Column

企業とSDGs(2)期待される役割と企業メリット

前回に引き続きSDGs(Sustainable Development Goals)をテーマ
にお届けします。今回はSDGs達成に向けて、企業に期待されている役割
と、SDGsに取り組むことによる企業メリットについて取り上げてみたい
と思います。
 
 少しおさらいをしますと、SDGsは、国連総会で採択されたアジェンダ
2030の中に示された「世界共通の2030年開発目標」で、開発と名は付く
ものの、開発途上国のみならず、全世界のあらゆる社会・経済・環境面
の課題を17のゴールで網羅した「人類・地球の目指す姿」でした。
各ゴールは相互に関係し合っており、統合的な解決が必要であること、
そのためにも、国際機関・政府だけでなく、企業・市民などあらゆる
主体の参加・協働が必要なことが謳われています。
 
 SDGsの中で企業についての記載がある箇所としては、まず、ゴール12
の持続可能な生産・消費があります。「大企業や多国籍企業などの企業
に対し、持続可能な取組を導入し、持続可能性に関する情報を定期報告
に盛り込むよう奨励する」(ターゲット6)と、企業への要求が示されて
います。

 また、SDGs達成のための実施手段とパートナーシップに関する記載の
中には、民間企業に期待する役割として、「全ての企業に対し、
社会課題解決のために創造性とイノベーションを発揮することを求める」
ということが記されています。(アジェンダ2030パラグラフ67)

 前目標のMDGsでは、国際機関や政府が主体となり、ODAなどの
公的資金を用いて取組が行われていました。一方、SDGsは目標の範囲
や規模が大きくなり、これまでの主体や資金では対応しきれません。
そこで、企業の持つ技術や知恵、資金を生かし、ビジネスとして課題解決
に貢献してもらうことに大きな期待が寄せられているのではないかと考えます。

 国連グローバルコンパクト他が、企業がSDGsを活用するための行動指針
をまとめた「SDG Compass」では、SDGsに取り組むことで、
企業にとっても多様なメリットがあることを訴えかけています。
数例を以下にまとめてみます。

 一つ目は、ビジネス機会の創出が期待できるという点。
SDGsが示す社会課題の解決は世界共通のニーズであり、解決につながる
技術や商品・サービスを開発できれば、新たな市場の開拓が期待できます。
特に、省エネ・再エネに関する革新的技術、情報通信技術などを活用した
CO2排出量の少ない技術、貧困層向けの生活改善(保険医療・教育・金融
など)製品・サービスなどが期待されるとのこと。さらに、SDGsは、
投資を持続可能性に資する方向に誘導することを目的としており※、
課題解決に取り組む企業は資本へのアクセスが容易になるというメリット
も期待できるとしています。
 
 二つ目は、企業の持続可能性に関わる価値の向上が期待できるという点。
SDGsへの取組が、操業の効率化(資源の節約など)につながったり、
企業のブランド力を高め、結果として、売上の向上・優秀な人材の獲得・
従業員の意欲アップ・地域社会などとの良好な関係などにつながる効果が
期待できるとしています。逆に、取組が不十分な場合には、不祥事や、
顧客・地域社会からの信頼失墜のリスクなども考えられます。
 
 三つ目は、政策と方向性を合わせることで対応力が構築できるという点。
SDGsは今後の政策の方向性を示しており、これに率先して取り組むことで
将来規制強化などがあった場合に発生しうるコスト高騰や制約に未然に対応
することができるというものです。
(社内カーボン・プライシングなどが良い例と言えます。)

 「SDG Compass」では、企業がこれらのメリットを生かし、
自社としての成功も収めながら、SDGsの達成に最大限貢献をしていくため
の取組ステップが示されています。
次回はその内容について取り上げてみたいと思います。

(次号に続く)

※SDGs達成に必要な資金は数兆ドルに及び、民間の投資をいかに持続
 可能性に資する方向に誘導するかが極めて重要であるとされています。
 (国際連合広報センターHP)
 関連する動きの一つとして、ESG投資推進に向けた投資家のイニシアチブ
 国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment:PRI)
 が2017年に公開した「責任投資のビジョン」があります。
 向こう10年間のビジョンを示したものですが、
その中に「SDGsの実現」が盛り込まれており、SDGsに沿った投資活動
 を行うための手順の整備やツールの開発を行うことが宣言されています。
 近年高まりを見せるESG投資の中に、SDGsも組み込まれていく方向に
 進んでいきそうです。

参考資料:
・外務省「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」
 www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf
・GRI・国連グローバルコンパクト
 「SDG Compass SDGsの企業行動指針-SDGsを企業はどう活用するか」
 (グローバルコンパクトネットワークジャパン・地球環境戦略研究機関和訳)
 http://ungcjn.org/sdgs/pdf/SDG_COMPASS_Jpn.pdf
・PRI「責任投資のビジョン」
 https://www.unpri.org/download?ac=2973

                         (執筆者:山本)

(2018年4月23日メルマガ)

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国際基準の再エネ属性証書「I-REC」について(後編) | 業界動向

国際基準の再エネ属性証書「I-REC」について(後編)

 2021年2月に一般社団法人ローカルグッド創成支援機構が唯一のI-REC発行主体として指定され、日本でもI-RECを利用できるようになりました。前編では国際的なエネルギー属性証明の仕組みの1つである「I-REC」について、その特徴や非化石証書との違いに触れましたが、後編ではI-RECの購入方法や今後の展望についてご紹介します。   I-RECの購入方法  I-REC等の再エネ属性証書をRE100など国際イニシアチブへの報告等利活用するためには、再エネ発電事業者から需要家企業に証書の名義を変更し、再エネ発電事業者の取引口座から、需要家企業の取引口座に移す【移転】、移転後に保有する再エネ属性証書を無効化し、属性証明として使用することが【償却】の段階を踏む必要になります。I-RECは相対取引で売買され、発電設備の選定、売買交渉・契約から、移転・償却までを代行するプロバイダーが世界中におり、そのようなプロバイダーから購入する方法が主流ですが、自社で直接購入することも可能です。  I-RECでは世界共通でEVIDENT社のレジストリ(登録簿:証書の発行、移転、償却等を記録するためのシステム)が使用されています。このレジストリにParticipantとして登録すると、自社で直接証書を購入することが可能です。発電事業者との売買契約が成立したら、EVIDENT上で移転と償却を行い、I-REC償却証明書はEVIDENT上でPDF発行されます。自社で口座の開設やそれに伴う初期費用が必要になりますが、プロバイダーを介さないため、1MWh当たりの費用低く抑えられます。但し自社で再エネ発電事業者(売り手)を探し、売買交渉も行う必要があります。   EVIDENTでの直接購入の必要費用は以下となります。(2023年10月時点) ・証書購入代金(再エネ発電社が設定した価格) ・口座開設料EUR 500.00 (78,885円*1EUR=157.76 円) ・年間口座維持料EUR 2000.00 (315,520円 *1EUR=157.76 円) ・償却費用 EUR 0.06/MWh  (10円*1EUR=157.76 円) *料金改定等がある場合があります。 正確な金額等は直接お確かめください。https://www.irecstandard.org/fee-structure-for-market-players    日本のI-RECについては「EneTrack」を通じた購入も可能です。EneTrackは、I-REC国内向けプラットフォームです。プラットフォーム上でITサービス企業SCSKがプラットフォームオペレーターとして再エネ属性証書の取引(発行から移転、償却まで)のI-REC利活用に関するプロセスをワンストップで代行します。需要家企業は、価格や再エネ電源種別などの属性、産地、追加性(運転期間)等の希望条件に合った再エネ属性証書がEneTrack上でマッチングされるので、労力を掛けて再エネ発電事業者(売り手)を探す必要はありません。証書の購入や償却は、EneTrackのサービス提供時間内であれば、いつでも行うことができ①相対取引での購入時に必要な手続きの簡素化を実現し、日本におけるI-RECの取引の活性化、再エネ需要を高めることが考えられます。また、プラットフォームオペレーターの口座で再エネ属性証書を預かる運用を取るため口座開設は無料であり、基本的に初期費用はかかりません。   EneTrackを通じた購入の必要費用は以下となります。(2023年10月時点) ・証書購入代金(再エネ発電社が設定した価格) ・償却費用 20円/MWh トップ|EneTrack[エネトラック]国際的なエネルギー属性証明書「I-REC」の取引プラットフォーム (scsk.jp)     PowerPoint プレゼンテーション (localgood.or.jp) P20     今後の展望  日本政府は今後非化石証書を改善し、I-RECのような産地等の電源属性を証明する電源証明型にすることを検討しています。その結果、非化石証書が国際的に通用する電源証明になり、再エネごとに証書の価格差が生まれて地域貢献する再エネの価値が高まる仕組みになった場合には、日本でのI-REC発行の終了を検討しています。グローバルでの証書の潮流は「環境価値」にとどまらず「再エネ属性証書」に移行しています。 まとめ  現在日本では、再エネの電力がどのように生成されたのか、どの発電所から供給されているのかといった情報を追跡する仕組みが不足しているという課題があり、産地等の電源属性を証明する電源証明型のI-RECがそれを補填する形で国内では当面使用されることが考えられます。  また需要家から見て、I-RECは発電設備が特定でき、環境負荷が低く、発電方法踏まえ運転開始日が新しいものほど価格が高く評価されることでより応援したい電気を安心して、また信頼性のある再エネ証書を選ぶことができるというメリットがあります。再エネ属性証明に一番重要なことは信頼性です。証書という価値は物体として見えないものであるため詐称がないようにガバナンスで信頼性を担保することが重要です。そのためI-RECはグローバルで統一したEVIDENT上、十分な監視体制の元で取引されており、外部から見ても信頼性がある証書と言えます。I-RECは日本の証書の在り方を問いただし、国内の再エネ普及を加速させる存在になるのではないかと考えます。引き続き、その展望を弊社も追っていきたいと考えます。     ■参考資料 Microsoft PowerPoint - å,gnI-RECzLkdDf20230906 (localgood.or.jp) トップ|EneTrack[エネトラック]国際的なエネルギー属性証明書「I-REC」の取引プラットフォーム (scsk.jp)   (執筆者:小澤)

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国際基準の再エネ属性証書「I-REC」について(前編)

   現在多くの企業が脱炭素へ取り組み、その実現に向け再生可能エネルギー(再エネ)を活用することが重要です。しかし、日本の再エネの利用には課題があります。具体的には、再エネの電力がどのように生成されたのか、どの発電所から供給されているのかといった情報を追跡する仕組みが不足していることです。この問題を解決するための国際的なエネルギー属性証明の仕組みの1つである「I-REC」を紹介します。 I-RECとは  「I-REC(International Renewable Energy Certificate)」は、欧州、北米を除く国で発行される国際的なエネルギー属性証明(電気等の環境面の特性を示す証書)です。欧州のGOや北米のRECといったエネルギー属性証明と同様の仕組みが他の国でも使えるように、オランダのNGO、The International REC Standard Foundation(I-REC Standard)が標準化、ルールを設け、そのルールの下に、国ごとに認定された発行体が運営を行い、証書を発行しています。証書を発行・管理するためのレジストリーも、I-REC Standardの出資先が運営するものを、各国共通で使用します。現在、世界約50か国・地域で使用されていますが、一部の国では政府が運営する証書とともに使用され、補完的な役割を担っています。 日本でも、2021年2月に一般社団法人ローカルグッド創成支援機構が唯一のI-REC発行主体として指定され、この証書を利用できるようになりました。   I-RECの特徴  以下の主要な特徴があります。  ① CDP、SBT、RE100に利用可能 (日本国内制度では使用不可)  前述の通り、欧州のGOや北米のREC等を参考とした国際標準のルールの下に発行される証書であり、CDPや、RE100・SBTといった国際イニシアティブにおいて利用が認められています。 GHGプロトコルはScope2ガイダンスで、証書の品質基準を定めており、CDP、SBT、RE100はいずれもこれに準拠しています。I-RECはこの要件を満たしており、よって、いずれにおいても利用が認められています。(要件は以下表を参照ください。RE100はScope2ガイダンス準拠に加えてそれ以外の独自要件もあり。) 「RE100」では、RE100達成(再エネ電力100%達成)のための再エネ調達量として問題なく報告が可能です。同様に「CDP質問書」では【エネルギー属性証書】として、再エネ調達量としての回答が可能です。また、Scope2マーケット基準の報告では、排出係数0の電力として計算し報告が可能です。「SBT」でも同様に、基準年と進捗の評価にScope2マーケット基準を採用する場合には、排出係数0の電力として計算ができるため、Scope2の削減手段として利用が可能です。 電力証書が自然エネルギーを増やす:日本と海外で隔たる制度 (renewable-ei.org) P7    一方、地球温暖化対策推進法(温対法)など、一部の日本の制度ではI-RECを使ったオフセットが現在は認められていません。環境価値を主張する場合は、別途非化石証書を取得する必要があります。 「日本でのI-REC発行について」(2023年8月10日更新)- ローカルグッド創成支援機構 Microsoft PowerPoint - å,gnI-RECzLkdDf20230810 (localgood.or.jp) P13   ②相対取引による売買   I-RECは相対取引で売買されます。よって価格は固定されません。また、どのような発電方法でどのような場所で作られた再エネかといった、環境面の特性が証明されているため、環境負荷の低い発電方法や運転開始日が新しいもの、地域貢献度の高いものなどがより評価され、高い価格で取引されるような仕組みになっています。     非化石証書との違い  大きな違いは以下2点ございます。 ①トラッキング情報、価格差  非化石証書は、I-RECのような国際的な再エネ属性証書とは異なり、証書の対象になる電力が FIT か非 FIT か、再エネ由来かそうでないか、という情報のみ把握でき、産地・電源種別等の情報がありません。解決策として、非化石証書を購入した後に、後付けでこれらの情報を追加する「トラッキング付き非化石証書」が導入されています。これにより、発電方法や運転開始日、所在地等の情報を把握できるようになりましたが、非化石証書の購入段階では把握できず、本来は評価が異なるはずのものが、一律の入札方式で同じ価格で取引されてしまいます。購入した結果、希望した条件にあうトラッキング情報がつかない可能性もあります。海外の証書は環境負荷の低い発電方法や運転開始日が新しいものほど価格が高くなりますが日本で価格差が生じにくいのは上記の背景にございます。資源エネルギー庁は上記の背景により非化石証書も海外の証書と同様に、発行した時点でトラッキング情報を付与する形に変更を検討しています。   ②産地価値と特定電源価値    電力に付随する価値は複数あります。CO2排出削減等の環境価値や、特定地域で作られた産地価値、特定の電源で作られた特定電源価値等です。非化石証書にはこのうち、産地価値と特定電源価値 が含まれていません。日本ではこれらの価値は証書ではなく電気取引に付随すると整理されています。再エネの産地や電源について訴求したい場合、非化石証書に発電方法や発電所の所在地の情報が付与されていたとしても、それによって訴求してよいとは限らず、電力の取引契約とセットとなっている必要があります。先述の国際的な証書の要件の通り、本来はこれらの価値のすべてを集約すること(属性の集約)が求められています。資源エネルギー庁では、産地価値と特定電源価値を含むすべての属性を持つ証書の整備を検討しています。 https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_RE-Certificates.pdf P.40   後編ではI-RECの購入方法や今後の展望についてまとめます。   参考資料 ・電力証書が自然エネルギーを増やす日本と海外で隔たる制度 電力調達ガイドブック 第6版(2023年版):自然エネルギーの電力を増やす企業・自治体向け | 報告書・提言 | 自然エネルギー財団 (renewable-ei.org)   ・電力調達ガイドブック 第6版(2023年版)自然エネルギーの電力を増やす企業・自治体向け 自然エネルギー財団 (renewable-ei.org)   ・日本でのI-REC発行について(2023年8月10日 一般社団法人ローカルグッド創成支援機構 ) Microsoft PowerPoint - å,gnI-RECzLkdDf20230810 (localgood.or.jp)   (執筆者:小澤)

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IFRS S1・S2基準の最終版への対応について | 業界動向

IFRS S1・S2基準の最終版への対応について

    2023年6月26日、ISSB(International Sustainability Standard Board、国際サステナビリティ基準審議会)は、最終化されたサステナビリティ開示基準を公表しました。 ISSB は、それまで複数存在していたサステナビリティ開示基準を統合し、国際的な一貫性及び比較可能性を実現することを目的として設立された組織です。 今回公表された基準は、(1) サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項(IFRS S1)と、(2) 気候関連開示(IFRS S2)から成り立っています。また、S2付録 B として「産業別要求事項」があります。 IFRS S1では、投資家の投資判断に資する、サステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報の開示が要求されています。開示タイミングや開示場所、不確実性に対する情報、誤謬の取り扱いなど、全般的な要件が定められています。 IFRS S2では気候変動関連の開示のより詳細な基準が定められています。今後は、「人的資本」「生物多様性」などほかのサステナビリティテーマに係る基準も公開される見込みです。ここでは気候変動への対応に焦点を絞ってお話しします。   基準側の動きとして、今回の公表と同タイミングで、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候変動関連財務情報開示タスクフォース)を運営する金融安定理事会は、気候変動開示に関するモニタリング機能を、ISSBへ移管すると発表しました。これによって、TCFD提言対応は、さらなる高度化を求められていくことになる見込みです。 さて、これらの動向に対して、本コラムでは大きく2つのことを強調できればと思います。 ■TCFDとIFRS S1・S2の関連 第一にお伝えしたいことは、TCFDが提唱したフレームワークの役割がなくなったわけではないということです。公表されたIFRS S1・S2は、TCFDフレームワークを土台に作成されています。企業が、ISSBの求める基準に対して足りない部分を明確にし、開示内容の充実に取り組む必要があるのは確かですが、まずはTCFDで定められた要件への対応が先決であることは変わりません。TCFDフレームワークは、2021年10月のコーポレートガバナンスコードの改訂で、日本のプライム企業には開示が実質的に義務化された事項です。TCFDへの対応が不十分な企業については、まずはTCFDフレームワークへの対応を通じて、段階的に開示案を検討していくことが重要です。TCFD対応については、環境省をはじめガイダンス資料も充実していますので、そちらを参考にされるとよいでしょう。なお、TCFDとIFRS S2との差異については、IFRSによる公式資料*が公表されています。   参考資料①:気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) | 総合環境政策 | 環境省 (env.go.jp) 参考資料②:「気候関連財務情報開示に関するガイダンス3.0(TCFDガイダンス3.0)」を公表しました。 | TCFDコンソーシアム (tcfd-consortium.jp) ※ソース:Comparison IFRS S2 Climate-related Disclosures with the TCFD Recommendations   ■CDP質問書の活用 第二に、開示には、媒体やプラットフォームの特徴をうまく使い分けることが必要という点です。多くの企業では、サステナビリティ開示について似たような内容を異なる媒体で開示することが求められているかと思います。例えば、自社のサステナビリティレポートや有価証券報告書、Eco-VadisやCDPといったプラットフォーム、そして各取引先企業やメディアからの調査票などです。 その中で、IFRS S1 およびS2の開示案を検討する際に有効な補助ツールとなると考えられるのが、CDP質問書です。CDP質問書では、TCFDとCDPの関連性はもとより、すでにIFRSとの整合性を意識されて構成されています。そして、2024年度版からは、IFRS S2への準拠が正式に発表されています*。そのため、CDP質問書への回答がすでに充実している企業は、今後もCDP回答との対応を意識するとよいと考えられます。CDP質問書の内容や公開されているガイダンス、スコアリング基準は毎年更新されますので、これらを参考にすることで、IFRS基準での開示で評価されるポイントについての実務的な観点を補うことができると考えられます。 参考資料③:開示サポート - CDP ※ソース:https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2022/11/cdp-to-incorporate-issb-climate-related-disclosure-standard-into-global-environmental-disclosure-platform/   ■今後の日本企業の対応について 日本企業に関しては、2022 年7月に設立されたSSBJ(サステナビリティ基準委員会)主導で、日本版のサステナビリティ情報開示基準がISSBに準拠する方針で検討されています。2024年度中には確定基準が公表され、早くて2026年3月期から有価証券報告書への適用が見込まれます。有価証券報告書に、「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄が新設され、「ガバナンス」「リスク管理」の開示を要求、「戦略」「指標及び目標」については各企業が重要性を踏まえ判断、という内容で検討されています。   参考資料④:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等改正の解説」   本コラムではいくつかの公開ガイダンスを紹介しました。IFRSの最終版は、これまでのサステナビリティ開示の論点を改めて明確化したという意味合いが強いですので、既存のガイダンスをうまく活用しつつ、対応していくことが重要と考えられます。   (執筆者:馬場)  

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SBTi FLAG目標について(後編)

  SBTi(Science Based Target initiative)は昨年「Forest, Land and Agriculture(FLAG)」セクターガイダンスを発表しました。これを受け今年4月30日以降、対象企業には新たにFLAG分野の目標設定が求められるようになりました。このFLAG目標の概要を2回に分けて整理しています。今回はその後編として目標設定において必要な要件についてまとめます。   目標設定対象企業 前回のおさらいになりますが、FLAG目標の設定が必要な企業は以下の企業です。 森林・紙製品、農業生産、畜産、食品・飲料加工、食品・生活必需品小売(外食も含む)、タバコセクターの企業 その他のセクターの企業で、FLAG関連の排出量が、スコープ1,2,3の総排出量の20%以上である企業 ※例えば以下のような企業は該当する可能性があります。 小売業、容器・包装、ホテル・レストラン・レジャー・観光サービス、繊維製造・紡織・アパレル、繊維・アパレル・靴・高級品、耐久消費財、家庭用品・個人用品、タイヤ、建築製品、住宅建築、建設資材、建設・メンテナンス、インフラ開発、鉱業、道路建設、資源採取   FLAG関連排出量が20%未満である場合もFLAG目標設定が推奨されています。(任意)また、FLAG目標を設定しない場合にも、非FLAG排出量(従来のSBTが対象とするエネルギー・産業分野の排出量)とともにインベントリに含める必要があります。中小企業はFLAG目標設定の必要はありません。既存の中小企業ルートで目標設定を行います。   目標水準 目標水準としては1.5℃水準が求められます。目標設定方法には以下の2種類があります。 FLAGセクター経路: 総量削減目標(年率3.03%以上。炭素除去含む)。主に小売等の需要側向け  コモディティ原単位経路: 原単位削減目標。主に生産等の供給側向け。現在、牛肉、鶏肉、乳製品、皮革、トウモロコシ、パーム油、豚肉、米、大豆、小麦、木材・木質繊維の11種類を整備   食品生産や小売等の需要側企業はFLAGセクター経路を使用します。農産物生産等の供給側企業で、コモディティ原単位経路が整備されている製品を扱っており、その排出量がFLAG排出量の10%以上を占める企業は、該当のコモディティ原単位経路かFLAGセクター経路のどちらかを選択することが可能です。コモディティ原単位経路が整備されていない製品を扱っている場合はセクター経路を使用します。森林・紙製品セクター企業、木材・木質繊維に関する排出量がFLAG排出量の10%以上を占める企業は必ず木材・木質繊維のコモディティ原単位経路を使用する必要があります。 削減率の水準については、非FLAG同様、SBTiが各経路の目標試算ツール「SBTi FLAG Tool」を提供しているので、そちらでご確認ください。   目標範囲 大前提として、対象企業は自社の排出量をFLAGと非FLAGに分けて管理し、それぞれの排出削減目標を設定する必要があります。FLAG排出量は「ファームゲートまで(農家等の生産者の拠点を出るまで)」、ファームゲートより先の排出量は非FLAG排出量として整理されます。FLAG目標はこのうちのFLAG排出量を対象範囲とします。 FLAG排出量はさらに排出量と炭素除去量に分けて管理することが求められています。FLAGの排出量には、土地利用変化に伴う排出量と土地管理に伴う排出量の2種類があります。土地利用変化に伴う排出量は、森林が農地に転換される等といった土地利用変化による、バイオマスや土壌等の炭素蓄積量の減少分を排出量として計算します。転換による排出は転換後20年間にわたり考慮します。土地ごとに計測によって把握する直接的土地利用変化(dLUC)手法と、特定の地域全体における土地利用変化の状況から推計する統計的土地利用変化(sLUC)手法の2つの方法があります。土地管理に伴う排出量は、農業等人為的に土地を管理することによって発生する排出量を対象として計算します。肥料使用によるN2Oの排出や水稲によるCH4の排出等、従来のGHG排出量算定の中でも一部は考慮されてきたものです。 炭素除去量はバイオマスや土壌などの炭素蓄積量の増加分を除去量として計算します。除去量は継続的に貯留されモニタリングされるもののみを加算する必要があります。 上記を含む炭素除去の要件を満たすとき、除去量はFLAG目標の達成に使用可能です。(FLAG排出量は排出量から炭素除去を除いたネット排出量で考慮されます。すなわち、炭素除去がFLAG排出量削減の手段となります。)しかし、FLAGの炭素除去は非FLAG目標の削減には使用できません。また、FLAGの炭素除去はサプライチェーン内での炭素除去のみが対象であり、サプライチェーン外の炭素除去(クレジットの購入等)の使用は認められていません。   非FLAG目標と同様に、FLAG目標でもScope1,2及びScope3排出量(Scope3排出量がScope1,2,3排出量全体の40%以上を占める場合)を対象範囲として目標を設定します。土地を直接所有・管理している企業はFLAG関連のScope1排出量が発生している可能性があります。土地関連の活動を行うサプライヤーから製品・サービスを購入している企業はFLAG関連のScope3排出量が発生している可能性があります。Scope1,2の 95%以上、Scope3の67%以上を目標範囲としてカバーする必要があります。   基準年・目標年 基準年・目標年の考え方も非FLAG目標と同様です。基準年としては2015年以降、目標年は申請時点から5~10年先までの間で設定する必要があります。FLAG目標と非FLAG目標はできるだけ同じ期間とすることが推奨されています。   森林破壊ゼロ FLAG目標設定企業は、排出削減目標の設定に加えて、森林減少0(森林破壊を行わないことを約束する)への宣言が求められています。宣言の所定文言は以下で、他の排出削減目標の文言と一緒にSBTiのウェブサイトに掲載されます。 “[Company X] commits to no deforestation across its primary deforestation linked commodities, with a target date of [no later than December 31 ("【企業X】は、【遅くとも2025年12月31日までの期日を設定】を目標に、主要な森林破壊に関連する商品について、森林破壊を行わないことを約束する。") 森林減少0の約束はScope1,2範囲だけではなく、Scope3も含まれ、またScope3の目標範囲の67%以上に限らず全ての範囲に適用されます。   最後に 以上がFLAG目標の主な要件です。目標設定のためにまず必要なのはFLAG排出量の算定ですが、現状難易度が高い状況です。GHGプロトコルの土地セクターガイダンスの最終化が行われている途中であり、排出量計算のための排出原単位も十分整備されている状況とは言えません。参考にできる算定事例もまだ少ない状況です。LCA排出原単位データベース等一部の既存の排出原単位には非FLAGとともにFLAG排出量が全てもしくは一部考慮されている場合もありますが、非FLAGとFLAGを分けることが困難であったりもします。このような中、各社試行錯誤の上算定を行っている状況です。よって、現時点で利用可能なものを活用し可能な範囲で算定を行い、今後新たな算定方法やデータベース等が出てきたり確立されてきたりした際には随時アップデートする等、段階的な対応を行っていくことがポイントと言えそうです。     参考資料 SBTi 「FOREST, LAND AND AGRICULTURE SCIENCE BASED TARGET SETTING GUIDANCE」 https://sciencebasedtargets.org/resources/files/SBTi-Target-Validation-Service-Offerings.pdf   (執筆者:山本(裕))

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SBTi FLAG目標について(前編)

  SBTi FLAG目標とは? パリ協定が求める水準と整合した企業の排出削減目標に認定を与えるSBTi(Science Based Target initiative)では、一部セクターを対象に、セクター特有の目標設定のルール「セクター別ガイダンス」を開発しています。昨年その一つとして、「Forest, Land and Agriculture(FLAG)」のセクターガイダンスが発表されました。それを受け、今年4月30日以降、対象企業には新たにFLAG分野の目標設定が求められるようになりました。これまで企業の排出量算定・目標設定においては、エネルギー起源や工業プロセスの排出量が中心に考慮されてきましたが、それとは別に土地由来の排出量等を考慮することが求められる大きな変更と言えます。そこで今回と次回の2回に分け、SBTi FLAG目標の概要について整理してみたいと思います。   FLAGとは? ガイダンス開発の背景 FLAGとはForest, Land and Agriculture(森林、土地、農業)という名前の通り、林業や農業等の土地集約型セクターのことを指しています。自然由来で環境負荷は小さいセクターのようにも思えますが、世界のGHG排出量の約1/4(22%)を占める重要な排出源です。このうちの半分は農業、残り半分は林業やその他の土地利用、土地利用変化からの排出です。農業では家畜の飼養や合成肥料の使用等からGHGが排出されます。世界人口増加に伴い、農業生産量は2050年までに倍増することが予想されており、排出削減対策の必要性はより高まっています。森林や土壌はCO2を吸収したり貯留したりする機能を持っています。森林伐採等、土地を従来と別の用途で使用するために開発すると、CO2の排出(貯留されていたCO2が大気中に戻ってしまう)となるリスクがあります。一方で、適切に管理し自然由来の炭素除去(CO2を大気中から取り除くこと)を増やしていくことは、ネットゼロ達成のチャンスになります。炭素除去は、排出削減を進めてもどうしても残ってしまう残存排出量を中立化し、世界全体のネットゼロ達成に貢献するとても重要な役割があるためです。 しかし、このセクターの算定や目標設定の考え方は特殊で難しく、これまで統一ルールが存在しなかったため、現状多くの企業の排出量計算や排出削減目標には考慮されていない状況です。この状況を打開するため、FLAGセクターの排出量算定・報告ルール「GHGプロトコル土地セクターガイダンス」の開発がGHGプロトコルによって進められています。(現在ドラフト版は発表済。2024年半ばに最終版発表予定)一方、FLAGセクターの目標設定のルールとしてSBTiにより開発されたのが「SBTi FLAGセクターガイダンス」です。   FLAG排出量とは? FLAGに関連する排出量は以下の3つに分類されます。 ・土地利用変化に伴う排出量:転用に伴う土地からの排出量(森林や土壌の炭素の損失)  例:森林伐採・森林劣化、沿岸湿地・泥炭地・草原の転換等 ・土地管理に伴う排出量:農業等の土地の利用・管理に伴う排出量  例:家畜の飼養(消化管内発酵・糞尿管理)、肥料の使用、水田管理、廃棄物焼却等 ・炭素除去量:森林CO2吸収等、生物由来のCO2除去と貯留  例:森林再生、森林管理改善、土壌炭素貯留等 上の2つは大気中にGHGが追加されるプラスの排出量です。一方、下の炭素除去は逆に大気中からGHGを取り除く量(マイナスの排出量)です。これらについて算定し目標設定することになります。 FLAG排出量は「ファームゲートまで(農家等の生産者の拠点を出るまで)」を対象範囲としています。ファームゲートより先の排出量は、従来把握してきた排出量(非FLAG排出量:エネルギー起源や工業プロセス由来等のFLAG以外の排出量)として整理されます。このように、FLAG排出量と非FLAG排出量は切り離し、算定も目標設定も別々に行うことになります。   FLAGセクターの対象企業は? 農産物や畜産物を生産していたり、それらの一次産品を使用した製品を作っていたり、またFLAGセクターからの調達品を使用していたり、その他の重大な土地利用・土地利用変化による排出量がある場合に該当する可能性があります。 具体的には、セクターガイダンスでは以下の企業を対象とし、FLAG目標の設定を求めています。 ・森林・紙製品、農業生産、畜産、食品・飲料加工、食品・生活必需品小売(外食も含む)、タバコセクターの企業 ・その他のセクターの企業で、FLAG関連の排出量が、スコープ1,2,3の総排出量の20%以上である企業   申請手続き 手続きの流れは従来と同じですが、申請書類が追加になります。目標申請時には、従来のNear-termの申請書(主に非FLAGに関する内容を記載)に加えて、FLAG Annexという申請書(FLAGに関する内容を記載)も提出します。審査費用も追加になりますのでご注意ください。   対応スケジュール SBT目標を初めて設定する企業、また既に認定取得済の目標を更新する企業でFLAGの対象となる企業は、既に(2023年4月30日以降)FLAGへの対応が求められています。(まだFLAGの算定ルールとなるGHGプロトコル土地セクターガイダンスの最終版が発表されていない状況ですが、ドラフト版に沿って排出量を算定し目標設定することが求められています。) 一方、認定取得済で直近の目標更新の予定がないFLAG対象企業は、「GHGプロトコル土地セクターガイダンス」が発行された後6カ月以内に申請し、FLAG目標を設定する必要があります。「GHGプロトコル土地セクターガイダンス」の発行は現在2024年半ばに予定されています。   後編では目標設定方法についてまとめます。   参考資料 SBTi 「FOREST, LAND AND AGRICULTURE SCIENCE BASED TARGET SETTING GUIDANCE」 https://sciencebasedtargets.org/resources/files/SBTi-Target-Validation-Service-Offerings.pdf SBTi 「GETTING STARTED GUIDE FOR THE SBTi FOREST, LAND AND AGRICULTURE GUIDANCE」 https://sciencebasedtargets.org/resources/files/FLAG-Getting-started-guide.pdf SBTi FLAG Project: New Implementation Timelines Announced https://sciencebasedtargets.org/blog/sbti-flag-project-new-implementation-timelines-announced   (執筆者:山本(裕))

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GHGプロトコルの全面改訂とScope2の改訂方針のサマリ

 2022年11月から2023年の3月にかけて、GHGプロトコルに対するフィードバックの募集が実施されました。 GHGプロトコルに対してはこれまで課題も指摘されており、今回のフィードバックの結果を踏まえ、改訂方針が検討されるとのことです。 弊社もご支援の中で、解釈に迷う部分や実務上難しいような要件もあり、注視しているところになります。 ここでは、まず先んじて公表されたScope2 Guidanceについて改訂方針ウェビナーの内容をサマリーでご紹介いたします。詳細をお知りになりたい方は、出典からウェビナー動画をご覧ください。   <GHGプロトコルの歴史> GHGプロトコルとは、企業をはじめとした組織単位のGHG排出量算定・報告の国際的なスタンダードとなっている規格です。 最初に、2001年に企業単位の算定基準をまとめたCorporate Standardが公開され、2004年に改訂されました。 2011年には、現在のサプライヤーチェーンを含めたScope123排出量の算定基準となっているScope3 Standardが公開。 続いて、2015年にScope2の算定について詳細に解説したScope2 Guidanceが公開され、現在は、土地利用・炭素除去に係る算定の具体的手法について定めたLand Sector and Removals Guidanceのドラフト版が公開されています。 (和約については、環境省HP参照 排出量算定について - グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省 (env.go.jp))   <改訂スケジュール> ・現在、(Q2-3 2023)1400のフィードバックと、230の提案を受けている。 ・NGO、アカデミア、ビジネス、政府からの代表者を募り、基準の策定を進めている。 ・Scope2ガイダンスのドラフトについては、2024年Q1までに、最終化を2025年までに完了することを目標としている。   <論点> 今回の改訂のキーとなる論点について、以下の5つを挙げて説明されています。 ①マーケット基準・ロケーション基準の両方での報告を求める、いわゆる「Dual Reporting」を残すか、どちらかひとつに統合するかについて ②データ要件(ロケーション基準とマーケット基準両方)と品質要件(マーケット基準のみ)をどの程度厳しく定めるかについて ③第3のレポート要件=インパクト評価指標(avoided emission)を導入することについて ④新技術に関する追加ガイダンスを作成することについて ⑤ポリシーや規制、自主的な開示プログラムとの整合性を図ることについて   【1番について】 マーケット基準、ロケーション基準のどちらかひとつで十分だとする意見の根拠として、主に多くの企業がDual Reportingを遵守していないことが挙げられています。 実際、日本企業の多くは、サステナビリティレポート等でマーケット基準のみを開示し、注釈をつけているケースが見られます。 マーケット係数の取得が難しい地域もあり一概には言いづらいものの、再エネ化のインセンティブを持たせることができるのはマーケット基準だという意見があります。   【2番について】 データや品質について、細かな要件を求めるべきか否かの議論が紹介されていました。 細かく定めることのメリットとして、証書のヴィンテージや設備の追加性(新たに再エネ設備を構築する社会的意義)を評価可能という点などが挙げられます。 一方、デメリットとしては、最初から要件を満たせる地域への投資が集中してしまい、公平な投資が妨げられてしまう点などが挙げられています。   【3番について】 再エネ等への切り替えによる削減インパクトについて、Scope2の枠組みの中で報告する箇所を設けるべき、という議論がでています。 ただ、課題としては、マージナル排出係数*の整備や、SBTiをはじめとするプログラムとの整合性の確保が指摘されています。 *CO₂削減対策の効果と電気のCO₂排出係数について | 日本ガス協会 (gas.or.jp)   【4番について】 追加ガイダンスの策定が要求されたテーマについて紹介されています。 主なテーマとしては、エネルギー貯留技術、グリッドごとの排出係数のさらなる整備、水素利用、などが表中で言及されていました。 そのほかにも、コジェネレーションシステム、廃棄物発電、バイオガスの利用といったテーマについての、ガイダンス策定が検討されているとのことです。   【5番について】 既存の政策や規制、ボランタリープログラムとの整合性を考慮すべきとの議論が紹介されています。 今後、CSRDやISSBのほか、EUにおける水素規定を踏まえたものにしていくとのことです。 今後、他のスタンダード/ガイダンスに関する改訂方針も公表される予定で、引き続き注視をしていきます。 脱炭素に貢献する技術が次々と出てくる中で、報告排出量へのインパクトが意思決定に係る場面も出てくると感じており、算定基準の整備・普及は急務です。 GHGプロトコルが国際的な基準としてフロントにあり続けることを期待しています。 出典記事:Survey on Need for GHG Protocol Corporate Standards and Guidance Updates | GHG Protocol 投影資料:https://ghgprotocol.org/sites/default/files/2023-05/Topline Findings from Scope 2 Feedback Webinar_GHG Protocol_05.02.2023.pdf (執筆者:馬場)      

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