Column

2020年4月

CO2削減量算定の考え方 ~オンライン会議によるCO2削減効果はどう定量化できる?~

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務を取り入れている企業も多いのではないかと思います。すると増えるのは社内メンバーや社外の方とのオンラインでの打合せです。弊社でも頻繁に行うようになりましたが、ウィルス対策としてだけではなく、紙資料の準備が不要であったり、移動が不要だったりと、CO2削減の効果も期待できるのではないかと思います。そこで今回は、「オンライン会議によるCO2削減効果」を題材に、CO2削減量算定の大まかな流れ、考え方をご紹介したいと思います。   ステップ1 目的を設定する なぜCO2削減量を算定するのか、目的(算定結果の使い道等)を整理します。 CO2削減量の算定は、概算から詳細まで、様々なレベル(精度・粒度等)で実施できます。目的を整理することは、算定のレベルを決定する上で不可欠です。 今回は、目的を「オンライン会議によるCO2削減効果を定量的に把握し、サービスのPRに活用する」と設定し、外部への公開に足るレベルでの算定を目指すこととしました。   ステップ2 ベースライン(比較対象)を設定する 削減量を計算するためには、評価対象(今回の例ではオンライン会議)に加えて、比較対象(本来はどうしていたか)の設定が必要です。これを「ベースライン」と呼んでいます。 今回は「訪問による会議」をベースラインとして設定します。 CO2削減量=ベースラインの排出量-評価対象の排出量 の式で計算できます。 「評価対象の排出量」は削減策が実施された後の排出量です。今回の例ではオンライン会議による排出量です。 「ベースラインの排出量」は、削減策が実施されなかった場合に想定される排出量です。今回の例では、同じ会議を訪問形式で実施した場合に想定される排出量です。   ステップ3 評価対象とベースラインのシナリオを設定する 一口にオンライン会議といっても様々な規模、方法があります。排出量を計算するためには、具体的に条件設定をしていく必要があります。これを「シナリオ設定」と呼んでいます。 今回は以下のように設定しました。 評価対象のシナリオ: 参加者5人が自宅からパソコンを使用してオンラインで参加。1時間開催。資料(A4サイズ5枚カラー)は事前にメール送付 ベースラインのシナリオ: 参加者5人が自宅から会議開催場所まで移動し、実施。1時間開催。資料は人数分をカラー印刷   ステップ4 定量化の範囲を設定する 設定したシナリオを基に、ライフサイクル(原料調達→生産→流通・販売→使用・維持→廃棄・リサイクル)ごとにCO2が発生する「排出源」を整理していきます。また、整理した排出源のうち、定量化の範囲に含めるもの(排出量算定の対象範囲とするもの)を特定します。極力全体を網羅する必要がありますが、算定目的を考慮した上で、主要な排出でない、排出量全体に与える影響が小さい等といった理由で定量化の範囲から外すことも可能です。 今回は以下のように整理しました。 評価対象の定量化の範囲:参加者のパソコン使用1時間 ベースラインの定量化の範囲:参加者の移動、配布資料用の紙・印刷、配布資料の廃棄   ステップ5 活動量を収集、排出原単位を設定して、排出量を計算 評価対象、ベースラインそれぞれにおいて、定量化の範囲とした排出源ごとに、活動量(使用量等)を収集し、排出係数(使用量1単位あたりで発生するCO2排出量)を設定して、活動量×排出係数の計算式で排出量を計算します。 例えば、評価対象の排出源「参加者のパソコン使用1時間」は以下の通り計算できます。 活動量:パソコンの電力使用量(kWh)=パソコンの消費電力×1時間×5人 排出係数:電力の排出係数(kg-CO2/kwh) パソコン使用の排出量=パソコンの電力使用量×電力の排出係数   ステップ6 ベースライン排出量-評価対象排出量で削減量を計算 ステップ5で排出源ごとに排出量を計算した後、評価対象・ベースラインごとに排出量を集計していきます。ベースラインの排出量の集計値から評価対象の排出量の集計値をマイナスした結果がCO2削減量となります。 評価対象の排出量=パソコン使用の排出量 ベースラインの排出量=参加者の移動に伴う排出量+配布資料の紙の調達・印刷に伴う排出量+配布資料の廃棄の排出量 オンライン会議によるCO2削減量=ベースラインの排出量-評価対象の排出量   ステップ7 コミュニケーション方法を決定する CO2削減量の計算ができたら、その伝え方を決定します。 例えば以下のようなコミュニケーションができます。 「従来の訪問による会議から、オンラインによる会議に変更することで、会議1回当たり〇g₋CO2のCO2が削減できます」 この時、算定において行った条件設定(シナリオ設定)の内容を合わせて明記することが大切です。   以上、削減量算定について大まかなイメージを持っていただけたでしょうか? CO2削減量算定にあたっての疑問・相談など、お気軽にお問い合わせください。

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