FAQ・用語集コラム

【業界動向】TCFD提言とは? ~脱炭素社会に備えるヒント~

「TCFD提言」というキーワードを頻繁に目にするようになりました。
CDP気候変動質問書2018は、TCFD提言を反映し、質問内容が前年から大きく変わりました。また、6月に発表された環境省による企業向け支援「脱炭素経営による企業価値向上促進プログラム」では、
支援の三本柱のうち1つがTCFD提言への対応支援になっています。
そこで今回は、TCFD提言の概要について整理した上で、投資家対策が必要な企業のみならず、全ての企業に対して、提言が持つ意味について考えてみたいと思います。

 TCFDは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Climate related Financial Disclosures)の略で、主要国の財務大臣・中央銀行総裁などで構成される金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)の下に、2015年に設置された作業部会です。
 異常気象などの気候変動の物理的影響や、低炭素経済への急激な移行などが、金融システムの安定を脅かす(リーマンショックのような金融危機を招くなど)恐れがあるとして、投資家・貸付業者・保険会社などの金融セクターが、気候関連リスク・機会を適切に評価し、投資判断などに活かすための、情報開示の在り方について検討を重ねてきました。
 検討結果を提案としてまとめたものが、TCFD提言です。2017年6月に最終報告書が公表された後、金融セクターや大手非金融セクターを中心に、多数の企業などが提言に賛同し(現時点で世界390団体以上、うち日本25団体。本日時点。TCFD HPより。)、日本の金融庁、環境省も賛同を表明しています。

 提言は、社債や株式などを発行する全ての企業に対して、気候関連のリスクと機会に関する情報開示を行うことを推奨しています。
 開示項目は大きく、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」の4つに分けられていて、主に、気候関連リスク・機会についての経営者の管理体制・取締役の監督体制(ガバナンス)、短期・中期・長期のリスク・機会の内容と、それが戦略や財務に与える影響と対策(戦略)、気候リスクの管理プロセスと、リスク全般の管理プロセスとの統合状況(リスク管理)、リスク・機会を評価するための指標や、GHG排出量、目標(指標・目標)などについての説明を求めています。
 開示媒体には、年次財務報告書が提案されています。主要国の多くでは、社債や株式を発行する企業は、財務報告にて重要なリスクを開示する義務があり(日本では金融商品取引法における義務)、気候関連情報もそれにあたるという考え方です。また、CDPなどの情報開示枠組においても、TCFD提言に沿った開示ができるよう調整を進めるとあり、先述のCDP質問書の改変はその結果と考えられます。

 いざ自社のリスク・機会を把握しようとしても、網羅的に把握する難しさがあるのではないかと思います。その点、提言の中には、リスク・機会の分類と定義も示されており参考になります。リスクには、気候変動の物理的影響(異常気象や、高温などの気候パターンの長期的変化による影響など)に関する「物理的リスク」の他に、低炭素経済への移行に伴う様々な変化(政策・規制が強化される、低炭素技術への置き換えが進む、消費者行動の変化など)に関する「移行リスク」も定義されています。機会については、「資源効率性」や「低炭素エネルギー」「低炭素製品・サービス」など、企業にとって機会につながる主要な有望分野が挙げられています。

 また、中期・長期のスパンで、リスク・機会やその影響を把握することもハードルが高いのではないかと思います。提言では、シナリオ分析の使用が提案されています。2℃目標や、国別目標などの将来の社会を予測したシナリオをベースとして、その時、自社がどのようなリスク・機会を有し、どのような影響を受けるかを推測する方法です。シナリオは、1つではなく、様々パターンのものを複数分析することで、レジリエンス(強靭性)が強化されるとしています。

 以上が提言の概要ですが、提言が求めている情報は、すなわち、「どの企業がリスクに曝されている/機会を有しているのか」「どの企業がリスク・機会に対し、万全の対策を取れているのか」など、金融セクターが、脱炭素社会で生き残り、飛躍する企業を見極めるための情報と言えるのではないかと思います。それは、翻って企業にとっては、脱炭素社会に向け備えるヒントになり得るのではないでしょうか。
 提言に沿って、経営戦略の中で気候関連リスク・機会とその影響を把握し、対策を取っていくことは、今後ますます変化していく気候や社会に備えて、リスクを回避し、機会を掴んでいくことであり、
社債や株式を発行している企業だけでなく、全ての企業にとって非常に有益なのではないかと思います。
 提言に基づいた開示は、多くの企業が取組を始めたばかりの段階です。
今後、事例収集に努め、具体的な取組事例などについてもご紹介していけたらと思っています。

参考資料:
・TCFD HP https://www.fsb-tcfd.org/
・TCFDによる提言(最終報告書)(日本語訳)
https://www.fsb-tcfd.org/wp-content/uploads/2017/06/TCFD_Final_Report_Japanese.pdf

                         (執筆者:山本)

(2018年8月24日メルマガ)

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