧州議会や各加盟国との交渉を経て修正の可能性がありますが、可決されれば各国のクレジット活用にも大きな影響を与えると考えられます。 IMMC.COM%282025%29524%20final.ENG.xhtml.1_EN_ACT_part1_v9.docx 日本の動向(二国間クレジット制度:JCM) 2024年末のCOP29でパリ協定第6条の運用が採択されたことを受け、日本政府はJCMを活用したプロジェクトの拡大・加速化や「6条実施パートナーシップ」を通じた取り組みの世界展開を表明しました。日本のNDCでは、2030年に1%強(約1,000万t-CO₂)、2035年に17.5%(約1億t-CO₂)、2040年に52.6%(約2億t-CO₂)のJCMクレジット活用を見込んでいます。現時点では、インドネシアでの太陽光発電プロジェクトや、タイの化学工場におけるバイオマスコージェネレーションシステム導入が進行中です。 民間企業もGXリーグ報告などでJCMクレジットを活用可能であり、既存のJ-クレジットと併せて需要が拡大すると予想されます。 2024年度から2026年度までの二国間クレジット制度(JCM)ファシリティ導入のための助成事業を選定(第7回) |プレスリリース |環境省 SBT(Science Based Targets)について 現在、SBTはネットゼロ基準の改定を進めており、クレジット活用のルール見直しが議論されています。従来は「残余排出の中和(永久除去)」および「バリューチェーン外削減(BVCM)」に限定されていましたが、改定案では、 ・5年ごとの目標更新時に不足分を除去クレジットで補填する案 ・目標達成を条件に追加認証を認める案 など、企業の取り組み意欲を高める仕組みが検討されています。これらが採用されれば、クレジット活用を積極的に進める企業が増加する可能性があります。 renewable-ei.org/pdfdownload/activities/1_REI_Takase_250514.pdf 最後に カーボンクレジット市場では過去に詐欺事例も報告されており、信頼性の確保が課題です。こうしたリスクを回避するには、いわゆる質の高いクレジットを利用する必要があります。また、質の高いクレジットを選ぶことで、より効果的な脱炭素技術への投資促進や環境保全活動への貢献が期待できます。 質の高いクレジットを購入するには、IC-VCMなどの認証ラベルを参考に、適切な目利きを身につけることが重要です。当社では、クレジットの創出支援から購入・活用まで、幅広くサポートしております。カーボンクレジットにご関心をお持ちの際は、ぜひお気軽にご相談ください。 (執筆者:野村)
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