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企業の水リスクへの取り組み

2018年に発生した西日本豪雨は岡山県を中心に中国・四国地方各地に様々な被害をもたらしました。また、昨年も豪雨による被害が日本各地で多発しました。一方、海外では、オーストラリアやインドをはじめ、各地で干ばつの被害が発生しています。地球温暖化により気候が変動すると、こうした自然災害が増加することが予想されています。その結果、水を豊かに使える地域と水不足の地域とで、1人当たりが使える水資源量の格差が世界的に大きくなる恐れがあると考えられています。
IPCCの第5次報告書では、気候変動の進行によって将来的にもたらされるリスクが主に8つ挙げられていますが、その中に豪雨・洪水、水不足といった水に関するリスクが含まれます。
このように水に関わる問題が生活や人命、企業活動に影響を及ぼし得る影響を水リスクといいます。

先述したような災害は多大な経済被害ももたらします。最近では水リスクが企業の財務に及ぼす影響について機関投資家の関心が高まっています。企業は事業を持続させるために、自社およびサプライヤーの水リスクを把握し投資家に向け情報開示していくことが求められています。

そこで、今回は水リスクについて一連の取り組みをQ&A形式で整理しました。なお、回答案の作成にあたっては、水リスク低減に関わるコンサルティングサービスを提供する八千代エンジニヤリング株式会社様にご協力いただきました。

水リスクとは何ですか? どのようなものがあるのですか?

水リスクは、経済発展に伴い水需要量が増加することで発生する地域の水資源の枯渇や、水質の悪化のような徐々に移行するリスクと、干ばつや洪水のような災害として突発的に発生するリスクがあります。

気候変動による降水量の変化はどちらのリスクにも影響を与える可能性があり、また「取水停止による減産」や「浸水による操業停止」といった物理的リスクや、水質汚濁による「罰則」「評判低下」といった、「規制リスク」や「評判リスク」などもあります。

水リスクは自社にどのように影響を及ぼしますか?

水リスクによる影響は自社やサプライヤーの拠点が位置する場所やどのように水を使用しているかによって異なります。
たとえば、飲料メーカーのような水を商品としている企業は、水資源が枯渇してしまうと事業が成り立たなくなります。また、製造業でも製品の洗浄に良質の水が必要な場合は、水質悪化により処理コストが増加するなどが考えられます。
また、そのような地域では、取水制限や水質汚濁に対する「罰則」、ステークホルダーからの「評判低下」といった「規制リスク」や「評判リスク」として影響が顕在化します。
干ばつや洪水による影響は、製造に使用する水が取水できなかったり、工場が浸水したりすることで減産や操業停止という形で影響します。

水リスクはどのように特定(評価)するのですか?

水リスクの特定は、上記で示したように「地域の水リスクの程度」と「水リスクが事業に与える影響」の二軸で考えることが重要です。
地域の水リスクの程度は、水需要と水資源のバランスや、洪水の発生可能性を評価します。
このような評価は、難しそうに見えますが、簡単に横並びで水リスクを把握できる、ウェブ上のツールもあります。
世界資源研究所(WRI)の運用するウェブサイト「AQUEDUCT」は、住所(もしくは緯度・経度)を入力するだ けで、初めて環境に取り組む担当者の方でも自社拠点の一般的な水リスクを見ることができます。

外部リンク:AQUEDUCT(WRI)

地域の水リスクが発生した場合に、事業へどのような影響が出るかを「水リスクが事業に与える影響」という軸で評価し、どちらも高い場合に水リスクが高いと判断します。

水リスクを評価した後は何をする必要がありますか?

水リスクの特徴は、上記で示したように水資源の枯渇や洪水など、複数のリスクがあり、それらが地域性を持っているということです。また、各リスクから受ける影響は事業により異なります。

そのため、水リスクを評価し、リスクがあると判断された拠点それぞれで対応するリスク項目や対策目標を整理し、対策の立案を行う必要があります。

水リスクの開示はどのように行いますか?

開示方法の代表例として、CDP水セキュリティの質問書対応があげられます。これは、CDPが投資家の声を反映して構築した水リスクに関する設問に対して、企業が取り組みを回答するものです。

一方で、MSCI(※1)やFTSE(※1)のESG Rating(※2)では、統合報告書や有価証券報告書の記載内容に基づいて評価しているため、これらの中での情報開示も重要となります。

※1 世界的な株価指標の一つ
※2 ESG 格付。非財務情報(ESG情報)を用いた企業の格付。

水リスクの情報開示や課題へ取り組む他社の事例はありますか?

企業の開示事例や取り組みや、世界の様々な地域での取り組み例やトレンドは、専用ウェブサイト「水リスクラボ」で紹介されていますので、ご参照ください。

外部リンク:水リスクラボ(https://www.yachiyo-eng.co.jp/water-risk/)

 

<参考(Q&A以外)>

Climate Change 2014 Impacts, Adaptation, and Vulnerability Part A:Global and Sectoral Aspects SPM(IPCC AR5 WG2)
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/02/WGIIAR5-PartA_FINAL.pdf

Q&Aは八千代エンジニヤリング様よりご提供いただきました。